きょう、臨時国会が開かれて野田佳彦首相が所信表明演説を行ったわけですが、ああ、この人はやはり菅直人前首相を反面教師にしているなあ、という印象を濃くしました。野田首相は菅氏があまりにもアレだったので、今後、何をやってもやらなくても「まあ、アレよりはましだし……」と許されてしまう局面が多々ありそうです。きっと、そういう点もご本人は計算しているのでしょうが、実際やりにくい。

 

 で、野田首相は演説の冒頭部分で、こう述べました。

 

 「政治に求められるのは、いつの世も、『正心誠意』の四文字があるのみです」

 

 これを聞いて「もしや」と思ったのですが、政府筋によるとやはり、これは勝海舟の次の言葉からとったものだそうです。

 

 「政治家の秘訣は、ほかにはないのだよ。ただ正心誠意の四字しかないよ」

 

 どうして私がこの点が気になるかというと、実は私も勝海舟の言葉のまさにこの部分を64日付の産経コラム「政論 死して屍拾う者なし」で引用していたからです。私はこの言葉を、国会で「誠がない」「信がない」「心がない」と批判されていた菅氏を批判する文脈で引用したのでしたが、全く同じところを野田首相が使ったのに興味を覚えたのでした。

 

 また、野田首相は演説でこう語った部分では、衆院本会議場がどうしてかどよめきました。

 

 「議会制民主主義の要諦は、対話と理解を丁寧に重ねた合意形成にあります」

 

 これも、「議会制民主主義とは期限を区切った独裁を認めること」が持論で、実際に国会でもそう答弁した菅氏と正反対のことを言っていると受け止めました。まあ、菅氏の逆をいけば、そうそう間違うことはないでしょうが、菅内閣の一員だった野田首相は、どんな思いで菅氏の言動を見つめていたのか。

 

 野田氏は829日の民主党両院議員総会では、こんなセリフも発していました。

 

 「思惑ではなく思いで、下心ではなく真心で、政治を前進させるときだ」

 

 これを聞いたときも、私は「これは菅氏への皮肉ではないか」と感じたのです。というのも、私は515日付産経コラム「日曜日に書く 心は見えずとも思惑は…」でやはり菅氏を批判してこう書いていたからです。

 

 「永田町ではこれをもじり、菅直人首相を当てこすったこんな言葉が流通している。『心はだれにも見えないけれど下心は見える』『思いは見えないけれど思惑はだれにでも見える』」

 

 野田首相の言葉は、私からみれば、そのまま菅氏への批判となりますし、実際、私と同じように感じる人もいるのではないかと思います。野田首相の党幹部・閣僚人事は問題だらけだと思うし、これからもどんどんボロが出そうですが、私もつい「アレよりはましだな」という野田首相の得点でも何でもない当たり前のことについとらわれそうになります。

 

 輿石東幹事長はきょうの党代議士会で「マスコミ対応を含め、情報管理に徹底してまいりたい」と堂々と述べていましたし、野田政権について今後もいろいろな角度から問題点を指摘していかないといけないと考えています。前任者も前々任者もあまりに常軌を逸していたため、野田首相がついまともに見えてしまうという陥穽に落ちないよう、気をつけたいと思います。