さあて、本日の衆院予算委員会では、いろいろな論点が議論されました。菅直人首相の「疎い」発言、マニフェストの見直し、国民に信を問うべき時期、防衛事務次官通達による言論封殺、与謝野馨経済財政担当相や菅首相自身による過去の言動との不整合…など、いろいろと取り上げるべき問題ばかりでした。

 

 ただ、私としてはきょうは、自民党の柴山昌彦氏が追及した藤井裕久官房副長官と枝野幸男官房長官の問題について、ここで記録しておきたいと考えました。この二つとも、このブログで随分前(政権交代前も含め)から指摘していたことであり、いずれ問題化すると予測を記しておいたことだからです。

 

 以下、後輩の千葉倫之記者がIC起こし(以前はテープ起こしと書いてきましたが、もはやカセットテープを使用している記者は皆無となったので。ちなみに私はMDレコーダーを使っています)してくれたものを掲載します。本日の予算委はNHKがテレビ中継しているので、生でご覧になった方も多いと思いますが、文字で読むとまた別のわかりやすさがあります。

 

柴山氏 こちらのパネルをごらんください。これは平成14年、小沢さんが当時代表を務めていた自由党、今は民主党と合併しているが、自由党の政党交付金にかかる報告書要旨の抜粋です。申し上げるまでもなく政党交付金は税金でまかなわれるもので、使い途につき説明責任がある。この表を一見みて明らかな通り、ここの組織活動費。9億7900万円が藤井裕久氏へ。5億4190万円が藤井氏へ。この項目が金額的に突出している。藤井副長官、合計15億円超となるカネを何に使ったのか。

 

藤井氏 その内容は存じません。

 

柴山氏 次のパネルをごらんください。そのときの領収書の写しです。この下の欄に藤井裕久との署名捺印が見えるが、あなたのものではないのか。

 

藤井氏 まず今の前半申し上げましたが、私はそのお金を受け取っておりません。従ってそういう認識は全くありません。ですから、今の問題については、私としては、その認識が、まず領収書の認識がありません。

 

柴山氏 確認だが、これは領収書と書いたのをあなたは全くみずに署名捺印したということか

 

藤井氏 認識がありませんから、それが私が書いたものかどうかについては、理解…分かりません!

 

柴山氏 大変重要な答弁をした。私はあえて藤井裕久の後に押捺されているあなたのおそらく銀行届け出印だと思うが、プライバシーの観点から塗りつぶしている。もし印影が明らかになってあなたの実印、届出印なら、ぼうよう(?)されたと主張するのか

 

藤井氏 その紙は見たことがないので、何とも申し上げられません。

 

柴山氏 次のパネルをごらんください。しかもあなたは当時、自由党の幹事長であり、かつこの収支報告書にもある通り会計責任者だったはず。そしてこの隣にある収支報告書提出の際に添付される宣誓書、「この報告書は政治資金規正法に従って作成したものであって、真実に相違ありません」という書面に署名、捺印している。さっきの領収書と同じ筆跡に見えるが、あなたの字でないのか

 

藤井氏 その紙の中のその文字は、私は認識がありません。

 

中井予算委員長:藤井先生、この(柴山氏提出の)資料はお持ちなんですか)

 

藤井氏 はい、持ってます。

 

柴山氏 自分の書いた書面が真実かどうか、収支報告書、しかも幹事長かつ会計責任者という立場にありながら、その署名をしたかどうかを忘れるような人が官房副長官。許されないことだ。もう一回答えを。

 

藤井氏 知らないということを申し上げております。

 

柴山氏 奇しくも、平成16年ごろ、同じく小沢元代表の関連政治団体である改革フォーラム21の口座に、収支報告書に記載のない約15億円の入金があったと、昨年1月17日の日本経済新聞で報じられている。そして改革フォーラム21は一昨年の衆議院解散日である7月21日に、小沢氏が代表を務める民主党岩手県第4区総支部に、表に出ている額で3億7000万円の寄付を行い、翌日に同額が、今回問題となっている陸山会に流れている。陸山会からは小沢氏に近いとされる候補者91名に、8月17日の総選挙公示までに、計4億4900万円が提供されている。このように報道等で疑惑を持たれれば、その説明責任が生じるはず。あなたが15億円の使い途、どうしてもご存じないというなら、誰が知っているのか。

 

藤井氏 私が知らないということで、それ以上のことは分かりません。

 

柴山氏 あなたは当時、自由党の幹事長で会計責任者でありながら、その自由党が受け取っている政党交付金についての使途、しかも自分が領収書に自筆で署名、捺印しているものについて、使途について一切知らない、誰が知っているかも知らないというのか

 

藤井氏 これはですね、7、8年前に今と同じことをお答えしてます。それから爾来、7、8年間、同じようにお答えをいたしております。

 

柴山氏 表紙には事務担当者としての八尋護さんという方の署名があります。もう亡くなってます。しかし当時、同じ自由党の職員で、かつてあなたのところにいた高橋さんやトノナリりさん、女性の事務をしていた人がご存じないのか。今は民主党の職員になっているはずだ。

 

藤井氏 今の名前は全部、承知をいたしております。

 

柴山氏 では現在、民主党経理部にいる、トシナリヒロアキ氏、同じく民主党の第3控え室の高橋トヨカツ氏の参考人招致を求めます。

 

中井氏:理事会で協議します)

 

柴山氏 再度、確認。この署名捺印はご自分のものか。再度、答弁を

 

藤井氏 今申し上げましたようにですね、このお金はもちろん頂いておりませんし、それから今の内容も存じません。従って、これについての認識がないんです。ですから、それが、どうこういう私は、立場にありませんし、えー。

 

柴山氏 これがこの官邸の実態でございます。次の質問に写ります。ここにある質問主意書。わが党の佐藤勉衆院議員が昨年の4月27日に提出し、それに対する答弁書が閣議決定のうえ、5月11日に送付されてきた。枝野長官。昨年の5月11日当時、行政刷新担当大臣といして内閣にいた。間違いないか。

 

枝野氏 内閣府特命担当大臣行政刷新担当として内閣におりました。

 

 …私は、藤井氏が「使途その他を知らない」と言っているのは本当だと思います。藤井氏に限らず、小沢氏が党首を務めた政党の幹事長・財政責任者はみな、実は党のカネはほとんど触らせてもらっていません。民主党でも、小沢代表時代の鳩山由紀夫幹事長はそうでした(本人もそう言っています)。

 

 今回の強制起訴の件では、どうせ無罪になるだろうとか、形式犯であるとか、だからこの問題で騒ぐメディアがおかしいとか、私に言わせればチャンチャラおかしい論議が横行しています。

 

 本質はそうではないはずです。捜査容疑が何に絞られているかとかそういう問題ではなく、メディアやフリーの各記者が問題意識を持って問うべきは、そうした事件が生まれる背景にある、小沢氏の誰がどう見ても不透明かつ異様な政治資金のあり方にあると考えます。

 

 少なくともメディアは、検察でも警察でも当局が法的に問うかどうか以上に、たとえ法律には違反していなくても道義的・社会通念上に「おかしい」ことを指摘し、それを国民に示すことによって、国民の判断それ自体に委ねることが使命だと考えます。今回の小沢問題に関しては、あまりにも問題を極小化・矮小化し、政治資金収支報告書の不記載が大事か瑣事かという、それこそ些末な論議に流れていますが、小沢氏の抱える問題は、それ以上に複雑かつ多岐かつ深刻であることを押さえなければならないと確信します。

 

 さて、柴山氏は枝野氏については、私が産経紙面とこのブログで指摘していた資金管理団体だけでなく、地元・埼玉県に所在する政治団体についても掘り下げて質問していました。

 

柴山氏 この質問主意書はJRの労働組合に、日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派、すなわち革マル派が影響力を持っているかということについてのものだ。こう書かれている。革マルは共産主義革命を起こすことを究極の目的としている極左暴力集団であり、これまでにも殺人事件等、多数の刑事事件を引き起こしている。革マル派はその組織拡大に重点を置き、周囲に警戒心を抱かせないよう、党派性を隠して基幹産業の労働組合等、各界各層への浸透を図っており、JR総連、および東日本旅客鉄道労働組合内には、影響力を行使しうる立場に革マル派活動家が、相当浸透していると認識している。今後も革マル派は、組織拡大に重点を置き、党派性を隠して基幹産業の労働組合等、各界各層への浸透を図っていくものとみられる。次のパネル。これは枝野長官の政治団体が平成8年以降、いまの答弁書にあったJR総連およびJR東労組からいくら献金を受け取ってきたかを示すものだ。1昨年の衆院選挙の年まで、一時中断の年もあるが、継続的に合計794万円のカネをもらっている。あなたが閣議決定に署名した答弁書で問題が指摘されたJR総連、JR東労組からこれだけの献金を受け取ることは、道義的に問題ないか。また、今後も献金を受け取るつもりはあるか。

 

枝野氏 私はあの、連合加盟の各産別といろいろな意味でおつきあいさせていただいておりますが、その連合加盟の各産別とおつきあいをする範囲内で、当該労働組合ともおつきあいをさせていただいてまいりましたが、それ以上でもそれ以下でもございません。今後については、李下に冠を正さずということもございますので、献金等のお申し出があってもお断りさせていただこうと思います。

 

柴山氏 次のパネル。李下に冠を正さずといったが、今後は、それを内閣の方針として各大臣に周知徹底するつもりはないか。

 

枝野氏 それぞれの政治活動、政治資金やその他のことについては、基本的にはそれぞれの政治家がそれぞれの責任でしかるべく対応されるものと思います。

 

柴山氏 閣議決定のうえ署名がされたということを念のためいっておく。パネルは枝野氏が平成8年の2期目の総選挙で、仮にYさんとするが、JR東労組大宮支部の委員長と取り交わした覚書。間違いないか。

 

枝野氏 だいぶ前のことでございますので、個別具体的に正確に記憶はいたしておりませんが、一般論として申し上げれば、連合に加盟する各組合とのお付き合いの範囲の中で、そこに示されているような、いわゆるひな形的な政策協定を結ぶことはあると思っておりますので、私の署名だと思いますので、そのような政策協定を結んだことがあるんだろうという風に思います。

 

柴山氏 一般論として慣例的にそのような協定書を結ぶと。しかしこの墨塗りした方。今いったように、Yさんというが、このころ、JR革マル派のリーダー的立場にあるLC会議のメンバーであり、職場から集めた革マル派のカンパを上納する財政担当者だった。そして、この書面を見ると、私、枝野長官だが、私はJR総連およびJR東労組の掲げる綱領を理解し、連帯して活動しますと明記されている。さらにこのYさんは、平成14年、方針に従わなかった組合の同僚を脅して脱会を強要したという、いわゆる浦和電車区事件で他の幹部とともに逮捕され、東京高裁まで有罪判決が出ている。枝野長官は、判決に先立つ平成18年11月に開催された、冤罪JR電車区事件から4年、7名の完全無罪を勝ち取る埼玉県集会に呼ばれて講演している。決して一般的関係じゃないじゃないか

 

枝野氏 あの、その協定書に書かれているような趣旨の内容のことについては、個別には名前は挙げませんが、他の労働組合等とも、あるいは労働組合以外の団体とも、一般的な政策協定として締結されることはあるという風に思っておりますし。それから今、黒塗りにされておられます部分の方について、詳細な記憶はございませんが、これは機関と私との間でしたものであります。連合加盟の産別組合との間で結んだものでございまして、たまたま当該、そのときのその立場におられた方が、どういう立場であったのかということは、少なくともその時点では存じ上げませんでした。また今の集会については、詳細について記憶はございませんが、一般的に私も柴山さんと同様弁護士でございますので、適正法定手続きについて、いろいろな場所で講演を頼まれて、その限りにおいてそういった講演をすることはあるかと思いますが、当該組合の活動そのものについての講演とか何かをした記憶はございません。

 

柴山氏 覚書が交わされた平成8年以降の長官と両組合との関係を見ると、実に8回にわたって新年会などの講演会に出席している。さらに昨夏の参院選で比例当選した田城郁議員はJR総連の政策調査部長であり、JR東労組の委員長や会長を歴任した革マル派創設者の一人である松崎あきらの側近だった。また、日本鉄道福祉事業協会の元理事長が業務上横領を行ったとされる刑事事件で、田城議員の講座にも入金があったとして捜索、差し押さえを受けており、田城議員はそれが不当であると国家賠償請求訴訟を提起したが高裁で棄却判決が出てすでに確定している。総理、間違いありませんね。

 

中井氏:知らなきゃ知らないで…)

 

菅直人首相 今お聞きになったこと、私自身、あの、承知をいたしておりません。

 

柴山氏 今述べたことは昨年10月12日に、同じく佐藤勉議院から出された質問主意書で、あなたがたの政府が閣議決定。総理、私は労組の健全な活動を否定するつもりはない。しかし、社会的にさまざまな問題が指摘される過激な活動を行う組織については、断固として政治や行政からの遮断を図るべきだと感じないか。

 

菅首相 まあ、あの、一般的に申し上げれば、私たち民主党は、いろいろな団体にご支援をいただいております。で、労働組合でいえば、いわゆる連合の皆さんにも多くご支援をいただいております。そういう中にたくさんの組合があるわけであります。そういう意味で、そういう皆さんとのお付き合いというのは、まあ基本的には、そういう党と連合との友好関係を背景に、あとは個々の議員なり候補者が判断することだと思っております。もちろん、その、今いわれたようなですね、組合に限りませんが、社会的に、何ていいましょうか、問題がきわめてあるということの団体との関係というのは、当然ながら、そこは気をつけなければならないと。このように思っております。

 

 …本日、答弁に立つ菅首相や閣僚らの額には、私にははっはきりと「恥」が刻印されているように感じられました。どこか後ろめたい人生を送っているもの、何かを誤魔化し、それを気にしながら、日陰を選んで歩いているような人たちのそれです。

 

 お天道さまの下を堂々と、大手を振って歩くリーダーを持ちたいものです