さて、私は最近のエントリで慰安婦問題を「捏造」した朝日新聞と、虚偽を事実であるかのように「認定」して日本の歴史と我らの父祖を恥辱の海に沈めた河野談話について批判してきました。この問題に関しては、いくら書いても書き足らないという気持ちがあります。

 ただ、それでは悪いのは朝日と河野洋平氏だけかというとそうではなく、朝日の報道に目をくらませて追随した他のメディアも、河野氏と一緒になって何とか韓国のご機嫌をとろうと必死だった他の政府関係者も、みんな共同正犯であるわけです(残念ながら、産経の報道も当初は変でした)。日本にありがちな時代の「空気」が背中を押したという部分も否めません。

 また、このところ、他人の書いた文章を引用することが多かったので、本日は私自身が鳩山由紀夫内閣発足前夜に、月刊「正論」(200910月号)に書いたもの(「第二の『村山談話』を阻止せよ」)から関連部分を抜き書きしたいと思います。以下がそれです。

 《鳩山氏は平成193月の記者会見で、こう明言している。

「河野談話は、事実に基づいた談話と認識している。民主党としても(談話を)尊重する立場だ」(中略)

河野談話は政治改革関連法案の処理に失敗した宮沢内閣が総辞職する前日に、駆け込み的に発表されたものである。平成585日付の毎日新聞はこのときの状況をこう記している。

「政府が4日発表した従軍慰安婦問題の調査結果は、5日に総辞職する宮沢政権が駆け込み的に行ったものだ。韓国側が強く求めた『強制連行』の事実を認めたことで、政府は『調査はこれで終わった』(河野洋平官房長官)と区切りがついたことを強調する。こうしたタイミングでの発表の背景には、政権交代を前に『現政権のうちに決着させたい』との両国政府の利害が一致したことがある」

鳩山氏は、このようにして〝藪の中〟で成立した河野談話を簡単に「事実に基づいた談話」と呼んだ。だが、河野談話について調べれば調べるほど「事実」などどこにもなく、その場しのぎの短慮で国益を害した愚かな政治家・官僚たちの実態が浮かび上がるばかりではないか。

河野談話作成の準備段階にあたる平成53月の新聞各紙を読み返すと、24日付の毎日新聞と、25日付の朝日新聞に、情報源は同じとみられる興味深い記事が掲載されている。見出しは次の通りだ。

・毎日新聞「従軍慰安婦『強制連行』広く定義」「政府が新見解 精神的苦痛も含める」

・朝日新聞「『強制』幅広く認定」「従軍慰安婦調査で政府方針」「精神的苦痛含めて判断」

この前日の23日には、谷野作太郎外政審議室長が参院予算委員会で「強制」の定義について「物理的に強制を加えることのみならず、脅かし、あるいは畏怖させて、本人の自由な意思に反してある種の行為をさせること」と答弁し、「強制」を幅広くとらえる考えを強調していた。

毎日新聞は記事で、谷野氏の答弁と政府首脳の「物理的だけでなく精神的な場合も含む」との言葉を挙げた上で、「強制連行の定義が焦点になっていたが、今回の政府判断は『本人の意思』に反していたかを基準とし、脅かしや精神的圧迫による連行も含めたことになる」と報じている。

また、朝日新聞も政府首脳の「精神的苦痛、心理的なものも含めて」との言葉を紹介し、「元従軍慰安婦からの聞き取り調査で、脅迫など精神的圧迫を受けたとする証言があった場合、強制的に連行されたものと判断するなど幅広く解釈していこうというものだ」と書いている。

新聞表記の慣例上、政府首脳は主に官房長官を指すため、この二つの記事はオフレコの場などで河野氏が表明した考えを伝えたものとみられる。谷野氏と政府首脳(河野氏)の言葉からは、当時の政府が、証拠がいくら探しても出てこないにもかかわらず、韓国を満足させるためどうにかして強制性を認めようとして苦心していたさまがうかがえる。何とも倒錯した日本国民不在の風景だ。

付け加えると、谷野氏は外務省チャイナスクール出身で中国課長を経て、外政審議室長として村山、河野両談話の作成にかかわっている。後に中国大使となったほか、親中派の福田康夫前首相の小学校時代の同級生でアドバイス役も務めていた人物である。

ただ、河野談話の責めを河野氏や当時の政府関係者だけに帰するのは公正ではないかもしれない。当時のメディアの慰安婦報道はあまりに一方的で不勉強で、旧日本軍への偏見と悪意に満ち、かつ諸外国の言い分を垂れ流すばかりだったからだ。

例えば、平成4112日付朝日新聞の1面トップ記事「慰安婦 軍関与示す資料 部隊に設置指示」は、それ自体、政治的意図のある偏向したものだが、さらに噴飯モノなのは記事に添えられた「従軍慰安婦」に関する用語解説だ。そこにはこうある。

(前略)8割は朝鮮人女性だったといわれる。太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」

 まるっきり、北朝鮮か韓国の反日活動家のプロパガンダである。慰安婦問題に詳しい現代史家の秦郁彦氏によると、慰安婦の総数は2万から2万数千人にとどまるし、日本人女性が4割を占め、朝鮮人女性は2割程度だったとされる。また、女子挺身隊と慰安婦は全く関係がないのはあまりにも明らかだ。

 しかし、当時の新聞は元慰安婦の証言は何ら検証も行わないまま事実として報じ、朝日新聞だけでなく毎日新聞も東京新聞も「女子挺身隊名で強制連行」と平気で書いて旧軍を批判していた。産経新聞も、史実にない「従軍慰安婦」という言葉を何度も使用していたことを反省とともに指摘しておきたい。

 当時のテレビ報道がどうだったかは把握していないが、新聞と似たり寄ったりだったかそれ以上に扇情的だったのではないか。河野氏をかばう気などないが、そんな歪んだ言語空間にあって、政府のみに「正気」を求めるのは酷なのかもしれないと思う。(後略)

 ……何とかその場しのぎに韓国をなだめたいと浅知恵で「強制」の範囲をでたらめに広げて無理矢理「強制性」を認めた結果が今日、「セックススレイブの国、日本」というとんでもない誤解が世界に広まったことにつながっていますね。そして、当時の新聞は政府のそうした事実とは無関係の「作為」を特に批判しようとはせず、むしろ同じ気分でいたようです。

 だいたい、20万人もの同胞の若い女性が軍に強制連行されるのを黙って指をくわえて見ていたとしたら、朝鮮半島の男は信じられないほどの弱虫、卑怯者、クズということになります。韓国の人たちは、そこのところをどう考えているのでしょうか。まあ、例の「反日無罪」の思考法で、矛盾や齟齬など気にしないのでしょうね。そして、そのアホらしい限りの20万人説を無批判に掲載する新聞も新聞です。さすがに最近はこうは書かなくなりましたが……。

 この当時、インターネットがすでに普及していて、いろんな人の情報発信が可能だったら、こうも話が歪んでいかずに済んだのだろうと思います。まあ、これは言っても詮なきことですね。