さて、今回は韓国が不法占拠している島根県隠岐の島町竹島に関する問題と、政治家の言葉についてです。

 

 ご存知の通り、民主党政権は岡田克也元外相も枝野幸男前官房長官も現在の藤村修官房長官もみんな、この「不法占拠」という言葉を使いません。韓国が竹島を不法占拠していることは事実であり、外務省のホームページもそう記している正式な政府見解であるにもかかわらず、韓国を刺激することを過剰に恐れていつも

 

 「竹島は法的根拠のない形で支配されている」

 

 という、言葉の置き換えで逃げています。この姑息な置き換えにどれほどの意味があるのかも疑問ですが、私はこれまで、とにかくそれが民主党政権のやり方なのだと理解していました。

 

 ところが今朝、自民党の「領土に関する特命委員会」を取材(フルオープン)していたところ、稲田朋美衆院議員が興味深い発言をしていたのが引っかかりました。稲田氏は野田内閣のあり方についてこう証言したのです。

 

 稲田氏 民主党政権になって「不法占拠」という言葉が消えた。私は衆院法務委員会で竹島の占有状況の法的な問題について平岡秀夫法相に質問したが、平岡法相は「法的根拠なく」ということも言えなかった

 

 これについては、出席していた外務相の石兼公博アジア大洋州局審議官も「法務委での平岡法相の答弁を確認したい」と驚いた様子でした。さすがは、民主党内でも「最左派」と言われる平岡氏ですね。

 

 私も、その法務委でのやりとりは承知していなかったので、早速、議事速報を取り寄せて確認しました。質疑は1025日に行われたもので、おおよそ以下のようでした(全文は長いので一部略します)。平岡氏は竹島について、我が国の領土であるという立場は一貫しているといいつつ、言を左右にして逃げまくっています。いったい何を恐れているのか

 

 稲田氏 竹島は韓国が不法占拠している、それでいいか

 

 平岡氏 韓国の今の状況については、ちょっと私自身、今ここで明確に申し上げられる状況ではない

 

 稲田氏 これは我が国固有の領土を韓国が不法占拠している、それでよろしいねという質問です

 

 平岡氏 不法占拠ということ自体が、ある意味では非常に政治的に意味合いを持った言葉なので、私自身がここでその問題についてこうだといふうに申し上げるのは適当ではないと思う

 

 稲田氏 外務省の資料には、韓国が不法占拠していると書いてある。これは政府の見解だ。どうして法相が韓国が不法占拠していると言えないのか

 

 平岡氏 外務省が責任を持って答える立場だと思うので、私からはこれ以上言うつもりはない

 

 稲田氏 法相なんだから、不法か合法か判断できるでしょう

 

 平岡氏 外務省で整理している問題だから、外務省が責任を持って答えるべき問題だと思う

 

 稲田氏 大臣の意見を聞いている。日本の大臣だったら、それぐらい自分の言葉で答えられるでしょう。韓国が不法占拠している。これでいいか

 

 平岡氏 私は国務大臣という立場から、政府の見解と一にするものだと申し上げている

 

 稲田氏 では質問をかえる。韓国の占有に法的な根拠はあるか

 

 平岡氏 その問題について責任を持って答えるべきは外相、外務省だと認識している。私としては政府の見解に従った考え方をとっている

 

 稲田氏 少なくとも江田五月前法相は「法的根拠なく占有している」ということは言った。それはすなわち不法占拠と同じ意味だが、民主党政権になってなぜか不法占拠という言葉を使いたくない。弱腰だから。しかし、江田氏ですすら「法的根拠なく」ということは認めたんですよ。それすら認められないあなたに法相の資格は全くない。(ここまで)

 

 ……いやあ、平岡氏は本当に、頑なに「不法占拠」どころか「法的根拠なく」も使いませんね。あるいは本心では、閣僚でなければ韓国側に立ちたいのかもしれないと疑わしくなるほどです。だいたい、法の適正執行より自分の心情を優先して死刑を執行しないとか、政府の公式見解は口に出せないとか、法相って一体なんなんでしょうね。

 

 それにつけても、政治家の言葉が薄っぺらく、存在感が希薄になっているのを感じます。鳩山由紀夫、菅直人と二代の首相が政治家の言葉に対する信頼性を地の底にまで突き落としたこともありますが、野田佳彦首相の美辞麗句もだんだん上滑りを始めたように感じています。平岡氏に至っては、正しい言葉を口にすることすら避ける始末です。

 

 そんなことを考えていて、今夏に村上正邦氏(元自民党参院幹事長)からいただいた暑中見舞いの文章を思い出しました。そこには、政治家の言葉について以下のような記述がありました。

 

 《「太古(はじめ)にコトバありき」

心うごきいでて、コトバとなれば、一切の現象展開して万物なるとヨハネ伝は教えています。

ことばの貧しいところには、平安や豊かさ、愛や幸せは、訪れません。

ことばの貧しさは、政治の貧しさです。

政治家は、真(まこと)のことばを忘れていないでしょうか。

自己正当化や言い訳、批判や非難、虚言ばかりを並び立てていないでしょうか。

国民は、政治家から、国を思う強いことば、民を心配するやさしいことばを聞いたことがあるでしょうか。

政治家は、つねに、ことばとふるまいを省みなければなりません》

 

 こじつけのようですが、最近連続し失言騒動を思い返しても、政治家の言葉があまりに軽いと感じるのです。直近では、民主党の仙谷由人政調会長代行がTPPに関連して「農協は(反対を)わめいている」「(反対は)宗教的関心なのか」などと講演で発言し、TPP反対派から辞任を要求されるという出来事がありました。

 

 仙谷氏は早速、例のごとく「マスコミが一部を切り取って…」と矛先をマスコミに向けていますが、そもそも公の場で、誤解()されるようなことを言う自分に対して少しは反省したらどうかと思います。政治家の発言は常に監視されているということと、同時に、発言の一つひとつが国民へのメッセージであるということを、もう少し自覚したらどうかと。まあ、書いていて空しい思いもありますが。

 

 ※本日の自民党の部会については続報も書きます