産経新聞は5日付の紙面で「『中国刺激するな』 野田政権の尖閣での消極姿勢また判明」(http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130305/plc13030508500009-n1.htm)という記事を掲載しています。で、きょう午前の衆院予算委員会で、自民党の萩生田光一氏が、この記事について安倍晋三首相に事実関係を聞いたところ、安倍氏は詳細は語らなかったものの「(前政権は)警備、警戒の手法に極度の縛りを掛けていた」と答弁しました。

 産経の記事は、こうした対中弱腰対応の中心は当時の岡田克也副総理だと指摘しています。それで、午後の予算委で質問に立った岡田氏は冒頭、この問題について取り上げたわけですが、見事に墓穴を掘ったというか、極大ブーメランを額に受け止めた形でした。

 岡田氏はときおり、声を震わせて青ざめて見えしたが、以下がその関連やりとりです。

 

岡田氏:今日午前中の質疑について一言申し上げたい。一昨日の産経新聞の記事をとりあげて、私の発言について質問された方がいた。この記事については事実に反するということで私は産経新聞社にすでに抗議文を出しております。何らかのプラスアルファの根拠があったのであればともかく、そういったことがないのであれば、こういった場で取り上げることは私は適切ではないというふうに考えております。そのことをまず申し上げておきたい。その上で、例えばこの記事の中にありました、民主党政権下で海上自衛隊の艦船と中国軍艦との間に15海里、28キロの距離をおくことを決めていた。そういう事実は民主党政権下であったというふうにご認識ですか。総理は。

 

安倍首相:今の岡田委員のご質問は、こちらの体制の詳細に関わることでありますから、前政権のこととはいえ、今ここでつまびらかにすることは控えさせていただきたい。しかし、安倍政権ができたときに、それまでの対応を全体的に見直した結果、中国に対して過度な配慮をした結果、十分な対応をできてないと私が判断したことは事実だ。

 

岡田氏:私の承知しているかぎり、民主党政権下で15海里距離を空けるべきだというようなことはなかったと承知をしている。もしあるというならば、そのことを堂々と言って頂きたい。そして、そのことは総理、きちんと確認したら分かるはずだ。事務方に。防衛省の事務方に確認して下さい。そういうことはなかったわけであります。何かありますか。

 

安倍首相:私は、総理になってまさに事務方から体制について聞いた結果、今個々のことについてはあえて申しあげませんよ。それはね。これは、いわばこちらの手の内をあかすことになりますから、過去のこととはいえ申し上げませんが、私は事務方から態勢について聞いた。防衛省と海上保安庁から聞いた。で、この態勢は、明らかに過度な配慮をした結果であろうと思って全面的に見直しをした。

 

岡田氏:まあ、私は具体的なことを聞いたわけだ。それは確認されればすぐ、総理、総理であれば知ることができるはずだ。そして、今日、総理も答弁の中で、「過度に軋轢を恐れるあまり」という表現がありました。政権がかわっていろんなことの取り扱いが変わるということは理解できる。しかし、民主党政権下において、「過度に軋轢を恐れるあまり」というのは何を根拠にそういうふうに言っているのか。

 

安倍首相:これは、実際、私は確信しているからこの場で述べている。しかし、それは今あえて、個々のことについては、手の内に関わることだから申し上げない。ただこれは、別に民主党を非難するためだけに申し上げているわけではない。幾つかの対応。これは海上における対応もそうだし、領空あるいは防空識別圏における対応もそうだが、これも含めて全面的に対応を見直し、そしてしかるべき対応にかえたわけだ。

 

岡田氏:個々のことについては言えないと言いながら、前政権のことをこういった表現をつかって批判するのは私はフェアではないと思う。総理大臣としてはもう少し公平に物事を言われたらどうか。もちろん中国の軍と、日本の自衛隊が必要以上に対峙することになれば、それは色んなことが起こりうるということは考えて、我々、一つ一つの判断をしてきたことは事実だ。しかし、そのことは私は、おそらく安倍政権だって同じだと思う。具体的な対応について色々違うところはあるかもしれないが、そのことを民主党政権が「過度に軋轢を恐れるあまり」とか、そういう感情的な表現は私は使うべきではないと思うがどうか。

 

安倍首相これは感情的ではなくて、申し訳ないが、これは事実を、ファクトを述べているわけだ。で、個別について、これ申し上げることはできますよ。しかし、それは中国に対して、かつての政権がやっていたこととはいえ、これは手の内を明かすことになるから、あえて申し上げていないわけで、何も私はここで、そんなものを引き出してきて、みなさんを非難する必要なんでないわけだから、質問に答えて、むしろ私はファクトについて申し上げたわけだ。

 

岡田氏:総理。「過度に軋轢を恐れるあまり」というのはファクトじゃないですよ。それは。だから私は申し上げている。だいたい総理のパターンは一つある。民主党のことを根拠なく批判をして、そして、私はそれを変えましたと言って誇る。そういったことを時々やられる。しかし、それは内閣総理大臣としてとるべきではないと思う。私は言わないでおこうかと思ったが、じゃあ、一つ日米首脳会談について申し上げたいと思います。安倍総理は、日米首脳会談後の記者会見で、この3年間で著しく損なわれた日米のきずなと信頼を取り戻し、緊密な日米同盟が完全に復活したと宣言されました。何を根拠にそういうふうに言われたのか。

 

安倍首相:それは、民主党政権の3年において、普天間の移設問題について、最低でも県外とこういったわけですね。そして、結局、その間において大統領に対して、まあトラストミーといったわけだ。結局それは、実行できなかったじゃありませんか。これはかなり私は致命的なことだったと思う。失われた信頼というのを回復するのはそう簡単なことではないんだろうと思う。

 

岡田氏:もちろん普天間の問題は私も責任を感じている。しかし、にも関わらず日米間、それぞれの首脳間で、あるいは外務大臣をはじめ閣僚間で、あるいは事務方でさまざまな問題について取り組んで、そして信頼関係をはぐくんできたということも事実じゃないですか。そのことをあなたが一方的に否定すると言うことは理解できない。例えば、クリントン長官が退任にあたって、日米両国間は、北朝鮮、ASEANといった地域間問題やアフガン、イランといった国際的な課題に取り組んできた。日米同盟を継続して強化してきた。日本国民および日本国の指導者のみなさんに対して、日米同盟の協力と献身を感謝したい、お礼を申しあげたいと。こういうふうに最後の会見で言われました。岸田大臣おられたから、事実だということはご理解いただけると思う。例えば、こういう発言と総理の発言の間であまりにも乖離があるわけだ。いかがか。

 

安倍首相:まあ、それは、米国の国務長官が辞任会見において、「日米関係は大変なことになった」と。そんな発言をしたら、これはまあ、大変なことになると言うのは誰が考えても分かることだから、それは当然外交の責任者としては、責任ある立場で発言をされるんだろうと。このように思う。

 

岡田氏:クリントン長官の発言が責任ある発言だということであれば、最初に紹介した安倍総理の発言は無責任そのものではないか。日米同盟をお互い努力をしてさまざまなレベルで、これは育てていかなければいけない。例えば、キャンベル国務次官補が朝日新聞の記者会見でこういっている。「日米関係の維持深化は党派をこえ、政権交代をこえた共通の取り組みでなければならない」。私はその通りだと思う。で、あなたの言い方は、前の政権はでたらめやっていた。俺が全部ちゃんとやっている。そういうふうに聞こえかねない。それはまさしく、日本だけではなくて、米国との同盟関係に携わってきた、そういう人間に対しても、人々に対しても、これは侮辱だと受け止めても仕方ない。総理大臣であれば、もう少し国益を考えて、日米同盟をいかに育てていくか、そういう観点でお話をするべきだと思うがいかがか。

 

安倍首相:日米間においては、むしろ事務方、それを担ってきた国務省、外務省がある。例えば、米国の国防省と日本の防衛省。あるいは、米国の三軍と日本の自衛隊。ここにおいて私は必死にがんばってきたんだと思う。政治がなかなかちゃんとやってこなかったからなんですね。それによって守られていたのは事実だ。そして、同時に国民の中に、日米同盟の絆はやっぱり大切だな。という思いが強くあった。これはやっぱり、日米同盟を下支えしていたんだと思う。しかし、民主党政権において、岡田さんが胸を張っていえるような状況であったのか。私はそうではなかったからこそ、選挙の結果において、こういう政党には残念ながら政権を任せるわけにはいかないという結果になったんだろうと思う。

 

 ……岡田氏は産経に抗議したと強調していますが、弊紙としては「またいつもの手口だな」と思うばかりです。とりあえず、都合の悪い記事が載ると新聞社側に形式的な抗議をして、支持者や関係者に事実はそうではないと言い訳がしたいのだろうと。政治家がよく使うパターンです。