きょうは行きがかり上、2本目の投稿となります。本日は午後零時15分ごろから約15分間、民主党の外国人参政権付与推進派の議連初会合があり、午後4時すぎから約40分間、今度は慎重派の「勉強会」が開かれました。私はこれまでのエントリで慎重派の「議連」と書いてきましたが、どうも、議連にすると最初から結論と目標を定めてその方向に突き進むという印象があるので、少し弱めて勉強会としたようです。民主党は与党のていたらくの結果、もしかすると次の衆院選で政権が転がり込んでくるかもしれないという大事なときにあるので、できるだけ波風立てたくない、党内政局にしたくないという配慮のようです。
まあ、推進派は党内をまとめて法案を提出すると明言しているのですから、正直なところ、慎重派は文字通り「慎重すぎる」と感じました。とはいえ、出席議員は23人と、推進派の20人弱に比べわずかに上回りました。会合では、党最高顧問の渡部恒三氏が代表世話人に就任したほか、推進派の動きに対し、「こういう大事な問題はもっと党内で議論すべきだ。いきなり議連でやるのではなく、党内の正式な部門会議などで開かれた議論をする必要がある」という意見が大勢を占めたようです。渡部氏は冒頭、こうあいさつしました。
《外国人参政権の問題は、長い間議論されてきたことであり、非常に大事なことだ。だからこそ、2点だけお願いしたい。一つは、初めに結論ありきではなく、国民の皆さんに問題が理解されるにはどうしたらいいかを勉強していくということ。二つめは、わが党はこれからいろいろあるというときに、党内にヒビが入るということのないように挙党一致でことに当たることだ》
また、西岡武夫氏のあいさつは《この問題は日本の国のありようにかかわる。私自身も真剣に取り組んでもらいたい》というものでした。…非常に気を遣っているのが分かりますね。きょうの勉強会では、基本的に参政権付与に反対の立場の議員が多いにもかかわらず、はっきりと自分は反対だと言っていたのは河村たかし氏ぐらいでした。河村氏は以下のように語っていました。
《民主党で最初に外国人参政権の議論が始まった7年前には、帰化するまでにはだいたい1年ぐらいかかったが、法務省に聞くと今は6カ月から10カ月、平均で6カ月ぐらいで帰化できる。言葉も(帰化の)動機も審査しないと言っていた。平成18年に帰化申請した1万5340人のうち、不許可になったのは255人だ。本当に帰化が難しいのか確かめる必要がある。外国人に選挙権を与えるということは、ちょっと考えると、これはなかなかのことだ。私は反対だが、しっかり考えないといけない》
会合で配布された参考資料に、河村氏が言及した「過去の帰化申請者数と帰化許可者の推移」(法務省民事局)についての表がありました。参考までに一部、過去5年分をここに掲載します。
帰化申請者数 うち韓国・朝鮮籍の者 不許可者数
平成14年 1万3344人 9188人 107人
15年 1万5666人 1万1778人 150人
16年 1万6790人 1万1031人 148人
17年 1万4666人 9689人 166人
18年 1万5340人 8531人 255人
河村氏ははっきりとした言い方はしませんでしたが、要は現在、帰化申請したほとんどの人がそれを認められて、別に帰化は手続き・要件的に難しくはないいことを、この数字は表しているように思います。また、松原仁氏は、日韓は相互主義の原則に基づき、韓国が永住権を持つ外国人に地方参政権を与えたのだから、日本も付与すべきだとの意見に対し、数字を挙げて反論していました。
《相互主義ということが議論されているが、韓国行政自治部によると、韓国にいる日本人6726人のうち有権者は100人だけだ。それに対し、日本で(在日韓国・朝鮮人の)特別永住者に地方参政権を与えると、その数は43万8974人にも上る。相互主義というが、数が全然違う》
この会合は最初は報道陣にもオープンだったのですが、途中から「内部で議論するから報道は出てください」と言われ、我々は会場の外で、例によって漏れ聞こえる声に耳をそばだてる「壁耳」にいそしみました。でも、議員たちも本気で議論を秘密にしようとまでは思っていなかったようで、だいたい話は外にも聞こえていました(マイクを持って話しているし)。そこで、「そもそも今なぜ、この問題が浮上してきたのか」ということが話題になり、松原氏はこんな風に意見を述べていました。
《ここでなぜ出てくるのか理解できない。考えられることは、政局を絡めた発想もあったかもしれない。この法案については、公明党は常に賛成であり、一方自民党はそうでもない。その温度差もあったのかもしれない》
また、長島昭久氏は、韓国の次期大統領の特使が来日して小沢代表と会談した際、小沢氏が参政権付与に前向きな発言をしたことがきっかけの一つかもしれないという見解を示した上で、こう指摘しました。
《もう一つ、推進派とされる人たちは、民主党のマニフェストではない政策インデックス、つまりマニフェストにまでいかなかった政策の中にある「民主党は結党時の『基本政策』に『定住外国人の地方参政権などを早期に実現する』と掲げており、これに基づいて永住外国人に地方選挙権を付与する法案を提出しました」を根拠にしている。しかし、そこにはこれに党内合意が得られたとは書いていない》
そうなんですよね。この「結党時の『基本政策』だ」という言い方は、鳩山幹事長が大韓民国民団などのアンケートに答えた回答の中でも言及しています。さて、これをどうとらえたらいいのか。私は会合後の記者ブリーフの場で、「鳩山氏はあちこちでこれに触れているが、勉強会としての認識はどうなのか」と聞いてみました。これに対し、松原氏の答えは次のようでした。
松原氏 確かに民主党は平成12年7月にはその法案を提出している。しかし、同年12月には党内有志が勉強会を設立し、その後、党内での再検討と国籍要件緩和試案の党内期間での取り扱いを要請し、これらは並立して扱うと部門会議で結論が出た。結党以来、ずっと党としてそういう認識であったということはありえない。機会があれば鳩山幹事長にもはっきりそう言う。最初はそうだったかもしれないが、今の民主党で決めたという話ではない。
ここらへんの両氏の認識の相違が今後、どうなっていくのか注目したいと思います。この勉強会は、推進派議連が活動を停止し、議論がきちんと党の公式の場で行われるのであれば、今後は特に活動しないが、そうでなければ鄭大均氏ら有識者を招いてヒヤリングなども行っていくとのことです。長島氏は《推進派は議員立法をつくるというよりも、まず党内で議論をすべきだ。どうしても議員立法でというのなら、せめて超党派でやってほしい》とも言っていました。でもまあ、推進派がそう大人しく引っ込むとも思えませんね。渡辺周氏の次の言葉も印象的でした。
《この問題は極めて国家の根幹にかかわるが、一般国民の関心が高いとは言えない。国民は考えていないというか、分からないというのに近い。だからこそ国会で議論しなければならない。政策論として、国民の皆さんに見える形で議論したい》
…我々記者が壁耳をしている際に、民社党の松本剛明氏(元政調会長)が我々を押しのけるように会場に入ろうとドアを開け、中を覗いた後に「この部屋は違うね。入ったらえらいことになる」とつぶやいて去っていきました。ありていに言えば間違えただけでしょうが、この会合のある種の位置づけを感じさせる発言ではありました。
一方の自民党側では、昨日、きょうと人権擁護法案推進の動きがちらほら見え隠れしています。事態はいろいろと新たな展開を見せつつあるようです。目が離せないことが多くなってきました。