2008年06月


 昨夜は、福田首相の夜のぶらさがりインタビューのメモを読んで、久しぶりに激しい怒りを感じるとともに、どこか既視感のようなものを覚えました。それが何かと考えると、ああ、官房長官時代に繰り返し聞かされた、あのいいかげんで中身がなくて冷淡な、それでいて大事なところで他人の神経を逆撫でするイヤミな話し方が戻ってきたのだなと気づきました。それだけ追いつめられているのか開き直ったのか、福田氏の心境は分かりませんが。

 首相になってから、福田氏のさまざまな他人事発言が批判されるようになりましたが、以前の福田氏のしゃべりを聞いてきた者からすると「すぐぶち切れない分、官房長官時代よりずっとマシ」(外務省次官経験者)であり、私も、やはり立場を意識してかよく抑えているなあと思っていました。でも、昨夜の北朝鮮のテロ支援国家指定解除問題と、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会の報告書提出に関する答弁は、昔通りの「福田節」がででいました。実に不愉快ですが、報告したいと思います。まずは、北朝鮮の方からです。

 《記者 アメリカ政府が北朝鮮をテロ支援国家指定解除を26日に議会に通告する方針を示しました。総理の受け止めをお願いします。

 福田氏 まあ、26日にね、申告すると。いうことであるならば。ということになりますけどね。まあ、それは、北朝鮮の核の問題がですねえ、この問題が解決をする方向に進むというのであればね、それは歓迎すべきことですよ。これは、米朝間というだけでなくて、この地域の安全また、あの日本の安全保障の問題でもありますからね。それが、進んでほしいというように思います。そしてですね、これをね、成功させるためにはですね、日米関係これは大事ですね。米国ともよく緊密な連絡を取りながら、そして我が国は、あの、拉致の問題ありますからねえ、これの解決も果たさなければならない。で、そのためにも、今後、ますます日米関係緊密な連絡を取り合う、そういうことが必要だと思っております。

 記者 日本政府としてアメリカ側にどのように訴えていくお考えなんですか。指定解除後。

 福田氏 (遮るように)ですから、そういうことが大事だということを。これは、再三、えー、双方で話し合ってきてるわけですねえ。まったく意見の食い違いはありません

 記者 総理自ら、ブッシュ大統領にテロ支援国家指定解除の取りやめをお願いするということはありますでしょうか。

 福田氏 いや。それはね、今、申し上げた通り。でしょ。今、申し上げたのはね、その核がね、核の問題が解決するのであれば、それは望ましい事ではないんですか。我が国にとっても。ですから、そういうのであれば、歓迎すべきことなんですよ。ね、あとは拉致の問題を解決するということです。そしてまた、核と拉致の両方を解決するためにも日米関係は大事だと申し上げています。分かった?分かった?

 米国によるテロ指定解除につていて、福田氏はよく分からない留保はつけつつも二度にわたって「歓迎」して見せました。米国に対して何かモノを言うつもりは全くないのもうかがえます。今朝、外務省首脳は「日本はもっと北朝鮮の核に目を向けるべきだ」と、福田氏や、山崎拓氏に迎合するようなことを記者団に語っていましたが、実はこれは変な議論ですね。以前のコメント欄でstaro様が指摘していたように、現時点ですでに中国もロシアも日本にたくさんの核ミサイルの照準を日本に合わせているわけですから。ことさら北朝鮮の核開発にだけ慌てふためいてみせるのには、何かうさんくさい意図を感じます。

 そこで、参考までに昨日の自民党
拉致問題対策特命委員会での安倍前首相の冒頭あいさつを紹介します。

 

 《安倍氏 日朝にも動きが出て参りました。先般、斎木局長とソンイルホとの会談の結果が公表されている通りでございます。大切なことは、しっかりと北朝鮮側に行動をさせて、行動を見ながら、こちらが制裁の解除について決断をしていくことだ。幸い政府もそのような方針だという。
 また今日の新聞報道によると、北朝鮮が核についての申告を行い、それに対して米国がテロ支援国家リストからの削除について議会に対して申請をするという報道がなされている。日本にとっては極めて重大な問題だと思う。北朝鮮がテロ支援国家を指定されたことについては、やはり拉致問題について、北朝鮮が拉致を実行し、いまだにその拉致をした人たちを解放していないことも含まれているとわれわれは認識しているわけでありますし、それ以上に、日米の同盟という絆の問題にも関わってくる私は考えている次第だ。そういう観点から先生方にもご議論をいただきたいと思う。》

 安倍氏は「日米同盟の絆の問題にも関わってくる」と明確に指摘しています。また、拉致はテロであり、拉致被害者が解放されていない現時点での指定解除はおかしいという点にも触れています。福田氏は現職の首相ですから、発言に一定の制約があるのはその通りだとしても、前首相との落差にめまいがします。安倍氏は会合後、記者団の質問に答えて次のように語りました。


記者 26日にアメリカがテロ支援国家指定解除をすると見られているがどう受け止めているか

 

安倍氏 米国が北朝鮮をテロ支援国家に指定した理由の一つとしてやはり拉致の問題があった。これはやはり拉致自体は人権への重大な侵害であり、また主権への侵害であり、かつこれは対南工作、テロ行為のための拉致でもあった。それはまだ継続しているわけです。当然そのことも理由である、そういう説明も米国から当時あったわけですから、その観点からこの問題解決されていない中で、解除されるというのは極めて日本にとっては遺憾なことであり、日米の同盟関係、信頼関係にもですね、私は影響があるかもしれない、と思います

 

記者 北朝鮮も核の申告をするといっているようですし、方向としてはそれを止められないという状況なんでしょうか。

 

安倍氏 核の申告について中身が正確なものなのかどうかということも当然検証していかなければいけないと思います。そしてまた、やはり解除ということについてはですね、日米関係、同盟関係に影響があるということもさらに日本はしっかりと言っていくべきだろうと思いますね。

 

記者 今後、例えば周辺国が制裁を解除し、日本も制裁を緩める方向になってくると思うが、日本としては北朝鮮にどう対応していったらいいか

 

安倍氏 制裁の解除については北朝鮮側の行動を見ながら、こちらが制裁を解除していくことはもうすでに政府も述べてますね。先に制裁解除ありきではありません。かつて日本人の安否について、なんの結局回答もありませんでした。そこからわれわれは学びとらなければいけないわけであって、今回は拉致被害者の調査をすると言っておりますけども、その調査の結果がちゃんとでるまでわれわれは制裁を解除しない、こういう意思で臨まなければいけないと思いますね。当然のことだと思います。

 

記者 核の申告について、北朝鮮は冷却炉を爆破するパフォーマンスをするという報道もあるが

 

安倍氏 これは世界に対していかも、自分たちは核を無力化させると、開発能力を無力化させるということを宣伝しようとしてるんだと思うんですね。それにはわれわれだまされてはいけないと思いますね。

 

記者 今日、拉致家族の方とも(特命委員会で)お会いになったが、どういう話をしたのか

 

安倍氏 テロ支援国家リストに北朝鮮を載せる上において家族会の皆様が何回も訪米をされて大変な努力をしてこられました。まさに彼らにとって肉親を取り返す大きな拠り所になっているんですね。その拠り所を失うかもしれない、なんとかしてもらいたい、という切実な声だった。

 

記者 日朝実務者会議で誤ったメッセージを送ったことが米の指定解除の流れになったとも指摘されている。この間の政府の対北朝鮮、対米国への姿勢はどう受け止めるか

 

安倍氏 米国もこの問題、日米同盟関係に影響を及ぼすという、その可能性について米国にはしっかりと伝えてきた思いますね。さらにそういう努力を続けてもらいたいと思います。》

 なぜこんな当たり前のことが福田氏には言えないのか。結局、福田氏は北朝鮮と早く手を打ちたいライス米国務長官やヒル国務次官補と同じ穴の狢であるのだろうと思います。今回の日朝実務者協議について、ある元外交官は「あの程度の北朝鮮の提案であるならば、斎木君は自分の判断でけっ飛ばして帰国できるはずだった。それがそうしなかったのは、あらかじめ上から『北朝鮮の提案を受けるように』と命じられていたのだろう」との見方を示しました。

 ヒル氏が北朝鮮と詳細に話し合って決めたシナリオがあり、それを受け入れた福田氏が日朝協議の結果、制裁措置を一部緩和すると「決断」し、そしてその一連の流れの中でライス氏が指定解除の議会通告を行うと表明したということではないでしょうか。日朝協議にはまだ隠し球があって、もしかすると何人か拉致被害者が帰ってくるという場面もあるかもしれませんが、「だまされてはいけない」と思います。

 福田氏のぶらさがりインタビューの話に戻します。昨日は、安倍内閣時に発足した安保法制懇の報告書をやっと福田氏が受けとりました。これはもうとっくにできあがっていたのに、ずっとたなざらしにされていたもので、国会が閉じてから一応受け取るだけ受け取ったという形ですね。これに関連して、私は4月4日の政治面に次のような記事を書いています。

 

忘れられた「集団的自衛権と憲法」 安全保障上のタブー、福田首相が再「封印」

 昨年9月の福田内閣発足以降、福田康夫首相が隅に追いやり、政治課題としてすっかり話題に上らなくなった重要問題がある。安倍晋三前首相が推進していた集団的自衛権の行使と憲法の関係の再整理がそれだ。安倍氏が、日米同盟の双務性を高め、米国に対して対等の発言権を持つために打ち破ろうとした安全保障上のタブーは、福田首相によって再び厳重に「封印」されようとしている。
 安倍氏は昨年4月の訪米時に、ブッシュ大統領に対しこの問題を再整理する方針を伝え、5月に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を設置。周辺事態に公海上で米艦船が攻撃を受けた際、近くの海上自衛隊艦船が敵に反撃できるかどうかなど4つの事例を示し、検討を指示した。
 懇談会では「権利」はあるが、憲法上「行使」はできないとする政府解釈に対する批判が相次ぎ、昨年中に解釈の見直しを求める報告書を出す方向だった。
 安倍氏は集団的自衛権の全面容認ではなく、昭和35年に祖父の岸信介元首相が示した「他国の領土、領空、領海では集団的自衛権を行使しない」とする「制限行使論」に立ち戻る考えだったとされる。自国の領土、公海などでは集団的自衛権を行使できるという論理だ。
 日本近海の公海上で米軍艦船が攻撃を受けた際に、日本は何もできないとする政府解釈に従えば「日米同盟は崩壊する」(防衛庁長官経験者)とされる。国際テロ組織の脅威も顕在化した現在、この問題は喫緊の課題であるはずだ。
 ところが、福田内閣発足後、懇談会は開かれていない。福田首相に提出されるはずの報告書は「中身はできている」(政府筋)が、たなざらしのままだ。
 福田首相が国会運営に苦慮しているのはわかるが、この問題はそれとはかかわりなく首相の決断で前に進められる。首相には安倍氏がまいた種を枯れさせず、育てる度量を見せてほしい。(阿比留瑠比


 上記の北朝鮮関係の福田首相答弁には、「日本の安全保障」という言葉も出てきますね。そうであれば、この懇談会の報告書も真剣に受け止めるべきだと考えますが、実際の福田氏の言葉は以下の通りでした。この人を小馬鹿にしたようなふざけた物言いこそが、官房長官時代を彷彿とさせたのです。

 《記者 今日、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会が、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を認めるよう求めた報告書をまとめた。総理はこの報告書の扱いをどうする考えか

 福田氏 あの、扱いとはどういう意味ですか?

 記者 報告書を受け取って、それに基づいてどのような対応を取られるのかということです。

 福田氏 どのような対応って、何を、したいの?

 記者 報告書に書かれている内容について、総理として何らかの施策なり政策なりを打ち出していくお考えがあるのか、ということです

 福田氏 それはねえ、あの今日、いただきましたけどね。内容はまだ見てません。ですから、まあこれからよく研究したいと思います。

 記者 報告書の内容は別として、集団的自衛権が行使できるように、今の政府の憲法解釈を変えるというお考えは今のところはありますでしょうか

 福田氏 今のところって、変えるなんて話はしたことないんだけどねえ。…憲法は憲法

 記者 これからもないということでしょうか。報告書をまた別として、集団的自衛権の行使は…

 福田氏 それは憲法に書いてあるんですからねえ。憲法変わるんですか?変わったらばそのときのね、憲法に従いますよ。

 記者 報告書を、恒久法の制定につなげていくのか、いかないいろいろあると思うんですが

 福田氏 恒久法というのは一般法のことですか?

 記者 そうです

 福田氏 これはー、今ですね、一般法は、今の国会の状況でなかなか難しいのではないかという、そういうような話は党のほうからうかがっておりますんでね、ですからそういうことになるのかどうかはわかりませんけど。

 記者 安保法制懇の会議自体の取り扱いはどうされるか

 福田氏 何の?…ああ、会議ですか? これはー、あのまあ立派なね、先生方が集まって、ああいう報告書を出してくださったということで、一応これで報告終わったわけですから、まあ…、まあ完結したんじゃないんでしょうかね。》

 因みに、集団的自衛権の行使ができないなんて、憲法には一行だって書いてありません。福田氏の言葉がいかにいいかげんでその場しのぎ以下のものであるかがよく分かると思います。その点をきちんと突っ込めない記者も記者ですが。

 私は記事の中で、福田氏に「度量を見せてほしい」と書いていますが、まあ、最初からそんな度量があろうはずもないとは分かっていました。しかし、この志を持たない福田氏の「まあ完結したんじゃないでしょうか」というイヤミあふれる、一生懸命議論して報告書をまとめたメンバーへの思いやりのかけらもない言葉を読むと、どうにも怒りが抑えられません。自国の首相にこんな言葉をぶつけたくはないのですが、本当に「最低」の首相だと言わざるを得ません。こんな人が現在の日本の首相であるということに、強い屈辱を覚える次第です。

 


 昨日午後、私のパソコンが突如、謎のウイルスに感染し、使用不能となってしまいました。慌てて会社に持ち込み、なんとかならないものかと調べてもらったのですが、結局、今まで書いてきた記事や取材メモ、もらったメールや自分が使いやすいようにセットしていた各種設定はすべて白紙となってしまいました。これは、ひと財産失ったようなものなので、かなりの脱力感を覚えました。2年数ヶ月前にも、原因不明のハードウェア障害ですべての記録が真っ白になった経験があり、ただただ「とほほ」という言葉しか出てきません。

 そんなわけで、昨夜はとりあえず、パソコンは会社にある予備機を借りて確保し、ブログ訪問者のみなさんへの返事は書いていた(もちろん、紙面の記事もです)のですが、さすがにエントリを更新する余力はありませんでした。というわけで、本来ならば昨日紹介するはずだったものが一日遅れたのをお詫びします。

 私は前回のエントリで、20日の自民党人権問題等調査会でのやりとりを報告し、強いプレッシャーを受けながら発言を続けている西田昌司参院議員の訴えに注目するよう呼びかけました。その中で、稲田朋美衆院議員が「西田さんがこの会で発言されたことに関して、京都の自由同和会というところから、抗議の文書が西田さんの同僚に配布されております」と述べていたものが、次の文書であるようです。早速、あちこちうろうろしてコピーを入手してきました。

 

 下手な接写ですいませんが、読めますでしょうか。会の印鑑が押してありますね。西田氏の発言に対し、「許しがたい」「現在、訴訟準備中」などとかかれています。文書の送り手の名前については、調査会でも実名はあげられていないので伏せておきます。文書はなんでも、京都選出の国会議員、京都府会議員や京都府の各市町村議などに送られているようだと聞きます。稲田氏は「このような訴訟を準備しているというような文章が同僚にまかれること自体、西田さんの政治活動の自由に対する制限」と指摘していますが、その判断はここを訪れるみなさんにお任せしたいと思います。

 次は、太田誠一調査会長宛てに送られたとされる文書です。太田氏自身は、「書面は私のところに来ておりません。あるいは来ているのかもしれませんが、見ておりません」と語っていますね。本人がそう言っている以上、そうなのだろうと思うしかありませんが‥。

 

 こちらの文書は、太田氏に対して「西田参院議員への適切なご指導を」と書いてあります。そして再び、訴訟準備中であることが述べられています。この二つの文書は、ともに自身の「不規則発言」に対して反省を示す一方、西田発言について「政治テロリストや卑劣な暴力行為者と同一視し」と批判していますが、これまでの西田氏の言葉はそういうものだったでしょうか。

 実は、この抗議文に添えられた参考資料には、私のこのブログからも一部引用があったそうです。それでは、私の過去エントリ「4日の自民党人権問題調査会で語られた問題の本質」(6月5日)、「人権擁護法案の今国会提出見送りと議員たちが語る『本音』」で紹介した西田氏の発言が、果たして訴訟の対象となるような名誉毀損だといえるのでしょうか。これも、みなさんに自由にお考えいただければ、と思います。私も、この国がどういう社会へ向かおうとしているのか、改めて考えてみたいと思っています。


 私もいろいろ忙しく、紙面に、ブログにと書くべきことがいろいろあって紹介が遅れましたが、これまた重要な人権擁護法案の現在について報告します。まずは、20日の自民党人権問題等調査会について書いたものの、紙面ではボツ(ウェッブ版では掲載)になった産経政治部、原川貴郎記者の玉稿からです。いやほんと、毎度書いていますが紙面は本当に狭いのです。記者同士で飲むと、その話題が必ず一度は出るほどですし、私もみなさんに読んで欲しい原稿がずっとデスクノートにはさまれたまま眠っています。それはともかく…。

 

自民党の人権問題調査会(会長・太田誠一元総務庁長官)は20日の会合で、人権擁護法案をめぐる協議をいったん休止し、臨時国会の召集にあわせて再開することを決めた。

 人権委員会の権限を大幅に縮小した修正案(太田私案)への批判は根強く、会合で「結論を出すのは時期尚早だと決断するのも調査会長の見識だ。機が熟していないので私案は取り下げてほしい」(古屋圭司衆院議員)など協議打ち切りを求める声が相次いだ。しかし、太田氏は「機が熟していないのは分かるが、さらに具体的、個別的に詰めていきたい」と協議継続の意向を示した。

 

 国会閉会中の協議は取りやめというのは、これは国民の反発の声がそうさせたのだと思います。それで、いつもは調査会の取材メモを私にくれるこの問題担当の原川記者なのですが、20日はあまりの多忙さにメモをつくる時間も余裕もなく、とりあえず、放っておいたそうです。ところが、自民党の戸井田とおる議員のブログ「丸坊主日記」に、下記のような記述があるのを読んで、改めてメモをつくって送ってくれました。とりあえず、21日の戸井田氏のエントリを読んで、崇高な使命と義務に目覚めてテープ起こしに取り組み、本日夜になって私にメモを届けてくれた次第です(感謝)。

 

《こんにちは、戸井田とおるです!

いつもお世話になり、心より感謝致しております!

また、戻って来てしまいました。それだけ太田会長の気持ちが固いということなのでしょうか!今回もひな壇は勢揃いされ、壮観でありました。この度の第16回目の会合はNS参議院議員の発言で終わったような感じがしました。会長はじめ執行部もNS参議院議員の発言のあと、一瞬水を打ったようになり、人権局長もしどろもどろで、勝負あり!といった感が有りました。

しかし、その後配られた資料に執行部側の内部資料が間違って配られ私が指摘すると太田会長は苦笑いしながら回収を指示していました。最後の一任を取り付けるところまで綿密な打ち合わせがされているようです。太田会長の最後の挨拶で、休会中は調査会を開かないような言い回しの発言と、臨時国会が召集されたらまた始めましょうとのことでしたが、政治の世界は夜討ち朝駆けだまし討ち何でも有りの世界ゆえ気を抜かず頑張ってまいります。

会の詳細は「IZA!」の阿比留さんのブログにアップされていると思いますので、NS議員の発言を確認してください!》

 

いや、しかし、戸井田先生、一応確かめてから私の名前を出していただきたいところです(笑)。戸井田氏のブログを見て私のところを訪問し、がっかりさせた人には申し訳ないので…。ともあれ、20日の調査会の様子はこんな感じだったようです。やはりブログの字数制限の関係で割愛した部分も多いのですが、戸井田氏のブログ内容と合わせると、その場の雰囲気がよく伝わるかと思います。実にひどいものです。ここのところ外交問題について頭を悩ましてきましたが、日本は昨年の参院選以降、本当におかしな方向に進みつつあると痛感しています。

 

稲田朋美氏 今日この法案ではなくてこの会の仲間の議員の発言についてちょっとお話しをしたいと思います。ここは人権問題調査会ですから、私はこの会の仲間の発言、そして言論の自由、政治活動の自由はきちんと守っていただきたい思うんですけれども、前回(前々回)西田さんがこの会で発言されたことに関しまして、京都の自由同和会というところから、抗議の文書が西田さんの同僚に配布をされております。そしてまた配布された資料を見ますと、太田会長宛にもその方から、抗議文とそしてまた西田さんに対して指導するようにっていう要請文が来ているわけであります。そして西田さんのこの会での発言が、特定の人物に対する名誉毀損に当たると、そして訴訟準備中であるという文書であります。

もちろん名誉毀損というのは公然事実を摘示して、ある特定の人物の社会的地位を低下させる、そういった言動でありますけれども、私はこの自民党というこの閉ざされた部会内での発言が、公然に事実を摘示したことになるのか、そしてまた私もその場にいましたけれども、西田さんの発言が誰か特定の人物の社会的地位を低下させるものと私は認識をしなかったわけであります。しかし、このような訴訟を準備しているというような文書が同僚にまかれること自体、西田さんの政治活動の自由に対する制限でありますし、この点はぜひとも人権を尊重するためのこの会としては、こういった抗議文に対しては毅然とした対応をとっていただきたいというのが一点。

もう一点はこの文章でも分かりますように、もし人権委員会なる強大なものがあれば、訴訟を準備することなくすぐさま駆け込み寺としての人権委員会にその方が駆け込んで、そのことがまた西田さんの政治活動を萎縮させる。そして政治家全体に対する言論の自由政治活動の自由に対する萎縮の非常にいい例だと思います。しかもご丁寧なことにこの会での発言を一字一句文章にしたものを添付されているわけでありますが、一体どうしてそういったことが起こるのかという点も含めて私は会長のご意見を伺いたいと思います。

 

太田誠一会長 ここにはですね、前からお答えしてますけど、報道関係の皆様はメモを取ることを認めておりますので、そういうものが出るということは考えられるわけでございます。私のこういったことも、逐一私が何を言ったということも、外の世界には伝わっているように思っております。いろいろなところで、インターネットを含めていろんなことを言われておりますので、それは外に出ているというふうに認識をいたしております。

 

石井準一氏 稲田先生から発言されたことで、この調査会そのもので発言したことによって大きな不利益を被るということになれば、この調査会でまともな発言ができないということになりますので、今稲田先生に言われたことに対して、会長としてどのような対処を考えているのか、まずその辺をお伺いしたいと思います。

 

太田氏 書面は私のところには来ておりません。あるいは来ているのかもしれませんが、見ておりませので確かめてみますけれども、今のお話しはどういうことなのか、私はよく確かめてからご返事をしたいと思いますが、お聞きしただけではちょっと何とも判断がつかないところでございます。

 

稲田氏 お聞きしたかったのは、前回の西田さんの発言に対してそれが名誉毀損に当たるから、会長宛に、西田さんを指導するように、ということなんですが、こういうことをもし会長が受けられて、真に受けられて、指導するようなことがあったら、要するに私たちの政治活動の自由が、言論の自由も。こういうことに対しては毅然とそんなことはできないというような対処をしていただけるんですかということです。

 

太田氏 そんなことはできません。

 

石井氏 訴訟準備中ということが文言に唱われているので、その事実関係が起こった場合に会長としてどのような対応をするのかお聞きをしたいと思います。

 

太田氏 今の現行法でそういうことを考える方が出られてもですね、その、訴訟を起こされるということについてわれわれが何か申しあげることではないんじゃないかと。調査会(訴訟)を起こしたってそれに対して対抗して何かするっていうことが何かあればいいけどもですね。

 

西田昌司氏 私のことでいろいろ話になったんで、発言の機会を頂戴したいと思います。要するにですね、この問題は、前も言いましたけれどもね、こういう政治家がこの言論の自由、人権問題について本音で語っているんですよ。本音で語っているものを圧力が掛かって私の発言が地元で妨害をされる。そしてそのことについて、今度は訴訟するというんですよ。で、今の法律の体系ではね、これその程度で終わるかもしれません。しかし、まさにこの人権擁護法なるものができたらですよ、訴訟以前に、私、呼び出されることになるんじゃないですか。こんなことをしてしまえば、言論の自由はなくなってしまうじゃないですか。だから自殺行為だと、そのことを申しあげているんですよ。

みなさん方も考えてください、よくこれ差別と被差別の話で、差別された者でないと差別された者の気持ちは分からん。足を踏んだものが足を踏まれたものの気持ちが分からんとおっしゃるけれども、みなさん方も現実にやられてくださいよ、これ。逆のようなことをされたらどうなるんですか、これ。やっていられませんよ。だから、こういう制度をつくってしまうと、このこと自体がですよ、訴訟の前に指導対象になってくるんじゃないですか。だからそこをね、みなさん方は本当に真剣に考えていただきたい。こんなことをされて、政治家の議論がちゃんとできるんですか。そこがまず一番の問題。それとこの際、私申しあげたいんですけども、公的な例えば公務員の人権侵害ならいいんじゃないかと、こういうことをおっしゃる方がおられるんです。なるほど私も公務員のそういうケースがあるだろうなと思うんですけどね。(中略)

最後に申しあげますが、私はここで部落解放同盟という言葉は一言も使ったことはない、同和団体という発言でありますから、その辺はお間違えのないのようにしたいんですが、部落解放同盟から私が圧力を受けたりしたことはないんです。それは。
 その中でもう一言付けさせていただくと、私は地元で税理士をやっておりまして、税務申告に同和地区の方がこられました。その方はこう言われたわけですよ。「西田先生、私たちは団体を通じたら税金を払わなくていい。しかし、そんなことをするのは嫌だ。何故嫌かというと自分の子供は優秀で奨学金をもらって東京大学まで行っている。国のご厄介になっているんです。これだけ国のご厄介になったら、せめて私もきっちり税金を払いたい」こういうことをおっしゃるんですね。非常に私はこれ、涙が出ましたですよ。まさにね、こういう方がおられるんです。
 同和ということをひとくくりにしてしまって、こういう真面目な方の名誉まで毀損することになるんじゃないのか。地域改善特別法で格差の問題はずいぶん、これ今まで何兆円もつぎ込んでやってきたはずなんですよ。あと問題は精神的な名誉の問題なんですよ。名誉にかかる問題を慎重に取り扱わないとね、それをまた特権的なことだということにされてしまうと、本当に真面目に誇りを持って生きられてる方々が逆に傷つくことになってしまうんじゃないでしょうか。そういうことも含めてね、私は慎重に取り扱うべきだと申しあげているんです。

3つ申しあげました。一つは今までのこの会の中で出てきた問題。実際私はそういう目にあっているわけですから。しかも、私には来ないんですよ。周りの人間に(くる)。後で聞いたら「西田くん、君なんかこんなきているよ」と。どれだけ気色悪いことですか、これは。本当ですよ、これ。こんな形でこの調査会が人権擁護しているなんて言いますけれども、私自身、私の人権は一体どうなるんですか、これ。私は黙れっていうんですか。本当にひどい話なんですよ。それがこの法律をつくることでますます助長されてしまうじゃないですか。それと公的な公務員(による人権侵害の救済)を言うならまず法務省が自ら実践すべきですよ。そこの話を整理しないでいきなりもってくるのはおかしい。

それと非常にまじめな、誇りを持って生きておられる同和の方々の名誉を守るためにはもっと違うことがあるんじゃないかということなんです。そこをぜひ考えていただきたい。

 

稲田氏 西田さんの発言に関連して、私はやっぱり自民党はたとえ意見が違っても言論の自由がある、そして仲間の言論の自由を守ってくれるのが自民党だと私は信じているんです。太田会長と私は意見が違いますけれども、それぞれが真摯な気持ちで議論していることは私は認め合っているので、私はぜひとも西田さんの発言に対する圧力について毅然と抗議をしていただきたい。そして人権擁護局長は裁判官だからおうかがいいをしますが、前回の西田さんの発言が特定の人物に対する名誉毀損にあたるかどうか、この点きちんと答弁してください。
 だって、この怪文書というか、西田さんの同僚にまかれた文書には「弁護士に相談をしたら、これが特定の団体の特定の人に対する社会的地位の低下であり、人権侵害、違法行為である」ということを受けたので、訴訟準備をしてますと書かれているわけです。ここにいなかった人は西田さんが本当に違法行為をしたのか、人権侵害をしたのかと思う内容なんです。

私は弁護士ですけど、ここにいましたけれども、前回の西田さんの発言が特定人の社会的地位を低下させるものとはまったく認識をしなかったわけですから、その点の答弁を人権擁護局長にやって頂いた上で、やっぱり太田会長、仲間の言論、例え違う言論であってもきちんと言論の自由は守るということを言っていただきたいと思います。

 

法務省人権擁護局長先ほどございました西田議員のご発言の問題ですけれども、ここで発言を私どもが聞いている限りではそれがただちに名誉毀損に当たるとまで考えてはおりませんけれども、ただ裁判の性格上、訴状で誰がどのような形でどのように影響をするのかということは具体的な訴状の内容をみないとわかりません。その結果を見てみないと最終的な判断はできません。そして裁判が提起されれば行政である現在の人権擁護機関、あるいは独立した行政委員会であって、裁判所が審理されれば、それが優先されますので、裁判の場になった場合には私どもとしては発言は控えさせていただくことになろうかと思います。

 

太田氏 (文書を)見ておりません。私もあまり事務所におるのは長くない方なのでひょっとして来ていても見ていないこともあります。自信はないけれども、今見ておりません。それに対してどうするのかというのは見てみないと分からないし、お聞きした範囲では例えば今、考えている私が私案として出した人権問題でいえば、西田さんがここでおっしゃっていることはまさに政治家としての発言でございますので、救済の対象から除外すべきとして列挙したものに入ると思いますので、問題はないと思います。》

 …こういう事実、早くも明らかになった弊害を突きつけられて、なお人権擁護法案の成立を目指すという議員たちに、一言言いたくなりました。私は、この放言ブログにあっても、汚い言葉遣いはすまいと心がけてきたのですが、ここは禁を破り、「ふざけるな、国民をどこまで愚弄する気か!」と敢えて書きます。外交に内政に、このようなていたらく、どうしようもない堕落と退廃を生んだのはしかし、繰り返しますが有権者の一票が決めた昨年の参院選の結果です。

 新聞や雑誌などで、ねじれ国会にもいいところがあるだとか、福田政権は小泉、安倍両政権の尻ぬぐいで大変だから気の毒だとかいう論評をよく見ますが、ことの軽重、何が大切で何がそうでもないかの優先順位がまったく分かっていないか、参院選後にこの国がどういう方向こ進みつつあるかに注意を向けていないセリフだと思います。はっきり言えば、馬と鹿とその眷属が大きな顔をしてのさばるようになっているわけです。私は、心の底から怒りを覚えています。

 心ある国民がまず、この西田議員を守り、支援すべきだと信じます。議員を生かすも殺すも、力を持たせるのも無力化させるのも、すべては国民であることは、百回でも千回でも繰り返しますが、まごうかたなき事実です。国政の主役は、よくも悪くも間違いなく国民なのですから。


 昨日の古森記者のエントリ「ブッシュ政権はなぜ北朝鮮を『テロ支援国家』指定から解除するのか--日本の拉致はどうなる?」は、21日付産経朝刊1面の短期連載記事【背信の論理 テロ指定解除】(上)、「拉致軽視『欠陥の融和策』」を紹介していました。

 実はこの連載の(中)「下げたハードル 米に口実」を私が書き、今朝の朝刊1面に掲載されたので、古森記者の真似をしてこの場で紹介したいと思います。(下)は社会部が担当し、明日の紙面に載るはずです。私の記事は、古森記者が主に米国から見た問題の所在を書いているのに対し、記事のレベルはともかく、日本側はどうだったのかについて記したものです。それは以下の通りです。

 《「拉致は現在進行形のテロだ。そして、拉致問題は一つの判断基準なんだ。北朝鮮にとって、核問題よりも拉致問題の方がはるかに解決は簡単だ。その簡単なことさえしない北が、核問題で述べている約束を信用できるわけがない」

 今年4月29日、ワシントン。アーミテージ元米国務副長官は訪米した拉致被害者「家族会」の増元照明事務局長や支援組織「救う会」の島田洋一副会長らにこう語った。

アーミテージ氏は副長官時代、米国のテロ年次報告書の北朝鮮へのテロ支援国家指定の理由欄に拉致事件を記載するよう指示した人物でもある。

 アーミテージ氏は、米政府の対北政策の現状について次のように指摘した。

 「(対北融和派の)ヒル国務次官補から見れば、私やみなさんは障害物になるんでしょう」

 その3日後、ヒル氏と面会した増元氏はテロ支援国家指定を解除しないよう求めたが、返ってきた言葉は「拉致がテロであるか定義したりする立場にない」と突き放したものだった。

 家族らは、まだ国民の拉致問題への関心が高くはなかった2001年2月から自ら訪米し、テロ支援国家指定理由に拉致を加えるよう働きかけてきた。

 当初は米議員はだれも会おうとしなかったが、やがて活動への理解は広がり、04年4月にテロ支援国家指定理由に拉致が加えられ、06年4月には横田早紀江さんとブッシュ大統領の面会も実現した。それが今、「家族たちが必死でつくった砦が崩れてしまう」(西岡力・「救う会」副会長)との恐れが高まっている。

 

    日本が招いた事態

 

 日本政府は、早期のテロ支援国家指定解除を歓迎しないとしている。福田康夫首相は20日、首相官邸にシーファー米大使を呼び、拉致問題が日本にとっていかに重要な問題であるかを改めて伝えた、とされる。

 また、19日にヒル氏と会談した外務省の斎木昭隆アジア大洋州局長は20日の自民党外交調査会で、「ヒル氏には『くれぐれも慎重に。日米の信頼関係にかかわる問題だ』と言ってきている」と説明。さらに、核申告に会わせて指定解除の手続きに入ると述べたライス米国務長官の発言について、夕刊1面で報じた新聞各紙を見せて、「反響の大きさを理解してほしい」と迫ったことも明かした。

     

 だが、今回の事態は、日本が自ら条件を整備し、招き寄せたとも言える。

 日本は11、12両日の北朝鮮との実務者協議で拉致再調査とよど号犯引き渡し協力で合意し、「一定の前進があった」として制裁措置の一部解除を表明した。これにより、テロ支援国家指定の理由によど号犯の件を盛り込んでいる米国の「指定解除に向けた難問をクリアさせ、指定解除に手を貸した」(重村智計早大教授)ことになるからだ。

 また、自民、民主、公明、社民など超党派でつくる「日朝国交正常化議員連盟」(山崎拓会長)が5月に結成され、北朝鮮への「圧力」は成果を生まなかったと強調していることも「ヒル氏やライス氏を喜ばせる誤ったメッセージを送った」(増元氏)ようだ。

 福田首相は昨年月の訪米時のブッシュ大統領との初会談でも、拉致問題について自ら口火を切ることはせず、テロ支援国家指定解除についても強く反対することはしなかった。

 その背景には「当時、米国がすぐに指定解除に向かう状況ではないと判断した」(外務省筋)ことがある。ただ、昨年4月の首脳会談でブッシュ大統領に強く働きかけ、「(指定解除で)アベを困らせることはしない。ライスがいろいろ言っても、私とあなたで決めればいい」との言葉を引き出した安倍晋三前首相とは、方向性や手法が異なるようだ。

 

    あいまいな福田首相

 

 今月13日にも、記者団とこんなやりとりがあった。
 記者団「政府は、『指定解除では拉致問題を考慮してほしい』とブレーキをかけてきたが…」

 福田首相「いや、特別にブレーキをかけたわけではありませんよ」

 こうした福田首相のあいまいな言動から、日朝協議の結果もそれを受けた日本の制裁緩和、米国の指定解除も「既定路線だったのだろう」(拉致被害者家族)との声が出ている。

 「日朝協議はヒル氏と北朝鮮が話し合っておぜん立てし、福田首相が『それでいい』と乗ったのだろう。指定解除もその延長線上だ」

 大使経験者の1人はこんな見方を示す。一方、ある首相経験者は「ライス発言は、ブッシュも承知した上でのものかどうか分からない」と指摘する。

謀略も含めさまざまな情報が錯綜する中、福田外交は米国の「背信」と日本の世論の間でさまよっている。(阿比留瑠比)》

 写真は、19日にヒル氏と会談した後、外務省内で記者会見した斎木氏とヒル氏の様子です。斎木氏の胸中に関しては、18日付のフジサンケイ・ビジネスアイ紙に「外務省・斎木局長の憂鬱」というコラムを書いたことは、同日のエントリ「外交方針と官僚の立場と横田早紀江さんの訴え」で報告しましたね。

 そのときは、残念ながらあまり部数の多くない新聞に書いたものなので、特に反響はないだろうとタカをくくっていたのですが、実は19日の衆院拉致問題特別委員会で民主党の松原仁氏が取り上げ、斎木氏との間でこんなやりとりがありました。
 

 《松原氏 ビジネスアイに「家族会と培ってきた信頼の貯金は使い果たした」などとある。本当か。

 

 斎木氏 読み上げられた新聞報道を承知していない。私が発言していることを引用したかどうかもコメントできない

 

 松原氏 (現状に)怒っていると。

 

 斎木氏 私は日本政府の一員でございます。個人の判断で外交交渉に臨んでいるわけではない。首脳の指示に基づいてやっている。きちんとした指示を受けて向こうに行って交渉しており、上司に報告した。拉致問題については長年担当しているし、ご家族の思いは痛いほど分かった上でやっているが、交渉事だから、私も100%満足しているわけではない。交渉しないと問題の解決は進まないと認識している。交渉しないでどうやって解決するのか。交渉は一歩、一歩しか進まないこともあるが、国益をかけて先方との間で交渉している。私個人の思いはまた別だ。》

 この場合、首脳と言えば福田首相のことでしょうね。このやりとりは、あまり注目されていませんが、個人的には、斎木氏は官僚の国会答弁としてはかなり率直に心情を吐露したなあと注目しました。それにしても、悪いことはできないというか、よりによって松原氏がビジネスアイを読んでいたとは…。

 このテロ支援国家指定解除の件については、重村智計・早大教授のコメントを、20日の産経朝刊に小さく載せています。重要だと私が思う部分を、一部引用します。

 《テロ支援国家指定が解除されると、北朝鮮におカネが入ってくる。中国は指定解除を条件に、北朝鮮沖合での海底油田の掘削権を35億ドルで買う契約を交わしているほか、他の地下資源開発への投資も約束しているからだ。北朝鮮が日朝協議に取り組むのは、日本の支援が欲しいからだが、数十億ドルものカネが手に入れば、日本とまじめに協議するわけがない。日本は交渉カードを失い、拉致問題の解決は、さらに難しくなる。》

 この点については、拉致被害者家族の増元氏も私に、「これで北朝鮮が日本とまじめに向き合う理由がなくなる。ひどいですね、政府のやり方も」と語っていました。私は連載記事の中にも書きましたが、国会での日朝国交正常化推進の怪しい策動、日朝実務者協議、ライス発言…と続く一連の動きは、北朝鮮とヒルが共同で描き、福田氏が便乗しているのではないかという気がしています。

 ただ、少なくとも福田氏は世論の動向をとても気にしています。内閣支持率は首相の力の源泉ですから、これを気に留めない内閣などありません。今後、事態がさらに最悪の方向に進まないようにするためにも、国民の声を政府・与党にどんどん届けることが何より大切だと思うのです。

 

 


 対北朝鮮政策をめぐる安倍前首相と山崎元自民党副総裁の言葉の応酬が続いています。私は6月12日のエントリ「安倍前首相の外交論と教育論について」の中で、安倍氏が山崎氏らがつくった対北融和派の日朝国交正常化推進議連に対し、「百害あって一利なし」と述べたことを紹介していましたが、それに山崎氏が反撃して安倍氏のことを「幼稚」と言い放ち、さらに安倍氏が反論し…と、同じ党の中ではめったに見られない展開になっています。

 まあ、安倍氏は官房副長官時代にも、拉致実行犯のシン・グァンス元死刑囚の助命釈放嘆願書に署名した民主党の菅直人氏や社民党の土井たか子氏に対し、「極めて間抜けな議員」と明言し、物議をかもした人ですから、攻撃モードにスイッチが入れば引くことはありません。今後、2人のやりとりが落ち着いていくのかさらに続くのかは分かりませんが、ちょっとおさらいしてみようと思います。まずは、11日の講演で北朝鮮に甘いことを言う議連は「百害あって一利なし」と言われたことに対する、13日の山崎氏の反応からです。

 《記者 経済制裁の解除に反発もあるが

 山崎氏 それはあるでしょうけども、あることはよく知っているが、私は反発しているほうではないので、どう思うかと言われても言うべき言葉を知らないが、率直に言って圧力一辺倒ではなんら前進がなかったということだけは考えてほしいと思う。今から圧力かけ続けて、今回の協議は成果は認めないということなら再調査すら認めないということになるから何の前進もないわけであるので、そういうことを考えると対話の努力は百害あって一利なしという人もいるが全然逆ではないか。幼稚な考えだ。》

 先に仕掛けた方とはいえ、「幼稚な考え」とまで言われた安倍氏も黙ってはいません。安倍氏はもともと、北朝鮮問題だけでなく、以前からわざわざ外国に行って小泉元首相の靖国参拝を批判するなどしていた山崎氏の言動について国益に反すると考えていただけになおさらです。17日の政治家のパーティーでの講演で、次のように語りました(※テープ起こしではないので、一部不正確な部分がありましたらすいません)。

 

 《北朝鮮が拉致被害者の再調査を約束した。よど号犯を日本に返す、引き渡すことについて言及をし、日本側が制裁の一部を解除するという合意がなされたという。「圧力よりも対話の方が良かったのですか」と私に聞いた記者がいた。再調査をするのは、こちらが制裁の一部を解除するといったからだ。制裁していなければ解除はできない。米を20~30万トン出さなければ対応を引き出せなかった。制裁は解除するときにもカードになる意味がある。制裁があったからこそ今回、話し合いに応じて、いわば再調査を行うということを約束したわけだ。

 

 問題はそれで安心してはならない。再調査をすると言ってきたが、拉致問題は存在しないということになったことが何回もあった。ソウルを火の海にするといって、カーターが訪朝して金日成と会談をして、KEDOの合意をした。48万トンを北朝鮮に出して軽水炉2機を作るという合意だった。プルトニウムは不問に付した。自社さ政権だったが、50万トン人道支援をした。その後、日朝交渉がスタートして50万トン援助することと同時に、日本人妻の帰国事業をし、拉致被害者の調査をすると約束をした。6万トンの追加支出をしたが、1800人のうちの10人しか一時帰国しなかった。家族は全部本国にいるから当然だ。

 

 再調査の結果、対象者は1人もいないという結果が出てしまった。50万、50万、6万と食糧援助をしたのにもかかわらず、何で対応したかというとテポドンの発射だ。彼らが行動しない限り、彼らの言うことを信用してはならない。援助をしても結果が出ていないという苦い経験は何度もしている。そこから学ばなければいけない。日本も世界の人も何度も騙される。交渉する人が変わるが、向こうが経験則にのっとって罠をしかければ。同じ罠に引っかかることになる。今回はそうならないように気を引き締めて対応する必要がある。

 

 ブッシュ政権から次の政権に変わる。彼らは、今よりも甘い対応をする政権になることを期待している。ブッシュとの間で、譲歩しなければ対応することはないと考えた方がいい。六者協議が進む中で形式的結果を出すことになってはならない。プルトニウムにおいて核はつくらないといても、ウランは進めてきたことを忘れてはならない。北が核を放棄するのは大きな決断だが、本当にするかどうかしっかりと見極める必要がある。その中でテロ国家支援リストから、北朝鮮を排除するかが大きな課題で、テロ支援国家リストから落とせと強く要望しているが、よく考えなければいけないことはよど号犯の日本への帰還だ。ハイジャック犯だから、日本が犯人を要求して日本でしっかりと処罰するのは当然だが、犯人をかくまっていることもテロ支援国家リストに載っている条件になっている。日本に返すことはリストから外れるため都合がいいんだということを忘れてはならない。彼らにとっては難しい譲歩ではない。

 

 テロと拉致の関係だが、北が拉致を行ったことは人権の重大な侵害であり国家主権の侵害だ。拉致作戦を行ってきたのは台南(韓国)工作を行うためだ。安全保障上の問題であるといってもいい。ここを押さえておかないと拉致問題が分からなくなる。安保上の問題であることも伝えなければ行けない。指定が外れると拉致問題に取り組むためのテコを失うことになる。日米同盟関係に影響、国民感情的に同盟関係に影響を及ぼす可能性があると申し上げた。

 

 日本で、制裁をやめて対話だけでいこうという議連も誕生した。政府以外の国会議員が、政府よりも甘いことを言っては外交交渉能力を損なうことになる。議会が甘いことを言ったら、政府はそれより甘いことを言わないと相手は交渉に乗ってこない。私は、政府以外の人たちが甘いことを言って交渉するのは百害あって一利なしと言った。それを批判した人物がいるが、その人は日本語能力がないのではないか。政府以外の人が言うのは百害あって一利なしではないか。百害あって利権ありかといいたい。国益を考えて国会議員は行動すべきではないかと思う。

 

 国民世論が重要になっていく。世論が厳しく一丸となって対応しなければ政府は相手の譲歩を勝ち取ることができないということに思い致すべきだ。》

 安倍氏は周囲に「もっとはっきり『この変態!』と言ってやろうか」とも冗談で述べているようですが、この「利権」発言は効いたようですね。山崎事務所にも抗議の電話などがたくさん舞い込んだと聞きますし、これによって山崎氏の訪朝計画がつぶれたという未確認情報もあります。山崎氏も怒り心頭で、18日の派閥総会で「私は利権政治家ではない」と強調しましたが、これには「はあ?よく言うよ」という声も聞こえてくるようです。私は以前、ある自衛隊幹部から「山崎氏は防衛族のドンと言われているが、それは決して防衛政策のドンという意味ではない。あれは防衛予算のドンだ」という説明を受けたことがあります。

 

 《あのう私自身の政治生命にもかかわる発言が行われておりますけど、私は利権政治家ではございませんし、いわんや北朝鮮利権とはまったく関係ございませんので誹謗中傷する政治家の人格を疑いたい。そのように思います。今後、北朝鮮問題については我が国の平和と安全、国民の生命財産に深くかかわる問題でございますので、核、ミサイル、拉致すべてそうですが、核問題については6か国協議で足並みをそろえて取り組んでいかなければならない課題ということを、われわれは思慮分別を働かせて、われわれの子孫のために朝鮮半島の非核化を、必ずこの機会に実現しなければならない。福田政権において実現しなければならない。同時に拉致問題も解決を図り、国交正常化を図りたいと念願している次第です。よく理解願いまして、報道していただけける方には報道してほしい。》

 安倍氏の人格攻撃まで始まりましたが、でも、この日朝国交正常化議連については外務省からも「迷惑だ」(幹部)という声が漏れているんですけどね。山崎氏はさらに、記者団にこう語りました。

 

 《記者 北朝鮮がまもなく核申告を行い、米国がテロ支援国家の指定解除を行うとライスさんが発言したが、受け止めは

 山崎氏 予期されていることですが、まず北朝鮮が6者協議の申し合わせ通り、一日も早く核計画の完全申告を行うことが、今後の6者協議の最終的な成果のために最も重要なステップになっておりますので、そのための米朝間の合意があったと思う。

 記者 これで北朝鮮問題は進展するか

 山崎氏 米朝間の核問題をめぐるこれからの作業については進展するというか、第三段階に入ると思う。ひいては6カ国の目標のひとつというか、主要目標といってもいい、朝鮮半島の非核化に向けた大事なステップになると思う。ただ、6者協議は朝鮮半島の非核化と米朝国交正常化、日朝国交正常化が同時ゴールインでありますので、日朝関係も前に進めてテンポをあわせないと、ブッシュ政権下の最終決着にならないとかねてから心配して、日朝作業部会が開かれ協議が進むことを強く求めてきた

 記者 関連して安倍さんの山崎会長への批判は

 山崎氏 歯牙にもかけるべき発言ではない私の政治生命にかかわるような国民世論の反応がでているので名誉毀損に相当する思います。

 記者 総会では訴えるべきとか安倍発言への批判の声があいつだが、会長はどうしますか

 山崎氏 取り消しと謝罪を求めます》

 …やはり、安倍氏の発言は相当の効果があったようですね。安倍発言に対しては、山崎氏の盟友の加藤紘一氏も腹を立てていて、本日、国会で安倍氏に対し、「安倍さん、オレたちは利権議員なのか?」と言ってきたそうですが、安倍氏は「違うんですか?」と言いたいのを我慢して無視したということのようです。ちなみに、加藤氏と日朝国交正常化議連のお仲間である社民党の福島瑞穂氏は2002年3月、加藤氏の自民党離党に際してこんな談話を出していますね。

 《本日、自民党元幹事長の加藤紘一衆院議員が、前事務所代表の脱税事件を受け、自民党を離党した。逮捕された前事務所代表は、政治家秘書の肩書きを利用して公共事業への口利きを繰り返し、巨額な脱税を行なった。議員としての監督責任、政治に対する国民の信頼を大きく損なった責任は重大だ。(中略)前事務所代表が事務所の代表に就いた1993年以降、加藤議員の政治資金収集力が急速にアップしていること、脱税資金を提供していた山形県内7社の建設会社と役員らが95年以降、加藤議員に対して約9500万円の献金を行なっている事実を踏まえれば、加藤議員が前事務所代表による口利き行為と直接・間接に関与していた疑いは否定できない。加藤議員は過去にも、譲渡されたリクルート未公開株で売却益を得ていたことや、鉄骨メーカー「共和」からヤミ献金を受け取っていた疑惑が取りざたされた経過がある。これに続き、今回の事件でも何らかの関与があったとするならば、その責任問題は離党という自民党内の処理で済まされるわけがなく、議員を辞するのが筋である。》

 きっと加藤氏は、自分の都合の悪いことはすぐ忘れられるタイプなのでしょうね。うらやましい限りですが、私は忘れたくないので掲載しておきます。よくも利権と無縁であるかのような顔ができたものです。ともあれ、安倍氏は山崎氏の謝罪要求について20日、記者団に次のように語りました。 

 《記者 山崎さんが発言の撤回と謝罪を求めているが

 安倍氏 私はもう講演で述べた通りですね。講演をもう一度よく吟味をしていただきたい。拳々服膺していただきたいですね、むしろ。

 記者 利権という言葉を使ったことについて遺憾というか、撤回を求めるということだが

 安倍氏 まあ、私の全体の講演をね、よく見てもらいたいと思いますね。学習してもらいたいなあ。》

 広辞苑によると、拳々服膺(けんけんふくよう)とは、「胸中に銘記して忘れず守ること」とあります。簡単に言えば、「私の言葉を肝に銘じなさい」ということですね。さて、山崎氏はその通り、安倍氏の言葉を深く胸に刻むでしょうか。まあ、そんなわけありませんね。そういう人であればまだ救いがあるのですが…。
 

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