前回から2カ月以上がたってしまいましたので、今回は読書エントリとします。この間、あれこれと雑事に追われ、読書はあまりはかどりませんでした。それでも、そのときどきに楽しんだ本を紹介したいと思います。

 

 まずは小路幸也氏の「スタンダップタ゜ブル!」(角川春樹事務所、☆☆★)から。北海道に転勤となった全国紙女性スポーツ記者が、ある弱小高校野球部のに引きつけられて知った「秘密」とは……という、どこか野球漫画のような設定はいいのですが、終わり方が、あれ、ここでこういうまとめでいいの?とちょっと拍子抜け感がありました。うーん。

 

     

 

 今度ドラマ化されるという有川浩氏の「空飛ぶ広報室」(幻冬舎、☆☆☆★)は、航空自衛隊の「広報」を舞台にした有川ワールドを満喫できる作品です。これまた、主人公はテレビ局の左遷記者という設定で、彼女が自分の自衛隊への根拠なき偏見に気づき、少しずつ成長していく姿もいいですね。

 

     

 

 有川氏はあとがきで東日本大震災について触れ、こう書いています。素晴らしい言葉だと感じました。

 

 「自衛隊をモデルに今までいろんな物語を書いてきましたが、今回ほど平時と有事の彼らの落差を思い知らされたことはありません。

 ごく普通の楽しい人たちです。私たちと何ら変わりありません。しかし、有事に対する覚悟があるという一点だけが違います。

 その覚悟に私たちの日常が支えられていることを、ずっと覚えていたいと思います。」

 

 この本の中でも、自衛隊の方々がごく自然に示す、いざという時の覚悟のありようがいくつかの場面で描かれています。このような本がベストセラーとなり、多くの人に感動とともに受け入れられている時代になったのだとしみじみ思います。

 

 萩原規子氏の「レッドデータガール」シリーズもこの第6作「星降る夜に願うこと」(角川書店、☆☆☆)で完結でした。もっと続いてほしかったなと帯を見たところ、アニメ化だとか。私がこの読書エントリで紹介された本はこれまでけっこうドラマ化や映画化されており、自分がいかにミーハー的な、ごく一般的な大衆そのものの感性、好みの持ち主であるかがよく自覚できました。

 

     

 

 山本幸久氏の「展覧会いまだ準備中」(中央公論新社、☆☆☆)は、応援団出身の地味な美術館学芸員が主人公という設定にひかれて手にとりました。派手な出来事や冒険活劇は一切、出てきませんが、登場人物の1人ひとりが魅力的というか面白く、とても楽しめました。

 

     

 

 また、作中で、山本氏の他の作品に出てくる会社が重要な役割を果たすなど、しゃれた仕掛けも施されていました。主人公がちょっぴりうらやましくなりました。

 

 佐々木譲氏の北海道警シリーズもこの「人質」(角川春樹事務所、☆☆☆★)で第6弾だそうです。これはもう素直に面白い、というほかありませんが、それにしても佐々木氏のこのシリーズに出てくる政治家ってクズばっかりだなと感じました。

 

     

 

 お気に入りの佐藤雅美氏の物書同心居眠り紋蔵シリーズはこの「へこたれない人」(講談社、☆☆☆★)でもう何作目となったのかも分かりませんが、飽きはきません。毎度のことながら、佐藤氏の「人間観」の相場はとても納得がいきます。

 

     

 

 岩井三四二氏の「むつかしきこと承り候 公事指南控帳」(集英社、☆☆☆)は、主人公は元公事宿の手代で現在は薬屋という設定の連作短編集です。これもシリーズ化するのかな。

 

     

 

 山本一力氏の「夢曳き船」(徳間文庫、☆☆★)を読むと、毎度毎度、人間の「器量」という言葉が繰り返されます。器量の小さな、狭量を絵に描いた、戯画化したような小人物である自分とつい比べ、ひがみたくなります。

 

     

 

 まあ、そんな気分となったので、江戸時代を舞台にしたサラリーマン小説の名手、上田秀人氏の奥右筆秘帳シリーズ第11弾「天下」を読み、いいじゃないか会社員だもの、とわが身を慰めました。

 

     

 

 で、ここまで時代小説を読んだところで、やはり原点に戻りたくなり、藤沢周平氏の「よろずや平四郎活人剣」(上・下)をもう7~8回目でしょうか、読み返しました。やっぱり藤沢作品は素晴らしい。圧倒的に面白いし、表現力は豊かで繊細で文章は美しい。別格ですね。

 

 そこで少し気持を落ち着けて現代小説へと戻り、三浦しをん氏の24歳のときのデビュー作だという「格闘する者に◯」(新潮出版、☆☆★)を手にとりました。女子大生の就職活動や家族、友人らとの日々を描いたものでした。

 

     

 

 仮名にはなっているものの、露骨にどこかが分かる出版社の面接でのまちまな対応なども描写されており、本当にそういう社風があるのだろうかと興味深いです。

 

 堂場瞬一氏の警視庁追跡調査係の第4弾「標的の男」(角川春樹事務所、☆☆☆)は、凸凹コンビの肉体派、沖田のけがで、本来は書斎派の西川が走り回るはめになります。

 

     

 

 同じく堂場氏の警視庁失踪課シリーズ第8弾「牽制」は、何といっても最後のシーンが……。早く続きが読みたい。にしても、堂場氏はかなり多作ですが、執筆時間はどうやって確保しているのだろうなどと、どうでもいいことが気になります。

 

     

 

 ……花粉が飛び交う季節となりました。今年は例年より多いとされ、今まで発症していなかった人も危ないといいます。お気をつけください。それにしても、年に2カ月もマスクをして暮らさなければならないというのは、実に鬱陶しいですねえ。