2006年07月

 きょう、本屋で週刊朝日を立ち読みしていたら、自民党の山崎拓氏がインタビューに答えていました。私は朝日系の新聞、雑誌は絶対に買わないことにしてます(一銭でももうけさせたくない)。ですから、一言一句正確には再現できませんが、この中で山崎氏は現在の心境を福岡県出身の広田弘毅元首相の句を使ってこう表現していました。

 

 「風ぐるま 風が吹くまで 昼寝かな」

 

 周囲から総裁候補としての待望論が沸き起こり、大きな波が到来するのを待って決起するとでもいいたいのでしょう。まあ、それはいい。是非出てもらいたいものです。

 

 ですが、許せないのは、同じインタビューの中で山崎氏が靖国神社のA級戦犯合祀のことを痛烈に批判していることです。広田元首相は昭和23年12月23日、現天皇陛下の誕生日に、A級戦犯として絞首刑になっているというのに!。

 

 この無神経ぷりには、思わず週刊朝日をその場で破り捨てたくなるほど腹が立ちました。山崎氏は以前から、尊敬する人物の一人として郷土の先輩である広田元首相の名前を挙げてきましたが、矛盾は感じないのでしょうか。

 

 また、山崎氏はやはりインタビューの中で、北朝鮮のミサイル連射をきっかけに政府内で敵基地攻撃能力保有論が浮上したことを批判し、「政権要路は教養がない」とグフフと笑ったそうです。

 

 安倍晋三官房長官や額賀福志郎防衛庁長官をバカにしてみせたかたちですね。でも、メディアで防衛族のドンと持ち上げられた山崎氏について、自民党の安全保障に詳しいある議員は「山拓は防衛をまったく何も分かっていない。想像を絶する○○だ」と呆れていました。伏字は武士の情けです。教養がないなどと、どの口がそんなことを言うのか…

 

 山崎氏が以前、週刊誌に女性問題を書かれた際、記事の中に、山崎氏がその場にあった産経新聞を丸めて女性をたたいたという描写がありました。でも、山崎氏は産経を購読しておらず、まったくいい迷惑でした。

 

 私はわずか1か月間ですがこの人の担当をしていました。朝、議員宿舎で待っていると、よく「産経新聞をよこせ」と召し上げられたものです。車の中で読んでいたようですが、内心「新聞ぐらい取れよ」と思っていました。

 

 今回の昭和天皇のご発言だとされる「富田メモ」騒ぎ以来、虎の威を借る狐たちが盛んにA級戦犯批判を繰り返していますが、これには強烈な違和感を覚えます。

 

 インターネットでは、メモの語り手が違うのではないかなどと真偽を疑う意見が多いようですが、私も別の意味で割り切れない思いがするのです。

 

 絞首刑の執行に立ち会った花山信勝博士の著書「平和の発見」によると、絞首刑となった7人の処刑は2組に分けて行われましたが、両組とも「天皇陛下万歳」を三唱してから刑場に消えたのです。2組目の板垣征四郎氏、木村兵太郎氏、広田氏の3人の場合は、広田氏のすすめで板垣氏が発声し、まるで割れんばかりの大声で「天皇陛下万歳」を三唱したとあります。

 

 昭和天皇が、自らを最後までかばって露と消えた忠臣たちが靖国に合祀されたことを、それほど不快に思うものでしょうか。もちろん、メモに記された人物は2人だけですから、特定人物の合祀を不快に感じたということならありうるでしょうが。

 

 私は広田元首相がつくった学生寮の出身でもあり、山崎氏だけには広田さんや昭和天皇を利用してほしくないのです。心の底からお願いしたいぐらいです。

  今朝の朝日新聞は次期首相の靖国参拝に反対する人が60パーセントに増えたと喜んでいます。社説でもこの結果を取り上げるはしゃぎぶりには眉をひそめるしかありませんが、靖国をめぐる朝日の記事で、面白いものを見つけました。

 

 まだ日本が占領下にあった昭和26年10月7日付朝刊の記事で、見出しは

 「靖国に祈る米国青年」  「身代わり立てて参拝」  「帰国後も真心ささぐ五年」

 と三本もあり、写真も2枚ついた大きな扱いです。内容は、東京裁判の国際検事団付として日本にいた米国の青年、リード氏が、帰国してニュージャージー州の警察官となって後も、たえず日本の友人に身代わり参拝をしてもらい、靖国に奉納金も送っているというものです。

 

 さて、朝日さんはこのエピソードを否定的に書いているでしょうか?いえいえ、そんなことは全くありません。それどころか、リード氏が靖国神社に寄せた手紙を、次のように感動的に紹介しています。

 

 「靖国神社にねむる〝みたま〟たちの大きな犠牲が忘れられるなら、それは日本の悲劇だ。なんとなれば、独立してゆく日本の将来は、悲しみと栄光を持つ過去の上に打ち樹てざるを得ないからだ。日本の皆さん、どうか〝みたま〟へ祈りを-」

 

  なんか今の朝日さんとはトーンが違いますね。現在はA級戦犯が合祀されているから別だとでもいうのでしょうかね。戦後まもなく戦争の傷跡も生々しかったころは靖国に理解を示し、戦後60年以上たってあれこれいじくる。解せません。 

 

 ちなみに、昭和27年の日本独立後、初めて行われる天皇、皇后両陛下による靖国参拝を報じる読売新聞の記事(10月16日付朝刊)は、たった8行の小さなものでした。

 

 「靖国神社秋の例大祭は十七日から二十一日まで五日間にわたり行われるが、天皇、皇后、両陛下はきょう十六日朝九時から七年ぶりに参拝される、なお社頭で全国各地の遺族らやく五千名が両陛下をお出迎えする」

 

 これだけです。これだけの当然の話を拡大し、膨らませ、無理やり変な意味づけをし、国際問題にまで育てたのはだれでしょうか。火のないところに薪をくべ、ガソリンをふりかけ、バーナーで火をつけたのは果たしてだれか。

 

 最も責任が重いのは、自分の記事を目立たせよう、おもしろおかしく書いて読んでもらおう、ついでにちょっと煽動してみようと考え、実行してきたメディアのような気がします。残念ながら。

 いつものように国会議員会館をうろうろしていて、たまたま台湾の歴史教科書のコピーが手に入ったのでつらつら字面を追ってみました(漢字の意味が分かるところだけ)。すると、やはり出ました「南京大虐殺30万人説」。比較的親日とされる台湾ですが、こういう教育が続けられれば将来のことは楽観できません。

 

 以下、いくつか紹介しようと思います。うまく変換できない文字は日本式に表記していますので、あしからず。

 

 仁林文化出版の「社会2上」(国民中学2年級上学期)には、「日軍攻陥南京、並進行大屠殺、受難者多達三十余万人」「日本曽誘騙台湾婦女充当軍中慰安婦」とあります。いかなる根拠からか、日本軍が台湾女性をだまして慰安婦にしていたとも書いていますね。

 

 三民書局の「歴史下」(高級中学)をみると、やはり「日軍進南京城、展開血腥屠殺、中国軍民三十万人以上、史称南京大屠殺」とあります。南一書局の「国民中学社会4」(二年級下学期)には「惨殺無辜民衆三十万人」とあり、例のありえない「百人斬り」を報じた毎日新聞記事の写真も載っています。

 

 康軒文教事業の「社会2下」の表現ぶりはというと「造成三十万多名無辜百姓遭害、史称『南京大屠殺』」。「南京大屠殺」の部分がこれみよがしに大文字で強調されています。いい加減、いやになってきたな…。

 

 日本においては、自虐的な学者・研究者ですら現在、南京事件の犠牲者が「30万人以上」だとは主張しません。あまりに荒唐無稽で、言ってもバカにされるだけであることが分かっているからでしょう。

 

 ですが、中国や台湾では、こんな無茶な数字が子供たちに教えられ、日本への嫌悪感をあおっているというわけです。日本が今後、これらの国と友好を深めていきたいのであれば、とりあえずこうした教科書記述は改めるように申し入れるべきだと感じました。

 

 これまでの教科書問題は、日本の教科書に対する中国や韓国の批判ばかりでしたが、対等な国対国の関係ならば、たまにはわれわれの方から相手国の教科書にも批判の目を向けないと。

 

 相手が「内政干渉だ」と反発してくれたらしめたものです。今後、彼らは二度と日本の教科書に文句が言えなくなりますから。

 あんまり見たいわけではないのですが、仕事柄、日曜日の午前中はニュース討論番組にチャンネルを合わせることが多いです。自分の担当政治家が出演しているとき以外は、そう真剣に耳を傾けているわけではありませんが、それにしても田原総一朗という人はどうしてああ、威張っているのでしょうか。


 この人は、政治家のパーティーなどでもよく顔を見ますし、首相官邸にも飯島首相秘書官に面談しにときどき来ますが、相手によって実によく態度が変わる。将来有望そうな人に対しては持ち上げ、別の人に対してはほとんどバカ呼ばわりまでしますね。


 ですから、例えば安倍晋三官房長官あたりに対しては丁重で、あまりきついことも言いません(安倍氏と主張が近い高市早苗衆院議員は番組中に暴言を吐いて泣かせましたが)。一方、津島派のある若手議員が出演したときには、「お前は黙っていろ」という感じの対応でした。

  

 でもまあ、安倍氏に対する本心は別のところにあるようです。参考までに、今年2月に、福岡県大牟田市で開かれた古賀誠・元自民党幹事長の在職25年記念会での田原氏の講演ぶりを紹介したいと思います(全文は長いので一部略しました)。


 「古賀さんは、お世辞でなくて、私が政界の中で一番信頼している。自民党は宏池会が一番主要にいた。これからますます古賀さんが、よほど腰を据えて自民党をうまく仕切らないと、へたすると自民党は危なくなってくる」

 =ふむふむなるほど。キングメーカーを目指すという古賀氏の手腕に期待すると。


 「小泉さんのやる仕事はほぼ終わった。予算は三月いっぱい。連休前に医療の問題も終わる。皇室典範の改正は小泉さんやるべきだった。しかし秋篠宮さまが、あれは狙ったのか、おめでたいことだ。改正は先延ばしになった。これで一番得したのが安倍さん。もし改正を小泉内閣でやるとなったら、官房長官は総理のやろうとすることを調整しながらやるのだから、この慶事がなかったら、改正を通さなければいけない責任者だった。安倍さん自身は改正に反対だ。安倍さんが改正を国会で審議したら大変なことに。股裂きになるところだった。ここでみっともないことになっていたら、安倍さんの芽は完全につぶれていた」

 =あのときは安倍氏も含め、女系容認慎重派の麻生外相、中川農水相らが職を辞すんじゃないかと言われていましたからね。でも、結局、私は得をしたのは小泉さんだと思います。

 

 「ところが秋篠宮さんが安倍さんを助けるためではないだろうが、結果として慶事は慶事でおめでたいが、安倍さんの慶事になった。古賀さんがどういう思いでいるか。本人でないと分からないが、安倍さんの次という可能性も出てきた。こうなるとね、古賀さんがよっぽどがんばらないと」

 =いきなり秋篠宮さまを「さん」ときたか。安倍さんの慶事は言いすぎではないかな。ふーん、ポスト安倍は古賀氏だと…

 

 「安倍さんはどちらかというと日中関係はどうでもいいやと思っている。インドとオーストラリアをうまくやっていけばいいと。だけど中国は好き嫌いはともかく隣の国でしょう。13億の人口がいる。インドは10億。アジアは30億。間違いなく世界の市場の中心になる。そのときにアジアにいる日本がどういう役割をするのか。もちろんインドとも仲良くしないと。だけど中国とけんかしたら話にならない。中国と日本がケンカ状態だと、アメリカも日本を相手にしなくなる。日中関係がちょっと安倍さんは危ない。そうなると恐らく中国の幹部が一番信頼できる日本人は間違いなく古賀さんだ」

 =安倍氏も決して「中国はどうでもいい」とまでは言っていないと思うのですが。

 

 「古賀さんは安倍内閣はあまり歓迎でないと思うが、そうなったらまず古賀さん、中国に行かないといけない。行く予定あるでしょ? 行って日中関係をなんとかうまくして。この一番の役割をもっているのが古賀さんだ。古賀さんが自民党の中で、安倍さんがヘラヘラいっても、自民党が中国としっかりした関係をもっていれば日本はうまくいく。これがやれるかどうかは古賀さんにかかっている。これからいろいろ大事な役割をもつ人だ」

 =その、安倍さんがヘラヘラいっても…ってどういう意味でしょうか。悪意がないと出てこない表現ですね。日ごろはあんなに持ち上げているくせに。


「古賀さんが相当ここで、日本が変なとこいかないでどうするかしないと。安倍さんの悪口はいいたくないが、東シナ海で中国が日中中間線あたりで油田の開発をしているが、安倍さんは日本も開発するという。海軍が来ているけどどうする、と聞いたら、こっちも海軍があると。イージス艦があると。これから調査、試掘するといっても、全体的な総合的なエネルギー戦略を考えないと。戦争しかけるみたいだ」

=安倍氏がそういう粗雑な表現を使うかどうかは別として、日本が石油ガス田の試掘に乗り出したら戦争をしかけるみたいというのはねぇ。海軍を出してきた中国には何も言うなと…

 

 「アジアの国々といかに仲良くしていくかが大事だ。そうすればアメリカもアジア、中国のことは日本に相談するようになる。インドどうだ、とか。こうなれば日本はアメリカとも仲良くなる。この発想が大事で、その発想を多分自民党の中で一番はっきりもっているのが古賀先生だ。古賀さんの地元に行って、こんなこというと、お世辞じゃないかと思われるかもしれないが、違う。逆に言うと、よほど古賀さんがしっかりしないと軍事力にいっちゃう」

 =特定アジアとそれ以外の国をひとまとめにアジアというのはいかがなものでしょうか。それに仲良くするのが大事というけど、反日に明け暮れているのは相手側でしょうに。


「一番バランスのとれた政治をやってきたのがまさに宏池会だ。本丸である古賀さんが、これからどうその力を発揮していくか。みんな少しずつおかしくなっている。一番大事なのは宏池会だ。青木さんところの経世会は行き過ぎる。角栄さんとか。竹下さんもリクルート。バランスもっている宏池会の伝統にたって、繰り返すが古賀さんが本当にこれから力を発揮しないとこの国は危ない」

=古賀氏の会合ということを差し引いても、歯の浮くぐらいにほめまくりですね。日ごろからよほど仲がいいのかな。今、田原氏ほど古賀氏に期待を寄せている人を、寡聞にして私は他に知りません。


田原氏の言動は、単なる芸風なのか計算なのか、それとも何なのか。舌鋒鋭い追及という点では、この方を評価しなくてはならないのかもしれません。でも少なくとも、たかがジャーナリスト風情が、すべて自分が一番正しいといったような顔をしてしゃべりまくるのを見ているのは苦痛です。


同業の末席から、自戒を込めて言うのですが。

 ようやく福田康夫元官房長官が不出馬を表明しました。意欲はあったのでしょうが、私は最初から出ないだろうなと思っていました。なにせプライドの高い人ですから、後輩で政治信条も異なる安倍晋三官房長官と戦って負けるぐらいなら、勝負は避けるだろうとみていました。

 

 それも僅差で負けるなら格好もつくでしょうが、出ても大差で負けそうですから。そんな屈辱に耐えられる人ではないと思っていました。

 

 確か5月末のことだったか、ある森派幹部は「いろいろ調べてみたけど、森派の9割は安倍支持だ。いや、もっとかもしれない」と笑っていました。自分の派閥の中で推薦人20人が集められないような状況では、出ても恥をかくだけですね。

 

 でも本当は、福田氏には出馬してもらい、特定アジア外交などで比較的考え方の近い加藤紘一氏や山崎拓氏、古賀誠氏らの支援を受けたうえで、きっちり負けてほしかった。そうなった方が、勝者の正統性と求心力は増すし、加藤氏らの発言力をより弱くできるからです。

 

 あと、適度に敵対集団がいた方が、勝利後の党役員人事や組閣人事は、相手側を外せる分だけ楽になるし。みんなが勝ち馬に乗ろうとして総主流派になったら大変です。安倍氏は小泉首相とは違って気配りもする人なので心配しています。余計なお世話でしょうが。

 

 さあ、これで結局、麻生外相、谷垣財務相のほかはだれが出馬するのかなあ。個人的には、ぜひ山崎氏に出てほしい。ご本人も「安倍も福田も二世でオーラがない」と意欲を示しているようだし、よろしくお願いいたします(では山崎氏のオーラって…?)。

 

 その場合、山崎氏がどれくらいの票を集められるのか、自派はまとめきれるのかという注目点が生まれます。ぜひ知りたい。どんな政治家やマスコミが応援するかも注目です。このいろいろと話題を呼んだ著名な政治家に対する国民の反応も素朴に気になるところですね。

 

 何より、山崎氏の言動、掲げている政策(対中国・北朝鮮融和策、国立追悼施設建設、女系天皇容認など)がどの程度の支持を受けているのかが分かるでしょう。いやあ、見てみたい。山崎さん、なにとぞ出馬のほど、重ねてお願いします。がんばってください。

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