2007年02月


 きょうは民主党の都連パーティーの日です。東京都知事選には、民主党は独自候補は立てず、浅野史郎前宮城県知事を支持することになりそうですね。菅直人代表代行が出てくれたほうが面白かったのに。必死で固辞していたようですから、本気で出たくなかったのでしょうね。国会議員を続けていたら、まだ首相になる目が残っていると考えているのでしょうか。

 ところで、小沢一郎代表が、自らが代表を務める資金管理団体「陸山会」の平成15年から17年までの事務所費に関し、領収書など関係書類を報道陣に閲覧させてから、1週間あまりが過ぎました。その間、自民、公明両党は資金管理団体の不動産取得を禁止する方向で動いていますが、細かい点で折り合わず、結論は出ていません。

 国会では、散発的に事務所費の問題が取り上げられることはあるものの、マスコミは郵政造反組の衛藤せい一氏の復党問題など新たな話題に飛びついて、この問題はもう終わったかのようです。本当に忘れっぽいんだから…。

 で、小沢氏が20日の記者会見で配布した資料を見直していて、ちょっと疑問というか不思議に思ったことがあるので、私も忘れないようにここに記しておこうと思います。みなさんご存知のように、陸山会は都心など計13カ所に総計10億2000万円の不動産を購入・所有しています。ここが自民党側から「何でそんなにたくさん不動産が必要なのか。何で買う必要があったのか」と追及されている点ですね。

 配布資料にあった陸山会の事務所費の内訳を見ると

 ・平成15年   借料損料(地代・家賃等)   2461万80円
 ・平成16年   同                 2460万2520円
 ・平成17年   同                 2460万3000円

 とありました。えっ、年間の家賃が2400万円?。陸山会は国会議員会館内の事務所のほかに、13カ所の不動産を所有し、「小沢氏の書斎」「機材の保管庫」「政策コンサルティング会社に賃貸」「秘書の宿舎」…などと使っているそうですが、そのほかにも年間2400万円もの家賃を払って事務所だか何だかの物件を借りているようです。事務所費の明細は政治資金収支報告書には載っていないため、改めて分かった次第でした。

 この高額の家賃が1軒分なのか数軒分なのか、何に使用しているのかは知りませんが、豪儀なものですね。陸山会の人件費は15年が227万円、16年が434万円、17年が701万円にすぎませんから、少ない秘書さん(?)で、これだけたくさんの物件管理が大丈夫なのかと余計なお世話をやきたくなります。

 …小泉前首相は、昨年の初めての安倍首相と小沢代表の党首討論を見た直後から、たびたび周囲に「小沢さんを大事にしろ」と言っているそうです。自民党議員らによると、この言葉の意味は「小沢さんが代表をやっている限りは民主党は伸びない。ビンのふたの役割をしている」ということだそうです。

 小沢氏もなめられたものだと思いますが、確かに、小沢氏が代表をしている限り、夏の参院選で自民党が大負けすることはなさそうに思えるのは確かです。いまさら遅いかもしれませんが、民主党が本気で選挙に勝つつもりなら、執行部を総入れ替えした方がいいと本心からそう思います。これも余計なお世話でしょうが。


 米下院に提出された慰安婦問題をめぐるでたらめな対日非難決議案をきっかけに、いま再び平成5年の「河野官房長官談話」が注目を集めています。この談話のいい加減さや弊害については、イザの中でもたくさんの人が指摘されていますが、それでは肝心の河野洋平氏自身はどう考えているのか。

 産経はこの問題について、過去に何度か河野氏にインタビューを申し込みましたが、いろいろと理由をつけて断られています。そこで、河野氏が自民党の「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」(現在は会の名称から「若手」がとれています)で平成9年に講演した内容を、ここで紹介したいと思います。ちょっと古いですが、河野氏の考えはそうは変わっていないと思います。これは、同年に出版されたこの議連の活動を記録した「歴史教科書への疑問」(展転社)という本に収められているものです。

 ちょっと面倒かもしれませんが、拙ブログの昨年8月28日のエントリ「河野・慰安婦談話と石原元官房副長官の証言」と合わせて読んでいただければ、より分かりやすいかと思います。原文はもう少し長いので、少し端折りました。

 《河野氏 (前略)こうした問題は決していたずらに時間をかけてゆっくり、いわゆる引き延ばすようなことをすべきではないと。調査はやはり速やかにやるべきだということで調査を行ったわけですが、その調査の段取り、それから何省の何課にどういう資料があったかというのはいま十分申し上げるだけの資料は私の手元にはありませんが、官房長官として外政審議室を督励をして、関係各省、それからたしか役所だけではなかったと思いますが、資料がありそうな場所は相当幅広く当たったことは事実でございます。
 そこで、あったか、なかったか、という問題になると、はっきりあったと言えるのは、いわゆる慰安所というものがあったということははっきりいたしました。慰安所というものがあって、なぜ慰安所をつくったかについてはいろいろ理由もあるわけですが、それは置くとして、慰安所というものがあって、そこに働く女性がいたということもはっきりしている。
 それがはっきりして、慰安所があって、いわゆる慰安婦と言われる人がそこに働いていた。強いて言えば「働かされていた」と言っていいかもしれません。いや、それは公娼というのがあって、ビジネスでやっていたので、という説明もありますが、慰安所における女性に対する管理をどういうふうにするかというような資料などを見ると、やはり管理の下に仕事をしていた。自由はかなり拘束されていたと思える部分がある。
 その拘束されていた理由はいろいろあって、例えば情報が漏れるといけないとかいうことも理由の一つだと思いますし、それ以外の理由もあったかもしれません。いろいろな理由があって自由が束縛された。本人個人の意思でどこにでもいける、つまり、もういやになったから辞めます、ということが言えたかというと、それはどうもできない、という状況まではっきりした。
 しかし、それははっきりしたんですが、皆さんが一番問題と考えて指摘をしておられる、その女性が強制的に連行されたものであるかどうかということについては、文書、書類ではありませんでした女性を強制的に徴用しろといいますか、本人の意思のいかんにかかわらず連れてこい、というような命令書があったかと言えば、そんなものは存在しなかった。調べた限りは存在しなかったということは申し上げていいと思うんです。
 ただ、そこで考えなければならないことはそういう資料がなかったということは、資料がないんだからなかったんだ、と決められるかどうか。逆に言えば、資料がなかったのにあったと言えるかと言えば、これもまたその逆でございまして、言えることは「資料がなかった」ということは事実としてはっきりさせておかなければいけない。
 ただし、資料はありませんでしたが、もろもろ様々な人たちの発言などを聞いていると、やはりいろいろなことがあったのではないかと。全く非公式に、これはそう簡単なことではなかったのではないか、と思える節もある。それは何と言ってもあのころのわが国の状況、これはもう命がけでやるか、やられるか、という戦争をしようというときですから、軍隊の持つ強制力といいますか、軍隊の持つ権力というものは絶大であって、軍に「こういうことをしてほしい」と言われれば、それに対して、「そうかもしらんが、私はそれはできません」ということが言えるかどうか。
 それは一人の女性だけではなくて、極端なことを言えば、高級官僚といえども、さらには政治家といえども、絶対にとは言いませんが、これに反する意思を述べるということはなかなかそう簡単ではなかったのではないか、ということも推測できると思うんです。これはあくまでも推測です。(中略)
 そういう中で、資料がない、つまり書類がない以上はどうするかと言えば、書類がない以上はやはりそれにかかわっていたと思われる人たちの証言もまた聞くべきだという議論があって、それはそうだね、と。しかし、では、誰がかかわっていたか、どうやってわかるんだという問題もあるわけです。「私はかかわっていましたよ」と本人が言ったって、本当にかかわっていたかどうかは証明のしようがないではないか、何か証明すべきものがあるかということになると、それもなかなか難しいということもあったわけです。現在も現存をすると思いますが、韓国にはそういう人たちが集まり、そういう人たちを支える組織というものも複数があって、その複数の組織からいろいろな意見が出てくるという話も聞いておりまして、我々としてもそういう人たちの意見も聞いたらいいではないかということになったわけです。(中略)
 で、何人かの人の証言も聞きました。それはいま申し上げたようにプライバシーの問題もあるので、どこで、誰々さんから聞いた話はこうですよ、ということは外には一切出さない。しかし、それが本当かね、どうかね、という話は、いろいろな人が聞いてきて、あれは本当ではないのではないかとか、いろいろなことを言う人も中にはあったわけです。
 私はその証言を全部拝見しました。「その証言には間違いがある」という指摘をされた方もありますが、少なくとも被害者として、被害者でなければ到底説明することができないような証言というものがその中あるということは重く見る必要がある、というふうに私は思ったわけでございます。(後略)》

 要は、慰安婦募集における官憲による強制は、何も証拠はなかったけども、韓国人の元慰安婦の証言を聞くとそういうようなことがあった気もするので強制性を認めたという話です。ふぅ。私は、この元慰安婦への聞き取り調査内容について、外務省と内閣府に情報公開請求をしましたが、プライバシーを理由に却下されました。

 ちなみに、この河野氏の講演後の質疑応答で、「軍がそこに歩いている女性を強制的に連れてきた事実というのは本当にあったのかどうか。このことが、今、実は外国で問われているわけです。(中略)日本という国はとんでもない国だ、そこに歩いている女性を強制的に軍隊が引っ張ってきてセクシュアル・スレイブとして使ったんだと。そういう印象を与えて、そしてそのことが広がっているのが問題」だと指摘し、河野氏にかみついてのが、いま復党問題で話題になっている衛藤せい一氏でした。

 当時、この議連の代表(会長)が中川昭一氏で、実質的なナンバー2の幹事長が衛藤氏、ナンバー3の事務局長が安倍晋三氏でした。マスコミは、衛藤氏の復党問題に続いて、今度は中川氏の中国脅威論を槍玉にあげていますね。安倍氏と中川氏が朝日新聞の捏造記事で攻撃されたことは記憶に新しいですが、多くのマスコミが嫌い、好んで攻撃する議員とは、どういう議員であるかが、分かるような…。

 あと、本日は先日のエントリで紹介した、マイク・ホンダ下院議員に公開質問状を出している「史実を世界に発信する会」の茂木弘道事務局長からファクスが届きました。ホンダ氏に続き、米下院の国際問題委員会メンバー全員に手紙を出して、対日非難決議案の不当性を訴えたそうです。また、この問題で日本の外国人記者クラブの所属記者80人に対してはプレスリリースを流したそうです。ただ頭が下がります。


 本日の朝刊3紙に内閣支持率に関する世論調査結果が載っていました。で、これが毎日新聞は36%、産経新聞(フジテレビの報道2001調べ)は43.4%、日経新聞は49%と非常にばらつきがありました。毎日と日経では13ポイントも違いますね。もともとサンプル数が1000人程度の世論調査では、社によって数字が多少上下するものですが、今回の数字はちょっと極端です。

 根拠はありませんが、「安倍内閣を支持するか」なんていきなり聞かれても、そんなことは別に意識していなかった人や、特に考えたこともなかった人が多くて、設問のあり方や聞き手の口調、雰囲気に左右されたのかなあと思いました。そりゃみんな、日々自分のことで手一杯で、自分が現内閣についてどう思うのかを普段から自覚的に考えている人は少ないでしょうし。参院選がもっと近づかないと、この時期の調査結果にはそれほど信憑性もないなと改めて感じた次第です。

 また、日経の調査では、先月の調査より支持率は1ポイント上がっていました。支持率49%というのは、聞かれた人の半分が「支持している」と答えたわけで、これだけ毎日毎日、テレビや新聞や週刊誌が安倍内閣に罵詈雑言、批判、非難を雨あられのように浴びせていることを考えると、正直、高いなあと感心もしました。

 特にテレビや週刊誌の安倍首相批判については、私から見ても事実誤認や歪曲、恣意的な一部分だけを取り上げた意地悪報道が多いのに、それでも半数の人がなお支持しているとすれば、たいしたものだなあと思います。まあ、逆に毎日の結果の方が実態を反映しているとするならば、半数から3分の1強へと変わり、だいぶニュアンスが違ってきますが…。

 間を取って、フジテレビの調査がだいたい相場かというと、報道2001の調査は対象が首都圏限定なので、全国調査とはまた傾向が違うのですよね。これも1週間前に比べると、なぜか約7ポイントも支持率は上昇していますが。あるいはマスコミの反安倍報道の異様さに有権者が気付き始めたのかな、という気もしないではないのですが、結局、理由は分かりません。

 安倍首相本人は、きょうも郵政造反組の衛藤氏の復党問題について記者団から支持率への影響を聞かれて「私はそういう観点から判断したことは一度もありません」と述べていました。また、個人的関係を優先させたのではないかとの質問には「そういう勘繰りをする人はいつもいますね。そういう観点からは私は判断しません。日本のために、国づくりに同じ方向を向いて努力していく情熱と信念を持っている人にやってもらいたいと申し上げた通りですね」と答えていました。

 ちょっと前置きにふるつもりだった支持率の話が長くなりました。実は本日は、このブログで何度も宣伝させてもらっている私の本の正式な発売日でした。それで、私は朝から時間を見つけては書店に出かけ、実際に本が売っているかどうか確かめてきました(バカ丸出しです)。

 最初にのぞいた東京駅の構内にある某書店では見つけられませんでしたが、近くのYブックセンターでは「政治の話題」のコーナーに数冊、平積みにされていました。目立たない場所でしたが、よしよし。大手町のK屋書店では書棚に2冊あるのを見つけたので、そのうち1冊をそっと平積みしてあった自民党の加藤紘一元幹事長の新刊の上に置きました。

 その後、よく行く赤坂の某書店ではやはり見当たらなかったので、その足で近くのB堂書店に行ったところ、1冊だけ置いてありました。私はしばらく逡巡した後、この1冊を購入して某議員事務所に贈呈してきました。きょうはそれほど忙しくなかったので、移動の合間に愚かなことに時間とカネを費やしていまいました…。


 本日のフジテレビの報道2001に、現在、米国の下院で審議中の慰安婦問題をめぐる対日非難決議案の提出者である日系のマイク・ホンダ下院議員が出ていました。で、この番組でのやりとりや、問題点はイザ内でもいろいろな方が取り上げていますので、私は一点、気になったことだけ書きとめておきたいと思います。

 フジテレビの黒岩キャスターと、ホンダ氏との間で、次のようなやりとりがありましたが、ホンダ氏の回答に、戦後長い間、日本政府・政治家が国際関係で繰り返してきた愚かな間違いの典型をみるような思いをしたからです。

 《黒岩氏 何を根拠にそういう事実があったと言っているのか。日本政府は強制的に女性を連行した事実はいくら探してもないと言うのが見解だ。そうじゃないという根拠はホンダ氏は何で持っているのか。

 ホンダ氏 歴史的事実を見ることが出来ると思います。個人レベルでそういうこと起こらなかったと、そしてそのような政策はなかったと言っているのにもかかわらず、しかし、そういうことが実際に起こったということ、実際に被害者サイドが言っている訳ですね。実際に償いという形で女性基金ということが起こっていること、そして声明という形で、談話という形でコメントが出ていること、そして首相が謝っているということは実際に過去、起こっていなければどうしてそういうこととが起こっているのか、私はそれ自体が理解できません。

 日本の政治家や官僚はつい最近まで、もっとはっきり言えば安倍政権発足まで、国内では権謀術数の限りを尽くしてのし上がった人物までが、対外的には「誠意を尽くせば分かる」「こちらが譲れば相手も譲ってくれる」式の、優しい日本社会でしか通じないナイーブな論理を外国にもあてはめては失敗してきまし
た。

 今回、ホンダ氏が対日非難決議案の根拠としたという(でもろくに読んではいないようですが)平成5年の河野官房長官談話にしても、日本側が慰安婦募集における何らかの強制性を認めれば、韓国側は国内世論を納得させてもう取り上げることはしないという、韓国側の働きかけをナイーブにも真に受けて政治決着を図った宮沢首相・河野官房長官ラインによる、根拠がないままとにかく謝ってその場を納めようという日本的な発想によるものでした。

 この点については、私は当時の事務の官房副長官として談話作成にかかわった石原信雄元官房長官に2度、インタビューして証言を得ているから確かです。また、当時の平林外政審議室長も国会答弁で同様の趣旨のことを述べています。もっとも石原氏自身は、あの談話で今日のような弊害が生まれることも薄々気付いていて、忸怩たる思いを抱いていたような気もします。

 でも、ホンダ氏のように日系人ではあっても、当然ながらメンタリティーは米国人である人物には、やってもいないことについてその場しのぎに謝るということが、理解できないというのは当然だと思います。それは、自らよって立つ正義にも反しますし、国民に対しても大裏切りなわけですから当然です。宮沢氏や河野氏らは、世界・社会・世の中というものに対して本当に何も分かっていなかった(現在も分かっていない?)のではないかと思います。

 そして彼らに限らず、靖国問題などをめぐる対中関係などで、同じ日本人が言ったら到底信じないような条件を、中国要人からささやかれるところっと信じてしまうベテラン政治家たちを見てきて、一体、彼らの頭の中身はどうなっているのか疑うことがたびたびありました。ハニートラップに無防備に引っかかる政治家も信じられませんが。

 こうした日本人以外はいい人で、日本人が大人しく謙虚に振舞ってさえいれば、世界は日本に優しくしてくれるはずだ…という類の何の根拠もない発想は、日本国憲法前文と共通しているように感じます。自尊心がなく、卑屈で、上目遣いで、媚びていて、しかも甘ったれていて自意識過剰で、どうしようもありません。日本人だけが特別悪いと思い込むこと自体、自分たちは特別な存在だと思いたがる幼児性の発露のような気もします。

 北朝鮮に対しても、日本が誠意を見せればミスターXだか金正日総書記だかもきちんと応えてくれるだろうという、これまたさらに輪をかけて根拠がないどころか、反証ばかりあるやり方で、日朝正常化を進めようとした経緯があります。幸い、当時からそういうやり方に批判的だった安倍首相は、「拉致問題解決なくして正常化なし」という原則を明確にしていますが、自民党内からも北朝鮮に手を差し伸べろと山崎拓元副総裁らがいろいろと策動を続けています。

 日朝交渉の失敗もまた、相手に対する分析も正しい認識もなく、とにかく、日本国内では何とか通じるかもしれないにしても、国際社会では通用しない「腹芸」と「譲歩で見せる誠意」で対処しようとした結果でした(拉致事件が公となったことと、一部被害者の帰国という成果はありましたが)。話を広げすぎたかもしれませんが、ホンダ氏の切り返しに対し、残念ながら「そういわれても仕方ないな」と感じてしまう自分がいたのが悔しくて…。


 安倍首相が、郵政造反組の衛藤晟一元厚生労働副大臣の復党を容認する考えを示したことについて、自民党の舛添要一参院政審会長は「百害あって一利なし。論外だ。首相はぐらついちゃいけない」と強く批判しました。まだ正式決定事項ではないとは言え、この問題については、舛添氏だけでなく、小泉前首相による郵政解散・総選挙を支持した有権者からも多くの反発が出ているようです。

 また、公明党の東順治副代表は昨日早速、衛藤氏を復党させたら選挙協力ができないよ、という趣旨の脅かしを自民党側にかけてきました。東氏は記者団に次のように語っています。

 《記者 衛藤さんについて公認する動きがあるが?

 東氏 当惑しているね。これは友党として参院選を勝ち抜こうという政治姿勢で、統一地方選もある。大分県の地元では与党が協力して勝ち抜いて、勢いで参院選を勝とうとしている。前々から、もしそういうことになったら、選挙協力に重大な影響を及ぼすといっていた上にああ言うことが出てくることに当惑している。参院選に限らず、統一地方選にも影響をおよぼす。慎重に検討していただきたい。

 記者 総理自らがやろうとしているとの報道があるが?

 東氏 それは盟友関係とか、政治行動や理念を共有する部分があると書いてあるが、そうであったとしても、ここは連立与党というもっと広い立場で総合的に検討をよくしていただきたいなと思います。今回、衛藤氏との関係は今回だけのことではない。前回の衆院選でもこの問題があった。また、参院選、統一地方選に裾野が広がっている。熟慮に熟慮を重ねて、報道がもし事実ならば再考していただきたいなと思わざるを得ない。

 記者 自民党から衛藤さんの復党について話は?

 東氏 あります。大分県の地元で、大分県連関係の人からうちの県本部へ、むしろその方は当惑をしている。確認をしてほしいということで、県本部から私の所に確認がきて、それが新聞でドーンと出た。

 記者 確認した内容とは?

 東氏 もしそういうことであれば、是非、それは避けてほしい。そうしないと大分県は大混乱してしまう。むしろ自民党の下部組織が当惑しているという声があると申し上げた。

 記者 誰に?

 東氏 自民党のしかるべき人に。

 記者 その方は?

 東氏 いやあ、そういう方向性が出ていることは事実なんですよねと。他党のこととはいえ、なんとかしないと自民党は大変だ。

 記者 いつのことか?

 東氏 先週中頃かな。谷津さんもありえない、中川さん(秀直幹事長)もダメだといっていたんでしょ。それが今日ドーンと来たんだから。是非、再考していただきたい。

 記者 再考しなかったらどうなるか?

 東氏 選挙協力(の再考)に、大分県にとどまるかというところまで波及するかもしれませんね。》

 他党のことに堂々と偉そうに口をはさむ公明党のあり方はともかくとして、舛添氏の発言の背景には、こうした公明党の反発への考慮もあるかもしれません。それと、もともと目立つことを言いたがる性格もあるのかもしれません。

 ですが、この話は舛添氏が言うように安倍首相がぐらついているから出てきたことだとは思えません。むしろ、逆ではないかと思います。次に、昨晩の安倍氏のぶらさがりインタビューを紹介します。

 

 《記者 衛藤氏が復党し参院選比例代表で出馬という報道がある。総理は衛藤氏の復党についてどう考えているか。

 安倍首相 衛藤さんは基本的に私と同じ考え方、方向性をもった議員だと思います。長年、よく知っています。その中で党としては手続き的には党紀委員会で議論するということになると思いますが、最終的には私が判断したいと思っています。

 

 記者 総理が指示を出したという報道があるが、何か指示を出したのか。

 安倍首相 今の段階では決めていません。

 

 記者 公明党から困惑する声も出ているが、選挙協力に影響はないか。

 安倍首相 基本的に我が党の候補者ですから我が党の判断で決めたいと。また選挙協力においては両党の信頼関係において協力関係をしっかりと組んでいくことが大切だと思います。

 記者 指示は今の段階で決めていないということだったが、党に対して検討することも指示をしていないのか。

 安倍首相 今の段階ではまだ具体的な指示は出していません。

 

 記者 復党を認めて支持率が落ちた経緯があるが、そういった点は配慮しないのか。

 安倍首相 配慮?

 記者 心配というか。
  

 安倍首相 国づくりを一緒にしていきたいという人に加わってもらうのは私は当然だろうと思いますよ。》

 今回の衛藤氏復党問題について、安倍首相のやり方は筋が通っていないという批判も出ているようです。しかし、私にはむしろ、安倍氏は公明党の批判や支持率低下よりも、自ら正しいと思う筋を通そうとしているように感じられるのですが。

 昨年の郵政造反当選組の復党にしても、マスコミは「選挙目当てだ」とさんざん批判しましたが、本当にそうだったでしょうか。結果的に選挙にいい影響が出たらいいとの計算もあったでしょうが、それ以上に、安倍首相はこの人たちを復党させるべきだと信じたから、そうしたまでだというのが本当ではないかと思います。

 だって、あのときも内閣情報調査室あたりの事前調査で、復党させたら支持率は10ポイントは下がるという結果が出ていました。安倍氏が何をしても支持率目当てだといいたがる人がいますが、私は、安倍氏はそれほど支持率を気にしないタイプの人だと見ています。

 それでは、郵政造反組に「刺客」を送った側の小泉氏はこの問題をどう考えているのでしょうか。以前のエントリで一度紹介したことがありますが、退任直前の昨年9月9日、フィンランドでの小泉氏と記者団のやりとりを採録します。


 《記者 三候補とも郵政造反組の復党を言っているが


 小泉氏
 これはいつの時点かで、それぞれの人がどうそのときの自民、また政権に協力するか。また、考え方としてどうなのか、選挙区事情、個人の事情、そのときの施策の優先順位によって変わってくると思う

 記者 安倍氏は郵政について、この問題は終わったと述べているが

 小泉氏
 それは
郵政民営化は決まったことだから。一つの政策課題として。それをまた、郵政民営化反対などと言って復党してくることはないでしょう。私が間違っていた、大きな時代の流れを見損なった。これから郵政民営化一段落してあとのいろんな施策がある。自民の方針についていきたいと、戻りたいという人が戻るのは不思議でない。そういうときに、総裁なり執行部がどう考えるかの問題だ。

 記者 刺客の新人議員の存在と矛盾しないか

 小泉氏
 前回は
郵政民営化が最大の争点だった。最大の争点に反対だというのは、自民党の公認候補にはなりえないでしょ。当然のことだ。刺客とかいうことではなくて、有権者に選択肢を与えた。》


 小泉氏が言うように、郵政民営化はすでに進んでおり安倍氏もそれをしっかりと継続すると言っているのです。その上で、日本が置かれた厳しい国際情勢に立ち向かい、国内的にも教育改革、憲法改正などこれから最重要課題に立ち向かおうというときに、首相が自分と同じ考えの政治家と力を合わせたいと考えることが、なぜこれほど批判されなければいけないのか私にはどうしても理解できません。

 一昨年の郵政選挙で小泉氏の郵政民営化の主張に納得し、自民党に一票を投じた人たちの中に、裏切られた思いがするという人がいることは承知しています。しかし、あえて問いたいのは、その一票は郵政民営化の是非に対して投じたのではなかったのでしょうか、ということです。

 繰り返しますが、郵政民営化の流れはもう変わりません。国家国民のために尽くしたいと考える有為の政治家を、一度小泉氏に逆らったというだけで、二度と国政の場や、力を発揮できる舞台に復帰できないようにするための投票ではなかったはずだと思います。

 あるいは、自民党が古い体質に戻り、旧態依然とした国民不在の政治を行うことにつながるのではないかと懸念されているのかもしれません。でも、これもそうはならないと思います。自民党はすでに十分に壊れてしまっていて、昔のようには戻りたくても事実として無理だろうと思います。

 そもそも、仮に衛藤氏が公認されたとしても、選挙の洗礼を受けて勝ちあがってこないことにはどうにもなりません。純粋にこの日本のためによかれと思って、衛藤氏の復党を心から望む人だって、少なくないはずだと考えるのですが、どうでしょうか。

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