……ここのところ、情報と報道のあり方について、そのときどきに思ったことを書いてみました。いろいろと考えさせられ、参考になるご意見も多々ありますが、同時にどうあがいたってそれを言われたらどうしようもないだろうと率直に感じるものがありました。

 

よく言われることが、情報の切り貼りや勝手な意見を加えるのをやめて、そのまま流せというものです。この主張自体には一理も二理もあるとは思いますが、それは紙面スペースや放映時間の限られた新聞やテレビなどの媒体では不可能に近いと思います。

 

そもそも、新聞もテレビも、初めから情報の要約と切り貼りをしないでは成り立たない、それを前提としたメディアです。インターネットの登場で、情報はより幅広く伝えられるようにはなりましたが、それでも自ずと限界はあります。

 

例えぱ、今国会で焦点の一つとなっている国会同意人事について、民主党の輿石東参院議員会長は7日の記者会見で以下のやりとりを紹介します。その内容自体は、相変わらず国会の鵺が好き勝手なことをわが田に水を引くやり方で述べているものですが、それはともかく文字にした場合の長さに注目してください。これでも一部、省略しています。

 

輿石氏:最初に、私の方で一言触れましょうかね。たぶん質問が出るでしょう。明日の同意人事の案、あれは受けるのか受けないのか。これは結論から言えば受けません。ま、多くを語る必要はないでしょう。(以下、略)

 

記者:同意人事、確認だが、公取委員長の人事のことか

 

輿石氏:そうだね。しかも、これは読売のトップ記事ですから。べた記事とは違う、ということでしょう。それは西岡ルールから、国会同意人事というのは長い時間をかけて国会でも問題になった点ですから。それを踏まえれば、明日、はい、受けて前へ進みましょうという話にはならないでしょう。

 

記者:じゃあ、同じ内容でもべた記事だったら受けるんですか

 

輿石氏:いや、いや、そんなべた記事とかトップ記事とかそういうまあ、表現よりも、なぜ事前にこういうことが漏れるのか。常々私言っているのは情報管理をきちっとしよう。そのことによってやらなければならない国会の使命が果たしていけない、ということを繰り返していたのではどうにもならない、いうことですから。きちっとそこはなぜこういう報道になったのか、それに対して政府はどういう対応するのかということも含めて少ししばらくこちらでも見させていただくと。

 

記者:もし違う人を政府が出してきたら受けるのか

 

輿石氏:違う人とか、杉本さんという人物に対していいとか悪いとかを言っているんじゃない。あまり勘違いしないで。その人物事前の問題でしょう。報道のあり方も含めて。

 

記者:明日の同意人事提示そのものを受けない?

 

輿石氏:提示されても、民主党とすれば議論には入れないでしょうと。これは今、そのことを私どもが真剣に西岡ルールがある中で、これは今はお互いに与野党含めて現行のルールは、ルールとして生きているという認識をしている。そのさなかにこういうことが出れば、新しいルールをつくろうということで一生懸命みんな知恵を出しているわけでしょ。今、衆参の議運という場所で。そのさなかにこういうことが起きたら、これは結構ですと、こういう話にはならないでしょう。にもかかわらず、こういう報道をする、報道姿勢や、あるいはそれにどう対応していくか、政府、各党とも。そういうことが問われている。

 

記者:しばらく見ていきましょうと言ったが、政府の対応如何によってはその後状況が変わることもあるのか

 

輿石氏:いやいや。その、だからこういうことになぜなったのか、報道した方だってかなり自信がなければトップ記事にしないじゃないですか。漏れ聞いたとか。これらしい、なんていうのはトップ記事にするかな。そういうのもあるけどね、たまには。スキャンダルみたいなものは、たいした確証がなくてもボーンと出てくるということもあるけれども、これはそれとは異質のものでしょう。なぜ国会同意人事という仕組みがあるのかというその仕組みの重さからいっても、ことの、ものの重さからいってもそういう問題だと。まあ、分からなくてもいい。皆さんには。民主党としての対応はそうします。

 

記者:与党からは、この人事は民主党政権のときにすでに内定していたという指摘があるが

 

輿石氏:それはあなたから今聞いたんで、正式に党として聞いてない。そんな説明は受けてない。だったらそういう説明からしなきゃいけない。そういう報道の前にそういう説明が必要でしょう。まあ、あんたたちとやりとりしても仕方がない話だが。

 

記者:公取人事以外も明日提示されると思うが、公取の委員長人事が受けられないのか。明日の提示一切?

 

輿石氏:党とすれば明日の提示は一切受けない。だってまだどういうものが出てくるかも分からないうちにこれが出てきた。

 

記者:一切受けないという方針については与党側に

 

輿石氏:これは議運、国対レベルでこういう×があれば、もう行ったりきたりしてるじゃないですか。私はそういう細かいところへ口を挟む必要はない。党の方針だけ決めておけばいいでしょう。

 

記者:日銀総裁人事についても受けないのか

 

輿石氏:明日日銀総裁人事が出てくるのか

 

記者:明日出てくるのか分からないが

 

輿石氏:だから、それも分からないだから。それは明日日銀総裁人事が一緒に入っていかどうかも分からないんじゃないですか。入っていても入っていなくても、明日はだめですよと、こういう話です。中身の問題とかそういうもんじゃなくて。そのことが問題になったわけでしょ。事前に漏れたら、それは審議をしませんよというのが、簡単に言うと西岡ルールじゃなかったですか。

 

記者:明日の提示は受けないが、今後、政府の説明を踏まえて改めて考えると?

 

輿石氏:そういうことでしょう。その先のことはあまりいわんほうがいい。私はそういうのを好まない。

 

記者:西岡ルールは、原則であって、漏れ方などの問題も調査して判断するということだったと思うが、今回はどういうところが問題だったか?

 

輿石氏:どういうところが問題かをこれから明らかにするんですよ。読売さんがトップで書けた経過も含めて、ね。それは原則としてちゅうことだから。

 

記者:今回はそれ当てはまる案件だと

 

輿石氏:そんなの聞くだけ野暮じゃないですか。これは該当するのかしないのか。書いてて、トップ記事で書いておいてこれは原則に当てはまりませんか、こっちが聞きたい。

 

記者:事前報道をされたら受け付けない事前報道ルールだが、ある意味報道の自由を制限する懸念もある。その点についてどう考えるか

 

輿石氏:それは報道の自由は報道の自由で、尊重されなければいけないでしょう。

 

記者:提示を受けないとすると報道の自由が制限される面もあると思うが

 

輿石氏:いや、そんなことは、報道の自由がそのことだけでもって制限されるされないということは私に問う話でなくて、みんなで考えるべきです。

 

記者:会長は制限されないとの考えか。

 

輿石氏:まあ、それはどう解釈されてもいいでしょう。うちは今回のこの出来事を踏まえて今までの経過も踏まえて、明日の審査のあれには出ません、という党の方針です、こういうことを伝えた。それ以上でも以下でもない。

 

記者:今回の記事の出方を検証した上で、改めて人事案を受けることはあり得るか

 

輿石氏:そういうことを全部精査をして今真剣にやっているんでしょ。お互いに同意人事のあり方、今は議運マターになっていて、現行は今までのルールが生きているんだという前提でここまで来ているということです。

 

記者:ルール作りを初めている最中にこういう報道が出る政府の管理のあり方が問題だということか

 

輿石氏:そういう問題もあるでしょう。これはみんな各党でよく考えればいい。

 

記者:同意人事をめぐっては衆院の佐田委員長が新しいルールの案を出したことがあったが、自民党からは民主党の参院がルールに反対しているからなかなかルール作りが進まないという意見があるが。

 

輿石氏:反対しているからって、あんたどこから聞いてきたかしらんけど。それはうちの方には伝わってこない。

 

記者:明日一切受けないというのは、海江田代表も了承しているのか

 

輿石氏:ああ、海江田代表に聞いてみてくれ。

 

記者:同意人事は、日銀などに関わらず、すべて野党側との事前協議事前説明が必要だという認識か

 

輿石氏:スムーズにいくのにはどうしたらいいかを提示する側が考えていけばいいんです。

 

 ……これを新聞紙上にそのまま載せると、ざっと1ページの3分の1ぐらいはこれだけで占めてしまいます。さらに、この何を言いたいのか言いたくないのか、何を考えているのか何も考えていないかも分からない輿石氏の言葉をただ載せただけで、どれだけの人の理解に役立つのか、そもそもこれはそんなに時間をかけてまで読者が必要とする情報なのか、という問題もあります。

 

 はっきり言えば、こんなの、輿石氏の発言の一部を切り貼りし、「◯◯だ」と主張したと書く以外に、どうしようがあるでしょうか。

 

 もちろん、切り貼りにも巧拙があり、よく指摘されるような社論による偏向や、場合によっては「悪意」がにじむこともあるのだと思います。そこを否定しようなんてさらさら思っていません。その点はいくらでも指摘された方がいいと思うし、私にもたくさん反省材料はあります。

 

 ただ、ちょっと技術的な話になりますが、われわれ新聞の記者は、新人時代、いかにある事象、出来事、事件を「圧縮」するかをたたき込まれます。「十の話を聞いたら、そのうち紙面にできる部分は1か2だ」という話は、多くの新人記者たちが先輩や上司から聞かされたことだと思います。当時は理想として、紙面や記事は情報を圧縮、凝縮した「エッセンス」であるべきだと言われました。

 

 もちろんそれから時代はうつろい、ネットの普及に伴い、以前は載せられなかった記者会見の全文などを重要度に応じてネット上に掲載するようにはなりました。でも、紙面スペースは変わりません。むしろ、字を大きくしてきたため1行の字数が減り、記事の文字数は減っているぐらいです。

 

 「そのまま載せろ」というご指摘は、実はけっこう難しい話なのです。