2007年11月


 沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定問題の行方が気になる昨今ですが、本日は同じ検定つながりで少し古い話を書きたいと思います。というのは、さきほど昔のメモ類を整理していて、2001年3月23日に国会内で開かれた社民党の扶桑社教科書糾弾集会のメモが出てきたからです。この集会での土井たか子党首(当時)の発言は非常に私に強い印象を残していて、昨年6月23日のエントリ「土井たか子という『疑惑』」の中でも触れているのですが、そのときは自分のメモが見つからなかったので記憶している範囲だけで書いていたのです。

 集会には14人の社民党議員のほか、扶桑社の教科書の批判運動を行っているプロ市民の人たちが参加していました。このときの政府はというと、官房長官が現在の福田首相で、文部科学相が現在の町村官房長官でした。6年と8カ月前というと、移り変わりの早い政界では、もう遠い過去のような気がしますが。ともあれ、土井氏の発言は次のようなものでした。

 《土井氏 早くこういう機会(集会のこと)を持ちたいと思っていた。みんなの考えを町村文部科学相、森首相のところに持っていく。というより、福田官房長官のところに申し入れに行くことにする。
 2002年から使用される中学教科書の検定も最終段階。その中で、新しい歴史教科書をつくる会が歴史、公民の教科書を検定しているが、中身が問題だ。報道によれば、これまでの教科書とはまるで違う。かつての日本のアジア侵略戦争と植民地支配を正当化する中身になっているようだ。
 文科省の方は検定するわけだが、検定ででてきたいろんな要求さえのめばパスしていいのかというのはわけが違う。言論の自由、出版の自由はあるが、教科書となるとわけが違うんじゃないか。教科書は周到な学問的検討がなされなくてはならないし、教育的配慮に基づいて書かれるべきだ
 検定のありようということに対して、従来、社民党は検定はいただけないという立場をとっているが、これはもう一度再検討することに、今回の経過を通じてなると思う
 検定の過程が一切秘密というのが解せない。問題化している中身も公然と出していることではない。修正要求したところを全部直しても、なおかつ歴史教科書となると、考え方が、歴史観が問題になるんじゃないか。文科省が検定に合格させれば、それに対する責任が生じる。そういう歴史観を認めたとなる》

 …まず、教科書の中身を報道でしか知らないのに、一方的に決めつける姿勢にも疑問を感じましたが、一応、世間では憲法学者で通っている人が、「教科書には言論、出版の自由はない」と言っていることにもっと呆れました。ああ、やっぱりこの人たちのいう「護憲」とは、自分たちの思想、主張に都合がいいからそうしているだけなのだなと改めて感じた次第です。教育的配慮って、南京事件の犠牲者を無理矢理水増ししたり、精神的に発達過程にある中学生に慰安婦問題を教えたりするのが一体何の配慮なのか。

 また、これまでは検定制度に反対してきたけど、今回は検定が厳しい方が都合がいいから立場を見直すとも言っています。ご都合主義そのものですね。こういう人たちに、いくら道理を説き、事実関係を説明しても「そんなの関係ない」と言われてしまうのだろうなと思います。最初から正邪善悪はイデオロギー的に決まっていて、それに当てはまるかどうかだけが判断基準なのでしょうから。そして、沖縄戦の集団自決をめぐる政治の現状は、この土井氏らの姿をとても笑えるような状況にないようです。

 現在、文科省の教科書検定審議会の日本史小委員会は、11万人が参加したと報じられた沖縄県民集会をきっかけにわき起こった検定見直しの圧力に当惑していることと思います。今年3月に検定を実施して以降、新たな学問的検証や新事実の発見があったわけでも何でもないのに、どうして検定結果を変えられるのかと。学問的良心に忠実であろうとすれば、3月の決定を年内に覆すようなことができるわけがありません。

 でも、政治やマスメディアは、実態のないそのときの「空気」とやらに流され、事実がどうであるか、何が正しいかはあまり重視しない傾向があるようです。みんながそう言っているんだから、とにかく従えよ、という様相です。あえてこの流れに逆らう人は、「空気が読めない」と嘲笑され、排除されかねません。福田首相や渡海文科相にはここで踏ん張ってもらいたいところですが、無理だろうなあ。というか、この二人は率先して流されているような気もしますね…。


 今朝の産経は3面で「外国人参政権付与 首相次第?」「公明に各党同調 自民反対派は沈黙」という見出しの記事を掲載しています。要は、これまで棚上げされてきた外国人参政権付与法案の成立に向け、公明党を中心に与野党に動きが出ているという内容です。記事は同僚記者が書いたものですが、《参院では外国人参政権に比較的熱心な野党が過半数を占めており、「外国人参政権法案に反対した安倍晋三前首相と対極にある」(自民党中堅)と指摘される首相が、積極的に取り組む可能性も捨てきれない》と締めくくっています。

 私は昨年の自民党総裁選以前からこれまで、仮に福田政権が誕生したら、この外国人地方参政権付与の問題や人権擁護法案、ジェンダーフリー、靖国神社代替施設建設…などに手をつける恐れがあると繰り返し紙面やこのブログで書いてきました。いずれも安倍氏が強く反対し、封じ込めてきた政策ですが、いよいよその実現を目指す動きが表面化してきたということでしょうか。外国人参政権実現を主張する大韓民国民団の集会については先日のエントリで紹介しましたが、人権擁護法案の方も最近、注意すべきできごとがありました。

 5日前の産経は政治面に、小さく「自民人権調査会 四役ら顧問就任」というベタ記事を載せています。しかし、扱いは小さくても、内容は重大でした。人権擁護法案を推進する自民党の人権問題等調査会(会長、太田誠一元総務庁長官)の顧問に、伊吹文明幹事長ら党四役と、青木幹雄前参院議員会長、山崎拓元副総裁ら重鎮クラスが就任したことが分かった、という内容です。つまり、来年の通常国会への人権擁護法案提出に向け、自民党は本腰を入れてきたということですね。記事はこう経緯を書いています。

 《人権擁護法案は平成14年3月に国会に提出されたが、メディア規制をめぐり、野党や報道機関が反対し、廃案になった。平成17年に同調査会を中心に法案再提出を目指したが、安倍晋三前首相らが強く反対し、頓挫した。中川昭一元政調会長は昨年10月、会長ポストを空席にし、同調査会は活動を休止させていた》

 この法案は、古賀誠選挙対策委員長や二階俊博総務会長が推進に熱心なことで知られています。自民党若手議員の「伝統と創造の会」(稲田朋美会長)は今月、「人権侵害の定義があいまい」「人権委員会の権限が強すぎる」などとして反対していく方針を決めていますが、多勢に無勢というか、この会だけでは流れを変えることは難しいだろうと思います。なにせ、ノンポリが中心で何も考えていない議員が大半の自民党では、いまだにこの法案について「人権を擁護するんだからいいんじゃない」「選挙に向けていいイメージがもたれるのでは」などと考えている人が多そうですし。

 実際は、法務省の外局に新設する「人権委員会」に令状なしの調査権を与えたり、実務を担当する人権擁護委員の対象を日本人に限っていないなど、この法案は大変な危険をはらんでいることは周知の通りです。名称をもじって、「人権屋擁護法案」と呼ぶ人もいるようですね。それにしても、安倍氏という防波堤がいったん崩れると、次から次へと好ましくない問題が噴出しています。沖縄集団自決をめぐる教科書検定への政治介入もそうですし、東シナ海のガス田試掘手続きの取りやめもそうですし、対北朝鮮関係における拉致問題の優先順位が下がっていることも…。

 そんなことを思いつつ、きょうたまたま手に取った雑誌「月刊日本」12月号に、平沼赳夫衆院議員のインタビュー記事が載っていて、人権擁護法案についての言及があったので紹介します。平沼氏は人権擁護法案の成立について「私はもちろん、それをもう一度防ぐべく死力を尽くすつもりだ」と語っています。日本人のため、ぜひ頑張ってもらいたいところです。平沼氏は中川昭一氏の保守系勉強会にも参加しましたし、年明けには活動を本格化させるだろう安倍氏とも連携してなんとかこれを阻止してもらいたいと思っています。福田首相は反対が強いとみるとひよるでしょうから。月刊日本から平沼氏の言葉を引用します。

 《この人権擁護委員には国籍条項がなかった。そして、一般の方は普通、自分の仕事が忙しいから人権擁護委員になかなかなろうという人はいない。すると、特殊な思想をもった人によって人権擁護委員会が構成される危険が非常に高いのだ。例えば、この法案が成立してしまったら、日本はどんな社会になっていただろうか。
 北朝鮮による拉致事件を真剣に考えている一般の人が北朝鮮への経済制裁を訴えたとしよう。すると、北朝鮮系の人々が「これは差別だ、侮辱だ、感情を傷つけ人権侵害だ」と訴える。すると、特殊な考えを抱いた人権擁護委員会が令状なしに家宅捜索に乗り出すのだ。》

 この説明を、極端な例えととらえるか、いかにもありそうな現実の話だと受け止めるかは人によって分かれるかもしれません。でも私は、とてもこれを笑い話だと思う気にはなれません。いわゆる人権派と言われる人たちの活動のねちっこさと執拗さ、サヨク系工作活動に専従して何で食べているのか分からない人たちのことを思い浮かべると、実際にこうした事態は起きうると思います。

 参院選に大敗した政府・自民党は、安倍氏の保守路線そのものが国民に否定されたというメディアの宣伝に騙され、また、そう考えた方がすべてを安倍氏に責任転嫁できるので安易に流され、福田首相のサヨク・リベラル路線もあってどんどん変な方向に向かっています。有権者の監視と厳しい叱咤、批判、怒りの声をきちんと届けないと、本当に日本の将来は危ないと焦燥感を覚えるきょうこの頃です。


 私は11月8日のエントリ「『マスコミの誤報を正す会』の記者会見に行ってきました」の中で、正す会が沖縄の集団自決問題をめぐる県民集会に関し、報道各社に送った公開質問状について取り上げています。正す会に問い合わせ、その質問状に対する各社の回答を入手したので、きょうはそれを紹介したいと思います。何かの参考になるでしょうか。まずは、質問状の内容を再掲します。

  《一、9月29日の沖縄県民集会について貴紙の第一報では、「主催者発表によれば11万人」「11万人(主催者発表)」などと報道されたと認識しておりますが、間違いございませんか。
 二、しかし、この数字は、東京の警備会社テイケイの調査によって、実際は2万人以下であることが疑問の余地なく立証されたと考えますが、貴紙のご見解をお聞かせください。
 三、2万人の集会を11万人と報道することは明らかな誤報であり、しかもその誤報による数字が現実に教科書検定への政治介入を招いた事実に鑑みて、何らかの訂正が行われるべきであると考えます。すなわち、①訂正記事を出すか、②独自の検証記事を出すか、③上記警備会社の調査を報道・言及・引用するなどして、読者の誤解を解くことが報道機関の責任です。貴紙は、上記①、②、③のどれかのフォロウをなさいましたか。
 四、上記のフォロウがなされていないとしたら、報道機関としての読者に対する責任を放棄したものと考えますが、貴紙の見解をお聞かせください。また、私どもとしては、そのフォロウを早急に要請いたします。この点に関する貴紙の方針をお聞かせください。(以上)》

 これに対する各社(私が把握している範囲)の回答は以下の通りです。まあ、予想通りではありますが、木で鼻をくくったような、他人事のような回答が多いです。それでも、きちんと答えただけいいとも言えますが。まずは、11万人説には強い疑問が示されていることについて言及していた産経と読売から。

 ・産経新聞社(編集局長名)
  〔質問1〕   間違いありません
  〔質問2〕   テイケイの調査については、10月24日産経抄などで紹介しています。
  〔質問3〕   10月7日付朝刊1面で「『11万人』独り歩き・参加者は『4万人強』」との独自の検証記事を掲載しています。
  なお、貴会の活動については、11月9日付朝刊政治面で報道しております。

 ・読売新聞社(広報部長名)
  【質問1への回答】   読売新聞の第一報(9月30日付)では、「約11万6000人(主催者発表)が参加し」と報道しています。
  【質問2への回答】   読売新聞は11月3日の社説「沖縄集団自決 禍根を残しかねない政治的訂正」で、主催者発表の参加者数について取り上げています。その中で、「県民大会の俯瞰写真に写っている参加者を1人ずつ丹念に数えた東京の大手警備会社は、1万8000~2万人と指摘している。主催者発表の5分の1以下だった」と記し、政府がこの県民大会を契機に教科書会社の訂正申請に対し方針転換したことに疑問を提起しています。
  【質問3への回答】  読売新聞では上記の社説に加え、10月26日夕刊のコラム「とれんど」でも、丸山伸一論説委員が警備会社の調査に言及して、「11万人」という数字の問題性を指摘しています。

 …上の2紙は個別の質問に回答していますが、その他の社はひとまとめにして同じような答えを出してきています。私はつくづく思うのですが、メディアは誤報や捏造を犯さなくても、「報じない」という不作為によって、事実を歪めていくものなのでしょうね。編集権や報道の自由を盾に、閉鎖された言論空間をつくって。

 ・東京新聞社(中日新聞東京本社、編集局長名)
  9月29日に沖縄県宜野湾市で開催された沖縄県民集会について、本紙は「約11万人(主催者発表)が参加し、」と報じました。これは本紙が加盟する共同通信からの配信記事を掲載したものです。記事中にあるように、これは「主催者の発表」を受けてのものと理解しています。

 ・共同通信社(編集局長名)
  本年9月29日に行われました「沖縄県民大会」の報道に際し、弊社は主催者発表に基づき「11万人」としました。当日は警察発表がなく、主催者が発表した数字を「主催者発表」と明記して記事化しました。

 ・毎日新聞社(社長室広報担当名)
  9月29日の沖縄県民大会については主催者発表として約11万人という数字を記載しています。警察発表はありません。主催者発表の数字を記事化することは、このケースに限らず、一般的に行われています。

 ・朝日新聞社(広報部名)
  沖縄県民集会への参加人数につきましては、警察など第三者によって公表された数字がありませんでしたので、紙面では主催者発表の数字として「11万人」と報道しました。

 ・NHK(広報局名)
  9月29日に沖縄県で開かれた教科書問題の大会の参加者数については、取材にもとづき「主催者側の発表で」と出所を示して報道しました。ほかの質問・ご指摘については今後の取材・放送の参考にさせていただきます。

 …東京、共同、毎日、朝日、NHkの各社は、正す会の二、三、四の質問は無視か誤魔化すかして回答していません。確かに、最初の段階で主催者発表に頼らざるをえなかったのはある程度仕方がないと思いますが、その11万人という数字が政治問題化し、教科書検定への政治介入を招いている現実をどう考えているのか。主催者がテイケイの調査のように、当初から「参加者は約2万人」と発表していたら、こんな騒ぎには絶対になっていないのですから、この県民集会報道では数字こそが焦点であるのに、その後のより確からしい情報は報じる気はない、と公言しているかのようです。

 結局、この5社は、政治信条・思想的に教科書に沖縄集団自決における日本軍の強制が盛り込まれた方が都合がいいので、テイケイの調査(報道各社にも直接送付されているはずです)はなかったことにしようというわけですね。特に1面大見出しで「11万人」と報じた社は、せめて異説があることぐらい紙面で押さえておくべきだと思いますが、そういう誠実さは最初から持ち合わせていないようです。もちろん産経だって、事象によって扱いの強弱・大小や傾向性があることは私も認めますし、それが報道機関としての個性だとも思います。ただ、今回の事例は報道機関の「恣意性」が非常に分かりやすく、しかも有害な形で表れたなと思います。各報道機関がタテマエ上、県民集会に対しても公正・中立な立場を装っているだけにです。

 ちなみに、話は飛びますが「誤報」つながりで、日頃思っていることを記します。新聞記事には、「飛ばし記事」と呼ばれる確定していないことをまるでそう決まったかのように書くスタイルがあります。「政府は●日、なになにする方針を固めた」などと書いてある場合、事実そうである場合と、本当は「政府内にはそういう意見もある」や「これまでの流れと状況証拠からそうなるんじゃないかな」という程度の裏付けしかないもの、あるいは「今はどうだか分からないけど、一時期そう決まっていたからいいや」的ないいかげんな記事もあります。これは同業者、特に担当部署が同じ記者なら、読めばある程度分かりますから、他紙はまず追いかけ記事は書きません。「また◎紙はいい加減な記事で飛ばしてやがる。あそこは事実かどうかより先に書くかどうかだけが社内で評価されるんだろうな」などと話し合うこともあります。

 一方、本来ならば周囲によって幾重にもブロックされているはずの中枢から直接出た情報をもとにしているケースなど、記事がディープすぎる場合もいろいろと難しいところがあります。よくインターネット上の議論などで「あれは一紙だけしか書いていないし、よそが追いかけないから与太話なのだろう」という意見を見ますが、追いたくても追えない、そもそもどこのだれに記事の真贋を確かめたらいいのか分からないという類の記事もたまにあるのです。また、この手の記事は当局に否定されがちです。でも、記事に関係する政治家や省庁が「記事は間違い」とそろって言っても、本当は記事の方が正しく、関係者が口裏を合わせて否定しているという場合もあるのです。一般的に当事者が否定した場合、記事が間違っていたと感じる人が多いようですが、当事者には否定しなければならない「言えない事情」があることも少なくないでしょう。平気で嘘をつくタイプの人もいますし。

 何が言いたいかというと、新聞(まあテレビもそうでしょうが)の情報は、玉石混淆であるということです。どれが玉でどれが石か見分ける専門知識のない人や、そんなことをやっている暇はないという人に自分で判断しろというのは無理な話ですし、そもそも新聞が市場に流通する商品としては甚だ不完全なものであるということを公言するようでナンなのですが(※弊紙は比較的マシだと自負しています)。また、石が混じっていようと、新聞がなくなってしまえば表に出ないような情報も掲載されているのも事実なので、なんとか新聞をお見捨てくださらないようにお願いします。変なオチになりましたが、最近は同僚と一杯やると「会社はあと何年もつのか」という話題になることが多く、だれも明るい見通しを示せないもので。


 本日は今のところ休みなので、自宅でのんびりしています。で、何を書こうかな、東シナ海のガス田試掘の前提となる漁業補償交渉について、安倍内閣では秋までに日中協議が進展しない場合は開始する予定だったのが、福田内閣になってから首相官邸の意向でストップされたことを報じた今朝の産経1面の記事の補足でもしようかな、と考えたのですが、だいぶ前に与えられた宿題を思い出したのでそっちを優先します。

 私はちょうど1カ月前に、「この1カ月余りで読んだ本についての感想」というエントリを立ち上げました。そこで本日はその後の1カ月に読んだ本について紹介します。相変わらず政治関係の本は仕事以外ではあまり読んでいません。この中に、一部宣伝・広告ではないかと思われるものが混じっていたとしても、それは気にしないでください。決して上司から、「さりげなくこの本を紹介ないし引用しろ」と要請(命令)されたわけではない、と思います。たぶん。

 まずは、好きな時代小説から。安定感抜群の諸田玲子氏の作品です。

   

 派手さはありませんが、しっとりとした味わいがあり、安心して読める本です。短編連作方式なので、一話一話、電車の中や一人での食事中(行儀は悪いですが)にゆっくりと読みました。さて、次は、先日紹介した際に最高点をつけたリストラ小説「君たちに明日はない」の続編です。

   

 これが…泣けました。これも短編連作なのですが、表題作が特にいい。何度か読み返しました。恋愛もの、純愛ものは苦手な方なのですが、この人は人物造形がうまいなあ。説得力を感じます。最終話のラストもいいし。作者の年齢を見ると私と同世代で、いまさらながらに自分は何をやっているのかなあと、畑違いにもかかわらずそんな思いにもとらわれました。

 次は、これも先日のエントリで笹本稜平氏の作品です。ちょっとはまって、3作続けて読んでしまいました。力のある作家さんだなあと感じました。読者にカタルシスを与えるのが上手なのかな。

   

   

   

 警察・刑事ものばかりですね。私は社会部時代、警視庁で捜査1課と生活安全部を短い期間担当しましたが、はっきり言って自分でもダメな記者(ろくにネタもとも開拓できない=ろくにネタもとれない)だったと思いますし、警察や司法関係が特に好きなわけではありません。でも、「警察小説」はけっこう読んでしまいます。この三冊は、どれも「面白い」と推薦できます。一番凝っているのは最後の「越境捜査」ですが、清々しさでは最初の「駐在刑事」、個人的に登場人物に共感できるのは「不正侵入」でしょうか。

   

 資料的価値のある一冊です。巻末の特集「わが国の政治と司法は日中戦争をどう語ってきたか」は、過去の国会答弁などから重要なものを抜き出しています。例えば、昭和26年11月14日の衆院法務委員会で、大橋武夫法務総裁(現在の法相)はサンフランシスコ講話条約についてこう答弁しています。

 「第11条におきましては、これらの裁判につきまして、日本国政府といたしましては、その裁判の効果というものを受諾する。この裁判が、ある事実に対してある効果を定め、その法律効果というものについては、これは確定のものとして受け入れるという意味であると考えるわけであります」

 要は、講話条約発効後も、それでただちに「戦犯」を無罪放免にはしないということを言っているに過ぎないわけですね。それが、61年8月29日の衆院内閣委員会での後藤田正晴官房長官の答弁では「私どもといたしましては、サンフランシスコ平和条約のたしか11条であったと思いますが、国と国の関係においては日本政府はこの極東裁判を受諾しておるという事実があるわけでございます」となります。「裁判の効果」の受諾が、「裁判の受諾」に単純化・拡大化され、現在もそれが引き継がれていると。

   

 次は…と写真をアップしたところで、「映画化決定」という文字に初めて気付きました。へえ、「バッテリー」に続くわけですね。私は、このあさの氏や栗本薫氏ら、女性作家の一部の心理描写は少々くどく感じるのですが、でも面白いから読んでしまいます。少年時代に戻りたいとは思いませんが、あさの氏の少年小説はいいですね。

   

 これは、以前紹介したヤクザが崩壊しかけた高校を建て直す「任侠学園」の前編でした。私は前作があるとは知らずに「任侠学園」を読み、何でところどころ出版社の話などが出てくるのかと不思議に思っていたのですが、間抜けな話でした。なかなか途中で読むのをやめられないおもしろさがあります。

   

 最後は随分とピンぼけ写真となりました。すいません。マイクル・クライトンはけっこう好きなのですが、この作品は…。正直に言って、上巻を読み終わったところで中断しています。この先の展開に関心がないわけではないのですが、ちょっと気持ち悪くて。「ドクターモローの島」でしたっけ、ああいう感じがよりリアルに迫ってくるのです。自分の遺伝子を持ったチンパンジーと会話するなど、想像しただけで…。

 また愚にもつかない投稿をしてしまいましたが、最後までおつきあいくださりありがとうございます。みなさんからも、「ぜひこの本(漫画を含む)を読め」という推薦をお待ちしています。毎日のように書店に行くのですが、最近は新しい好みの作家を開拓しないと、読む本がなかなか見つけられず困っています。勝手ですが、よろしくお願いします。


 本日は午前8時から、自民党本部101会議室で、拉致問題対策特命委員会(中川昭一委員長)が開かれたので私も行ってきました。きょうは、訪米して北朝鮮に対する拉致支援国家指定解除をしないよう訴えてきた拉致被害者家族会の飯塚繁雄副代表と増元照明事務局長が訪米報告を行い、先日のエントリでも紹介した北朝鮮帰りのジャーナリスト、田原総一朗氏も北朝鮮でのやりとりについて話すというので、これは注目だなと思ったからです。

 ただ、冒頭の中川委員長と中山恭子首相補佐官のあいさつの「頭撮り」を除いては、会合はクローズだったので、各社の記者たちは会場のドアに耳をつけて漏れ聞こえる音を拾う「壁耳」にいそしんでいました。私はもともと左耳が悪いこともあって壁耳は苦手なので、ときどき所用で外に出てきた議員らにぶらさがったりしながら、会合が終わるのを待ちました。会場の様子はこういう感じです。右端でマイクを握っているのが中川氏です。

   

 そして、正面のアップが、この写真です。少しピントが甘いですが、左端が飯塚副代表で、右端の中山補佐官の隣に座っているのが田原氏ですね。中川氏はあいさつで、「この問題は国家主権の問題だ」と強調していました。当然のことなのですが、この一言を口にできず、人権問題であるとしか言わない政治家が、なんと多いことか。

   

 さて、実はこの日の会合は事前の情報では、拉致被害者家族が北朝鮮に対して非常に融和的な田原氏に対し、激しく批判するのではないかという見方も出ていました。でも実際は、多少のやりとりはあったものの基本的に「大人の対応」だったようです。まず、会合終了後の記者団による田原氏のぶらさがりインタビューを紹介します。

 《■田原氏 

Q きょう田原さんはいろいろ意見を言っていたが、どんなことを?

田原氏 ちょっと本当は僕は場違いなんで、きょうはアメリカに行って拉致問題でアメリカの議員たちにいろいろ意見を、アメリカに要請してこられた人が中心になっているので、僕は場違いの人間から思うことを言った。一番言いたかったことは日本の政府が拉致問題について何を考えているのか、北朝鮮に分かっていない。つまりいろんな拉致にとって熱心な人たちがバラバラの意見になっていると。政府サイドからは決してそういう意見になっていない。北朝鮮は一体誰を相手に交渉すればいいのか分からないと。私にもそう言っていました。私が別に、誰だっていう立場にないんでね。だから、政府が何を考えているのか、あるいは外務省が一体どうしたいと思っている。そこらへんが北朝鮮がよく分かっていない。そこは一番問題だと思います。

 

Q 宋日昊と話して、それ以外の被害者の調査ということが焦点だと思うのか?

田原氏 まだね、はっきり言って僕は今年になって・・・。小泉さんは2度訪朝した。その後の日朝関与は進んでいないと思っています。向こうはむしろ、日朝関与を進めたいと。宋日昊は僕に何度も言いました。会議を進めたい。それが形式的に途中で終わって誠に残念だと言っていましたね。

 

Q 映像でとってきた宋日昊の話以外のところで日本への期待感は?

田原氏 だから、交渉したいと言っているんですよ。できれば非公式の交渉をしたいと。で、誰が一体頼りになるんだろうということを彼が言っていました

 

Q 日本政府の窓口が分からないと?

田原氏 はい。はい、はい。だから、それは僕にはよく分からないから、帰ってからいろんな人に話をしようというふうに言いました。

 

Q そういう話はきょう、自民党の方からは?

田原氏 一部にね。ただきょうのメインはアメリカに行った人たちの話ですから。僕は政府がね、あの、バラバラなんですよ。たぶん外務省は今ここで行われている路線とは違う路線だと思う。福田さんもちょっと違うんだと思う。そのへんがみんな言うと、こういう問題は微妙だから、言わないから余計分からない。だから、官邸、外務省、議員の人たちもバラバラになっているなあと思います。

 

Q 家族会等からは田原氏が北朝鮮の主張を言っているようで反発があるが?

田原氏 そんなことはない。僕はあくまで宋日昊とインタビューして、宋日昊のインタビューを受けたんであって、僕の意見ではないよと、こう言っています。》

 …うーん、北朝鮮にとってだれが一番頼りになるかねぇ。しょっちゅう訪朝したがっている山崎拓氏あたりがまた「オレがオレが」と言って喜びそうな話ですね。福田首相にも熱心に北の情勢や事情について説いているとも言われていますし。あと、この「僕の意見ではない」という田原氏の言い方は、半分はその通りかもしれませんが、これまでの政府や外務省のやり方をポロクソに批判して、北側に立ってきた言動を見ていると怪しい気もしますね。実際、田原氏自身もそう思っているのではないかと。

 出席議員によると、「北は拉致被害者8人は死亡したと言っている」と話す田原氏に対しては、中山補佐官が「北は金総書記が2002年にそう言ったのだから立場をなかなか変えられないのでしょうね。それだけ北にいいルートがあるんだったら、(8人死亡という)北の主張を変えられるようにしてください」と皮肉ったそうです。次は、飯塚、増元両氏の話したことです。


 《■飯塚、増元両氏 
Qきょう訪米についてどのような説明をし、議員からどのような意見が出たか

飯塚氏 訪米報告は、西岡力先生がペーパーで書いて配った。私は今回の感想というか、特に議員の先生方が中心となって訪米団を組んで、議員外交で直接拉致問題を訴えながら、当面のハードルである指定解除については絶対するな、しては困るという強いメッセージをかなり与えていて、今後につながる成果があったのではないかという話だ。

私自身は被害者家族として、苦しい立場を訴えてきたが、素人ながら感じるのは、もし解除されれば、何回も言うが、われわれの家族が永遠に葬られてしまうのではないかという強い思いを持っているということを話した。特にこれからだが、日米両国の国会議員の連携によって、日本人拉致問題は、日本としては一番重要な課題であるということを示しながら、具体的にどう進めていくかということについて考えながら、これからやりますという各議員の話があったし、中には人脈的につながる議員もいるということで、あらゆるつてを探りながら、議員外交をきちんとやっていくということだ。

私たちが日本の国会に望んだのは、衆参両院で拉致特のきちっとした決議文を確定して、向こうに日本の国として全体が取り組んでいるんだという意気込みを示したらいいとお願いした

 

増元氏 とにかく私たちが訪米したのは、テロ支援国指定がいかに拉致被害者を救出するために重要なものかという認識のもとで、アメリカのテロ支援国指定解除に対する流れをいくらかでもとどめていきたいという思いと、あとは超党派の議連の先生方が向こうに行って頂くことによって日本の立場、日本の政府、国民がいかに拉致問題を重要視しているかと言うことを米国議会の方達によく理解して頂いて、米国政府の流れをいかに食い止めていけるかということで行ったと話した。

議員外交の今後の重要性、さらに12月末までにテロ支援国家指定解除を通告するのではないかという流れを止めるには、議員外交を今後も継続してやっていかなければならないとの意見が多々みられたのが大変心強い

 

Qテロ支援国家指定解除の流れが強まる中、政府与党にどのような対応をとってほしいか

増元氏 今要請したのは、衆参両院で拉致問題特別委員会があるので、日本の国会として米国のテロ支援国指定解除に対して非常に反対であるという議決をしていただくことを要請した。我々としては民間としてできることをやっていくと報告した

 

Qその提案に対し、議員の反応は

増元氏 中川委員長が最終的に、そのことも自民党の拉致問題特命委員会の議員に説明され、衆院拉致特委の筆頭理事の高木毅先生にもその旨を伝えていたので、その流れを議連とともにやっていくということをいっていただいた。やっていただけると確信している

 

Q議員外交の継続として再訪米などは言っていたか

増元氏 飯塚副代表がいったように、日本の議員の中に米国議員とチャンネルを持っている人がいるので、それを利用して向こうの議員に働き掛け、さらにテロ支援国指定解除の流れを阻止していくことを強めていくと言っていたし、再訪米の議論はなかったが、拉致議連の中ではそのような話が出ているのは事実だ

 

Qきょう田原氏と同席していたが、直接意見は言ったか

飯塚氏 特に指摘しなかったが、有名なジャーナリストとして影響力が大きい方が、記事や言ったことの影響力が大きいのだから。北がこう言っていますよというのはあるかもしれないが、私が感じたのは、彼自身が本当に日本人拉致被害者を助けたいのかという原点で堅いものを持っているのかと心配したが、逆にああいう有名な方を通じて日本側の有利なメッセージを向こうに伝えるという点では、もっと違う面でお願いしたらいいかなと思った

 

増元氏 田原さんの話の中に事実誤認が多々あるなと思ったが、それに対しては外務省の飯原参事官もある程度は答えていたので、もっとしっかりとした事実関係を把握した上で宋日昊と話をしていただきたかったと私は思う。

 きょう聞いた段階では、あまりにも宋日昊から聞いたという前提で話していたが、北のメッセンジャーになってしまっている部分があまりにも強のかなという印象をちょっと受けてしまった。だからメッセンジャーもいいだろうが、それがミスリードにならないことを心がけていただかないと、日本の世論の中で8人死亡が定着してしまうことが非常に怖いと思う。宋日昊は当然拉致問題というか日朝関係を進展したいという強い意志があるのは当たり前だと思う。彼らの前提は拉致問題を終結させて日朝関係を進展し、補償、経済協力を取り付けるという大前提であるわけで、そのための策略をやっているわけだが、それが目に見えないで、ただ単に拉致問題が終結というミスリードが行われるようだと、私たちの被害者救出運動にとっては非常に大きなマイナスが生じてしまうことをちょっと危惧する感じだった。》

 …テレビのニュース番組に君臨し、大物政治家たちもぺこぺこせざるを得ない田原氏ですが、拉致被害者家族からはあっさり「北のメッセンジャー」と呼ばれていました。まあ田原氏は、そういう指摘を受けるリスク、マイナスも分かった上でああいった言動をとっているのだろうとは思いますが、実際どうなんでしょうね。あくまで自分は賢く、真実を見抜いていると考えているのかどうか。

 この日の拉致問題対策特命委員会では、安倍晋三前首相が委員会の顧問に就任することも報告されました。関係者によると、安倍氏は「これはやらないと。私の義務だから。(首相辞任では)拉致被害者家族たちをがっかりさせたし」と拉致問題への取り組みに強い意欲を示しているそうです。安倍氏の議員活動再開も徐々に本格化していきそうです。

 

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