2008年05月


 ちょっと旧聞になりますが、29日の産経政治面に載っていた「民主党はカネがない!小沢代表が鳩山幹事長に『君の財産出せ』」という記事には少々驚き呆れました。みなさんどう思われますか。確かに鳩山家は有名なお金持ちですが、それを言えば小沢氏だって、政権奪取のために蓄財してきたのでしょうに。また、小沢氏は以前、政治資金で買い続けた保有不動産を公の場で「何も悪くないが、面倒だから処分する」と述べていましたが、どうやらそれも本気ではなかったようです。本当に、相変わらず自分勝手で世の中をなめたいいかげんな人だとげんなりしました。記事は以下の通りです。
 
  《「キミの財産をよこせよ」。政権交代を旗印にして次期衆院選に向けた対策を急いでいる民主党だが、選挙資金の金策に頭を悩ます小沢一郎代表が最近、冗談めかして鳩山由紀夫幹事長に私財提供を求める一幕があった。

 鳩山氏は政界でも有数の資産家だが、すかさず「代表も(東京都港区内などに複数保有するマンションなどの)建物を売ればいいじゃないですか」と反論。小沢氏は「売ってもそんなにカネにならないよ」と弁解したという。

 民主党は党予算のほとんどが政党交付金頼みで、郵政解散となった平成17年の衆院選で議席を減らした結果、交付金も減ったが、昨年7月の参院選での大勝で、交付金が増額するなど党の財政は選挙の結果に左右される傾向がある。

 7月14日には、約2億5000万円の売り上げを目標に、政治資金パーティーを開くが、それでも「とても足りない状況」(党幹部)。このため、党内からはいざというときには「幹部の自宅を抵当にいれて借金するしかない」との声もあがっている。》

 記事でははっきり書いてありませんが、鳩山氏が小沢氏に私財提供を求められたのは一度だけではなく、「会うたび」なのだそうです。まあ、こんな話を小沢氏本人が他者に話すとは考えにくいので、このエピソードが記者に漏れ伝わってくること自体、鳩山氏が小沢氏の要請にうんざりし、いいかげんにしろよと思って周囲に愚痴っているからでしょうね。別に同情はしませんが、気持ちは分かるような気がします。

 では、その小沢氏はというと「永田町の不動産屋」と呼ばれていますね。昨年10月以降の雑誌をざっと調べても、「『政治団体が所有』という実態への疑念 小沢と都心マンション」(アエラ10月15日号)▽「小沢一郎『10億円不動産』『25億円現金』の核心部分」(週刊文春10月25日号)▽「『購入不動産10件』全公開 小沢一郎はなぜ『マンション』が好きなのか」(サンデー毎日10月28日号)▽「『永田町の不動産屋』小沢一郎への公開質問状」(ウイル12月号)…と何度も取り上げられています。

   産経(私)も昨年9月15日の政治面に「18年政治資金収支報告 小沢代表 保有資産31億円 不動産どうする」という記事を書いていますので、それを再掲します。この小沢氏関連の政治団体の「財産」に関しては、雑誌は取り上げているのに、なぜか新聞では産経以外は書こうとしません。

 《平成18年政治資金収支報告書では、安倍晋三首相の辞任表明でいよいよ政権の座が近づいてきたように見える民主党の小沢一郎代表の富裕ぶりが際だっている。自身の政治団体と関係団体の保有資産は繰越金と不動産だけで計31億円以上に上り、他の政治家を圧倒している。また、小沢氏は今年6月に成立した不動産所有を禁止する改正政治資金規正法に基づき、保有不動産を「処分する」と述べていたが、いつどのように処分するかは未定だという。

 ■資産プールはなぜ

 政治資金収支報告書によると、小沢氏の側近とされる平野貞夫元参院議員がともに会計責任者を務める改革国民会議の繰越金は11億8354万円、改革フォーラム21のは6億9262万円で、この二つだけで計18億7616万円にも上る。

 2団体の報告書の会計責任者の氏名には訂正印が圧してあり、もとはともに樋高剛氏の名前が記されていた。樋高氏は元衆院議員で、小沢氏の元秘書でもある。

 もともと改革国民会議は小沢氏が党首だった自由党の政治団体、改革フォーラムは小沢氏が代表幹事を務めた新生党の政治団体だった。自由党は平成15年9月26日の解党当日に、改革国民会議に13億6816万円を寄付しており、国会で「政党助成金の返還逃れではないか」(自民党の故松岡利勝元農水相)と追及された経緯もある。

 小沢事務所側は「うちの政治団体の資金は合計2億円余り。改革国民会議と改革フォーラム21は関係はあるが、小沢氏の団体ではない」と説明し、資産のほとんどは不動産だと強調する。

 ただ、自民党側は「体裁はともかく実質的に小沢氏の政治団体であることは間違いない。政権奪取の資金を貯め込んでいるのか」(国対筋)と注視している。

 ■どうなる不動産

 小沢氏の資金管理団体「陸山会」が都内など12カ所に保有している不動産に関しては、さきの通常国会で与党側から「何のために政治資金で不動産を買い続ける必要があるのか」「名義上、小沢氏本人のものとなっており、資産形成ではないのか」などと追及された。

 また、仮に小沢氏が死亡した場合、遺族が相続せざるをえず、「個人資産と何ら変わりはない」(自民党幹部)との指摘も出ていた。

 小沢氏は2月に記者会見を開き、「個人資産ではない」と説明したが、結局、政治資金規正法改正で新たな不動産取得は禁じられた。このため、小沢氏は7月の産経新聞のインタビューに対し、「面倒だから処分する」と表明している。

 ただ、事務所側は「まだ処分はしていない。処分の予定は今の時点ではない。これからも法律に基づき適性に対応する」としている。

          ◇

 ■小沢一郎氏の政治団体(総務省届け出分)の資産
 ①陸山会              10億8055万円
 ②誠山会               1億3735万円
 ③小沢一郎東京後援会        2706万円
 ④小沢一郎政経研究会        2134万円
 ⑤改革国民会議         11億8354万円
 ⑥改革フォーラム21        6億9262万円
   総計               31億4246万円
※金額は繰越金(陸山会は不動産資産を含む)。⑤、⑥について小沢事務所は「関係団体だが、小沢氏自身の政治団体ではない」と説明。》

 …例によって、新聞紙面はスペースの制限が大きいので、書き足りない点がたくさんありました。これでも11字組100行の原稿で、政治面トップだったのですが。これに関連することでは、私は昨年9月10日のエントリ「故・松岡農水相による政治とカネ追及と関連写真」でも取り上げていますので、もしよろしければそちらも見てください。自由党は民主党と合併する直前、解散する2日前の平成15年9月24日になぜか民主党から2億9540万円もの寄付を受けていて、そのお金や自由党が受けていた政党交付金は自由党解散時に改革国民会議に寄付されています。一体何のことやら。

 また、上の記事の2団体が保有する資金については、やはり小沢氏側近の平野貞夫氏が週刊誌のインタビューなどで、はっきりと小沢氏の政権取りのための軍資金だと述べています。私には、政党交付金などの私物化にも思えるのですが、それはともかくとしても、小沢氏は、鳩山氏に「カネを出せ」と迫らなくても十分すぎるぐらいお金を持っているではないかという疑問が残ります。いざというときに使うのでなければ、一体何のための蓄財なのか、という話になりますね。

 最近は衆院選が遠からず実施されるという見通しからか、ときおり「国民の生活が第一」などと書かれた小沢氏のポスターを見るようになりました。その言葉にウソはないのか、言葉通りに受け止めていいのか、それとも果たしてどういう意味があるのか。今後の関係者の動きを注視していきたいと思います。


 本日は29日に開催された人権擁護法案の成立を目指す自民党人権問題調査会(太田誠一会長)の第12回会合の模様を、例によって原川記者のメモをもとに報告します。できれば今朝の産経政治面の記事「賛否両論派なお溝」をご参照いただきたいと思います。イザブログの字数制限(1万字)に引っかかるため、一部を省略したことをお断りします。やはり字数の関係で私の感想は入れないこととし、メモをそのまま提供します。

 太田誠一氏:久しぶりに開会する。空白の時間に何をしていたかというと過去11回調査会で講師を呼び、活発なご意見の開陳をいただいた。なるべく事柄の本質を失わないように、われわれの案をつくらないといけないということでその案をつくる時間をいただいたわけです。だいたい方向が固まってまいりましたので、先週から個別に私どもの案を示してご意見をいただいてきたが、意見を聞いていない同僚議員もいるので、フェアでないので、今日ぜひ説明をさせていただきたい。(中略)


 【目的】法律の目的は「人権侵害を行ったとされる側との話し合いによる解決」等の救済制度を導入し、人権問題を法の支配の下に置く。旧法案は、人権尊重社会の実現を目的としていたが、大変大上段に振りかぶった目的だったが、淡々とやっていくんだということだ。

【人権救済対象の限定】現在の制度で行っている援助とか説教など任意の人権救済の対象を、今は大変広いが、それを憲法14条が定める人種等による差別や障害疾病による差別、名誉毀損、プライバシー侵害に限定する。従来の人権救済制度から何が除かれたかといえば、隣近所の紛争。対等な人の間のもめ事は対象にしないということをはっきりさせた。(中略)

言論の自由を脅かすことになるのではないかという差別的言動は、反復して行われるものに限定した。

【制度濫用の防止】どうやったら、逆差別とかがされないかということにも注意を注いだ。その結果、(中略)勧告に対しては不服申し立てができるとした。また特定の歴史観にもとづく被害申し立てといったものについては救済の対象から除外する類型をはっきりさせて、法律に盛り込む。申し立てられる側の保護ということで、対抗措置をとれる制度を創設し、同一の救済手続きの中で処理するものとする。例えば申し立てを受けた、それは自分を陥れるために申し立てているんだと申し立てられた側が思ったときには、申し立てに続いて即自分の保護申し立てをする。そうすると同じ委員会でこれが取り上げられて、例えば申し立てられた側に理があるということになれば、それがはっきりする。

【その他】 差別的言動については、微妙な取りか使いが必要だということで過料の制裁を除くことにした。報道機関について特別扱いせず、法の支配の下に平等な扱いとし、将来検討課題とする。報道機関のためにわざわざ条項をつくって、メディアスクラムといって集中豪雨的な取材をしてはいけないとわざわざ言うのではない。普通の国民と同じようにメディアも同じルールのもとでやってもらうということだ。特別扱いはしない。人権侵害があれば、厳しく普通の人とおなじように取り扱う。(中略)

人権擁護委員については現行制度を維持する。外国人は除外される。なぜならば今の人権擁護委員は地方参政権を持っていないといけない。地方参政権を持っている制度をそのまま継続することで、外国人は排除される。


 塩崎恭久氏:11回の勉強会の中で、われわれが学んできたことを要約して先生方の議論の前提にしていただいた上で、太田私案を検討いただきたい。そもそも今の人権擁護機関といっているが、地方法務局でやっている人権擁護の仕事の法的根拠はなにかといえば実は法務省の設置法しかないということが勉強会で分かった。人権擁護局の局長次第でやり方がどうにでも変わってしまうという法律立てになってしまうのが大前提で、それがゆえに今回のような提案があり得るということだ。(中略)

簡易な救済と積極救済。すなわちこの答申は一般的な救済制度として新たな人権救済制度を設けて簡易な救済と積極的な救済を設けなさいということになっている。勉強会で、日大の百地章先生も、基本的には答申を踏まえて議論したらいいのではないかと、おっしゃっている。(中略)

学校裏サイトみたいなのに書き込みをされていじめられ自殺するとか、学校を辞めざる得なくなるようなケースのときに、現状でどういう手だてがあるのか。A子死ねばいいとか、いろいろサイトに書かれて、A子はどう思うかというと書き込みを消してくれ、学校にも行きたい友達とも仲良くしたいと思っている。しかし、警察にいっても脅迫罪に当たるけれど、軽微だということでまったく相手にされないし、民民だということでやられてしまう。学校に行って相談しても学校がまともに受け止めなかった場合は泣き寝入りするが、裁判しかない。(中略)書き込みをやめるとか退学をとめてくれとか、まったく関係のないレベルでの裁判をやらざるをえないということで人権救済制度をつくったらどうかということだ。


 【主な議員の意見】

 

吉田博美氏:私は山口県の柳井市に生まれた。小学校4年のときに父の会社が倒産し、夜逃げ同然で山梨の方に両親が出稼ぎに行き、祖母のもとに預けられた。もちろん近所の人たちは大事にしてくれたが、かなりのみなさん方から「あれは夜逃げしたんだ。借金だらけだ」と言われ本当に嫌な思いをしながら学校に行った。そして最大のショックは同級生から「お前のおやじは夜逃げしたんだろう」。こんな嫌な思いを経験し、山梨に転校した。そしたら今度、「お前の言葉は山口県の言葉で全然分からない。外国人のような言葉だ」と言われ、また嫌な気持ちになってまた転校しなければならない。そうした嫌な気持ちを少年時代に持ったのが、いまだに50年たっても、気持ちから抜けさらない。
 そうした中で、人権侵害はいつどこで、誰に起きるか分からないわけです。そうしたときに、もちろん道徳教育等で人権侵害をなくすのは望ましいが、決してそうではない、今現実に人権で被害を受けている人がいる、そうした人をいかに救済するかが今私たちの果たす役目じゃないか。私は太田私案に賛成でございます。

 

近江屋信広氏:私も初めて発言させていただく。前回の調査会に出てみた。ある意味非常にびっくりした。そこで前回出された資料が行政救済制度の現状とか、あるいは行政的な解決手段がそれぞれの個別法であるのかどうなのかという資料で勉強したと思う。その際、資料として示されたのが5点か6点の論点整理だった。それに対し皆さんいろんな反対論もあり、結局太田会長がとりまとめて論点について検討していくとまとめられたので、てっきり今日はその論点について一つずつ検討がはじまるのかなあと思ったんですが、会長私案なるものが出てきて、この私案をここに出すことがみんなで決めたのかどうなのか。さっぱりよく分かりませんが。そのいずれにしても、この前出された4つか5つの論点整理、あれは内容がおかしいんだと思う。
 前回の議論を聞いていても論点は二つじゃないかと思う。まさに人権擁護法案か、今回の、実態は同じだが、名前を変えた法律が必要かという論点。もう一つは、個別の救済制度がなかったり不十分だったら、一つ一つ手だてを補填していけばいいのであって、そういう個別法の改善で十分対処できるのではないかという論点。二つの論点しかないと思う。この二つの論点のうち、今後どう取り扱っていくかというと、やはり新法は必要でなくて、現行法の対処で足りるということの方を先に論議すべきだ。それを、そういう論点整理の問題点。太田先生のこの前の最後のとりまとめとまったく違う進め方をしているというその進め方についての異論もある。前回の会議で、大前先生の意見非常にショッキングだったんですが…。

 

鶴保庸介氏:手短に。先生方発言はたくさんありますから。

 

稲田朋美氏:都合の悪い発言だけ遮るのはおかしいじゃない。

 

鶴保氏:(キレて)そうではありません!公平にやるために発言を簡潔にお願いをします!

 

近江屋氏:大前先生が前回、かつて同和の方から、地域改善の法律があって、あれは逆差別であり、新しい新法はこれを拡充し、固定化するものではないかという意見を聞き、私は大変ショックを受けました。こんな大変なことをこのまま看過できないと思った。その点も含めて、私もよく議論に参加させていただいて。人権確保ということは大切ですから、十分議論をしていきたいと思います。

 

鶴保氏:先生、ちょっと短めにお願いします。

 

岩屋毅氏:事前に私案についてお話ししていただいたものの一人だが、大事な問題なので勉強させていただきたいと答えたが、どうもすっきり府に落ちない。というのは法律万能主義的な気がしてならない。できるだけ弊害を生まないように、対象を限定する考え方でつくられているが、およそ人間関係のやりとり、特にメンタルな面での作用は、数学的機械的に場合分けできるものではないのではないか。やっぱり人権問題についてはふわっとした大網をかける基本法というのはつくっていいんだと思うが、いよいよ人権侵害行為について具体的な救済方法を考えるというときには、問題の所在が明らかで、当該侵害行為が形式的にも明確に判断できるものについて、個別具体的にピンポイントで対応するアプローチが正しいのではないか。(後略)

 

長崎幸太郎氏:私は弱者の視点、被害を受けた人の視点は重要だと思う。被害を受けるということは社会的にも弱い立場の人。いじめられているんですけど、どこにいったら今の窮状を救ってくれるんですか、というところを設ける必要がある。判例の枠を出ないということなので、不必要に広がる恐れはないんじゃないか。弱い立場から見れば、裁判起こすのはしんどいから、できるだけ穏便にやっていきたいという中で自らの立場にたってお手伝いいただけるところがあるというのは政治として重要だと思う。個別法の議論ですが、話し合いの手段で解決出来ないような問題かつ上乗せでやらないといけないようなときに、個別法をつくるべきだ。上乗せ処分が必要であれば、そこは個別法で上乗せするべきで、まず一般的な話し合いの入り口というのは、弱い人たちのために政治として手をさしのべるべきだと思う。

 

矢野隆司氏:一般法の存在意義、まったく同感。一つだけ例を申しあげるが、拘置所、刑務所に入ると、身分帳という囚人ファイルをつくられる。現在の犯罪者囚人ファイル。それぞれの犯罪者にあるのはかまわないが、例えば富山の冤罪事件。法務省に囚人ファイルはあるのかと聞くと、個別具体的なことはいえないが、あります、と言われた。なぜ犯罪事実がない人の囚人ファイルがなぜあるのかと聞くと、刑務所に入っていたことは事実だから行政文書として30年間保存しないといけない。なぜ保存する必要があるのか聞いたら、刑務所に入ったときに免許書が切れたときに、更新するときの書類が必要。免許証を更新するのに囚人ファイルがなぜ必要か。囚人ファイルの中身は、囚人の目つき、態度、言葉遣い、なまっているのか、どもっているのか、指があるのかないのか、入れ墨があるのか。犯罪事実のない一般人の囚人ファイルを30年も残すのは人権問題じゃないかといった。こういう人たちを救うのは、やはりこういう人権の救済機関、少なくとも太田私案にある公務員の行う差別的取扱に当てはまると思う。ぜひ、こういう法律をつくる必要があるという立場から発言させていただいた。

 

大前繁雄氏:包括法に対する批判が厳しいのでそれに対応する案としてつくられたと思う。ブラックリスト方式というか、問題があるものを列挙して、なんとかこの法案を通したいという意思はよくわかる。一点聞きたいが、人権救済法で、国際基準を満たすのかどうか。

 

西田昌司氏:太田先生ならびに塩崎先生のご説明をいただき、われわれがついてきたところ、かなり改善していただこうという気持ちは分かる。敬意を表したいと思う。ただやはりかなり無理がある。何度も言っているが、人権侵害というのはTPOによって、人権侵害だったか、しつけだったか、友達とのコミュニケーションであったかどうかは、全部変わる。これを法律で決めてしまうとぎすぎすしてしまうし、本来の人間の生活に支障が出てくる。

例えば私案の中でも、反復して行う差別的言動と書いてある。公衆浴場に行くと入れ墨の方お断りとなっているが、これも人権侵害になってくると思う。そういう入れ墨をどんどん若者が最近はしているが、それを放置していていいのか。そういう方々が、人権侵害だといって、いわゆる常識が通らない社会をつくっていいのかといことを私は恐れる。そうならないためにも法が社会を支配するのでなくて、モラルがあっての法なんだ。モラルが法によって犯されてしまっては、立ち直りできませんよ、日本は。そこは私は強く、皆様方に分かっていただきたいと思う。

塩崎先生がおっしゃった、例えばの案で、(学校裏サイト)メールで書き込みがあって、今まではできなかったが、新しい制度ではこれができるとおっしゃった。確かにそうかもしれないが、しかし、これでこの子の問題は解決できるんでしょうか。できないと思う。結局は自分で乗り越えないといけない。私の子供も中学のときにいじめに遭っていた。たまたま知って、それはその当事者を呼んできて、対決させて、お前何やっているんだ、お前も言うことないのか?と自分の子供にも言って、対決させない限り、それは乗り越えられませんよ。人権委員会に訴えて、消してもらえました、で気持ちが落ち着いて、次また友達と仲良くできるかといってもできない。
 結局、これは頭の中で考えたもので、現実の日本人の社会の常識というものが欠けてしまっている。本当に子供たちを救おうと思えば、乗り越えていかないといけない。ですから、法律でなくてモラルが社会を支配する、道義を大切にしていく、と。この法律をつくることによって逆に道義がなくなってしまい、モラルが法の支配のもとで消されてしまうことが一番問題だと思う。私はこの法律の問題はそこにあると思う。

 

早川忠孝氏:人権救済法という名称を変えたらどうか。社会的な弱者といわれるような権利救済を実現するような施策を根拠づける基本法みたいなものをつくっておいて、それで、それぞれの分野で個別にまだ現在の制度では裁判にはいきづらい、行政でも対応できない中間的なところについて智恵を出していく基本的な考えは、私は正しいと思うが、ただ、太田私案という形で調査会長が自ら案を出されてしまうと、これが一人歩きしてしまうので、むしろ、いくつかの案をみんなで出し合いながら、いいものをつくりあげていくという基本的な概念の中で、鍵的なものをあまり一律に厳しくやるという従来の政府が提出していた人権擁護法案は、これで完全に消えた思うので、新しいものをつくるためには、もう少し柔軟な対応をしないといけない。(後略)

 

稲田氏:12回参加しており、太田先生の熱意には感動しているが、私はやはり、調査会がこの法律を、とにかく人権に関する包括的な法律をつくるんだという前提でこうやって動いていることに私は反対なんです。法律は立法事実があるためにつくるかというと立法事実があるためにつくるのだが、何のために法律をつくるかいまだ分からないし、国民がこの法律をなんで臨んでいるかも分からない。

今回、この私案の中に、人権問題を法の支配の下に置くと書かれているが、人権擁護局長も、専門家だったら、日本は法治国家なんですよ、人権問題は法の支配の下に今も割る訳なんです。私はずっと12回議論を聞いてきて、だんだんと私たちの意見を細かく入れていただいたんだと思うが、私は、白紙で、昨日、私案を主人、弁護士20年以上やっている、私より優秀ですけど、見せましたら、「何が書いてあるか分からない」と言ったんですよ。「一体何がこの法律で書いてあって、何のためにつくるのか、はっきりって申し訳ないけど分からない」って言ったんですよ。私がそれが現実だと思う。
 一体何のために、法律をつくるのか。そして法律をつくったことによる弊害が大きい。不法行為を除くからいいだと言うが、そんな簡単なものですか人権擁護局長。不法行為がなんであるかを争って専門家が判例に基づいて最高裁まで争っている。不法行為を除くということはそんな簡単なものではない。また、セクハラ等の調停がある。話し合いなら民事調停がって、裁判に行く必要はないし、損害賠償だけでなく、保全処分があるのに、なぜ人権擁護局長は専門家だったら、ひな壇の先生方にきちんと説明されないのか不思議だ。私は、こういった法律をつくる余裕が一体わが党にあるのか。こんな問題はどんどん議論していく余裕が一体あるのか。そうすることによって、わが党が国民の民意からどんどん離れていくことを非常に危惧いたします。

 

太田氏:論点整理して、その通りにやっていないのは、その通りでございます。議論をしているなかで、論点整理しようとすると、論点整理の仕方そのものについて異論が多く出てくる。そうするといつまで経っても、旧人権擁護法に対するやりとりでまた終わってしまうので、大変申し訳ないけれども、そこはカットさせていただいた。(後略)

 

桜田義孝氏:多くの批判の中で、現在の人権問題が存在するのか、しないのか。存在するものに対する解決策が、批判の中では全然ないように思う。日本の社会は支え合い、助け合いが必要、法律以前の問題として解決する。アメリカ型の訴訟社会に日本を持ち込むが適当かどうかには大きな疑問を持っている人間だ。訴訟社会に持ち込むべきではない、話し合いの中で解決するのが日本人的な価値観。私はぜひこのようなことで太田私案を中心に進めていただければありがたい

 

中谷元氏:人権が法の支配の下にはあると思うが、国連の活動も国際法があって戦争防止ということなっているが、やはり紛争は起こるので、そのために予防とか防止をする。そのために話し合い。カウンセリング、悩みとかを聞いてもらうだけでもかなり落ち着く。やはり制度としてこのような相談の場を設けて問題を処理するということにおいては、法でカバー出来ない部分を吸収できるということで必要ではないかと思う。論点整理の答がないという話だが、かなり論点を吸収して改善した点では評価できる。世の中自由も必要だが、自由平等博愛。平等をいかに実現するかも政治に求められていると思うので評価したいと思う。

 加藤紘一氏:私は太田私案はこれから手直しする部分がこれからあるのかもしれませんが基本的に賛成です。人権は守られる制度はできています。しかし、それが完璧に細かなところまで本当に行き渡っているかというと危ないところもある。私自身も自分が守られないと思うときがある。でも私は裁判に訴えません。そういうケースはいろいろあると思う。それを従来ぎすぎすしないようにしたのは、コミュニティです、家族です、親戚縁者です。その中で「おいお前、そんなこと言うもんじゃないよ」と、斜めの関係があった。隣のおじさんがうちの息子を怒ったり、どこかの町内会の野球を教えることが非常にしっかりしていたお兄ちゃんに怒られて、ですから、尊敬していたあの人に怒られたかといって、ちっちゃな子が、自分は悪いことしたんだと、そういうコミュニティがマーケットメカニズム世界、グローバライゼイション世界の中で崩れてきたからこういうことが起きているんで、そこはちゃんと認識して、裁判に至らない前のメカニズムを考えることは絶対必要だと思ってる。
 それから今日はじめて出席させていただいて、意見言って失礼したんですが、この会どうしたんですか。どうしてこんなに怒鳴り合うんですか、自民党の中で。33年自民党の議員してますけどね、そうですね、日中航空協定のときも、こんなに怒鳴り合いませんでしたよ。しっかりとした議論、冷静にしていただきたいと思います。
 
 赤池誠章氏:私も12回参加させていただいたが、やはりこの法案が、今、加藤先生、自民党らしくないというご指摘があったんですが、この法案自体が自民党らしくないから、こういう議論になるのかな、と感じております。
 それは保守政党というのはまず法の支配というのがまず大前提が、西田先生がおっしゃったように、慣習、いわゆる実態法の前に慣習法を尊重するのが大前提ですし、改革の仕方も、やはり漸進的にできるだけ現状を踏まえながらゆっくりとやっていくことが有るべき姿だと思う。そもそも論から言えば、今回の法案もそうだが、現実立法事実が残念ながら12回参加しても、新法をつくる現実の理由が見当たらない。(中略)
 人権侵害はあると思うが、例えば、吉田先生、山梨県で嫌な思いをされたということで、お詫びしたいが、これはひとえに学校長、学校の先生、ご承知の山梨県教組に支配されておりまして、学校の先生がきちっと対処しなかったことが、今50年経っても傷が除くということ、ひとえに学校長、先生が差別が絶対いかんという対処ができていないところが、いろんな問題になってくる。そうしたところをまず徹底的にやったところで、それでもまだまだできないというところは何かというところで初めて新法の必要性が出てくるのではないか。まだまだ現行法でやれることはある。それを一つ一つこの調査会で検討をお願いします。

 土屋正忠氏包括的な法律をつくったから救済できるか、という実効性は難しい。人権救済行政はできるかもしれないが、(いじめを受けた)その人間の救済になるのか、非常に難しいと思う。

 佐田玄一郎氏:この法案は、傘は小さく広げている。今までの12回のみなさん方の議論を踏まえて、こういう意見をつくられたわけだかが、この原案を含めて一つ一つをクリアするために議論すべき、またまとめる方向で努力していかないといけない

 衛藤晟一氏:司会についても言いますが、加藤先生からいろいろお話しありましたが、失礼ですよ。近江屋先生がしゃべっている途中に、そんなに長くやったわけじゃない。で、執行部の方は、今日は最初から告示は一時間でしょ。1時間のうち43分しゃべったんだから。それでしゃべったらいきなり今度はやめろとか。しかも、僕みたいに毎回しゃべっているのは遠慮して最後の方しかしゃべらないんですよ。そのくらいの気を遣っているんですよ。で、初めて手を挙げられたのに、いきなりお前短くしろとか、それはやっぱりちょっと運営そのものがあまりにも横着だよ、こんなこと言うと悪いけど。
 百地先生の件も部分的にとらえてその通りですと言われたら困る。勧告(答申)のなかに、抑制的でなければならないということをはっきり言って、だから、理念法でやるのか、あるいは3条委員会で30万という過料を課すというのは人間社会においては罰金刑ですよね。そういうようなところまで行くのは問題でないですか。立法事実として個別法で対応できるのではないですかと、彼は言ったわけで、その途中のところだけとって、この部分だけ引用するのは善意に欠けている。
 

会合後、鶴保事務局長(途中退席)の司会ぶりについて、近江屋氏が太田、塩崎両氏に詰め寄って抗議。塩崎氏「しっかり指導しますから」と平謝り。()》

 …今回の会合は、動員されたのか人権擁護法案推進派の発言が目立ちました。この結果について、反対派の重鎮議員は「それならば、次の会合ではこっち側の議員を動員するか」と話していました。まだまだ行方から目が離せません。


  

 何のことやら分からない写真でしょうが、実は私は27日から、第4回アフリカ開発会議(TICAD4)の取材のため、横浜市内に設けられたプレスセンターに詰めています。写真は内外の記者が入り乱れて仕事をしている共用スペースのものです。多目的展示場か体育館のような場所に細長い机と椅子を置いて、電話回線とインターネット回線を引いただけですが、とりあえずそれで十分なのです。

 この会議の開催中、福田首相はアフリカの40カ国の首脳と個別に会談し、各種の支援と協力を表明するとともに、日本の国連安全保障理事会入りへの支持を要請しています。もっとも、27日に会った16人のうち、明確な支持を表明したのは5人だけで、13人と会談した28日の首尾も上々とは言えなかったようです。まあ、日本の存在感を印象づけることには意味があるでしょうが、1人あたり15分だけ会って「じゃあお願い」と言っていもなかなかうまくは運ばないようです。当たり前ですが。

 さて、本日の本題に入ります。昨日はちょっと事情があって、強いて言えば神奈川県つながりがあるだけで、TICAD自体とは何の関係もない短い記事を書き、またしてもボツの憂き目に遭いました。まあ、紙面が狭いのは分かっていますし、昨日は中国が自衛隊による支援物資運搬受け入れを表明するなど大きなニュースがあったので仕方がないのですが。というわけで、まずその記事を掲載しますが、在日米海軍が、原子力空母配置にあたってわざわざ日本人向けのマンガをつくり、地元市民に配布するという内容です。反発が強いからでしょうが、それにしても、随分と気を遣っているものだなと感じました。

   《退役のため28日に出港した在来型の米空母「キティホーク」に替わり、8月から原子力空母「ジョージ・ワシントン」が神奈川県の横須賀基地に展開するのを前に、在日米海軍は新空母のPRを狙った日本人向けのマンガ「CVN(同艦の艦番号)」を作成した‖写真。初版は約2万6000部発行し、地元を中心に無料で配布する予定。マンガ好きで知られる麻生太郎元外相にも贈られている。
 ストーリーは、ジョージ・ワシントンに配属された日系米国人のジャック・オハラ三等兵曹が、横須賀に到着するまでの間、艦内での厳しい訓練や同僚との交流、日本人祖父母との対面などを通し、人間的に成長する姿を描いたもの。同艦は22日に船尾の一角で火事があり、乗員に鎮火されたが、作品の中でも偶然、航行中にランドリーで火災が発生し、オハラ三等兵曹が消火する場面が出てくる。》

 別に米軍の宣伝がしたいわけではありませんが、それは下の写真のような本でした。厚さは200ページとけっこうボリュームがあり、発行元は在日米海軍司令部、著者は佐藤晴美、かづさひろしの両氏、印刷・製本は大阪書籍です。大阪書籍というと、教科書会社というイメージが強かったので、ちょっと意外でした。

 

 マンガ作品として見れば、ストーリーも平坦で人物造形も浅く、あまり評価できるものではありませんが、ジョージ・ワシントンと米海軍のPRとしてはけっこうよくできていると思います。艦内での生活ぶりや訓練の様子、乗組員たちが楽しみにしていることなどが、よく伝わってきます。また、日本食や日本のホスピタリティーなども持ち上げられています。

 

 また、表紙裏には在日米海軍司令官、ジェームズ・D・ケリー少将の「発刊にあたって」という挨拶文も掲載されていました。ケリー氏は、「私の海軍軍人としてのキャリアを通して、この美しい国日本に約8年間も住むことができたことは、非常に光栄」「日本は私の心に永遠に刻みこまれることでしょう」「ジョージ・ワシントンが、アメリカの最も偉大な同盟国であり、世界第二の経済大国である日本に前方展開されることは、素晴らしい日米の協力関係、同盟を世界中に示すもの」…などと、美辞麗句をちりばめて日本を礼賛しています。

 ほんの少しですが、思いやり予算も減りましたし、相次ぐ米軍人による不祥事への国民の目も厳しいということも配慮しているのでしょうね。成功しているかどうかはともかく。火災発生の件は、マンガがまるで予言していたようで興味深く感じました。それともけっこう頻繁に起こるものなのでしょうか。このマンガは、近日中に在日米海軍のウェブサイト上にも掲載されるそうです。

 私は、日本の国土に、同盟国とはいえ他国の軍隊が常駐している現状は、本来異常なことだと考えていますし、決して望ましいことだとは思っていません。ただ、日本人自身が、自分自身で自国を守る覚悟も備えも持っていない上、周囲を、日本にミサイルを向けている中国や北朝鮮などに取り囲まれている日本の現状を思うと、当面は日米同盟は強化すべきだと思っています。その中で集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更、装備面の充実などを通じ、同盟の片務性を改めてより対等な立場を確保し、そして将来的には自主防衛を目指すべきだと。現在の日本のあり方を米国一辺倒だと批判する人は多いわけですが、経済的視点だけでなく、他国攻撃能力(ミサイル、空母、爆撃機、地上攻撃型戦闘機その他)を持たず、まともな偵察衛星もなく、すべて米国に頼っている日本の現状を押さえた上で、議論を展開すべきだと思います。

 米国や米軍に対する批判や不満はいくらでもありますが、安全保障面であまりに多くのことを依存しながら、口でいくら偉そうなことを言っても親に甘えてすねている子供のようではないかと感じるのです。世界はこれから、現在の米国による一極支配から、どんどん多極化していくのでしょう。その際に、日本は一つの極としてとどまるための準備をしていかなければ、冗談ではなく、中国という極に従属・依存する存在になるか、あるいは飲み込まれて「東海省」にでもなってしまうのかもしれません。現在の日本のありようは、そうなる可能性をあながち否定できない先の見えない停滞状況にあるような気がします。


 古森義久記者のブログ「ステージ風発」の27日付のエントリ「国会議員203人がアメリカの政府と議会に緊急要請--北朝鮮問題で」に先をこされた形ですが、昨日開催された拉致議連緊急役員会について報告します。米国による北朝鮮のテロ支援国家指定解除の動きがいよいよ本格化してきたことを受けて招集されたもので、米国に対し、「核と拉致の両面で無原則な対北譲歩をしてはならない」という緊急決議を承認しました。その全文については、古森記者のブログに掲載されていますので、ここでは省略します。

 昨日の役員会の出席者は、平沼赳夫、古屋圭司、安倍晋三、中川昭一、高木毅、稲田朋美、西村真悟、松原仁、原口一博、鷲尾英一郎、中川義雄ら(いずれも敬称略)です。次に、役員会終了後の記者ブリーフの様子を紹介します。

 

 《古屋事務局長 今日は緊急役員会を開会した。アメリカの動きが風雲急を告げており、テロ支援国家指定解除のハードルがかなり下がってきているんではないか。われわれ拉致議連として11月にも訪米し、しっかり釘を刺しましたし、また五月には松原議員も代表で行っていただいた。やはり議連の意思として、はっきり議会関係者にわれわれの考えを再度伝える必要があるだろうということで、みなさんにお配りした日本語の趣旨(決議文)で決議をして、総会にかける時間がないので、役員会で今承認をいただいた。
 若干修文があるが、これを英訳して議会関係者、上下両院議員関係者にすぐ届ける。それから、シーファー大使にも平沼会長から直々に申し入れをさせてもらうということで、了解をいただいた。早速そういう手配をする。その後いろいろみなさんから意見があり、拉致議連だけでなく、もう一つの議連ができているということでそれに対する懸念の話があった。そのほか、総会を近々に開き、家族会、救う会連携を強化して、一応了解をいただいた。

 

 平沼会長 今、古屋事務局長からお話しがあったとおり。昨年11月にわれわれワシントンにまいりまして、原則的にアメリカ上下両院政府関係者、あるいはシンクタンク、そういうところに申し入れした。一つは核の無力化といっているけれども、核弾頭だとか、ウラン、プルトニウム、あるいは運搬手段、ミサイル、こういうことが明確になってないじゃないか。寧辺にある核施設を解体して、北朝鮮に積んでおくだけだ、そんなのおかしいよっていうのが第一点。第二点は、テロ指定国会にずいぶん世界の各国をしているじゃないか。北朝鮮の核技術っていうのはシリアに行っているはずだ。で、シリアのは解除しないで、あるいはイランも解除しないで北朝鮮だけ解除するっていうのはおかしいじゃないか。日本とおなじように議会制民主主義の国で、アメリカでは28人の賛同者で、「安易にテロ指定国家、解除すべきではない」という法案まで出している。その法案を見れば、日本の拉致が解決できない限り、テロ指定国家を解除すべきじゃない、っていうことも入っている。アメリカっていうのは、議会の行為を無視するのか、と。
 そして、日米には日米安保条約というのがある。こういうことをあなたたちは軽々にやったら、日米同盟にもヒビが入ることじゃないかと。こういうことを主張しまして、結果的には昨年内にテロ指定国家解除っていうようなことが延びて、現在に至っているが、今またいろいろ動きを見ているとテロ指定国家解除になりそうな気配になってきている。ここは日本としても毅然とした態度を示さなきゃいけない。そのためには早急に役員会を開いて、決議案を彼らにぶつけようということで、皆様方の賛同をいただいた。

 もう一つは、対話を重んずる、そういう議員連盟が動きが始まっている。これに関しては、われわれは原理原則を持って、拉致問題の全面解決をうたって、行動してきた。これに対してはやっぱり毅然とした態度でこれからも進んでいこうということで皆様の合意があった。

 

 古屋氏 政府がそういうスタンスでやっているときに、われわれはそれをしっかりバックアップしているにもかかわらず、違う動きが出るっていうことは北朝鮮から足元を見られかねないということで、懸念の意見がありました。

 

 記者 アメリカの議員にはどういう形で伝えるのか

 

 古屋氏 これはすでに、メール等々で連絡をとっている。それでわれわれがこういう趣旨の決議をするということは、先方は一応は承知をしている。(決議したので)すみやかに向こうに送付する。同時に、シーファー大使にも申し入れをさせていただこうということで、ダブルトラックでやる。

 

 記者 アメリカ国内ではここ最近になって北朝鮮政策を緩和しようという動きが少しずつ力を盛り上げているという認識か

 

 平沼氏 そういう動きが顕著になってきたと。それに対しては、最大の同盟国である日本からしっかりと釘をさしておこうということだ。それは議員ですから、(アメリカにも)いろいろな考えがある人たちがいることは事実です。しかし、そういう安易に制裁を解除すべきではないということで、議員も法案まで出して行動してますから、そういったところには積極的に働きかけるということは日本として必要なことだ。

 

 古屋氏 われわれワシントンに行ったときに、議員外交の重要性を非常に感じた。やっぱり認識している人が非常に少なかった。われわれが行ったことによって、日本がこれだけこういう認識を持っているのかということが分かっていただいた。その結果、今年の五月に下院で法案が通ったんですね。ですからやっぱりそういう一定の効果があると思います。引き続きしっかり議員外交を通じてアメリカの政府に対してもあまり甘くならないように、しっかりあなた達が監視しろよと、これはまさしく同盟関係が一番大切じゃないか、それにヒビが入りかねないんだよということで、議会筋からも政府に警鐘を鳴らしていただく、これが趣旨だ。

 

 記者 一部(※毎日新聞27日夕刊1面トップ)の報道で、数人の生存者を帰国させる用意があると、北朝鮮側が米側に伝えたという報道が出ているが。

 

 平沼氏 それは今初めて聞きますね。

 

 記者 (毎日夕刊のコピーを見せる)

 

 平沼氏 彼らはいろいろ出してくるんだろうなあ

 

 記者 特に政府関係者から平沼先生に連絡は

 

 平沼氏 まったくない。

 

 西村氏 過去、曲がり角、曲がり角でそういう報道ありましたよ。同じパターンです。例えば(拉致実行犯で元死刑囚の)辛光洙。辛光洙の身柄を日本の警察に取り調べさせて、日本に送るという、それでめでたしめでたしという話は一年少々前にもありました。

 

 古屋氏 あったね。

 

 平沼氏 だから政府もそういったところの真贋は見極めて、それで私に報告がないんでしょうね。報告するに値しないと思っているんじゃないかな。今のところないからね。

 

 西村氏 (拉致被害者が)数名帰ってきたら、皆さんも集中報道になりますからね。非常に向こうは、もう一度、戦略的にやっているわけですから、5人の帰国。効果的な手段だと思っているんでしょう。

 

 平沼氏 全員死亡したっていって死亡診断書出してきた国だよな。

 

 記者 最近、こういった報道が相次いでいることについての受け止めは

 

 平沼氏 読売新聞の例もありましたし、それはいろいろそういう画策をしているのかなと、そう思っていますね。彼ら一流の。

 

 記者 北朝鮮サイドが

 

 平沼氏 そうでしょうね。あの、読売の一面の記事だって、中山補佐官が言うには事実無根ですからね。まったく本人にも何も確認なくああいう記事が出ているわけで、それをいろいろ画策しているんでしょうね。そういうことにいちいち我々はきりきり舞いして踊る必要はありませんね。そういういうところは毅然としてないと。議員の中にはそういうことで、一喜一憂しちゃうのがいるけれど、われわれはそういう姿勢はとりたくないと思っています。》

 …ここで話題になっている毎日の報道とは、「北朝鮮が日本人拉致事件に絡み、被害者とみられる日本人について『まだ数人が国内におり、帰国させる用意がある』と米国に伝えていたことが27日、政府関係者の話で分かった」というものですね。これについては昨日夕の記者会見で、町村信孝官房長官が「まったくかかる事実はないし、米国政府からも記事のような内容の連絡を受けたことはない。ちなみに拉致対策本部の者も、あるいは、外務省にも一切取材なしの記事であると。いったいどういう意図をもって毎回、連日事実無根のことを書くのか、極めて遺憾だ」と全面否定しています。かなり激しい口調です。

 私も、某外務省幹部にこの記事について確認をとったところ、「ヒル(米国務次官補)からもそういう話は聞いていないし、ちょっと考えにくい。このところ、読売、毎日と、おかしな報道が続いている。だれかがそういう情報を流して書かせているのではないか。産経は北朝鮮から敵だと思われているから、そういうことはないだろうが、次あたり朝日に変な記事が出る可能性がある。何らかの意図をもって、日本のメディアは質は低いと印象づけようとしていることだって考えられる」と話していました。拉致議連の役員達と同様に、非常に不自然なものを感じているようでした。今後はあるいは、週刊誌なども利用される恐れがありますね。

 ただ、北朝鮮がいずれのときにか、横田めぐみさんら日本政府が認定している拉致被害者ではなく、政府が知らない拉致被害者を数人返してきて、それで「これで最後だ」と幕引きを図るのではないかという観測は、以前からありました。私も、昨年10月27日のエントリ「福田首相と拉致被害者家族の初面会と家族の思い」の中で、次のような有本嘉代子さんの言葉と、私が拉致問題に詳しい元政府高官から聞いた話を紹介していました。その部分を再掲します。

 《嘉代子さん 
下手しよったらね、私らが懸念してるのは、(北が)何人か出してくる感じがするんですよね。そしてその何人かは、案外、特定失踪者から出してくるんじゃないかなと思うんです。今、死んだ人は死んだで押し切ってますでしょ。そこんところは私たちはちょっと心配してます。国民がそこのところまで、マスコミさんが明らかにしてくれてないから、金が北に流れるということを全然理解されてないですからね。国交正常化イコール、莫大なお金が北に流れるということですからね。そこを、マスコミさんがきちっと説明してくれたら…。

 《実は私もたまたま昨日、元政府高官と話をしていて、有本嘉代子さんのご懸念とよく似た話を聞いていました。その話というのは、「福田政権下で北朝鮮は拉致被害者を数人帰してくる可能性がある。ただ、それはわれわれがよく知らない被害者か、(北に家族を人質にとられている)寺越武志さんのような人物だろう。横田めぐみさんは生きているとしても、北には帰せない事情があるのだろうから」というものでした。その上で、あとの被害者は死亡したか、もともといないということにして拉致問題は解決、1兆円規模の対北支援開始ではたまったものではありませんね。》

 つまり、毎日の報道は、北朝鮮の対日工作、戦術としては十分、ありえることでもあると考えています。仮に、北がそういうカードを実際に切ってきたときに、日本国内はそれでも、「これだけではダメだ。拉致被害者全員を帰国させろ」と言い続けられるのか、それとも「北朝鮮もここまで折れてきたのだからそろそろ妥協しようよ」という空気になるのか。一連の報道は、日本政府や拉致問題での原則派の信頼性を揺るがす効果を持っていると同時に、今後の北朝鮮の出方に対し、日本国民がどういう反応を示すかを探るアドバルーン的な役割も持っているような気がします。

 先日発足した日朝国交正常化推進議連といい、相次ぐ奇妙な拉致問題報道といい、明確なことは分かりませんが、いずれも何らかの背景があってのことでしょう。北朝鮮の金桂寛外務次官と米国のヒル国務次官補は、昨日、きょうと北京で2国間協議を行っています。拉致議連などの活躍もあって、対北融和派のヒル氏の立場は、米議会や政府内でも微妙で、ヒル氏の思惑通りにことが運ぶことはないとの観測もありますが、油断はできませんね。そのヒル氏の後押しをし、味方になっている日本の国会議員たちがたくさんいるわけですから。

 拉致問題のように、一時は国民の怒りが沸騰し、本来なら国論が二つに割れること自体がおかしいような話まで、日本では一致した行動がとれません。外交は、世論のバックアップがあるときは強いのですが、世論が二分しているときには弱くならざるをえません。「敵」は国外にいるだけでなく、むしろ国内にあって強大だと思うのです。そうした現状を認め、現実的に対応しながら一歩一歩、物事を前進させるしかないわけですね。だから、私は何度も書いているように、保守派・良識派は小異を捨てて大同につくぐらいの構えでいてほしいと願うのですが…。

 



 今では滅多に見ることのなくなった糸トンボに出会うと、その美しさに感動するとともに、進化の不思議さと、その目指す方向の多様性についてふと考えます。カエルの卵が、まるで現代アートのようなアクセントを添えてくれました。

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