2007年07月


 このイザのユーザーブログを読んでいると、田中真紀子元外相が麻生太郎外相に対し、「アルツハイマー」と発言したことが取り上げられていました。この人は全くもう…。9年前の自民党総裁選で、候補の小渕恵三氏を「凡人」、梶山静六氏を「軍人」、小泉純一郎氏を「変人」と名付けたときには、コピーライターの才能がある人だなと感心したものですが、その後の言動を見ていると、ひたすら口汚く他人をののしるばかりで、甚だ見苦しいばかりです。小渕氏が亡くなったときには、平然と「これでお陀仏さん」と言い放ち、青木幹雄氏を「あいつは人間じゃない」と激怒させたとも聞いています。子供ができなくて昭恵夫人が不妊治療まで行った安倍首相のことを「種無しスイカ」と呼んだのも記憶に新しいですね。青木氏じゃありませんが、私もこの人はまともな人間ではないと思っています。

 さて、この人の言動を紹介するのもなんだかなあ、とは思うのですが、やはり多くの人に知っておいてほしいなあと思い、田中氏が27日に岡山県内で演説の一部を書きたいと思います。もちろん、参院選に関係する部分は省きます。異なる立場の人への悪口もそうですが、田中氏が、民主党こそ田中派であり、自民党の正統嫡子であると考えているところが興味深かったもので。

 《郵貯というものは、みなさんのお金。それを民営化するってどういうことか。これは外国に使わせることだ。自民党中心でいい政治を戦後をやってきた。今の平和憲法を守れと。二度と戦争をしないという約束の下で、経済発展、一生懸命にやり、平和と経済発展によって日本は世界に冠たる尊敬される先進国になったのではないか。それがどっかのバカが総理大臣にひょっこり出てきて、いやー戦後レジーム。レジームって体制です。戦後のことをやめましょうと。じゃあ平和をやめて、経済発展をやめるということなんですべ。だから頭が悪いと思うんですけど。

 その2つの柱があって、郵便貯金をしっかりとわれわれ国民のための河川の改修とか、空港をつくるとか、日本のために使ってきたが、これを1993年、宮沢内閣後半にクリントン大統領と話し合いをして、日米年次改革要望書というものを交わした。その中の筆頭に日本の郵貯を民営化して、米国や世界に使わせろと。日本は金持ちなんだからと」。我々に使わせろと言われている。建設、情報通信とある。日本には圧力が来ていて、大臣がはぐらかせている。

小泉さんは猫だが、アメリカかぶれで、ジョージに丸をつけた。アヒルが出てくるアフラックなんて昔はなかった。モルガンスタンレーとか。そういう企業が入ってきた。日本はそういう体制になっていない。日本は52年間も自民党だけでやってきた。オリンピック、万博をやって日本はよくなってきた。

 自民党はよかった。ただ池田、佐藤、田中内閣までだ(笑い)。民主党もバラバラしているそうだから、みんながへらへら入ってくる。時代が変わっている。秋風が吹くとき、アメリカからまた年次計画要望書が送られる。郵政民営化はやっちゃいけない。日本は財政が破綻していて、我々のお金を我々が使わなくてどうする。日本は少子高齢化だ。一番早いのは新幹線じゃない。お年寄りが多くて、逆三角形、おむすびころりんになる。年金も介護も医療も必要だ。安定的財源が必要なのに郵政民営化していはいけない。

 小泉さんはかつらをかぶったネコだから。横須賀出身ですから。あそこでアメリカ大嫌いになるか、ヤンキーおじさんになる。横須賀にいろいろある。すっかりあこがれる。プレスリー記念館に行きたいと言ってバカなまねして。米国の大統領が石原裕次郎のまねするか。あれは何だと言われている。あの人のアメリカかぶれのために売り飛ばされている。

この内閣は小泉さんが自分の派閥の中で、今回の選挙用に指名したのが安倍首相だ。「自民党は我々なんですよ。もともと元祖われわれが自民党ですから。着服なんです。着服された方はリベラルでして、田中角栄大蔵大臣の時は積極財政。しょっちゅう景気をよくして、企業も個人も。そして個人ももうかって、ものを買ったりする。それは税収で入って売りだけ高が上がってきて、その税収で道路をつくれるし年金も◯もできる。福田大蔵大臣は緊縮財政。ぎゅーっと絞るんです。余ったのは◯◯(懐に入れるという趣旨の話、笑い)。田中総理大臣は日中ですから。福田さんは安倍、岸さんの系列だからアローン派なんです。全然違うんです。外交も財政政策も。その中でずっと橋本総理を初め、小渕さん、竹下さんら田中派がずっと続いているから、指をくわえてみていたわけだ。いいなあ、田中派ばっかり。

 だから小沢代表はけしからんと。田中の最後の残党だからじゃないかといじめ抜かれて、壊し屋だとか、人相が悪いとか、いろんなことを流布しているのは自民党なんですね。ところが民主党(自民党の言い間違い?)を追い出されたのは小沢さんでしょ。こっちは本流だったかもしれませんけれども、鳩山さんにせよ、岡田代表(元代表)、羽田さんにせよ、不肖田中真紀子も新党の受け皿だし、こちらの民主党はコアになっているのは旧田中派なんですよ。今、残っている自民党は福田派なんですよ」。こちらは福田とか森デブとか、安倍とか小泉とか、背が高くてかっこいいから。うちの夫の方がよっぽど格好いい。その安倍さんがやっているのは緊縮財政だ。財源どこからもってくる。どこから金が出てくるのか。答は消費税。食品にはかけない。高級品の消費税をかけたらいい。

拉致は5年たっても一人も帰ってこない。曽我さん、大丈夫ですよ。なんで中山補佐官が国会議員なのか。補佐官では解決しないからバッジをつけるという。金正日が選挙を見ているという。そんなに仲が良いなら自分が北朝鮮にいけばいい。

「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書は右翼だ。教科書も書き換えたい。戦争をしていないと…。》

 これは後輩記者の取材メモからの抜粋で、全文をテープ起こししたものではないので、一部で省略された部分もありますが、どうお感じになられたでしょうか。私は、聴衆がこの田中氏の演説で大笑いしていたという点が気になりました。私には不愉快な根拠のない罵詈雑言と、何でも自分が正しいという独りよがりとしか感じられなかったのですが…。

 それにしても、他人のことを「バカ」とか「頭が悪い」と公然と言うこの人自身はどうなのか。政治家には、自分自身の姿が見えていない人がけっこう多いのですが、この人は別格かもしれません。

 


 ことここに至って、今さら参院選の行方についてあれこれ書いても仕方がないし、例によって公職選挙法とのからみを考えるのが煩わしいので、本日は私が青少年期に多大な影響を受けたニーチェの「このようにツァラトゥストラは語った」(吉沢伝三郎訳)から、何だか今の心境に合う言葉や、果たしてどうなんだろうかと考えている言葉をテキトーに選んで紹介したいと思います。でも、ほとんど何の意味もありません。面白くもなければ何の役にも立たないエントリ(いつもそうか)であることをあらかじめお断りしておきます。じゃあ何で書くのかというと、まあときどきこの本を読み返したくなるのと、自分の頭の整理と備忘録代わりにしたいためで、これまた特別の理由はありません。すいません。

 

 《最善の諸事物も、それらをまず上演する者が誰かいなくては、世の中ではなんの役にも立たない。民衆はこれらの上演者たちを偉大な人々と呼ぶのだ。

 偉大なもの、すなわち創造的なものを、民衆はあまり理解しない。だが民衆は、偉大な事柄を上演するすべての者たち、それを演ずるすべての俳優たちに対しては、感受性をそなえている。

新しい諸価値の創案者たちをめぐって、世界は回転する、――目に見えずに回転するのだ。しかし、民衆と名声とは、俳優たちをめぐって回転する。これが「世の習い」なのだ。(中略)

 ひとの気を転倒させること――それが彼にとっては証明することを意味する。ひとを狂乱させること――それが彼にとっては説得することを意味する。そして血こそ、彼の見るところでは、一切の根拠のなかで最上のものである。》

 

 《また或る者たちは、みずからの一握りの正義を誇り、この正義のために、一切の諸事物に対して罪を犯す。そこで、世界が彼らの不正のなかで溺死させられるのだ。

 ああ、「徳」という言葉は、彼らの口から発せられると、なんと不快な響きを帯びていることか!じじつ、彼らが、「わたしは正しい」と言うとき、それはいつも、「わたしの復讐欲は満たされた」と言っているように響く。

 彼らは、自分の徳を振りかざして、自分の敵の目をえぐり出そうと欲する。かくて彼らは、他人を貶めるためにのみ、自分を高める。》

 

 《だが、わたしはきみたちに、こう忠告する、わたしの友たちよ。処罰しようという衝動が強大であるような、一切の者たちを信用するな!(中略)

 そして、彼らが自分自身を「善にして義なる者たち」と称するとき、忘れるな、パリサイの徒たるべく、彼らに欠けているのは――ただ権力だけであることを!》

 

 《そして、わたしが彼らのなかに認めた最悪の偽善は、命令する者たちもまた、奉仕する者たちの諸徳を偽り装うということだ。

 「わたしは奉仕する、きみは奉仕する、われわれは奉仕する」――ここでは、支配する者たちの偽善もまた、そう祈る、――かくて、わざわいなるかな、第一の支配者が第一の奉仕者にすぎないとは!(中略)

 「われわれはわれわれの椅子を中間に置いた」――彼らのほくそ笑みはわたしにそう言う――「瀕死の剣士たちからも、満足したブタからも、同様に遠く離して。」

 だが、これは―――凡庸というものだ、たとえそれが中庸と呼ばれているにもせよ。》

 

 …ところで、今回の参院選では安倍首相の進退にかかわる責任ラインがうんぬんされていますが、「にちゃんねる」に次のような書き込みがあったそうです。知らない間に、私も責任ラインが決められていたようです。うーむ。別に融合までした覚えはないのですが、これによると、私はいずれにしろ近く異動することになりそうですね(苦笑)。まあ、世の中のすべて、森羅万象、みんななるようになるということでしょう。

 

 《48 :名無しさん@八周年:2007/07/09() 18:52:02 ID:1J+JPtfE0
産経必死すぎ。
 
つーか安倍にあまりに融合しすぎた阿比留は安倍と一蓮托生。
 
安倍が失脚したら
 
まあ、焦る気持ちもわからないでもない。
 
参議院の自民議席が以下のようだと
 

45~50 安泰。政治部長や論説委員への道が開ける。
 
40~44 本社内移動か大阪本社移動程度。
 
35~39 さすがにやばく、サンスポか夕刊フジで雑巾がけ。
 
30~34 関連会社出向。リビング程度で済めばいいけど。》

 

 何度も繰り返してすいませんが、やっぱり選挙期間中は書きにくくて仕方がありません。選挙が終われば、また好き勝手な意見を述べたいと思います。きょうのところは、とりとめのない半端なエントリで失礼します。


 ごぶさたしています。本業の方で、いろいろと記事を書かなければいけなかったのと、選挙中は何を書いても、これは特定政党・個人の応援だと指摘されかねない部分もあって、何だか思うように筆が進みませんでした。エントリをさぼっていた間も、たくさんの方にコメントを寄せていただき、感謝しています。

 さて、本日は北朝鮮の朝鮮労働党の機関紙、労働新聞が安倍首相と安倍政権について何と言及してきたかについて書こうと思います。私はハングルはさっぱり読めませんが、幸いなことに朝鮮総連の機関紙、朝鮮新報がときどき、労働新聞の論評を日本語で掲載しているので、それをもとにします。まあ、何というか、北朝鮮がいかに安倍政権を嫌がっているかが、実によく分かります。それと同時に、いかに注意深く日本社会の動向を観察しているかも…。

 まずは、労働新聞の7月11日の論評「安倍内閣支持率急落は当然」からです。論評はまず、安倍内閣の支持率が「6月初めの30%ラインから最近は28%に下がった」と指摘し、「安倍政権が、対内外政策の誤りと失敗により苦境に陥っている」と書いています。7月はじめの世論調査で28%って、どこの社だったかな。そして、こううれしそうに嘲笑してみせます。

 《安倍一味は、問題が起きたあとにそれを収拾しようと躍起になっているが、それは内外の非難と失笑を買うだけだ。今回の参院選で自民党が敗れた場合、安倍の政治的運命が維持されるという保証はない。歴史は、俗物が人民の裁きを受けてドブの中に放り込まれるのは避けられないということを示している。安倍一味の運命も決して例外ではない》

 北朝鮮が、参院選の行方をある期待をもって見守っている様子が分かりますね。まあ、当然予想できることではありますが。人民の裁きねぇ…。数百万人の人民を餓死させた北朝鮮に言われたくはありませんが、それはともかく、次にいきます。6月8日の労働新聞は「無能でぜい弱な安倍政権」という論評で、安倍政権のスキャンダルを取り上げています。日本のどこかの新聞と、論調が似てなくもありません。

 《安倍政権内で相次ぐ各種のスキャンダルと政策一致、失言などは、安倍の政治的無能と政権運営上の弱点から生まれたものである。歴史わい曲は、安倍政権の政策的立場であり、意志である。(中略)安倍政権がわが国に圧力をかけようと途方もない「拉致問題」をもってこの国、あの国をせわしく訪れても、得るものは何もない。安倍政権は、現実を冷徹に見て政治的無能とスキャンダルで混乱に陥った国内問題を正すべきである》

 お説教をたれていますね。それだけ、安倍首相がすべての首脳会談で拉致問題について説明していることに困っているのでしょう。「得るものは何もない」だって…。坊主憎けりゃ袈裟まで、といいますが、5月14日の労働新聞は、安倍首相の中東歴訪について「安倍の中東『エネルギー外交』批判」という論評を載せています。ほとんどいいがかりですが、先日のエントリで紹介した金日成主席の言葉にやはり似ていますね。

 《日本は軍事大国化、核大国化を積極的に進めようとしている。こうすることで、日本は何としてもアジアの「盟主」になって地域諸国を支配し、隷属させ、意のままに天然資源を略奪しようとしている。安倍が言った中東の「新時代」とは本質上、同地域の国々に対する支配と隷属、搾取と略奪の新時代を開いていくということである。日本軍国主義の侵略的、略奪的本性はいつになっても変わらない》

 その前日、5月13日の論評「安倍を手厚くもてなしたブッシュの企図」は、安倍首相の訪米についての評価です。敵意むき出しです。率直に言って、下品だと感じました。

 《上司と手先の関係で特徴づけられる米日間の協力関係は、目下の同盟者が目上の同盟者にへつらい、上司は手先をなだめ、共に自らの黒い胸中を満たす共謀・結託である。プッシュと安倍の今回の会談(4月27日)は、凶悪な主人と目ざとい下手人の醜態をいま一度世間に示した犯罪的な野合だといえる。(中略)ブッシュは米国を訪問した安倍を手厚くもてなし、日本軍「慰安婦」問題に対する彼の目くらましの「謝罪」を称賛する一方、「拉致問題」に対する米国の公式的な支持を表明した。(中略)とくに、米国は侵略的対朝鮮戦略の実現で日本を突撃隊に仕立てようとしている》

 ここでも、労働新聞は拉致問題に言及しています。明らかに気にしていますね。ただ、私も、早く北朝鮮に日本が米国の手下などと言われない日米関係になってほしいなとは思っています。日米同盟が対等なものになるそのためにこそ、日米同盟の片務性を改め、双務性を高める集団的自衛権の政府解釈の見直しが求められていると考えています。

 それで、4月10日の労働新聞の論評も拉致問題に関してで、「『拉致問題』提起する安倍政権の狙い」というタイトルです。これは、「日本が『拉致問題』でいっそう躍起になって取り組んでいる」「『拉致問題』について言えば、それはもはや存在しない問題である」と日本が到底受け入れられないことを書き、慰安婦問題を強調しています。

 《安倍政権が「拉致問題」に躍起になって取り組む裏には、日本軍「慰安婦」犯罪をはじめ血なまぐさい過去史をわい曲、否定することにより、過去の清算を回避しようとする犯罪的企図が隠されている。その一方で、「拉致問題」を掲げて国際的孤立と窮地から脱しようとしている。(中略)日本は、日本軍「慰安婦」問題をはじめ過去の罪悪を率直に認めて清算する道に進むべきである》

 これも過去のエントリで書いたことですが、北朝鮮は、意図的に慰安婦問題をクローズアップすることで、拉致問題を相対化・矮小化しようとしていると見ています。つまり、北から見れば、自分たちがそうだから日本もきっとそうしているのだと思いこんでいるのでしょうね。溜め息が出ます。1月31日の労働新聞の論評「安倍政権の危険な軍国化企図」は、靖国問題と憲法改正についてこう決めつけています。

 《日本の執権自民党がこのほど行った党大会で、「靖国神社参拝を受け継ぎ、国の礎となられた方々に対して謹んで哀悼の誠をささげる」(党運動方針)とした。一方、首相の安倍は「憲法改正に取り組む」と妄言を吐いた。(中略)前首相小泉が執権期間、世界的な抗議と反対にもかかわらず靖国神社に何度も参拝して周辺諸国との関係を冷え切ったものにしたのはそのためである。しかし、現安倍一味のように執権自民党大会で靖国神社参拝を続けるとあえて公言できなかった》

 1月22日の論評「安倍首相の欧州訪問は失敗」には笑いました。いきなり「倭国」という言葉が出てくるからです。まあ、古代から意識があまり変わっていないのかもしれません。

 《率直に言って、倭国に対する欧州の視線は冷たい。(中略)倭国が過去の清算の義務を履行せず、戦犯国の汚名もそそげずにいるありさまなのに、国連の責任あるポストを占めようとするのは自分の境遇も知らない者の軽率で笑止な行動だ。倭国の当局者らは国際社会の信頼を得なければ何も得られないということをはっきりと知るべきだ》

 北朝鮮がそんなに威張れるほど、国際社会の信頼を得ているとは寡聞にして知りませんでした。以上、今年に入ってからの論評をいくつか見てきただけでも、北朝鮮がいかに安倍政権を敵視しているかと同時に、その一挙手一投足に高い関心と注意を払っているかがうかがえます。それだけ本音としては、早く日本と国交正常化して1兆円以上ともいわれる経済援助を引き出したくて仕方がないのでしょうね。

 北朝鮮が6カ国協議の場などで、いかに日本を無視しているふりをして見せても、日本とそのお金がない限り、自分たちが立ち行かないことは、いやというほど分かっているのでしょう。だったら、意地をはらずに早く拉致被害者を返せば、日本人は非常に寛大かつ忘れっぽいので、これまでの経緯にこだわらずに北朝鮮支援に応じるだろうに。安倍首相も「日本側の扉はいつでも開かれている」と言っていますし…。


 いま、1時間以上かけて打ち込んだエントリの文が、何らかの操作ミスですべて消えてしまいました。過去にも何度かあったことですが、ああ、気力が萎える。…気を取り直して、また書き直します(さらにもう1度消えました。マウスが偶然、マイページヘルプの上に行き、突然画面が変わって…ふぅ。今度は一時保存を途中でしていたので文の半分は残りましたが)。

 参院選の投票日までもう10日を切りましたが、報道各社の情勢分析では、民主党が大きく飛躍しそうなのに対し、与党側は大敗しそうな雰囲気です。まだ投票先を決めていない人も多いですし、当日になって気が変わって与党に入れる人だっているでしょうが、この期に及んでそんな楽観論や希望的観測を強調したってあまり意味はないでしょうね。安倍首相と与党はまだ、無明の大嵐の中から抜け出せずにいます。したがって問題は、負けるにしても、どの程度負けるかです。

 安倍首相自身は、全国遊説などを通じ、反応はそんなに悪くないと感じているようです。安倍氏は官房副長官時代から今まで、数限りなく街頭演説を繰り返してきた人ですから、それはそれで間違っていないのでしょうが、民主党の幹部も口をそろえて「動員をかけなくても人が集まる」「握手をした際に強く握り返され、期待を感じる」などと語っています。やはり風は民主党の方に向いて吹いているのでしょう。

 自民党の当初の目標獲得議席は、参院で与党が過半数を維持するために必要な51議席でした。ただ、これは多分にタテマエ的な数字で、実際は40台後半取れれば、他党議員や無所属議員を引き抜けば何とかなるというのが本音でした。そして、3か月前までは、40台後半はまず取れるし、場合によっては51議席だって大丈夫かもという見方が与党内にはけっこうありました。それが、年金記録未統合問題の表面化をきっかけに状況は一変し、閣僚の失言問題や政治とカネの問題が追い討ちをかけましたね。

 安倍首相の「責任ライン」についても、初めの51議席から、いつか橋本元首相が退陣に追い込まれた9年前の参院選の44議席が一つの基準となり、現在では40台に何とか踏みとどまれるかどうかというところまで落ちてきました。仮に40台半ばに達したら、与党内では「大勝利ではないか」という声さえ沸きあがりそうな空気です。自民党内のアンチ安倍勢力からも「40台前半なら安倍さんは辞めないだろう」という声が聞こえてきます。同時に、議席が30台にとどまった場合は、いくら何でも政権は持たないだろうとも噂されています。

 自身の女性スキャンダルとリクルート事件、前政権の消費税アップの余波の三重苦に見舞われた宇野元首相のもとで戦った参院選の場合、獲得議席は36にとどまり、歴史的大敗と言われました。ところが、今回もこれと似た数字になるのではないかという予測も出ています。それほど現在は、どこか理不尽ともいえる与党への逆風が吹き荒れているようです。

 さて、それでは安倍氏はどうするのか。結論から言えば、安倍氏はどんな結果になろうと、やりかけの首相の仕事を放り出す考えはない、と私は聞いています。 

 安倍氏は、あやうく支持率が一桁にまで落ち込みそうになった森内閣で官房副長官を務め、森元首相を支えていました。このときも党内から森降ろしの動きが出ていました。ただ、日本の首相という存在は、本人が辞めようと思わない限り、周りが引き摺り下ろそうとしても、そう簡単には辞めさせられないものです。安倍氏はそのことを間近に見て、熟知していることと思います。

 ただし、仮に議席が40にも達していなかった場合、安倍氏と政権が、相当苦しい立場に追い込まれるのは間違いありません。自民党内の反安倍勢力の不満と批判は一斉に噴き出すでしょうし、公明党も安倍政権との距離を演出するでしょう。与党内から安倍降ろしの策動も出てくるかもしれません(安倍氏が続投しようと変わろうと、参院の与野党逆転状態は変わりませんが)。今でさえ常軌を逸した反安倍報道を繰り返しているマスコミが、「地位に恋々として潔くない」などと書き立て、さらに安倍バッシングを続けることも当然予想できます。そんな中にあって、自民党内の最大派閥ともいえる日和見・ノンポリ派は安倍氏につくか離れるかでふらふら揺れ動くことでしょう。

 参院は与野党で議席が大きく逆転するのですから、野党の案を毎回丸のみでもしない限り、与党はまともに法案を通すこともできなくなります。安倍氏が進めてきた公務員制度改革も教育改革も、日本版NSC構想も集団的自衛権の問題も、これからやろうとしてる独立行政法人・公益法人の見直しも、みんな抵抗が強まり、進展は難しくなるでしょう。政治は次の衆院選で再び国民の審判を仰ぐまで、少なくとも政策の上では停滞を余儀なくされます。

 また、これを機会に、政界再編の動きが出てくる可能性もあります。民主党は勝つわけですから、そうそう離党者が出るかどうかは疑問ですが、より権勢を強めるであろう小沢代表がいやで仕方がないという議員は少なくありません。自民党側も働きかけを強めるでしょうから、あるいは一定数が離党、新党結成・与党と連立ということだって、全くないわけではありません。逆に、自民党から離党者が出ることだって当然考えられます。国民新党の動きも注目されます。

 私は、保守とリベラルの二大政党ができたり、保守大合同が起きたりするのなら、政界再編を歓迎しますが、左派に主導権を握られた自社さ野合政権の再来のようなものには懸念を覚えます。そうなったら、日本はこの先10年は失うことになるでしょうし、再びその負の遺産に長きにわたって苦しむことになるでしょう。どうなるか分からないことを心配しても仕方ありませんが。

 いずれにしても、現在、安倍政権は最大の試練に直面していて、参院選後にも苦難の道が待っているということになります。私は何だか、安倍氏がマックス・ヴェーバーのいう政治への「天職」を試されているような気がしています。そこで、ちょっと長くなりますが、ヴェーバーの名著「職業としての政治」(脇圭平訳)の最後の結論部分を引用してみたいと思います。

 《しかし現状は違う。現在どのグループが表面上勝利を得ていようと、いまわれわれの前にあるのは花咲き乱れる夏の初めではなく、さし当たっては凍てついた暗く厳しい極北の夜である。実際、一物だに存在しないところでは、皇帝だけでなく、プロレタリアまでもその権利を失ってしまっている。やがてこの夜が次第に明けそめていく時、いまわが世の春を謳歌しているかに見える人々のうち、誰が生きながらえているだろうか。また、諸君の一人一人ははその時どうなっているだろうか。憤懣やる方ない状態にあるか、それともすっかり俗物になり下がってただぼんやりと渡世を送っているか、それとも第三に、そう珍しくもないケースだが、――もともとその素質のある人や、(よくある悪い癖で)そういう真似をしようと夢中になっている連中のように、――神秘的な現世逃避に耽っているか。以上どの場合についても、私はこう結論するであろう。この人たちは自分自身の行為に値しなかったのだ、あるがままのこの世にも、その日常の生活にも耐えられなかったのだ。つまりこの人たちは自分ではあると信じていた政治への天職を、客観的にも事実の上でも、深い内的な意味で持っていなかったのだ。むしろ彼らはも会う人ごとにありのままに素直に同胞愛を説き、ふだんは自分の日常の仕事に専念していればよかったのだ、と。

 政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力を込めてじわっじわっと穴をくり貫いていく作業である。もしこの世の中で不可能事を目指して粘り強くアタックしないようでは、およそ可能なことの達成も覚束ないというのは、まったく正しく、あらゆる歴史上の経験がこれを証明している。しかし、これをなしうる人は指導者でなければならない。いや指導者であるだけでなく、――はなはだ素朴な意味での――英雄でなければならない。そして指導者や英雄でない場合でも、人はどんな希望の挫折にもめげない堅い意志でいますぐ武装する必要がある。そうでないと、いま、可能なことの貫徹もできないであろう。自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が――自分の立場からみて――どんなに愚かであり卑俗であっても、断じて挫けない人間どんな事態に直面しても「それにもかかわらず!」と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への「天職」を持つ。》

 ヴェーバー自身の情熱と、強い思いがゆらゆらと立ち上ってくるかのような言葉だと思います。私は、9年間余の政治部生活の中で、無役だったころからずっと安倍氏をウォッチしてきたのですが、ときどき、信じられないぐらい前向きな人だな、と感じてきました。昭恵夫人は以前のインタビューで、安倍氏を評して「人から見るよりも強い人です。ここぞとなったときには本当にすごく強い人」と言っていました。国民はどう判断するでしょうか…。


 現在、北京では北朝鮮の核をめぐる6カ国協議の首席代表会合が開かれていますが、朝鮮総連の機関紙、朝鮮新報(電子版)は17日、「日朝関係は悪化の一途をたどっており、当分の間、対話さえないようだ」と報じています。北朝鮮は何やら、参院選で与党が敗退し、北朝鮮に厳しい安倍政権が苦境に追い込まれることを前提に、余裕をかましているようにも見えます。不愉快な話ですが。

 また、昨日の産経朝刊の国際面の記事には、「6カ国協議筋も金桂寛外務次官が首席代表会合で、総連中央本部の土地・建物をめぐる仮装売買事件をとりあげ、日本政府の対応を批判する可能性を指摘した」とありました。北朝鮮がずに乗っているように感じるのは、私だけではないでしょう。総連が資産を失うことは、参院選うんぬんにかかわらず北朝鮮には受け入れがたい話ではあるでしょうが、安倍政権が追い込まれれば追い込まれるほど、北朝鮮がはしゃぎだすというのは本当であるように思います。北朝鮮だけでなく、米国だって、短期政権だとみると、日本の言い分や要請を適当に聞き流すようになるかもしれません。

 そんな憂鬱なことを考えつつ、記者クラブの産経新聞の書棚を眺めていて、ふと「金日成著作集 第5巻」(未来社、1971年刊行)という本が目につきました。だれがいつこんな本を買ったのか知りませんが、いずれにしてもかなり以前の話でしょう。要は金日成が好き勝手偉そうにしゃべったことをまとめたものですが、手にとってぱらぱらめくっていると、日本と韓国に対する言及があったので少し紹介します。「朝鮮労働党第5回大会でおこなった中央委員会の活動報告(1970年11月2日)」という章からの引用です。

 《南朝鮮にたいするアメリカ帝国主義者と日本軍国主義者の思想的、文化的浸透は、そのはっきりした実例であります。こんにち南朝鮮では、米日反動層とその手先どもの民族文化抹殺政策によって、われわれの文化はあますところなくふみにじられ、腐りきった「ヤンキー文化」と日本色、日本かぶれの風潮がはばをきかせており、人民の精神生活をむしばんでおります》

 =金日成は韓国についてずいぶん心配しているようですが、結局、対南工作は成功し、現在では偉大なるノム大統領が北朝鮮に憧れのまなざしを注ぎ、かばってくれていますね。やれやれです。

 《アメリカ帝国主義の庇護のもとに、日本軍国主義者もまた、朝鮮にたいする再侵略策謀を強化しています。南朝鮮のかいらい一味は、米日反動の二重の手先としてその主人たちの戦争政策を実行しようとむこうみずに狂いたっています。わが国で戦争の危険は日を追ってますます増大しています》

 =この演説は、37年も前のものですが、ときどきテレビで見る北朝鮮の映像を見る限り、今でも似たようなトーンで軍や政府の高官が演説しているのだろうなと想像してしまいます。金正日総書記は、壇上でパチパチと拍手をしているだけかもしれませんが。

 《国の自主的平和統一をはばみ、祖国の統一をめざす南朝鮮人民のたたかいを銃剣をもって弾圧し、アメリカ軍の南朝鮮占領をひきつづき哀願し、日本軍国主義侵略勢力まで南朝鮮にひきいれ、自民族を外国の奴隷として売りはらい、南朝鮮の青壮年をアメリカ帝国主義の弾よけとしてベトナム侵略戦争にかりたてている。この売国反逆者どもと、どうして国の統一問題を語ることができるでしょうか?》

 =こうしてみると、つくづく最近の韓国の北朝鮮への傾斜ぶりは、北朝鮮の勝利だったのだなと感じます。北への警戒心を溶かし、米国への反発を高め、自由世界のルールよりも血のつながりを優先させ、親北教育を浸透させ…。たいしたものですね。国全体が工作機関みたいなところだけあります。

 《こんにちアジアでは、日本軍国主義がふたたび頭をもたげて立ちあがり、世界の平和とアジア諸国の独立と安全にたいする日本軍国主義の危険性は、日ごとに増大しています。これは、アジアと世界の平和を重んずるすべての人々の大きな不安と憂慮を呼びおこさざるをえません》

 =70年安保のころの日本が、軍国主義というのも何だかなあという感じです。でも、この人のこの本を読んで、「うんうん、そうだ!」と頷いていた日本人もけっこういたのでしょうね。戦後の日本に、一度でも軍国主義が台頭したことがあったとは思えませんが。

 《日本軍国主義は歴史的に、大きな帝国主義勢力を後ろ盾にして、他国にたいする侵略をつねとしてきたアジア人民の不倶戴天の敵であります。(中略)日本軍国主義者のこのような罪悪の歴史が、こんにち、ふたたびくりかえされています。日本軍国主義の侵略的本性は変わっておらず、またけっして変わらないでしょう》

 =侵略的本性はけっして変わらないのだそうです。こんなこと言われても困りますね。じゃあ、どうしたらいいのか。アジア人民の不倶戴天の敵にされてしまいました。…まあ、反日的な日本人も似たようなことを言っている気もしますが。

 《日本の反動層は、海外膨張の汚らわしい野望のもとに「平和」の仮面、「援助者」の仮面をかぶってなんの制裁も受けることもなく、世界のいたるところで身勝手なふるまいをしており、東南アジアと中近東をはじめ、アフリカ、ラテンアメリカ諸国に対する経済的、文化的浸透を強めています》

 =今の視点でこの言葉を読むと、日本というよりも中国のことを言っているようにも思えるのだから、時代が変わったということでしょうか。日本の経済力は相対的に小さくなっていますから。

 《日本軍国主義の侵略性を見ないで、また、それとたたかわず、日本反動政府を美化したり、かれらと親しくしたりするならば、それは、アジアにおける戦争の危険をいっそう増大させ、かれらの海外膨張を助長することになるでしょう。それはまた、アジアにおけるアメリカ帝国主義の地位を強め、全般的な反帝闘争を弱める結果をもたらすことになるでしょう》

 =不思議で仕方がないのは、この金日成を深く尊敬した日本人が少なくないことです。村山富市元首相や土井たか子元衆院議長ら旧社会党の人もそうでしたし、先日のエントリで紹介したミスター日教組、槙枝元文元日教組委員長らもそうですね。日本に対する考え方、日本観が近いのでしょうか。

 《日本軍国主義の再武装と海外侵略策動を断固阻止し、侵略的な米日間の結託を決定的に破綻させなければなりません。とくに日本軍国主義者の「平和」の仮面をはぎとり、国際社会でかれらを孤立させ、反帝戦線をきりくずそうとするかれらの策動を徹底的に暴露し、粉砕しなければなりません》

 =北朝鮮は現在も、慰安婦問題などを通じて日米間の離反を図っているという指摘もありますし、拉致問題でも日本の孤立を狙っているのでしょう。ずっと変わらない北朝鮮のプリンシプルのようなものでしょうかね。まだまだ、日本に対してはいろいろと悪口を言って憎悪をぶつけていますが、きりがないのでこのへんで。それにしても、北朝鮮が変わる日はいつか来るのでしょうか。レジーム・チェンジ以外にはちょっと考えにくいように思います。

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