2008年02月


 本日はあの「人権擁護法案」という名の言論・人権弾圧法案について話し合う自民党の人権問題調査会が約2週間ぶりに開かれました。きょうは何かが決まったというわけではなく、法務省側の説明があり、それに対して質疑や意見表明があったようです。そこで、細かい会合でのやりとりはともかく、第1報として、現場の雰囲気と太田誠一会長のあいさつ、記者団への事後ブリーフなどをまず報告します。きょうは、自民党本部の前で、この法案に反対するみなさんが活動していました。若い人が多いのが目につきました。

    


   

   
   

 何を訴えているかは、垂れ幕などに書いてある通りなので触れませんが、頑張ってほしいものです。私のブログでは、自治労や日教組、革マルなどが国会前にたむろしている写真は何度も掲載してきましたが、こうした逆の立場のみなさんの写真を載せるのは珍しいのです。といって避けているわけではなく、やはり国会周辺はサヨク陣営の方が多数派で目立つということです。このみなさんの声は、自民党議員たちに届いたかどうか…。ただ、多くの何も考えていない議員たちに、「国民はこの問題に関心があるんだ」と分からせる効果があったならば、それだけでも意味があったと思います。

 配られていたチラシには、「『人権侵害だ!』との訴えさえあれば、捜査令状もないままに立ち入りと証拠の押収をされる。誰もこの横暴に抵抗できない。警察すら手を出せない。民主主義を支える言論・表現の自由を圧殺する究極の法案、それが人権の名を借りた『人権擁護法案』である」とありました。場所柄、通行人はあまり多くないのですが、何人ぐらいの人が読んでくれたでしょうか。

   

 で、これが党本部701会議室で開催された人権問題調査会会合の様子です。冒頭、太田会長は次のようなあいさつをしました。太田氏のブログは反対意見の書き込みでほぼ炎上状態になっていますが、自民党関係者によれば、「本人は余り気にしていない様子だ。むしろ(人権擁護法案推進派の中心人物の)古賀誠さんや野中広務さんの方が恐ろしいのだろう」ということです。実際どうなのかは分かりませんが、このあいさつを読む限り、まだまだやる気満々ですね。

 《今日はまた豪華なお顔ぶれで、出席、ありがとうございます。先々週開きまして、それに対して的確に提案者であります法務省政府側から、最初の出発点にかえってお答えするということで、ちょっと時間がかかりましたけども、今日、開かせていただきました。私も、この法律が提案されるまでの相当期間関わっておりましたので、必然の流れとしてはやっぱり形はちゃんとつけていかないといけない。そういうふうにして、われわれ自身も人権の問題について、自らを律していくという姿勢も必要でありますし、またよその国に対して日本はこうやっているということを胸を張って言えなければいけないということだと思っております。そして中身についてはさまざまなご意見を踏まえてきちんとまたやり直させていただくということであろうと思っております。
 特に人権の救済ということから言えば、差別される側、虐待される側というのは弱者の立場でありますし、また自分から声高に自分の権利を主張するということができにくい立場の人たちでありますので、われわれはどちらかというと、差別され、虐待される側に身を置かなかったものでございますから、足を踏んだ方だと。足を踏まれた方の痛みが分からない方なので、そこは余計に手をさしのべていく必要がある。あっせんや調停という手段がとれるように、手当をしておくことが大事だと思っております。結果としてこういう仕組みをつくってもほとんど該当することがないということが望ましいのでございまして、大繁盛するということを期待をしているわけではないわけでございます。よろしくまた、今日はご議論をお願いします。》

 …会合中、会場内には記者は入れませんが、出席していた関係者によると、「議論については、法案反対派の圧勝だった」ということです。今回は、法務省が、「現行制度の限界の具体例」というものを出してきました。例えば、「学校による障害者等に対する入学拒否」、「家庭内における(高齢者に対する)暴力、介護の放棄」などですが、これに対して、出席議員側からそれはおかしいという意見が相次いだということです。

 前者の入学拒否については文部科学省の問題であるし、後者の高齢者虐待に関しては現在、厚生労働省が議論を重ねており、そもそも素人の法務省に何が分かるのか、というわけです。「法務省は他省庁を無能扱いするのか」という趣旨の意見が多く出たそうですが、法務省側はうまく答えられなかったと言います。また、会合後の記者ブリーフは次のようでした(敬称略)。

 《太田:今年に入ってからの二回目の人権問題調査会を行った。法務省の方から前回では質問、ご意見に対して自分たちとしてはこう思っているとか、これまでの経過について説明をしてもらって、またそれに対する質疑をしてもらったところ。法務省からは、なぜ今、人権救済に関する法律を出さなければいけないのかという背景の説明がありました。一つは人権擁護施策推進法という法律があったんですけども、施策推進法で救済に努めるものとする規定がありますので、そのことでずっと積み上げてきたものだという説明がありました。また、現在の法律や現在の人権擁護局の制度ではカバーしきれないさまざまなケースというものについて説明がありました。
 法律の各個別のケースについては法律がそれぞれあるものもあるし、ないものもある。しかしながら、等しく言えることは、弱い立場、弱者の立場からすると訴訟を自ら起こすというようなことは特に弱い立場の人たちからは出来にくい。それに対して訴訟の前の調停や斡旋といったことができるようにすべきだと。相当ハードルが高いということで調整、斡旋ができるようにした方がいいと。あるいは、訴訟にするときに、人権擁護機関が援助した方がいいということがあるんで、したがって、それを支援するようなそういう機関が必要であるという説明でありました。
 そういう説明に対して、各議員から意見の開陳が行われまして、そういうふうにしていくと過剰な反応が起きることを心配する、特に差別をしたとされるものの人権は守れないというふうな、さまざまな懸念が表明された。

 鶴保庸介事務局長:ちょっと補足だけ。最後の、会長がおっしゃった部分で、この法律についての逆差別は、逆差別されたものの人権、差別したと言われている側の人権につながるとの法務省の答弁もあったことを補充しておきたいと思います。

 記者
:最後に、太田会長から、今後は有識者の意見も聞きながら、という話をされていたようだが

 太田
:議員だけで話しているんじゃなくて、まあ、こういう場合には、参考人的な人に来てもらって話を聞くということも必要だと。

 鶴保:それと現場の声、現場でどんな問題が起きていてそれにどう対処しなければいけないかということを、もう少し詳しく議論しなきゃいけないという話がありましたので、有識者、あるいはその現場のことを知ってらっしゃる方々にも、法務省ではない方々にも、来ていただくという機会も設けられればなあ。

 

記者:賛成の人、反対の人、いずれも?

 

鶴保:まあ、そうですね。賛成とか反対じゃなくて、現場を客観的にできるだけ知ろうと。

 

記者:今後は何回か有識者の方から話を聞くのか

 

太田:そう、そう。

 

記者:だいたい時期的にはどのくらいまでヒアリングをするのか

 

太田:まとめてやりゃ一回で終わるかもしれませんし。

 

記者:現場を知っている方とは、例えば人権擁護委員とかか

 

鶴保:前回はそうやってやりました。平成17年のときはね。まあそれはまた会長と諮って考えたいと思います。

 

記者:賛成意見と反対意見、それぞれ代表的なものを紹介してください。

 

鶴保:あの、反対意見は、現行法じゃなぜだめなのかっていうことですね。で、賛成意見は、さっきも言いました、逆差別されているものの人権を守れないじゃないかということです。

 

記者:何人が賛成意見を言ったのか

 

鶴保賛成はそんなに。賛成!って言ってくれる人なんていませんよ。そんな。法案のたたき台を出してそれについて問題点を拾い上げている段階ですから、問題点を言うということは勢い反対のように聞こえますよね。どうしていくかという話ですから。

 

記者:今日合意に達した事柄はないか

 

太田:ありません。

 

記者:今国会に法案を提出するという方向性は変わらないか

 

太田:まあ、その、そういうふうに言うとですね、何て言うか、反発をする人がいるので、そういうふうには言わない。

 

記者:報道関係条項についてはどんな意見があったのか

 

太田:今日はなかったですね。前回は報道関係条項を外すべきだという意見と、そこだけ外しちゃいけないという意見と両方ありましたけどね。

 

記者:国籍条項については

 

太田:今日は国籍条項なかったですね。

 

鶴保:あの、今日は中身についての議論はしませんでしたから。入り口の議論ばっかりですね。

 

記者:何回か議論を続けられているが、やはり入り口での反対論が相変わらず

 

鶴保:多いですね。だから、今までずっとそれが、ぐちゃぐちゃにね、なってきましたから、だから議論が全然整理されないんですよ。この法案だめだ、人権擁護の制度設計もだめだと、そういう話になっちゃっているわけですよね。それとこれとはまた別で、制度設計しなければいけないという前提があって、じゃあ、どうするんだというその二つだと思いますから。

 

記者:入り口でずっとごちゃごちゃしてしまっている状況をどういうふうにして打開しよう思っているのか

 

鶴保:いや、だから、現場の声を聞き、問題点があるんなら、どうやって拾っていこうかと。その問題が本当に今のままでダメなのかどうか、それをちゃんと調べようと。調査会ですから、われわれは。

 

記者:反対論の人はそれに対して入り口のところで反対すると思う

 

鶴保:そうですね。まあ、反対論というか問題点の指摘をなさる方の多くは、なぜ現行法じゃだめなんだということを言っておられる。

 

記者:平行線が続いてしまう可能性がある

 

鶴保:可能性としてはないことは、ないですけれど、現実にわれわれ党として調査会を置いて、調査しなければいけないと言ってるのは、党の意思ですから、問題がなければ別に調査会を置いてする必要ありませんので。

 

記者:次回から有識者のヒアリングか

 

太田:日程とか合わせなくちゃいけない。次回、間に合えば。

 

記者:次回はいつごろか

 

太田:来週か、再来週。まあ、ねばり強く。(了)》

 …推進派の鶴保氏が「賛成!って言ってくれる人なんていませんよ」と認めているような状況なのに、それでも粛々と、かつ無理無理にでも話を進めようという意欲が伝わるブリーフだなと感じました。まったく本当にしつこいというか。これだけ反対があるにもかかわらず、自民党内に人権擁護法案を進めたいという動きが根強い背景に関しては、16日のエントリ「真・保守政策研究会で平沼氏が明かした人権擁護法案の裏」と18日のエントリ「人権擁護法案と山崎拓氏の選挙をめぐる『密約』」でいろいろと書いたので、きょうは繰り返しませんが…。

 法務省や推進派の議員は、最近は、部落解放同盟などによる糾弾会のようなことをやめさせるためにも、新たな法的枠組みが必要なのだという説明にシフトしてきたとも聞いています。この人権擁護法案の件は、一回のエントリでは書ききれないので次のエントリに続きます。
 


 なぜ、政治家は中国が好きなのか。これは物心ついたころからずっと、中国について頭の上に重くのしかかる分厚い雲のような存在だと認識してきた私には本当に謎なのです。ですが、日本の国会が「親中派はいくらでもいるが、親米派と言える議員はいない」(在日米軍筋)と言われる状況にあるのも事実だろうと思います。米国を恐れ、米国の前では縮こまる議員はたくさんいますが、彼らは必ずしも「親米」ではないし。

 一方、親中派はというと、中国の対日政策責任者が「7人のサムライ」と呼んで頼りにしている自民党議員もいますね。これは2年前の段階での話なので、現在は序列が変わっているかもしれませんが、当時は①河野洋平②福田康夫③野田毅④二階俊博⑤加藤紘一⑥山崎拓⑦高村正彦…の各氏がそれで、順位は「親中」の度合いと期待度だと言われていました。この順位が妥当かどうかは分かりませんが、福田氏は中国側の期待通り、首相になったので、現在は1位になったかもしれませんね。河野、二階、高村各氏も今、要職についています。山崎氏も不必要なぐらいに元気そうに見えますね。

 それぞれ「親中」になった理由は経緯はバラバラでしょうが、こうし確信的な親中派がいる一方、確かに彼らに見合うような親米派は見あたりません。これは長年にわたる中国の対日工作のなせるわざなのか、ハニートラップにでも引っかかったのか、それともよぼとおいしい見返りがあるのか。米ランド研究所がまとめた報告書「中国の政治交渉行動様式」は、次のように記しているそうです。

 《中国と個人的関係を結んだ外国政治家は、その国では「中国に食い込んだ人物」とか「中国にパイプを持つ人物」とされており、中国側とのきずなが自国側での地位や評判の基礎となる》《その種の政治家は中国とのきずな保持による自分の名声を崩さないため、中国の要求を実現させようと懸命になる》

 …また前ふりが長くなってしまいました。さて本題に入ります。記者発表などはされていませんが、今月21日に山形県の斎藤弘知事が外務省を訪れ、高村外相と藪中外務次官の部屋を訪れて、ある要請文を渡しました。都道府県知事が外務省を訪問すること自体あまりないことであり、知事は果たして何を要請したのか興味を覚えるところです。山形には米軍基地もありませんし。

 で、結局それは、加藤紘一氏の意を受けたもので、4月に訪日が予定されている中国の胡錦涛国家主席の訪問先に、ぜひ山形県を加えてほしいという内容だったということが分かりました。斎藤知事は、選挙で加藤氏の支援を受けるなどして、何かと頭が上がらない立場だと言いますが…。

 胡主席の訪日時には、加藤氏の宏池会時代のライバルであり、かつ親中派としても競合関係にある河野氏が、当然のことながら衆院議長として胡氏を接遇することでしょう。加藤氏としては、河野氏に遅れはとりたくない、何とかして自分も胡氏と接触し、親中派の巨頭としての面目をほどこしたいと考えたのでしょうか。この二人は、片方が訪中すると、もう片方も後を追うように訪中して中国様のご機嫌をうかがうという関係にありますし。河野氏ばかりが胡氏と並んでにこにこ笑って映像に納まるのは認め難いと思ったのか。

 外務省としては、こういう政治家らからの公式・非公式の要請は、一応、中国側に伝えるそうですが、行くかどうかを判断するのはあくまで中国側だそうです。各種世論調査では、最近は日本人はあまり中国に好感を持っていないという結果が出ていますが、中国要人が来るのは大歓迎という地方が多いようです。というわけで、私には不思議で仕方ないのですが、相手が中国だと、この手の要請がたくさん舞い込むのだといいます。さすがに、加藤氏のように地元県知事を使い、外相を訪問させてまで頼んでくるということは、非常に珍しいようですが。よくやるよ、と言うべきかどうか。

 なぜ胡主席を来県を求めるのか、山形県庁に聞いてみたところ、「山形特産の紅花はシルクロードから伝来したこともあり、コメも中国から伝わったし、人的な交流、かかわりもあり…」と分かったような分からないような話でした。さて、胡主席が来日時、山形を訪問するかどうか注目ですね。すでに奈良訪問は予定されていますから、実際は難しいのではないかと思いますが、もし胡氏が山形にまで足を延ばしたとしたら、中国側が加藤氏の存在を重視している表れになります。


 本日はまず、ささやかなニュースから。無所属の西村真悟衆院議員が近く、イザ内にブログを開くそうです。これは楽しみですね。コメントは受け付けるのかなど詳細はまだ分かりませんが、まずは第一報までです。

 さて、その西村氏はかつては民主党の小沢代表と行動をともにし、小沢氏のことを尊敬すらしているように見えましたが、近年は小沢氏から離れ、むしろ小沢氏を批判する立場になっていますね。私が今さら指摘するまでもなく有名なことですが、小沢氏の周囲にいたほとんどの人はやがて彼の勝手さやわがまま、猜疑心に耐えられなくなって離れていきます。

 4月号の「WiLL」でも、元側近の小池百合子氏が「小沢一郎はなぜ嫌われるか」という比較的穏当な表現で小沢氏について批評していますが、本音はもっと厳しいところにあるのでしょうね。首相補佐官時代には、政治評論家の屋山太郎氏が思いついた小沢一郎という名前をもじった「小沢自治労」というネーミングを盛んに流行らせようとしていた(記者懇談で自分から言い出したりしていました)ぐらいですから。

 ともあれ、その西村氏は今から10年余り前、平成9年12月の新進党の党首選挙(小沢氏も立候補していました)の際に、小沢氏に対して次のような手紙を出していました。これは当時、新進党議員らにも届けられていたものですが、私はいま改めてこれを読んで、日本の政治は10年前と変わっていないなあと感じました。新進党も、その後できた自由党も今はなく、小沢氏は民主党代表に納まっていますが、政治のあり方は進歩していないように思います。以下が手紙の内容です。

                         平成9年12月15日
   小沢一郎党首殿
                               西村真悟
 私が、今回の党首選にいたる経緯から懐くに至った志は、以下のとおりです。お心に御留め置きいただければ深甚です。もはや、きれいごとではなく、本音を語る時です。そして、時局は、我が党が、きれいごとを語る集団を、削ぎ落とすことこそ、国家のためであると教えています。

 1、我々は、「政党の創造」過程にある。
 2、如何なる政党を創造するか。それは、戦後生まれ得なかった政党である。つまり、「55年体制」とある時はいわれ、ある時は、「自民・非自民」といわれたとしても、これらは、結局、戦後精神から、一歩も出ようとしない与野党にまたがる政治勢力である。これらと次元の異なる政党こそ創造に値する。
 3、では、戦後の諸政党は、何を見ていなかったのか。それは、阪神大震災で明らかなように、「危機における最大の福祉は国防」であるということ、つまり、国家と国民をまもるための「国防」の体制の建設に眼を開いていなかったのだ。これはつまり、「普通の民主主義国家」とは何か、ということを考えずに戦後生きてきたのが我が国の政党であったということである。
 4、よって、我が党は、小沢党首とともに、明確に「国防の基軸」、「国益の基軸」を打ち建てる時期に来たと確信する。具体的には、集団的自衛権を行使しえる「普通の民主主義国家」建設を明確に掲げるべきだと確信する。
 5、我々は、議員に「就職」しているのではない。

 …しかし、この西村氏の訴えは、小沢氏の胸には届かなかったということでしょうね。西村氏は私に対し、「あれから時代が変わり、大きくうねっている中で、小沢氏の姿勢はむしろ退歩している」と語っていました。現在では、小沢氏とそれを支える民主党の旧社会党系勢力は、戦後精神こそ至上至高であるかのように振る舞っているようにすら感じられます。また、「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍自民党が敗れた参院選後の自民、民主両党は、大連立の模索も何もかも、西村氏の言う「戦後精神から、一歩も出ようとしない与野党にまたがる政治勢力」そのもののような気もします。

 で、西村氏がこの手紙を書いたころ、現在は民主党最高顧問を務める渡部恒三氏は雑誌「GENDAI」のインタビュー(平成10年1月号)に答え、「新進党は小沢一郎の私党ではない」と語っていました。インタビューの中で渡部氏は、次のように述べています。さて、10年前と今とでは、小沢氏は変わったのでしょうか。私には、このインタビューが最近のものであっても、そう違和感がないように思えましたが。

 「小沢さんとともに命を賭けて自民党を飛び出したつもりだったが、その後の彼の行動を見ていると、二大政党制という夢の実現に努力している様子がないのは、非常に寂しい。選挙結果についても、執行部にはなぜ負けたのかについての反省がなく、党首に責任はないという話ばかり報道される。小沢さんと新進党には、反省と謙虚さを求めたい」

 「問題は、政策ではなくて政治姿勢だ。小沢さんには、明るく爽やかな政治家になってくれればと常に思っている。野党の党首は、一人でも多くの国民に党の考え方をアピールする必要がある。そのためには、積極的にマスコミにも出て、ミニ集会にも顔を出さなくちゃダメだ。元首相の吉田茂さんなら新聞記者に会わなくても通用したが、社会党の浅沼稲次郎委員長は寝る間も惜しんで演説して歩いた。小沢さんは浅沼さんにならなければいけないのに、これまでの行動を見ると、野党の党首にはふさわしくなかったね。かつての竹下派のプリンスの顔はかなぐり捨てて、野党の政治家になってほしいなあ。神様に祈っています」

 …ちなみに、最近の小沢氏の記者会見の様子は、「新進党時代に戻った」という評判です。どこがかというと、記者の質問にすぐむきになり、記者にくってかかり、怒鳴るというところがです。ただ、10年前は記者会見の時間に姿を見せず、30分近くたってから「本日の会見は中止となりました」という連絡がきたそうですが、最近は時間通り現れる点は昔と違うそうです。彼にしてみれば大きな進歩かもしれません。

 26日の産経が掲載したフジテレビと産経の合同世論調査では、小沢氏を政治家として評価する人は26.5%にとどまり、逆に評価しない人はその倍以上の58.2%に上りました。現在の民主党幹部はほぼ全員が、「小沢神話」に惑わされてか小沢氏続投支持を表明していますが、この数字をみて「あれっ、当てが外れた」と思っている人がいるかもしれません。国民の方が冷静に見ているようです。

 でも、福田内閣の支持率もとうとう三割を切り、28.7%と相変わらず低落を続けています。この数字は、昨年7月の参院選前の安倍内閣の支持率(29.1%)より低いのですから、自民党にとってはけっこう深刻でしょうね。当時、あれだけマスコミに中傷され、たたかれまくっていた安倍内閣の支持率より、マスコミから比較的温かい扱いを受けている福田内閣の支持率の方が低いというのは、どういうものでしょうね。この先、政権が浮揚する材料も見あたりませんし。

 今朝の産経抄は「二大政党の党首がそろって国民にそっぽを向かれている」と書いていましたが、現在の自民党と民主党は互いに切磋琢磨しているというよりも、はっきり言ってどちらがよりダメであるかダメさを競い合っているように写ります。こういう有様では、政治に関心を持たない人が増えても、仕方がないのかもしれません。自分自身の心境を振り返り、そんな気すらします。政界は10年前から何も進歩していないのか、それとも逆に退歩しているのか。それはよく分かりませんが、日本を取り巻く国際環境が10年前よりはるかに厳しくなっていることだけは事実だと思います。


 先日、たまには読書シリーズを再開しろとのコメントをいただきましたので、きょうは勝手に恒例と位置づけている最近読んだ本についてまず、紹介したいと思います。といって、例によってたいした本は読んでいない上、今月は私生活でいろいろあったため、読書量がいつもより少なかったので、ついでに独断と偏見に基づき読書案内のまねごともしてみたいと思います。

 まずは、「このミステリーがすごい」大賞を受賞した「禁断のパンダ」という作品から。作者は知らなかったのですが、けっこう期待をもって読み始め、最初の3分の1ぐらいまではとても面白く、これは当たりだと思って読み進めました。ただ、その後はだんだん必然性の感じられないストーリー展開と、無意味にキャラがたっているだけで、共感の感じられない登場人物の暴走についていけず…。最後まで読んでみて、正直なところ甚だ完成度が低い作品だと感じました。「美味」の描写は斬新で非常によかったのですが。

 

 次は、私が好きな作家の一人である北森鴻氏の「香菜里屋を知っていますか」です。これは「桜宵」「蛍坂」に続く「香菜里屋」シリーズの完結編であり、またビールを飲みながらゆるゆると楽しめるシリーズ本が一つ減ってしまいました。この作家では、SF伝奇漫画の巨匠、諸星大二郎氏の「妖怪ハンター」シリーズを意識した民俗学専攻の大学教授、「蓮丈那智フィールドファイル」シリーズの新刊が出るのを楽しみにしています。このシリーズは女優、木村多江さんの主演でテレビドラマ化もされましたが、なかなか蓮丈教授役が似合っていました。

 

 で、またかと思われるかもしれませんが、前回の本紹介のエントリに引き続いて今野敏氏の作品です。とりあえず、いま片っ端から読んでいるので同じ作家ばかり紹介することになり心苦しいのですが、はまってしまったので仕方がありません。ちなみに、都市銀行社員の誘拐事件を描いたこの作品では、脇役ながら新聞記者がけっこう大事な役柄で登場するので、割と親近感を持って読めました。記者の取材のやり方など細部ではちょっと違うな、とも感じましたが、目くじら立てるほどではありませんし。

 

 ここからは最近、電車の中や取材の待ち時間その他、暇があったら読んでいる「東京湾臨海署安積班」シリーズです。外見は重厚で周囲の信頼が厚いながらも、実は常に他人の反応を気にする小心なところがある安積警部補と、それぞれ一癖あるその部下たちが次々に起きる事件に立ち向かうというストーリーで、とにかく安定感のあるおもしろさです。この今野という作者は、つくづく小説職人だなあと感心します。

 

 

 さて、これだけではちょっと寂しいので、本日は私が愛読し、尊敬している時代小説作家、藤沢周平氏の作品の中から、何度も何度も読み返した作品を紹介します。この、とてつもなく完成度の高い物語を、これ以上は望めないくらい美しい日本語でつづってきた作家が、11年前に亡くなってしまい、もう新作が読めないのがとても残念です。私は、特に藤沢氏の連作短編集が好きで、2、3年の期間をあけては繰り返し読んでいます。すると、細かいストーリー展開はある程度忘れているので、また楽しめるという具合です。以下、お薦めの作品です。

 ①「用心棒日月抄」(4巻)…これは七、八回は読んだでしょうか。一作一作が本当に味わい深く、登場人物の一人ひとりも心に残ります。藤沢氏の作品は、情景が具体的に目に浮かぶようなことが多いのですが、これもまさにそんな作品です。最終巻の色調がちょっと暗いのが残念でしたが。
 ②「監医立花登手控え」(4巻)…これは主人公の若さが物語全体を明るくしていて、変な表現ですが安心して読めます。藤沢氏は特に初期作品は、世の悲惨な部分にスポットを当てた暗い感じの作品が多いのですが、この作品は主人公が前途への希望をふくらませる形で終わります。
 ③「よろずや平四郎活人剣」(上下)…私の趣味で申し訳ありませんが、これも基本的に明るい話です。用心棒シリーズと少し似たところがありますが、主人公が若く、背負っている背景も用心棒シリーズほど深刻ではないので、気楽に読めますが、出てくる登場人物の造形はさすがだとしか言いようがありません。悪役の元締めの迫力、怖さを表した描写には、本当に瞠目させられました。
 ④「三屋清左衛門残日録」…家督を譲り、隠居の身となった老武士の寂しい心境と、しかしそれでもいろいろな出来事に遭遇し、活躍する姿を描いた作品です。これは同じ時代小説家の白石一郎の「十時半睡」シリーズと共通するところもありますが、それぞれの作家の個性からか、味わいは全く異なりますね。
 ⑤「蝉しぐれ」…これは言わずと知れた名作中の名作ですね。私はこれを初めて読んだとき、続きが読みたくてとまらない小説のおもしろさとともに、日本語の美の一つの到達点を見た気がしました。この本は藤沢ファンを増やすための布教の書として、何人もの人に勧め、そのうち半分ぐらいはその後藤沢小説にはまっていきました。
 ⑥「春秋山伏記」…これは作者の故郷、山形県の農村部を舞台にした若い山伏の活躍を描いた作品です。裏表紙の作品紹介に「エロチックな人間模様」とあったのでかえって敬遠していて、読んでみたらそんな部分は全然強調されておらず、これを書いたであろう編集者は何を考えているのか、むしろ読者をこの面白い作品から遠ざけただけではないかと感じたことがありました。やはり藤沢ファンの友人にそれを話すと、彼も同じことを考えたと言っていました。
 ⑦「彫師伊之助捕物覚え」(3巻)…このシリーズはハードボイルドタッチで、従って決して明るくはないのですが、ぐんぐん引き込まれました。特に第一作「消えた女」のラストシーンは深く心に残りました。私は警視庁担当記者時代、特ダネのろくにとれないできの悪い記者でしたが、読んでいてその当時の事件の地取り取材時のことを思い出したぐらい、伊之助の探索はリアルに感じました。
 ⑧「風の果て」(上下)…かつては同じ軽輩の子として同じ剣術道場に通った仲間が、いつしか一人は立身出世を遂げ、一人はいまだに部屋住みの厄介者のまま。そして二人は斬り合うことに…。私は観ていませんが、最近これもテレビドラマ化されたようですね。正統派の時代小説といった赴きがあります。
 ⑨「秘太刀馬の骨」…筆頭家老暗殺に使われた幻の剣「馬の骨」の秘密を探索するよう命じられた若い侍が、藩内の剣客一人ひとりと立ち会っていくうちに、藩内の熾烈な抗争の存在が浮かび上がってきます。表題の秘太刀の使い手、継承者とは果たしてだれか。意外な結末が待ち受けています。
 ⑩お薦めの短編…藤沢氏の作品は外れはありませんが、個人的に強い印象を受け、何度も好んで読み返しているのが、ギャンブルに一度はまったことがある者なら身につまされる「暁のひかり」、全編これ痛快な「臍曲がり新左」、父と娘の細そうでいて強い絆を描いた「入墨」などがあります。初めて藤沢作品に出会った20代終わりごろは、毎日毎日、傑作・名作を読めて幸せでしたが、やがて全部読み尽くしてしまい、とても寂しい思いをしたものでした。

 ついでに言えば、私は山田洋次監督が手がけている「映画の」藤沢作品は好きではありません。山田監督流の「階級史観」「虐げられた庶民・下級武士史観」が必要以上に強すぎて、原作の爽やかさがきれいに消えて、重苦しく嫌味のあるものになっているような気がして…。好きな方がいたらごめんなさい。

 おまけに、私が繰り返して読んでいる漫画の名作を一つ。いろいろもめ事があったらしく、現在は絶版扱いらしいので、あまり一般書店では見ることはないと思いますが、この「マスター・キートン」(18巻)は、やはり時間をおいて何度も読み、そのたびに「名作だ」と感心しています。主人公は日英ハーフの保険調査員で、大学で考古学を教える講師でもありますが、実は英国特殊空挺部隊(SAS)のサバイバル教官だった経歴もあり…。浦沢直樹という人は、本当に才能豊かな人なのだろうと思います。

 


 福田首相は昨日、韓国新大統領就任式への出席を前に、韓国報道機関の共同インタビューを受けました。その中で、永住外国人への地方参政権付与法案への対応を聞かれ、とりあえずは慎重姿勢を示しました。産経政治面(最終版)も「首相、在日外国人の参政権慎重」と報じています。しかし、韓国記者とのQ&Aを読んでみると、福田氏が本心ではこの法案に賛成であることがうかがえます。そのやりとりは次の通りです。

 中央日報記者 外国人参政権問題について、前向きな考えを持っているのか。

 

 福田氏  在日韓国人への参政権付与の問題は、在日韓国人の方から強い要望があることは承知している。私も何度も相談を受けたことがある。しかし、このことは国の制度の基本に関わることなので、もう少し国民の間でよく議論させてもらいたい。軽々に引き受けられるとは申しあげられない。しかし、実行するときには実行したい

 この「実行したい」の部分を記事にしていたのは、私が見る限り読売だけ(見出しにはとっていませんが)でした。今朝の読売は社説でも「たとえ地方であっても、外国人に参政権を認めることはできない」と書いており、GJだと思います。

 私が何度も書いてきたように、福田氏は「波風立てるのを嫌う」政治家であり、かつ外国人参政権を推進すると党内外の保守派の反発を買うことを承知しているので、当面はやる気がないと述べています。でも、福田氏本人が「最低4年はやる」と言っているように、長期政権になれば、外国人参政権付与も実行したいという考えを持っているようです。

 この問題では、わざわざ福田氏の前に李明博次期大統領に会いに行った民主党の小沢代表が「実現したい」と李氏に明言しました。最大野党のトップで次期首相の可能性もある人物が、韓国の元首となる人物にこういうことを言ったことに関しては、外務省幹部も「国益を損ねる」と怒っていましたが…。

 ちなみに、昨日夜の福田氏と記者団のやりとりはこうでした。

 

 記者 小沢代表がイミョンバクと会談し、外国人地方参政権法案の早期成立が望ましいと発言。この問題についての総理の考えを

 

 福田氏 この問題は、私も何度も、なんとかなりませんかと相談を在日の韓国人から受けている。しかしながら、難しいのは、日本の制度の基本、根幹にかかわる問題なんですよ。ですから、よくね、今後も議論して、よい結論を求めていかなければならないと思いますが、ちょっとね、その議論が足りないと思ってます。

 

 記者 訪韓の際には言及する予定はあるか

 

 福田氏 これは、話として提示されればそういう趣旨の話をするしかないと思っております。軽々にね、じゃあお引き受けします、そういうふうにしましょう、っていうわけにはいかないと思いますよ。》

 ここでも慎重姿勢は崩していませんが、外国人参政権自体に否定的ではないことはうかがえます。おそらく、自民党内で議論されている人権擁護法案に対しても、反発を恐れて推進を明言しないだけで、本心は賛成なのだろうと見ています。それは、福田氏のこれまでの言動や政治姿勢から間違いないと思います。

 なんだかなあ、と世を憂いたくなる気持ちですが、昨日はもう一つ、うろんな動きがありました。私が今月15日のエントリ「民主党・『北朝鮮友好議連』(?!)が発足します」で紹介した「朝鮮半島問題研究会」が初会合を開いたのです。今朝の産経は、政治面4段で「対北『融和』議連が発足 民主有志ら 自民との連携視野」と報じています。

 私は昨日も忙しくて取材に行けませんでしたが、記事には「対話の一環として北朝鮮訪問を検討するほか自民党側で訪朝を模索している同党朝鮮問題小委員会の山崎拓最高顧問(元党副総裁)らと連携する方針」
「(会長の)岩国氏は、小沢一郎代表の訪朝の将来的な実現に期待感を表明」「岩国氏は来週にも山崎氏と会談し、自民党との超党派訪朝団も含め、連携について協議する考えだ」 などと書かれています。あーあ。やはりそうでした。

 安倍政権が倒れたら、こういうことになるのは分かり切っていましたが、もうなんとかならないものでしょうか。いまさら言っても無意味な話でしょうが、サヨクメディアのネガティブキャンペーンに乗せられて、安易に安倍政権を批判し、足を引っ張っていた保守系言論人の顔が次々に浮かびます。別にあの参院選の結果は、彼らのせいだとまでは言いませんが、なんだか八つ当たりしたい気分です…。ちなみに、明日放送のフジテレビ報道2001の調査では、福田内閣の支持率はとうとう2割台に落ち込んでいるようです。

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