2008年03月


 外務省の記者クラブで国会中継(参院予算委)を見ていたら、自民党の山本一太氏によるチベット問題と胡錦濤国家主席訪日に関する質問に対し、福田首相が答弁する場面がありました。さて、親中派というよりも、頼る相手が中国しかいないと言われている福田氏がどう答えるかと注目してみたのですが、やはり、というか何というか、福田氏の言葉は中国様に気を遣い、慮るあまりに意味不明なものでした。山本氏と福田氏とのやりとりは以下の通りですが、何ですかね、これは。

 《山本氏 首相に聞くが、胡錦濤主席が来日し日本で日中首脳会談をやることは大変意義深いことであり、日中関係を進化させていくことにも必要なプロセスだ。ただ、首相が5月に胡錦濤国家主席を日本に迎えたときに、もしチベット情勢がなかなか沈静化しないということであれば、総理からも胡錦濤主席に対して、この問題について例えば当事者間の対話を促すとか、そういうことを主席に申し入れるというか、アドバイスする考えをもっているか

 

 福田首相 日中関係を先程来申し上げているように、どうやってこれから良い面をお互いに見つけて、そしてそれを伸ばしていくかの観点でおつきあいしていくということができるかどうかということが非常に大事だ。だから、そういう観点から、(※1)互いを非難するとかそういう関係ではない、もう少し前向きなかたちでこの関係を続けていくにはどうするかということは、お互いの首脳同士がよく考えているところだと思う。
 どんなにうまくいっていても問題はある。仲のいい、そしてまた非常に、例えば、夫婦だって仲良くなければいかんのだけどね、しかし、いろいろ問題ありますよね。朝から晩までというときもあるかもしれないが(福田氏ここで自分で笑う)、そういうような一体でなきゃいかんという関係だって、そんな問題があるんだから、だから国が違えば意見が食い違うのはあって当然だ。
 そして(※2)相手が、もし日本が間違っていることをしているというときには、例えば中国は日本ちょっと間違っているよと言ってくれるぐらいの関係、逆に日本が中国に対して、中国はこうしたらいいんじゃないのというようなことが言えるぐらいな関係ができれば最高だ。
 夫婦関係もなかなかそこまで言えなくて苦労しているところだが(会場笑)、そういう関係をつくるために、私は(※3)チベットの問題についても、率直な意見交換がもし必要ならばの話だが、必要ならば、そういうことを率直に言い合えるような関係にするべく努力をしてまいりたい。》

 …山本氏のごく当たり前の質問に対し、福田氏は話をこねくり回し、婉曲表現とたとえ話を重ねてはぐらかし、そして一体何を言っているか。読み取るのに苦労しますが、まず、(※1)の部分ではチベット問題でも何でも、中国を非難したくないと言いたいのでしょうね。さすがお友達の嫌がることはしないと宣言している人だけのことがあります。

 そして、この夫婦のたとえ話がまた分かりにくいのですが、(※2)の部分も常軌を逸しているように感じました。だって、中国は日本に対し「間違っている」と指摘する一方、日本は「こうしたらいい」と提案するような関係ができれば最高だと言っているわけですよね、これは。あくまで相手に注文をつけたり、文句をつけたりするのは中国側であり、日本ではないと福田氏は主張するのか。

 また、(※3)の部分では、チベット問題に関して率直な意見交換が必要であるかどうかについてまず留保をつけた上で、あくまで中国側にチベットの話をするとの言質は与えず、率直に言い合える関係をつくる努力をすると述べるだけで逃げています。これは中国側にとっては、福田氏はこれ以上はないほど楽な交渉相手と言えるでしょうね。いや、ただのお友達であって、交渉相手ですらないのでしたね。何せ東シナ海のガス田問題でも、交渉は事務方に任せて、自らは交渉しないという姿勢を貫いているそうですから。

 たとえお友達相手でも、ときには相手に耳の痛い忠告もするのが本当の友情でしょうが、福田氏にはそういう感覚はないようです。先日、某政府関係者から聞いた話では、福田氏は首相就任後も、中国要人らとの会談・会合などで旧知の駐日中国大使館員らを見つけると、いわゆる下っ端の一等書記官、二等書記官クラスの相手にまで「やあ、元気だった?」とにこやかに話しかけるそうです。中国相手だと、日本国を背負った首相という意識が抜け落ちてしまい、みんなお友達モードにスイッチが入ってしまうのでしょうか。

 この福田氏と、日銀総裁の「空席」が決定した19日夜に会食した側近の衛藤征士郎氏は、会食後、記者団に「首相は『俺に任せておけ』ということだ。自信満々に見える」と語りました。次期官房長官候補とも言われ、内閣改造があれば間違いなく入閣するとされる衛藤氏のセリフだけに、福田氏への追従も感じられますが、それにしても…。現在の政治は、もう笑うしかありません。

 ※追記(午後10時50分) 24日夜の福田首相ぶらさがりインタビューで、内閣支持率の下落に関するやりとりがありましたので、紹介します。以下の短いやりとりですが、福田氏も投げやりな感じです。まあ、そうでしょうね、触れられたくないのも分かります。でも私は、官房長官時代の相手の質問に真摯に回答しない、いい加減な調子が戻ってきたなとも思いました。当時の官邸担当記者は、こういう何を聞いてもまともに答えない、人をバカにしたような答弁を何百回と聞かされたものでした。

 記者 政権発足半年を目前に、総理の支持率が大幅に下落している。原因としては物事が何も進まない今の状況が考えられるが、総理はこの支持率をどう見ているか。

 福田氏
 まあ、これはあのー、そのデータとしてね、あるんですから、それはそれでいいんじゃないでしょうか。それだけ。


 さて、いきなりですが、ジャーナリストの桜井よしこ氏が理事長を務める保守系シンクタンク、国家基本問題研究所の高池事務局長から、「君のブログに載せて宣伝してよ」と依頼がありました。そこで、急な話ですが、あす25日開催のシンポジウム「外国人参政権問題」について告知したいと思います。

 25日午前11時から午後1時半まで、千代田区永田町の衆院第2議員会館で、上記のシンポジウムが開催され、参加者を募集しています。参加費は無料ですが、会場スペースの関係で、入場可能なのは申込みの先着80人様のみとなるそうです。スピーカーは桜井氏と、西岡力・東京基督教大教授、鄭大均・首都大学東京教授、ジャーナリストのサム・ジェームソン氏の4人です。

 問い合わせ先は国家基本問題研究所(山崎氏)☎03-3222-7822まで。参加申込みはFAX(03-3222-7821)で、住所、氏名、電話番号、メールアドレスを添えてお送りください。昼食の用意はありませんが、持ち込みは可だそうです。当日は、私も取材に行くつもりです。

 ふるってご参加ください。

 それと話は全然変わりますが、今朝、何気なく新聞のテレビ欄を見ていたところ、報道ステーションのところで「福田内閣の支持率急変 国会の運営に影響必至」とありました。これは官房長官記者会見でテレ朝の記者が反応を聞くだろうから、そのときに数字も明らかになるなと思っていたら、案の定、その質問が出ました。テレ朝の調査だと、福田内閣の支持率は24.7%だったそうです。今までの報道各社の調査で最も低い数字です。いよいよ来ましたね。

 ちなみに、他紙より比較的高い数字が出る傾向がある日経新聞の調査結果も今朝の紙面に出ていました。こちらの内閣支持率は31%とテレ朝よりは高いのですが、これも前月比で9ポイントの減だとありますから、国民の間にもようやく「福田首相とその政権とは一体なんなのだ」という不信感が広まってきたということでしょうか。物事が国民各層に広く浸透するのには時間がかかるというのは、いつものことですが、いったん浸透するとそれは不可逆的な流れをつくることが多いように思います。さて…。

 日経の調査では、内閣支持率が31%なのに対し、自民党支持率は40%あるというのも注目です。民主党支持率は30%どまりですから、福田内閣の迷走にもかかわらず、国民の期待は民主党に向いておらず、自民党の方がマシだと思っているということでしょうか。私は、小沢氏をはじめ執行部が入れ替われば、民主党の支持率はぐんとアップすると思うのですが。もとより、世論調査は参考程度のものであり、これだけでどうだこうだと決めつけるべきではありませんが、興味深いところです。

 読売新聞の今朝の紙面にも、福田内閣発足半年にあたっての調査が掲載されていて、福田内閣の実績を評価する人が34%であるのに対し、「評価しない」はほぼ倍の64%に上っていることが報じられています。私はあえて何度でも繰り返し書こうと思っていますが、こうなることが分かり切っていた福田氏を一昨年春からなんとか首相に担ごうと画策し、ついにはそれを成功させたナベツネ氏は、現状をどう考えているのでしょうね。どれだけ見る目がないのか。「大連立を成功させるための福田氏だった」という見方もありますが、その大連立は水泡に帰し、一時は福田氏と馴れ合う様子だった民主党の小沢氏も福田内閣のていたらくを見て対決姿勢を強めています。

 いまや、ただ何も手を打たずに、漫然とずるずるとぬかるみの中心に向かって行進しているだけに見える福田氏が首相でいる理由、メリットは、特にないのではないでしょうか。福田氏が長く首相でいればいるだけ、日本は世界の中で存在感をなくしていくような懸念すら感じます。ナベツネ氏は、福田氏を担いで日本の時を失わせた責任をとり、自分のクビ(引退)と引き替えに、福田首相に退陣を迫るぐらいしたらどうかと思います。同業他社のトップのことをどうこういうのは本来は良い趣味に反することかもしれませんが、それぐらい、この人の責任は重いと…。もちろん、それに乗って、自民党総裁選で福田氏に投票した自民党議員たちも本当に困ったものだと思います。

 しかしまあ、福田氏自身は12日夜のジャーナリストの筑紫哲也氏らとの会合で、「種まき、いろいろな仕掛けがようやく終わったところだ。半年後、1年後を見てくれれば、福田はやったな、ということが全部分かる」と自信たっぷりだったそうですから、身を引くつもりなどないのでしょうね。日本国のためには、その「福田はやったな」という部分を見せてもらいたいところですが、それも期待薄というか、かえって福田氏の「勘違い」に国が沈められる結果にならないとも限らないなと、そんなことを思っています。


 ふだんはあまり読むことはない雑誌ですが、いま発売中の週刊朝日に「戦没学生の手記『きけわだつみのこえ』は改竄されていた」という記事が掲載されていることを知り、会社の調査資料部にコピーをファクスで送ってもらいました(せこいですが、自分で買ってまで読みたくはないので)。実は、私は13年前にこの問題を少し取材しており、気になったからです。週刊朝日の記事はジャーナリストの有田芳生氏のもので、リード部分には「反戦平和の聖典(バイブル)は改竄されている」とありました。記事本文には、例えば次のような例が出てきます。

 

 《たとえば、沖縄海上で戦死した特攻隊員の佐々木八郎氏の日記は、『新版』ではマルクス主義者であるかのように読めるが、遺稿を読むと、マルクスに批判的でアダム・スミスを重視していたことがわかる、という。》

 

 要は、「きけわだつみのこえ」の編者である「日本戦没学生記念会」(わだつみ会)が、当時の社会風潮や自分たちの思想信条に都合のいいように戦没学生の遺稿をいじったり、文章を取捨選択したりしたということですね。そして、それが戦後長い間、特攻隊員たちの真情を表す感動の書として社会に流通し、いまなおそう信じられていると。ただ、この問題については、今までも何度か指摘されています。

 

 平成11年に発行された「『きけわだつみのこえ』の戦後史 歪曲された戦没学徒の声」(保阪正康著)は、「きけわだつみのこえ」は、実際に書かれた手記を原典のまま収録したものではなく、戦争反対の戦後的価値観に合わせて編集したものではないかと指摘しています。また、その前年の産経抄(8月21日付)も、こう書いています。

 

 《戦没学生もまた侵略戦争の加害者であったとは、例の東京都平和祈念館とよく似た政治的主張によるものである。「東京は軍事都市だった」という空襲容認論と同じように、特定のイデオロギーでもって戦没学生の責任を問おうとしているのである。(中略)旧版の編者だった渡辺一夫が序文で触れているように「初め、僕は、かなり過激な日本精神主義的な、ある時は戦争謳歌に近いような短文までも、全部採録するのが『公正』であると主張した」という。だがそれがそうならなかったのはまさに〝政治的理由〟の下に編集されたからだった。》

 

 平成7年には、昭和25年封切りの映画「きけ、わだつみの声」がリメーク、東映系で再上映されました。その際に、「わだつみ会」が東映側に送った映画制作にあたっての要望書には、「アジア太平洋戦争は侵略戦争という基本的視点で」「昭和天皇の戦争責任は自明の大前提として描いてほしい」…などとありました。この点は当時、私が取材して記事にした部分なのですが、「わだつみ会」の傾向性、スタンスがよく分かるエピソードだと思います。この会はその前年にも、「戦没学生が総体として、侵略戦争の担い手として死に至らしめられたことを、私たちは悲しく銘記する」として、戦没学生の戦争責任を強調していました。

 

 余談ですが、京都市の立命館大学の本部近くには、「立命館大学国際平和ミュージアム」があり、玄関には「わだつみ像」が立っています。このミュージアムは「わだつみ会」の事業としてつくられたものですが、その2階には「立命館孔子学院」があります。孔子学院とは、中国政府が世界各国の大学・研究機関と連携して、中国語教師を育成し、中国文化普及を目指すという一大プロジェクトで、世界中に100カ所創設しようというものです。で、この立命館孔子学院が日本での第1号だそうです。

 

 …私は先日のエントリで、坂口安吾の「特攻隊に捧ぐ」という文章が掲載禁止にされた問題を取り上げ、GHQによる検閲が歪めた日本の言語空間について触れましたが、GHQが去った後も、日本人自身によってさまざまな「事実」が隠され、また曲げられてきたと考えています。この「きけわだつみのこえ」もその一例だと思いますが、このほかにも、例えば、清朝最後の皇帝の生涯を描き、映画「ラストエンペラー」の種本としても知られるR・F・ジョンストン著「紫禁城の黄昏」は、岩波文庫版では、政治的意図を持って、満州国建設の経緯について東京裁判史観と逆の記述がある部分などが「虫食いのように削除」(渡部昇一氏)されていると指摘されていますね。

 

 何度も書いてきたことですが、南京事件でも慰安婦問題でも、樺太(サハリン)の残留韓国人の件でも、問題を焚きつけて大きくし、国際問題化しようとしている日本人がいます。外国勢力が何かについて日本批判を始めるとき、必ずと言っていいほどその背後に日本人の協力者、煽動者の姿がちらつきます。もともとはGHQが日本社会にはりめぐらした「閉された言語空間」にしても、それを戦後60年以上たつ今も墨守し、何か自分たちの利益のために利用しようとしている人たちがいるようです。残念ですが、日本の敵は日本人、という思いを否定できずにいます。


 きょう、ふと気付くと、外務省の敷地内に植えられている桜が花を咲かせていました。まだつぼみだけの木もありますが、何本かは気が早く、もう6分~8分咲きといった感じです。やはり、日本の春には桜が欠かせませんね。あいにく曇天のため、花が青い空に映えるような写真は撮れませんでしたが、まずは白い花をつけた木から。

   

 次の写真は、ピンクの花びらをつけた桜です。桜といえば、真っ先に東京・井の頭公園で花見をしながら酒を飲み、麻雀をしたときのことを思い出します(十数年前のことです)。帰りにJR某駅の階段で麻雀牌をぶちまけてしまったのですが、通りがかった見知らぬ人たちがみんなで拾い集めてくれ、日本人は優しいなあ、と改めて感じ入ったのでした。愚かで間抜けな行為をしても、ちゃんと助けてくれる人たちがいるというのはありがたいものです。

   

 また、桜と言えば、昨年末に中国を訪問し、「桜の咲く頃」の胡錦涛国家主席の訪日で合意してきた福田首相をつい連想してしまいます。当初は4月半ばの予定だった胡氏の訪日は、中国製ギョーザ中毒事件の発生や、東シナ海のガス田問題が一向に決着しないため、5月6日ごろの訪日へと延びましたが、今度のチベット騒乱事件で、またどうなるか分からなくなりましたね。私は意地が悪いためか、外務省の桜は、胡氏が来るまでにさっさと咲いて早く散ってしまおうと考えたのかなと、そんなことを思い浮かべた次第です。

 胡氏にしてみれば、事件発生後、初めての外国訪問、外国首相との会談になりますから、当然、世界も注目するでしょう。「お友達外交」がモットーの福田首相は、本心ではチベット問題になど触れたくないかもしれませんが、会談で何も言及しなかったら、国内外で批判を集める結果となるでしょう。もちろん、ギョーザ事件も東シナ海の問題も当面、解決する見込みはありませんし、どうやったら会談は成功したと言えるのか、頭を悩ませているかもしれません。

 昨夜、少し話をする機会があった某元政府高官は「胡氏訪日は、また延期になるのでは」との見通しを示していました。ただ、胡氏訪日が無期限延期になった場合、ダメージを受けるのは中国側ではなく、福田政権だとも言われています。日銀総裁も決められず、諸物価の値上がりにも何の手も打てずにする福田氏としては、外交分野で何としても得点を上げたいところでしょうが、予定していた10年ぶりの中国元首訪日すら実現できないとなると、いよいよ自民党内からも「一体なんなんだ、この人は」という声が高くなっていくでしょうね。

 さて、その福田氏は、チベットの騒乱事件についてこれまで何も発信してきませんでしたが、昨晩のぶらさがりインタビューで、ようやく短いやりとりがあったので紹介します。実につまらない内容ですが、それが福田氏らしいというか。

 《記者 中国のチベット自治区の騒乱が拡大しているが、その受け止めと、五輪と国家主席の訪日を控えて、どう対処するか

 福田首相 これはですね。私ども大変憂慮しております。あの双方がね。冷静に適切な対応を取ってほしいなと思っております。以上です。》

 何が「以上です」なんでしょうね。世界が注目する大規模人権弾圧問題に対し、事件発生から何日もたってようやく口にした言葉がこの程度です。憂慮しているそうですが、何を憂慮しているのか。迫害を受けているチベットの人たちの身の上を案じてのことではきっとないのでしょうね。

 随分とまた前置きが長くなりましたが、ここからがエントリのタイトルに関連する部分です。昨日、外務省の某氏から、「こんなことがあったのを知っているか。中国では、国家権力が拉致を認めているよ」と、ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のホームページから印字したものを手渡されました。

 タイトルは「ゲンドゥン・チューキ・ニマ少年の失踪」。ダライ・ラマ14世が1995年5月14日に、ニマ少年を「転生霊童」だとし、パンチェン・ラマ11世として公式に認めたところ、そのわずか三日後に少年は両親とともに中国警察に拘束されたという内容でした。

 チベット亡命政府をはじめ、諸外国の政府機関などが少年の居所を公表するように中国政府に繰り返し要請しても、中国政府はそれに応じず、失踪してから1年間も、少年の拘束すら認めなかったそうです。そして96年5月28日になって、中国はようやく国連こどもの権利委員会の調査への返答という形で拘束事実を認め、「少年は両親の要請に基づいて政府が保護している」「少年は分裂主義者によって連れ去られるおそれがあり、身の安全が脅かされている」などと説明したといいます。こんなバカな話に納得する人はいないでしょうに。

 …これは、外務省の某氏が言うように、拉致・監禁そのものですね。また、チベット仏教そのものを破壊し、崩壊させようという意図と、いかにダライ・ラマの影響力を怖れているかもうかがえます。中国という一党独裁の専制国家の本質がよく分かるエピソードだと思います。今回のチベット騒乱事件をきっかけに、こうした中国の実態が改めて注目され、周知されることを期待します。そうなれば、福田氏の「憂慮」はより深まるかもしれませんが、私は福田氏が首相であること自体を一番憂慮しているものですから、全く同情は感じません。

 


 チベットのラサで起きた僧侶らによる大規模騒乱事件に関して、きょう午前、安倍前首相がチベット出身の政治学者で、この事件を中国による「文化的虐殺だ」と非難しているダライ・ラマ14世の信頼が厚いペマ・ギャルポ氏(桐蔭横浜大国際交流センター長)と会談しました。親中派の福田政権下で、政府・与党のだれもまともにこの問題を論じないのを見て、日本の政治家として意思表示をし、日本の姿勢を発信してみせようとしたのでしょうか。日本の前首相の行動だけに、中国側はさぞや嫌なことでしょうね。

 私は今回、直接取材に行けなかったので、例によって同僚記者の取材メモをもとに会談内容を紹介します(会談に対する記事はすでにイザニュースにもアップされています)。会談は、衆院第一議員会館で行われ、
下村博文、萩生田光一、稲田朋美の各衆院議員が同席したそうです。会談全体はクローズとされましたが、冒頭部分は報道陣に公開されました。まずはその部分です。

 

 《ペマ氏たぶん中国からの本当の弾圧はこれからです。活動に参加した人とか、別件逮捕でこの際、全部一緒にぶち込むのというのが中国の魂胆だと思うし、おそらく北京オリンピック前にわざわざ今回挑発して、それでおそらく戒厳令か何かを敷いて、なるべく外の人を入れないというのが本当の魂胆じゃないかと思うんです。ただ世論が、特に外国からの声がありますので、まあ、そういうことができるかどうか

 

 安倍氏:今ペマさんは、なかなかチベットには行けないのですか

 

 ペマ氏:行けないですね。昨年、申請したんですけども、3日前になって、「ダライ・ラマに近いから」という理由で(当局は)断ってきたんです。今まで49年間、毎年私も毎年3月10日なると、国内外でデモとかあったんですが。今年は特に、一つはオリンピックを通して、やはり中国はチベットを最終的に中国の問題にしようして、聖火ランナーにチベットを通過させ、それからオリンピックのマスコットの4匹のうち2匹にチベットの動物を使っている。
 それから、あとは経済改革の名の下で、例えば鉄道が延びましたけども、この鉄道はチベット人にとってはむしろ非常にマイナス要素が多くて、軍事的には中国がいつでも入ってくるし、それから中国人の定住者が増えて、経済的にほとんど中国が搾取するような状況になってきていて、それでああいうふうに中国の店なんかに危害を加えたと思うんです。
 ただ、北京政府はダライ・ラマ法王が外から何かやっているようなことを言ってますが、計画的であれば、民衆は最初から石とか武器を持っていたはず何ですけども、そうじゃなくて本当は中国の方から最初に、発泡して、それから中国の軍用トラックがつっこんできて、それに対して民衆が衝動的に参加してしまったのが、本当のところだと思います。

 

 安倍氏世界の目が、届くようにしていくことが大切です。ですから、世界のプレスを、報道をチベットに受け入れるように、中国側に働きかけていかないといけない

 

 ペマ氏:今回、先生方がマスコミの前で会ってくださることだけでも、チベット人にとって、そしてダライ・ラマ法王が平和的に解決しようとしていることに対して、大きな力になります。残念だけど、日本は特に中国といろいろ関係があって、他の先進国に比べたら、多少中国問題に対して表現できない部分があったと思うんですけども、先生方がこうやって関心をしめしてくださることだけでも、大きな力だと思います。法王も大変喜ばれると思います。(マスコミここまで)》

 …安倍氏が言っているのは、ダライ・ラマ14世が国際調査団の派遣を求めているのに対し、中国外務省の報道官が「中国はこの問題を解決する能力と自信がある」と強調し、国際調査団の受け入れを事実上、拒否したことへの反論でしょうね。この件については、高村外相も今朝の記者会見で、北京五輪をボイコットする考えは「ない」とした上で、「なるべくオープンにして、『確かに中国側の言う通り、中国は乱暴なことはしていないな』と、国際社会が分かるようにした方がいいのではないか」と述べています。まあ、中国が「乱暴なこと」をしていないわけがないと思いますが。

 安倍氏とペマ氏の会談は約30分間行われ、その後、ペマ氏は記者団に次のように語りました。
 

 《記者:安倍前総理とはどのような話をしたのか

 ペマ氏:私の方からは、もちろんこれはチベット問題といっても、アジアの問題であり、世界の問題であって、世界各国の首脳あるいは外務大臣級の方々、それから国連も関心を示していますし、そういうことの今の現状をご報告申し上げて、安倍前首相から関心を示していただくようにお願いした次第であります。

 

 記者:情報が限られており、何が起きているのか分からない部分もあるが、ペマさんとしては今どこが問題だと思いますか

 ペマ氏:基本的には、過去半世紀以上、中国が一方的に抑圧的な政策をやっても、これがチベットの人たちの心をつかんでないというところだ思います。ですから、最終的には、中国自体が過去50年以上の政策を変えて、ダライ・ラマ法王と何らかの形で話し合いをしない限り、この問題は次の50年、100年も同じだろうと思っています。

 

 記者:日本政府に何を期待しますか

 ペマ氏:日本政府は中国との関係においては他の国よりも、いろいろ事情があると思うんですけども、しかし、このチベット問題、人権問題、民族自決権などについては世界全体の普遍的な価値観であるはずなので、それに対してダブルスタンダードになってはならないと思う北朝鮮に言えることが何で中国に対して言えないのかということを私は日本政府に申し上げたいですね。

 

 記者:もう少し毅然とした対応をしてほしいと

 ペマ氏:もちろんそうですね。別に中国に対して私も含めて、敢えて挑発する必要はないと思いますけれども、しかし、今行っている悪事に対して無関心であることは、マハトマ・ガンジーの言葉を借りると、それは荷担することになる。ですから、やはり日本政府も、今、特に今日あたりからチベットの一般大衆に対して中国側から、デモ参加者などの理由で、さまざまな圧力がかかって、牢屋にぶち込まれる人が多くなると思うんです。そういうものに対して、本当に人権が人類共通に値する価値観だということであれば、やはり日本政府も強い談話をぜひとも発表していただきたい思っています。

 

 記者:北京オリンピックの対応についてはどうするべきだとお考えか


 ペマ氏:オリンピックは本来は平和と聖なる祭りだと思うんですね。それが中国のやり方次第では血の祭り」になる可能性もあると思います。中国政府は残念ながら、北京オリンピックを政治の道具として使っている。例えば、わざわざチベットまで聖火ランナーが行ったり、チベットの動物をオリンピックのマスコットに使っているということは、中国のチベット支配を正当化するために、既成事実をつくるためにやっている。やはりそういう意味で中国は一日も早く、オリンピックはあくまでも正々堂々と人々が競う場であって、平和の祭りである。それを政治のために使うことはやめてもらいたいと思う。

 

 記者:日本をはじめとする先進国は、人権の意識があるなら、北京オリンピックをボイコットすべきとお考えか。

 ペマ氏:ボイコットするか、しないかということは、それぞれの人の良識の問題だと思います。特に一生懸命がんばって練習している人たちにとっては非常に気の毒なことだけど、しかし、一人の名誉、名声とそして人類の多くの人たちの生きる権利、どっちが重いかということを考えて判断してもらえればいいことだと思います。》

 

 ペマ氏の、抑制的ではあるけれど、しかし同時に中国政府に対する強い怒りがにじみ出ているようなコメントでした。中国政府によるチベット支配、漢民族の土地化をまるで礼賛するかのような特集番組を制作してきた某公共放送には本当に反省してもらいたいと、さきほど国会でこの公共放送の予算案の審議がなされているのを横目で見ながら考えました。さて、次は、安倍氏自身による記者ブリーフです。

 

 《安倍氏:今、報道が規制されている中で、大変な人権の抑圧がなされている。死者の数は実態はもっと多いのではないか、と心配しているという話でした。やはり世界各国調査が入ること、あるいは世界のプレスが入ることが、そうした当局による行きすぎをチェック、阻止することにつながるので日本も協力してもらいたいという話でしたので、私もしかるべき話をしておきましょうと。政府にね、また個人的にも協力しましょうということを申し上げました

 ペマさんは、日本の人たちにもよく理解をしてもらえるように、議員として活動をしてもらいたいとのことだったので、稲田朋美がやっている「伝統と創造の会」(保守系若手議員有志の会)でも緊急の会合を開いてペマさんの話をうかがうということだった。

 私の方からは、中国はオリンピックを開催することが決まっているので、オリンピック開催国に相応しい対応をしてもらいたいと思っていると申し上げた。価値観外交を私も総理として展開してきたので、自由と民主主義と基本的人権と法の支配をしっかり構築する。この世界の普遍的な価値をアジアの中で広げていくべく日本もリーダーシップを発揮する外交を展開しているので、この問題もその一環の中で、チベットに住む人たちの人権が確保されるように努力していきたい、という話をしました。

 

 記者:ペマさんからオリンピックをボイコットすべきだという話はなかったか


 安倍氏:その話はなかったですね。まあ、時間もあまりなかったんで、今の現状についての説明でした。》


 …安倍氏が掲げた「価値観外交」、また麻生元外相が提唱した「自由と繁栄の弧」は福田政権になってすでに 投げ捨てられ、福田首相は代わりに「共鳴(シナジー)外交」とやらを打ち出しています。他民族を侵略して無理矢理版図に組み入れ、自治区とは名ばかりの中央支配と伝統・文化の破壊を繰り返してきた国との共鳴を目指してどうするのか、本当にわけがわかりません。もしかしたら福田氏は、自由と民主主義を否定して新たな秩序を打ち立てたいという大きな野望でも持っている…わけないですね。

 そういえば昨日、自民党の伊吹幹事長は記者会見で、各種世論調査で福田内閣の支持率が下げ止まらないことについて、「不支持の大きな原因はたぶん、指導力がないということではないか」と、はっきり認めてしまいました。伊吹氏は続けて「参院で(与党議席が)過半数に達していないので、円滑な政権運営ができない。今のような参院の状況では、誰がやってもそのように映る」と付け加えましたが、正直な気分が言葉に出てしまったのかもしれません。

 でも、最近の世論調査を見ても、下落傾向は続いているとは言っても時事通信(7~10日調査)で30.9%、共同通信(15、16日調査)で33.4%と、まだ何とか3割ぐらいは福田内閣を支持している人がいるようです。私にとって、この「とてつもなく高い支持率」は本当に謎に思えます。日本社会は実は得点主義ではなく減点主義の社会で、「何もしない、何もできない」ということは、意外と評価を低くすることにはつながらないのかと、ふと、そんなことを考えました。

  

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