現在、永田町の住人の関心事項は、福田首相が果たして内閣改造を断行するのか、するとしたらその場合はどんな布陣を敷くつもりなのか、にほぼ絞られている感じですね。私はずっと、ものぐさで優柔不断でぎりぎりになるまで物事を決められない福田氏には、そう簡単には改造などできないだろうなと考えてきたのですが、新聞各紙によると、8月4日改造説が有力となっているようです。
自分が入閣したい政治家や、無責任なメディアなどは改造して「福田カラー」を示すべきだと盛んに言っていますが、そもそも「福田カラー」って何でしょうね。社民党に近い左派・リベラル路線のことでしょうか。よく分かりませんが、何にしろ国民はいまさらそんなものは見たくないのではないかと思います。もう福田氏には何も期待していないというのが、実際のところでしょうから。
また、現在の内閣は安倍内閣の「居抜き」だから、独自色を打ち出すべきだという意見にも、そんなに単純なものではないだろうと感じています。今の内閣は、安倍前首相が参院選の結果を受けて自分の好みを押し殺し、いかに配置したら党内外からの文句を最小限に抑え、重厚さを演出できるかを考え抜いてつくった布陣ですから、ただ改造すれば今よりいい印象を持って迎えられるというものではないでしょう。改造して支持率が下がったなどとなると最悪で、後は坂道を転げ落ちていくように政権は週末に向かうことになると思います。私はそれでもいっこうに構いませんが。
さらに、福田氏やその周囲に、入閣候補の身辺を調べる「身体検査」の能力があるのか実に怪しいとも見ています。もともと福田氏は党内にも友人・知己がほとんどいない孤独な人でしたし、周囲にもそういう細やかな情報を集められる人はいないでしょう。まあ、安倍内閣に比べ、マスコミは福田氏には甘いですから、その点は多少楽観しているのかもしれませんが。何せ、安倍政権をあれほど苦しめた「政治とカネ」の問題にしても、福田内閣になってからはあまり追及されなくなりましたし。
福田氏自身、朝鮮籍の男性が経営するパチンコ店から違法な献金を受けていたり、112枚もの領収書を改竄していたり、国の公共事業を受注している企業から違法な献金を受けていたり、どれももし安倍前首相の問題ならそれだけで新聞各紙が退陣を迫るようなスキャンダルが発覚しても、マスコミは小さく触れるだけで特に追及しようとはしませんでしたしね…。
さて、前ふりが長くなりましたが、ここからが本題です。昨日の朝日新聞夕刊は1面トップで「首相、改造きょう決断 新体制で臨時国会」という記事を載せていましたが、福田氏は「きょう(30日)」は何も決断しなかったので、トップ記事で誤報を掲載したことになりますね。では、どうして福田氏が改造を表明できずにぐずぐすしているかというと、上に私が書いたような理由のほか、公明党・創価学会の存在が大きいとい言われています。公明党はもうとっくに福田離れを起こしていて、ここで福田氏が改造を実行して次の衆院選も自分が戦うという意思表示をされては困る、ということがあるのかもしれません。改造はとりやめ、適当な時期に総辞職してもらい、自民党総裁選を経て新しい「選挙の顔」をつくってほしいというのもあるのでしょう。また、よく言われているように、公明党にとっては来年夏の都議選が何より大切なため、改造してずるずると任期満了まで福田政権が続くような事態は避けたいという思惑もあるはずです。
そこで本日は、新聞各紙が匿名で報じた公明党幹部らの発言を拾い上げて紹介したいと思います。いやあ、公明党も露骨になっていますね。そりゃ福田氏の顔で選挙を戦えば大敗は見えていますから、池田大作創価学会名誉会長の「勝利せよ」との大号令をいつも受けている公明党としては、ね…。
まず、30日の朝日朝刊は1面で「解散政局へ与党突入 首相、初旬改造で調整」という記事を載せ、「公明党有力幹部」の言葉として、《「福田首相が自分の手で解散をしたいのなら年内だ。もし解散を年明け以降に先送りすれば、次の首相で戦うことになる」》という発言を紹介しています。記事は《福田首相に早期解散か、さもなければ退陣を促していく構えを見せた》と続けています。
また、今朝の毎日新聞は2面の「内閣改造 待望論に追い込まれ 首相『政権死に体』防ぐ狙い」という記事の中で、公明党幹部の次のような発言を引用しています。
《公明党幹部は「首相が改造しようと一向に構わない。ただ臨時国会の9月下旬招集は譲れない」と首相を突き放す。同党の支持母体である創価学会からも「改造しても、ほとんど支持率は上がらないだろう。福田首相では選挙は難しい」(幹部)との指摘が出ている》
なるほど、「追い込まれ改造」ですか。なかなか面白いですね。次に読売新聞は、政治面の「公明、首相と距離 独自主張強める 衆院選苦戦を懸念 交代促す声も」との記事で、こう書いています。
《公明党からは、来年夏の東京都議選に集中するため、来年1月の衆院解散が望ましいとの意見が出ている。
「福田首相の手で解散するかどうか、自民党は早く決めるべきだ」「『福田首相では戦えない』と、自民党議員が思うなら、早く動くべきで、ズルズル時間を浪費して解散時期を遅らせるのは困る」との声も上がる》
この記事で興味深かったのは、「こうした公明党の強い姿勢に対し、自民党からの不満も表面化してきた」とある点です。民主党に負けた先の山口補選の結果などを見ても、ただ公明党に頼るだけでは選挙は勝てないという危機意識と現実認識が自民党にあるのであれば、それはいいことでしょうが。日経は、3面の「解散視野 政局動き出す 公明など『年内にも衆院選を』 与党内対立の火種」でこう記しています。
《自民党の伊吹氏らに想定外だったのが「年末から年始の衆院解散」を半ば公然と主張しだした公明党の態度だった。(中略)「年末解散」を視野に入れた公明党は「野党の政権攻撃の場になりかねない臨時国会の会期は短い方がよく、召集も9月で十分」との立場をとる。福田政権に仕事をする時間的余裕を与えない政治日程は、自民党内で「内閣支持率が上向かないなら公明党は『福田おろし』に動く」との憶測まで呼んでいる》
この「福田降ろし」に関しては、東京新聞も2面の「きょう改造方針表明 与党『新体制』に先送り 首相対応誤れば福田降ろしも」との記事で、《自民党関係者は「ここで対応を誤れば、公明党は福田降ろしにかじを切りかねない」と首相の手綱さばきの重要性を指摘する》と書いています。産経は、政治面の「内閣改造目前伊吹氏との会談注目も『拍子抜け』 自公イライラ 首相独り「…」」という記事で、次のように福田氏の対応への反応を書いています。
《「拍子抜け」の結果に脱力感が漂った。ある公明党幹部は「ホントにスローモーな人だね」。自民党幹部は「星雲をつかむがごとくだ…」とつぶやいた。》《公明党は当初、内閣改造にも難色を示していたが、今週に入り、「首相の専権事項だ」と軟化。代わりに「自民党には危機感が足りない」と異口同音に繰り返すようになった。ある自民党中堅は「内閣改造で支持率が回復しなければ『首相を代えろ』と言っているようにしか聞こえないのだが…」と首をひねる。》
…日銀人事その他のときにも福田氏の優柔不断さと判断の甘さがクローズアップされましたが、今回の改造問題は福田氏にとって進退窮まった感がありますね。まあ、自業自得ですし、いずれにしろ、福田政権はもう長くないな、という印象を持っています。もう10カ月もやったのだから十分でしょう。念願の北京五輪開会式にも行けることだしね。
さて、今回の改造の件とは関係ありませんが、おまけとして、昨年11月4日に、池田大作氏が「大田総区壮年部」というところに贈った「メッセージ」を紹介します。なぜか手元にあるので、ついでに載せておけば、公明党の人たちの発想法を考える上で何かの参考になるかと思ったからです。キーワードは「勝負」と「勝利」です。
《わが大田総区壮年部の同志の皆様方、お休みのところ、本当に御苦労様でございます。
広布第二幕の要であられる皆様方に、深く題目を贈っております。
御聖訓には、「そもそも世間の道理の次元においても、仏法の真理の世界においても、勝負をもって要とする」と仰せになられました。
仏法は勝負です。ゆえに、戸田先生(※創価学会第2代会長)も「男は王者の風格をもって勝ちまくれ!」と教えられたのであります。
わが宿縁深き大田壮年部の皆様方は、自分自身の悔いなき一生のため、そして一家眷属の永遠の大福運のため、私と共に、断固として勝利また勝利の広布と人生の歴史を残していってください。(中略)
どうか、大いに新しい青年を育て、伸ばしながら、広宣流布の新しい勝利また勝利の大行進を、いよいよ生き生きと、若々しく、威風も堂々と引っ張っていってください。
大切な大切な柱の皆様方の御健康と御一家の御多幸を祈ります。(後略)
2007年11月4日 池 田 大 作》
…まあ、福田氏では勝負にならないし、勝利を得ることも覚束ないですからね。ある閣僚は「福田さんは自民党の中でも公明党に考え方の近い人だ。その人を簡単に切るだろうか」とも言っていましたが、そんなウエットな次元の問題ではなく、勝てない首相はためらいなくドライに見捨てるのだろうな、と思っています。