2006年05月

 

  小泉首相が6月18日までの今国会の会期延長を否定しているため、約60年ぶりの実現が期待された教育基本法は、やはり先延ばしになったようです。新聞は、成立しそうにない法案の審議には冷たいので紙面ではまともに紹介できませんでしたが、5月30日の衆院教育基本法特別委員会で行われた参考人質疑はなかなか興味深いものでした。

 

  なかでも、鳥居泰彦・中央教育審議会会長(慶応義塾前塾長)が教育基本法に関する〝本音〟を明らかにしてくれたことが収穫でした。鳥居氏は、同法が連合国軍総司令部の強い影響下で占領政策の一環として制定された事実や、中国の愛国教育の実態の一部に言及しています。

 

   日本社会では戦後、ある時期からGHQの諸施策とその影響について国会で論じることはほとんど「タブー」となっていたようだし、社会的地位のある人物が中国の異様さを一部でも指摘することは珍しかったので、とても新鮮でした。

 

  教育については一般論を語るだけで、教育の現状やその背景、諸外国の実情をほとんど知ろうともしない小泉首相にこそ聞かせたい内容でしたが、この日の特別委は首相出席ではなかったので残念です。

 

  鳥居氏は、現行の教育基本法制定の経緯について「占領軍のお墨付きをもらいながら、原案を書いていったことが次第に明らかになってきた。占領軍の影響下にあったことは否めない事実だと思う。だから現行法はできるだけ早く見直した方がいい。(中略)そういう状況下でこの法律がつくられ、公布されたことを改めて国民みんなが思い起こす必要がある」とはっきり語りました。

 教育基本法が憲法と同じく米国製であることは明確なのですが、これまで文部科学省をはじめ、政府はそこをごまかしてきました。

 

  鳥居氏はまた、「愛国心」教育への懸念を表明する社民党議員に対し、「一番極端な例は、私の知る限り中国の教育法だ。教育法では第6条に『国家は、教育を受けるものに対し、愛国主義、集団主義、社会主義の教育を実施し、理想、道徳、規律、法律、国防及び民族団結の教育を実施しなければならない』と規定している。(今回の政府の改正案が)思想、イデオロギーの強制につながるということはできないと思う」と指摘しました。

 

  自分たちが崇拝する中国や北朝鮮の空恐ろしい現状には目をつぶり、日本だけを危険視し、糾弾する人々に対し、痛烈な皮肉を浴びせたといったところでしょうか。

 

  このほか、特別委ではジャーナリストの桜井よしこさんが、戦後、さきの大戦と無理に結び付けられて軍国主義の手引文扱いされてきた教育勅語について、熟読してみたら何も問題がなかったという趣旨の話をしていました。教育勅語に関しては、麻生太郎外相も最近、「当たり前のことが書いてある」と述べており、「変な言論タブーが少しずつ溶け消えてきたな」と少し喜んでいます。

 


  小泉首相が靖国神社への参拝を続けていることで、テレビのコメンテーターの中には、首相がまるで右翼であるかのように決め付ける人がいます。実際、中国や韓国のメディアでは、首相は戦前回帰を目指す右翼政治家の代表として扱われることも多いようです。 


 しかし、まがりなりにも首相の5年あまりの言動をウオッチしてきた立場からいうと、首相は絶対に右翼ではないし、保守系にすら分類できません。むしろ、保守思想や伝統、文化には全く関心を示さないタイプです。

 

 本気になって取り組んだ政策も郵政や道路などと金銭的な問題ばかりで、外交・安保や教育は基本的に人任せのことが多かったと思います。ハト派・リベラルとして知られる加藤紘一氏や河野洋平氏らとほぼ同世代であり、典型的な「戦後民主主義」世代の人なんだろうな、と感じています。 

 

 昨年夏の郵政政局以前の話ですが、ある政府高官は次のような趣旨のことを言いました。 

 

 「リベラルな小泉さんを靖国で攻撃する中韓は勘違いしている。小泉さんは右翼ではないが、ポスト小泉候補は小泉さんより強硬派ばかりだ」 

 

 この発言当時は、保守政治家を自任する平沼赳夫氏も有力なポスト小泉の一員でしたから、現在と状況は必ずしも同じではありませんが、今でも安倍官房長官や麻生太郎外相は小泉首相よりはるかに保守的信念を持っているのは間違いありません。

 

 中韓は、靖国を外交カードなどに使わず、首相と仲良くすることで次の首相の政策を牽制し、縛ることだってできたのです。靖国問題に固執し、外交問題化したのは、これは明らかに日本社会の空気の変化を読み誤った中韓の失敗でしょう。 

 

 最近、60代の複数の自民党政治家が、党内の若手政治家の保守化を懸念する発言をしています。また、複数の高級官僚からは、日本社会の保守化と歴史教育の不十分さを関連づける言葉を聞きました。

 しかし、ものには限度というものがあり、人間の忍耐力なんてたかが知れているのも常識です。過ぎたるは及ばざるが如し、ということに気づかないのでしょうか。 

 

 私自身もそうですが、日教組の「平和教育」とやらもあいまって、物心ついてからずっと中韓に頭を押さえつけられてきたことへの鬱屈がたまっている人は多いようです。そして、自分で勉強し、今までの「日本だけが悪かった」史観のおかしさに気づいた人は、今はインターネットという意見発表の場を得ています。

 

  中韓は歴史カードが永遠に通用すると思い込み、あることないこといい続けてきましたが、贖罪意識から日本人が「ご無理ごもっとも」と無条件にひれ伏す時代は終わりつつあるのだろうと実感しています。 



 

 

  はじめまして。阿比留といいます。自分のことを棚に上げた、我が田に水を引くようなことしか書けませんが、よろしくお願いします。

 

 さて、518日調査のフジテレビ報道2001による世論調査では、次の自民党総裁にふさわしい人物として、1位の安倍晋三氏の36.2パーセントに対し、2位の福田康夫氏が29.2パーセントと、大きく差を縮めていました。


  調査は首都圏の500を対象にした限られたものですが、興味深い数字です。以前は福田氏にダブルスコアかトリプルスコアの差をつけていた安倍氏の支持者が特に減っているわけではないのに、福田氏の人気が高まり、急追しているようにみえるのはなぜでしょうか。

 
 私の感想は、「ああ、またか」というものです。かつて、ろくな政策のないコメディアンの青島幸男氏を東京都知事に押し上げ
(大阪府知事も似たようなものでした)奇矯な言動以外にみるべきものがない田中真紀子氏を外務省改革の旗手として持ち上げたメディアの無責任システムの発動がありました。


  今また、メディアは「安倍氏独走では面白いストーリーにならない」からと外交、安保、社会保障、経済政策に教育…と、何一つ発信していない福田氏の期待値を勝手に高め、あおっているように思えます。もちろん、メディアの一端に身を置く者として、自戒と無力感を込めて言っているのですが。

 

  ポスト小泉への意欲を表明せず、思わせぶりな外遊を繰り返すだけの福田氏を持ち上げるのには、もちろん、アンチ安倍派の思惑もあるでしょう。なんとか対中、対韓関係をよくしてほしいという人々もいることと思います。


  しかし、安倍氏に首相になってもらっては困る新聞やテレビもあるのも事実です。もっと始末に悪いのは、とにかく面白ければいいや、注目されているんだから仕方ないで特定政治家をクローズアップしたがるメディアの手法だろうと思います。昨年の郵政解散、総選挙でも似たようなことが起きました。 

 連休後、国会を休んで訪米した福田氏は、米副大統領や国務長官ら要人と会談を重ねながら、記者団には「よもやま話」としか語らず、国民に向けて何の説明も発信も行いませんでした。

  

  これについては、自民党の久間章生総務会長が記者団に(訪米での会談は)たいしたことなかったんだろう。世間話でしょう。福田さんはあんまり具体的な、経済政策にしても外交政策にしても、具体的なことをあんまり今までも言われたことがないよねと感想を述べていますが、こうした冷静な意見はなかなか新聞には載りませんし、ましてやテレビは報じません。


  今後、福田氏が本当に自民党総裁選に出馬表明したら、その言動を注意深く見守ってほしいと思います 

 
 お前も記者なんだから現状をもう少し何とかしろ
!とお叱りを受けそうですが、日々、なんとかしたいとあがいていることだけは申し添えておきます 



  



↑このページのトップヘ