さて、前回のエントリの続きです。今回は淡々と福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の調査報告書に記された内容の紹介にとどめようと思います。報告書の第3章「官邸における原子力災害への対応」の冒頭に書かれた「概要」は、菅直人前首相と官邸中枢の行為についてこうまとめています。

 

 《結果的にみて、官邸の現場への介入が本当に原子力災害の拡大防止に役立ったかどうか明らかではなく、むしろ場面によっては無用の混乱と事故がさらに発展するリスクを高めた可能性も否定できない》(P74)

 

 そして、官邸による現場関与の主要事例とその影響については、いくつか例を挙げると次のように事例別に評価を下しています。 (P94~)

 

電源車の手配(11日夜)……官邸では福山副長官がその手配を中心的に担当し、どの道路が閉鎖されているかが分からないので、各方面から40数台の電源車を手配した。しかし、これらの電源車は事故対策にほとんど貢献しなかった

 

 1号機ベント(11日夜から12日早朝)……少なくとも官邸の決定や経産相の命令、首相の要請がベントの早期実現に役立ったと認められる点はなかった

 

 1号機への海水注入(12日夕方)……官邸の議論は結果的に影響を及ぼさなかったが、官邸の中断要請に従っていれば、作業が遅延していた可能性もある危険な状況であった。

 

 3号機への注水変更(13)……官邸で海水よりも淡水を優先する意見が出され、東京電力の部長から吉田所長にその旨が伝えられた。(中略)淡水への変更は、結局ほとんど状況改善につながらず、経路変更で無駄な作業員の被曝を生んだ可能性があり、官邸の指示が作業を遅延させたばかりでなく、原子炉注水操作失敗の危険性を高めた疑いがある。

 

 その上で報告書は、こう結論しています。(P98)

 

 《少なくとも15日の対策統合本部設置までの間は、官邸による現場のアクシデント・マネジメントへの介入が事故対応として有効だった事例は少なく、ほとんどの場合、全く影響を与えていないか、無用な混乱やストレスにより状況を悪化させるリスクを高めていものと考える》

 

 《政府のトップが原子力災害の現場対応に介入することに伴うリスクについては、今回の福島原発事故の重い教訓として共有されるべきである》

 

 当時の官邸内の様子を表すこんなエピソードも紹介されています。(P111~)

 

 《ある官邸中枢スタッフは、原発事故に関して菅首相が「全然俺のところに情報が来ないじゃないか」と苛立ちを表明する度に、関係省庁が大急ぎで説明資料を作成して説明に上がろうとするが、説明を開始してまもなく「事務的な長い説明はもういい」と追い出されるパターンの繰り返しであったと述べている。》

 

 結論として、官邸の初動対応についてはこう書かれています。(P119)

 

 《今回の福島事故直後の官邸の初動対応は、危機の連続であった。制度的な想定を外れた展開の中で、専門知識・経験を欠いた少数の政治家が中心となり、次々と展開する危機に場当たり的な対応を続けた。決して洗練されていたとはいえない、むしろ、稚拙で泥縄的な危機管理であった。》

 

 さらに、最終章「福島第1原発事故の教訓復元力をめざして」は、こうも記しています。(P393)

 

 《官邸主導による過剰なほどの関与と介入は、マイクロマネジメントとの批判を浴びた。菅首相が、個別の事故管理(アクシデントマネジメント)にのめり込み、全体の危機管理(クライシスマネジメント)に十分注意を向けることがおろそかになったことは否めない。》

 

 ……まあ、もうあえて付け加えませんが、これらの事実認定や評価は、産経がこれまで報じてきたこととおおむね一致すると思います。この報告書を読みながら、私も官邸で見聞きしたアレコレを思い出し、「菅氏らによって、本当に日本は危ないところにあったなあ」と今になって冷や汗をかく気分です。