「延命学の大家」と呼ばれた菅直人前首相が、辞任の条件としてあれこれやりたいことを列挙し、「それに一定のめどがついたら」と言っていたのを思い出しました。まあ、野田佳彦首相も、同じような種類の人間だったということですね。著書で「自衛官のせがれ」であることを強調し、自衛隊観艦式で旧海軍兵学校の「五省」を読み上げた野田氏は、はからずも自衛隊の最高指揮官たる資格がないことを自ら露呈してしまいました。

 野田氏には、直接「至誠に悖るなかりしか」「言行に恥ずるなかりしか」と言ってやりたい。もはや実質的に輿石政権ではあるとはいえ、プライドも何もなく、ただただ自分と民主党所属議員を少しでも長く生き延びさせることしか考えていません。これは一国のリーダーにふさわしくなく、せいぜい、働かない組合員の身分・地位の保全を最優先する官公労の長のあり方でしょう。

 昨日、三党党首会談後に記者団のぶらさがり取材に応じた野田氏の言葉は言い訳がましく、何よりその顔は「悪人」のそれでした。菅氏が国民も党所属議員もペテンにかけて延命だけに邁進していた際、その無駄に広い額には「恥」という文字が浮かび上がった見えたものですが、野田氏も似てきましたね。

 野田氏は党首会談で、延々と40分間も特例公債法案と予算案を一緒に処理するルールづくりについて説明したそうですが、それってもともと一緒に処理するのが通例でした。それに、仮に今後、改めてそういうルールをつくるにしても、別に野田内閣じゃなきゃできないわけでも何でもありません。

 これが、輿石東幹事長が三党幹事長会談で表明した「解散時期に関する新たな提案」だったわけですから、野党だけでなく、国民もこけにしています。ふざけた話であり、「近いうち」という野田氏が表明した解散時期を先延ばししたいだけであることが見え見えです。要は、野田氏も菅氏と同じような「嘘つき」であるということです。

 菅内閣は一昨年12月、閣僚が国会で虚偽答弁しようとも道義的・政治的責任は必ずしも問われない、というとんでもない閣議決定を行いました。民主党の本質は、嘘つきの恥知らずであるということです。国民はもっと怒るべきです。主権者たる国民をこれほどないがしろにする政権は、戦後これまでなかったのではないでしょうか。

 党首会談で野田氏は、自民党の安倍晋三総裁と公明党の山口那津男代表から「あなたは8月の三党党首会談で、予算編成はしない、と言ったではないか」と突きつけられると

 「言った言わないの話はしない」

 とごまかしたそうです。こういう風に逃げようと最初から考えていたのでしょうね。こういう姿勢・態度を「卑怯」と呼びます。それに対し、山口氏は「私はその場所にいた。輿石氏はいませんでしたね」と、三人だけの席であることを強調し、安倍氏も「谷垣さんから引き継ぎは受けている」と迫りましたが、野田氏はごにょごにょと言い訳し、あげく

 「概算要求を出すのは予算編成そのものではない」

 と子供の屁理屈以下のことを言い出したそうです。あらゆることに言い訳し、自分の逃げ道をつくる生き方というのは、本人は必死でも、はたからは単に卑しいな、未練だな、みっともないな、と見えるだけだということが、どうして民主党の人たちには理解できないのか。

ちなみに、厳しいやりとりが交わされている間、同席していた輿石氏は一言もなく、妙に熱心にメモをとっていたと言います。党首会談だから幹事長が口をはさまないのは当然だとして、今後、野田氏に何と釈明させるかの材料探しでもしていたのでしょうか。輿石氏がオフレコの際に記者に示す下品で幼稚でバカにしきった言動を本当は暴露したいところですが、オフの約束を私が勝手に破るわけにはいかないのでそれはできません。残念です。

まあ、とはいえ、野党側は野田氏が今回、こういう対応をしてくるだろうことは予想していました。最後は、野田氏がしどろもどろでなにやらまだ言い訳をしている場面で腰を上げて立ち上がり、席をたったということです。輿石戦略は、特例公債法案などに対する野党の非協力を強調し、国民を「騙して」非難の矛先を野党に向けようというものですが、さすがに政治にあまり関心のない有権者も、もう民主党のあからさまな意図に気づくだろうと思います。

 ここまでくると、民主党の存在自体が「税金泥棒」に見えてきます。暴力団と親しいどころか「準構成員じゃないか」(野党幹部)といわれる田中慶秋法相は、この期に及んでまだ辞めたくないとだだをこねているとも聞きますが、これも国民の厳しい視線などどうでもいいという感覚の表れですね。そういう人を、閣僚、なかんずく法の番人であるべき法相、そして拉致問題担当相に起用する野田氏の正気を疑います。

 結局、民主党の三代の首相はそれぞれ違うように見えて、根っ子は同じ卑怯でご都合主義の自己愛野郎だったということですね。よく分かりました。野田さん、あなたに「五省」を使って訓示する資格などありません。身の程を知ってください。