2008年07月

 
  現在、永田町の住人の関心事項は、福田首相が果たして内閣改造を断行するのか、するとしたらその場合はどんな布陣を敷くつもりなのか、にほぼ絞られている感じですね。私はずっと、ものぐさで優柔不断でぎりぎりになるまで物事を決められない福田氏には、そう簡単には改造などできないだろうなと考えてきたのですが、新聞各紙によると、8月4日改造説が有力となっているようです。

 

 自分が入閣したい政治家や、無責任なメディアなどは改造して「福田カラー」を示すべきだと盛んに言っていますが、そもそも「福田カラー」って何でしょうね。社民党に近い左派・リベラル路線のことでしょうか。よく分かりませんが、何にしろ国民はいまさらそんなものは見たくないのではないかと思います。もう福田氏には何も期待していないというのが、実際のところでしょうから。

 

 また、現在の内閣は安倍内閣の「居抜き」だから、独自色を打ち出すべきだという意見にも、そんなに単純なものではないだろうと感じています。今の内閣は、安倍前首相が参院選の結果を受けて自分の好みを押し殺し、いかに配置したら党内外からの文句を最小限に抑え、重厚さを演出できるかを考え抜いてつくった布陣ですから、ただ改造すれば今よりいい印象を持って迎えられるというものではないでしょう。改造して支持率が下がったなどとなると最悪で、後は坂道を転げ落ちていくように政権は週末に向かうことになると思います。私はそれでもいっこうに構いませんが。

 

 さらに、福田氏やその周囲に、入閣候補の身辺を調べる「身体検査」の能力があるのか実に怪しいとも見ています。もともと福田氏は党内にも友人・知己がほとんどいない孤独な人でしたし、周囲にもそういう細やかな情報を集められる人はいないでしょう。まあ、安倍内閣に比べ、マスコミは福田氏には甘いですから、その点は多少楽観しているのかもしれませんが。何せ、安倍政権をあれほど苦しめた「政治とカネ」の問題にしても、福田内閣になってからはあまり追及されなくなりましたし。

 

福田氏自身、朝鮮籍の男性が経営するパチンコ店から違法な献金を受けていたり、112枚もの領収書を改竄していたり、国の公共事業を受注している企業から違法な献金を受けていたり、どれももし安倍前首相の問題ならそれだけで新聞各紙が退陣を迫るようなスキャンダルが発覚しても、マスコミは小さく触れるだけで特に追及しようとはしませんでしたしね…。

 

さて、前ふりが長くなりましたが、ここからが本題です。昨日の朝日新聞夕刊は1面トップで「首相、改造きょう決断 新体制で臨時国会」という記事を載せていましたが、福田氏は「きょう(30日)」は何も決断しなかったので、トップ記事で誤報を掲載したことになりますね。では、どうして福田氏が改造を表明できずにぐずぐすしているかというと、上に私が書いたような理由のほか、公明党・創価学会の存在が大きいとい言われています。公明党はもうとっくに福田離れを起こしていて、ここで福田氏が改造を実行して次の衆院選も自分が戦うという意思表示をされては困る、ということがあるのかもしれません。改造はとりやめ、適当な時期に総辞職してもらい、自民党総裁選を経て新しい「選挙の顔」をつくってほしいというのもあるのでしょう。また、よく言われているように、公明党にとっては来年夏の都議選が何より大切なため、改造してずるずると任期満了まで福田政権が続くような事態は避けたいという思惑もあるはずです。

 

そこで本日は、新聞各紙が匿名で報じた公明党幹部らの発言を拾い上げて紹介したいと思います。いやあ、公明党も露骨になっていますね。そりゃ福田氏の顔で選挙を戦えば大敗は見えていますから、池田大作創価学会名誉会長の「勝利せよ」との大号令をいつも受けている公明党としては、ね…。

 

まず、30日の朝日朝刊は1面で「解散政局へ与党突入 首相、初旬改造で調整」という記事を載せ、「公明党有力幹部」の言葉として、《「福田首相が自分の手で解散をしたいのなら年内だ。もし解散を年明け以降に先送りすれば、次の首相で戦うことになる」》という発言を紹介しています。記事は《福田首相に早期解散か、さもなければ退陣を促していく構えを見せた》と続けています。

  また、今朝の毎日新聞は2面の「内閣改造 待望論に追い込まれ 首相『政権死に体』防ぐ狙い」という記事の中で、公明党幹部の次のような発言を引用しています。

 

《公明党幹部は「首相が改造しようと一向に構わない。ただ臨時国会の9月下旬招集は譲れない」と首相を突き放す。同党の支持母体である創価学会からも「改造しても、ほとんど支持率は上がらないだろう。福田首相では選挙は難しい」(幹部)との指摘が出ている》

 

なるほど、「追い込まれ改造」ですか。なかなか面白いですね。次に読売新聞は、政治面の「公明、首相と距離 独自主張強める 衆院選苦戦を懸念 交代促す声も」との記事で、こう書いています。

 

《公明党からは、来年夏の東京都議選に集中するため、来年1月の衆院解散が望ましいとの意見が出ている。

「福田首相の手で解散するかどうか、自民党は早く決めるべきだ」「『福田首相では戦えない』と、自民党議員が思うなら、早く動くべきで、ズルズル時間を浪費して解散時期を遅らせるのは困る」との声も上がる》

 

この記事で興味深かったのは、「こうした公明党の強い姿勢に対し、自民党からの不満も表面化してきた」とある点です。民主党に負けた先の山口補選の結果などを見ても、ただ公明党に頼るだけでは選挙は勝てないという危機意識と現実認識が自民党にあるのであれば、それはいいことでしょうが。日経は、3面の「解散視野 政局動き出す 公明など『年内にも衆院選を』 与党内対立の火種」でこう記しています。

 

《自民党の伊吹氏らに想定外だったのが「年末から年始の衆院解散」を半ば公然と主張しだした公明党の態度だった。(中略)「年末解散」を視野に入れた公明党は「野党の政権攻撃の場になりかねない臨時国会の会期は短い方がよく、召集も9月で十分」との立場をとる。福田政権に仕事をする時間的余裕を与えない政治日程は、自民党内で「内閣支持率が上向かないなら公明党は『福田おろし』に動く」との憶測まで呼んでいる》

 

この「福田降ろし」に関しては、東京新聞も2面の「きょう改造方針表明 与党『新体制』に先送り 首相対応誤れば福田降ろしも」との記事で、《自民党関係者は「ここで対応を誤れば、公明党は福田降ろしにかじを切りかねない」と首相の手綱さばきの重要性を指摘する》と書いています。産経は、政治面の「内閣改造目前伊吹氏との会談注目も『拍子抜け』 自公イライラ 首相独り「…」」という記事で、次のように福田氏の対応への反応を書いています。

 

《「拍子抜け」の結果に脱力感が漂った。ある公明党幹部は「ホントにスローモーな人だね」。自民党幹部は「星雲をつかむがごとくだ…」とつぶやいた。》《公明党は当初、内閣改造にも難色を示していたが、今週に入り、「首相の専権事項だ」と軟化。代わりに「自民党には危機感が足りない」と異口同音に繰り返すようになった。ある自民党中堅は「内閣改造で支持率が回復しなければ『首相を代えろ』と言っているようにしか聞こえないのだが…」と首をひねる。》

 

…日銀人事その他のときにも福田氏の優柔不断さと判断の甘さがクローズアップされましたが、今回の改造問題は福田氏にとって進退窮まった感がありますね。まあ、自業自得ですし、いずれにしろ、福田政権はもう長くないな、という印象を持っています。もう10カ月もやったのだから十分でしょう。念願の北京五輪開会式にも行けることだしね。

 

さて、今回の改造の件とは関係ありませんが、おまけとして、昨年11月4日に、池田大作氏が「大田総区壮年部」というところに贈った「メッセージ」を紹介します。なぜか手元にあるので、ついでに載せておけば、公明党の人たちの発想法を考える上で何かの参考になるかと思ったからです。キーワードは「勝負」と「勝利」です。

 

《わが大田総区壮年部の同志の皆様方、お休みのところ、本当に御苦労様でございます。

広布第二幕の要であられる皆様方に、深く題目を贈っております。

御聖訓には、「そもそも世間の道理の次元においても、仏法の真理の世界においても、勝負をもって要とする」と仰せになられました。

仏法は勝負です。ゆえに、戸田先生(※創価学会第2代会長)も「男は王者の風格をもって勝ちまくれ!」と教えられたのであります。

わが宿縁深き大田壮年部の皆様方は、自分自身の悔いなき一生のため、そして一家眷属の永遠の大福運のため、私と共に、断固として勝利また勝利の広布と人生の歴史を残していってください。(中略)

どうか、大いに新しい青年を育て、伸ばしながら、広宣流布の新しい勝利また勝利の大行進を、いよいよ生き生きと、若々しく、威風も堂々と引っ張っていってください。
  大切な大切な柱の皆様方の御健康と御一家の御多幸を祈ります。(後略)
 2007年11月4日 池 田 大 作》

 …まあ、福田氏では勝負にならないし、勝利を得ることも覚束ないですからね。ある閣僚は「福田さんは自民党の中でも公明党に考え方の近い人だ。その人を簡単に切るだろうか」とも言っていましたが、そんなウエットな次元の問題ではなく、勝てない首相はためらいなくドライに見捨てるのだろうな、と思っています。


 今朝の産経は政治面で、小さく「中国両首脳 首相と会談 五輪開会式当日」という見出しの記事を載せています。福田首相が8月8日の北京五輪開会式の当日に、中国の温家宝首相、胡錦濤国家主席の両首脳と相次いで会談することが決定した、という話です。この会談は当初は、6日と9日の広島、長崎の両原爆犠牲者慰霊式に出席する福田氏の日程上余裕がなく、見送られるとみられていましたが、中国側の要請があり、日本としても受けることにしたようです。

 今回の五輪開会式には、世界から約90カ国の元首・首相クラスが訪れると言いますから、その当日に中国のナンバー1と2がそれぞれ30~50分も時間をとって福田氏に会うというのは、確かに中国の対日重視の表れだとも言えますし、福田氏にしてみれば破格の厚遇を受けるわけですから、「さすがは私だ」と気分がいいでしょう。まあ、中国にしてみれば、会談風景を全国ネットで中継し、日本の首相が早速祝賀に駆けつけたとばかりに放映するのでしょうから、胡政権にとってもおいしい場面なのでしょうね。

 本来、チベットやウイグルへの弾圧、漢族との同化政策をはじめとする人権問題を抱える中国が主催する五輪開会式に、どうして日本の首相が出席するのかというという大問題がまずあるわけですが、そこはあの「中国命」の福田氏ですから、まあ開会式出席は予想されていたことでした。ですから、せめて中国の両首脳と会う際には、日中間の懸念を一歩でも二歩でも進める努力をしてもらいたいところですが、どうやらその願いも空しいものとなりそうです。

 まず、6月に日中間で一定の合意をみた東シナ海のガス田共同開発問題は、その後、まったく停滞したままなのですが、これも日中首脳会談でも進展しそうにありません。一応、合意したといっても、「白樺」ガス田への具体的な出資率や、合意に至らなかった他の日中中間線付近のガス田の取り扱いなどは継続協議となっていたのですが、中国側はその後、協議の場を持とうともしていません。日本側はいつでもやろうと呼びかけているのですが、中国側は「五輪が終わるまで何もできない」としているようです。どうやら、合意に対する中国国内の「日本に譲りすぎた」という批判に脅え、ここで東シナ海問題で何かアクションを起こすとさらなる批判・反発を招き、五輪に悪い影響を与えかねないと心配しているようです。

 発生から半年がすぎた中国製ギョーザ中毒事件もそうです。これは、そろそろ中国側が何らかの対応を示すのではないかとも見られていましたが、五輪閉会後に先送りされました。中国の役人はいま、五輪運営に何か影響を与えるようなことをしたら直ちにクビだそうですから。また、今月中に研究成果が発表される予定だった日中歴史共同研究に関しても、現時点で日本の意見と中国の意見を両論併記した文書を発表したら、歴史問題に最も敏感な中国国内の寝た子を起こすようなものだとして、最近になって中国側の作業が急に遅くなったといわれます。これも五輪後にやろうというわけです。

 では、福田氏が中国の両首脳とせっかく会っても何を話すというのでしょう。温首相とは40分間以上、胡主席とは30分以上の会談時間がとってあると聞きますが、ガス田もギョーザもその他の懸案も特に話し合わないとしたら、話題の設定にも困るのではないでしょうか。じゃあ、福田氏がチベット・ウイグル問題について触れるかというと、「何もスポーツの祭典でそんなこと言わなくてもいい」というのが、「お友達の嫌がることはしない、言わない」と明言して首相になった福田氏の姿勢だろうと思います。「本当はこういうときこそ、相手の聞きたくないことを言うのが効果的なのだが…」(外務省筋)という嘆息が聞こえてきます。

 なのできっと、日中両首脳の会談は私の予想・推測では「主席は五輪ではどの競技が好きですか」「やっぱり卓球には関心があります」「そう言えば、早稲田での卓球は見事でした。今回は中国がたくさんメダルをとりそうですね」「いやいや。ところでいつ帰国されるのですか」「本当はゆっくりしたいのですが、明日原爆の式典があって」「ああ、それは残念だ。今度はゆっくり中国に来てください」「ええ、そうしたいですね」…などの他愛のない世間話に終始するのではないでしょうか。そして、会談後の記者ブリーフでは「会談は和やかに和気藹々とした雰囲気で行われ…」といういつものフレーズが登場するのかな、と思います。

 本当は、私の予想なんか外れて、日中首脳間で諸懸案をめぐって丁々発止のやりとりや白熱した議論、有意義な話し合いがもたれることを祈りたいのですが、福田氏にそれを望むのはもはや酷というものかもしれません。今回の訪中日程は、8日昼前後に北京入りし、9日未明か早朝にはもう北京を発つという強行軍なので、周囲は福田氏の体調・体力の方を心配しているようですが…。もうなるようにしかなりませんね。


 きょうは夕刊当番で朝から会社に来ています。でも、国会も閉幕し、多くの議員たちはそれぞれの選挙区に戻っているので、記事はいわゆる「夏枯れ」状態にあり、デスク席に座っていても処理すべき原稿はあまりありません。はっきり言って手持ちぶさたなのです。それで私はじっとしているのが苦手なので、周囲をうろうろと歩き回っていたところ、「新聞展望」という新聞業界紙が置いてあるのに気付きました。何気なく手に取ると、「全国紙は毎日のみ下回る 平均ABC部数四半世紀の推移」という1面トップの記事が目につきました。

 ふーん、新聞業界はすでにずいぶん前から斜陽産業と言われていたのに、この25年余で部数を減らした大手紙は毎日新聞だけだったのか、と少々途惑い、本当に実部数かと少々疑いながら記事を読んでみました。それによると(万以下は切り捨て)、

          1982年下期          2007年下期     増減
  ・読売     889万部            1002万部     113万部増
  ・朝日     756万部             805万部      49万部増
  ・毎日     446万部             391万部      55万部
  ・産経     205万部             220万部      15万部増
  ・日経     195万部             305万部     110万部増

 …だということでした。82年といったら、私はまだ高校生でしたが、それにしてもそこからの日経の躍進ぶりが目覚ましいですね、うらやましい限りです。あまりの部数急増ぶりに、印刷工場や販売店の確保は大丈夫だったのかと他人事ながら気になるぐらいです。

 ただ、上の数字だけをみると、毎日を除いて新聞業界は「なんだ順調なのではないか」という印象を受けかねませんが、新聞展望の2面にあった表で確かめると、必ずしもそうは言えないことが分かりました。

 読売は、2002年上期の1018万部がピークで、07年下期はそれから16万部減となっています。何せ母数が大きいので、16万部減ってもたいしたことはないのかもしれませんが、「言うことを聞かないと1000万部でお前をつぶすぞ」と政治家にすごむ癖のあるナベツネ氏は、何が何でも1000万部は割るなと厳命していることでしょうね。そういう意味では、1002万部というのはけっこうぎりぎりの数字ですね。

 朝日もやはり、ピークは02年上期で、このときの部数は832万部ありましたから、最盛期からは27万部減っていることになります。こっちも、800万部を割るかどうか、けっこう瀬戸際なのかもしれません。しかし、永田町でときどき「朝日の部数がかなり減っているらしい」などと噂を聞くほど、極端な部数減にはなっていませんね。よく新聞業界では部数の数字上の操作が行われていると週刊誌などで読みますが、新聞社に勤めていても販売のことはよく分からないものなのです。すいません。

 毎日は、なんというか、順調に規則正しく少しずつ部数を減らしてきているようです。この数字には、今回の変態報道の影響はまだ表れていませんから、今後の推移が注目されますね。ただ、毎日が今後も部数を減らしたとして、それは日経、読売、朝日のいわゆる「勝ち組3社連合」を喜ばせるだけの部分がありそうで、少々複雑な気持ちになります。経営が苦しい弊紙としては、他人事だと喜ぶ気になりにくいというか…。

 産経の場合は、この四半世紀で15万部伸びただけという形ですが、途中経過は平坦なものではありませでした。92年下期には、部数が190万部まで落ち込んでいたのです。そのちょっと前の私の支局時代は、県警記者クラブに自前のファクス機すらもなく、その都度他社に借りて使わせてもらっていましたが…。その時点から見れば、部数は30万部とけっこう大幅に増えた計算となります。ただ、それでも220万部というのは他の全国紙に比べるといかにも少ないし、相変わらず広告の成績もよくはないようです。もう少し伸びてくれないと、現在は自腹のパスポート更新料やほとんど自腹の携帯電話代などの諸手当もつきそうにありません(涙)。

 日経は…ひたすら順風満帆であり、特筆すべきことはありません。こんなにとんとん拍子で年々部数が増えるという感覚を一度味わってみたいものだと、ふと想像してみましたが、その日経にしてもここまでくると、今後はそうそう大きな伸びは示せないだろうなとも思います。

 まあ、新聞業界はもともと限られたパイの奪い合いをしてきたわけですし、現在は新聞無読層が増えてそのパイ自体が小さくなってきているわけですから、産経はまだいい方なのでしょうね。こっちも斜陽産業だと知っていて入ったわけですから、文句を言う立場にはありませんし。このイザを含めたインターネット事業の先行きもどうなるのか分かりませんし、まったく先のこと、将来のことは読めません。朝日や毎日などは不動産資産を持っているので、そこからの収益でしばらくは食べていけると聞きますが…。

 ちょっと手が空いたものでどうでもいいことをながながと書きましたが、結論はこうです。もうご購読していただいている方は別として、

 もしよかったら、産経新聞を購読してやってください。お願いします。

 
つまらない愚痴話のようなエントリとなってしまったことをお詫びします。これからの生活のことを思うと、けっこう切実なもので…。

 
 毎度毎度、お気楽エントリばかりでは政治記者のブログとしてはやはりナンなので、本日は23日にシンガポールで行われた日米外相会談で、拉致問題に関して気になったことを書こうと思います。この会談について、私は24日付政治面に掲載された「同床異夢の6カ国協議」という記事の中で、次のような会話があったことを紹介しました。

 《6カ国外相会合に先立つ日米外相会談。高村氏が、6月の日朝実務者協議で約束した拉致問題の再調査を北朝鮮が実行していないと指摘すると、ライス国務長官はこう再確認してきた。

 ライス氏「日朝で全く何も起こっていないのか?」

 高村氏「何も起こってはいない」

 ライス氏「分かった。米国からも、北朝鮮にしっかりとメッセージを送る」

 日本が米国の協力を取り付けた形だが、拉致問題の現状を米側が必ずしも把握していないことを示すエピソードでもある。》

 6月11、12両日の日朝実務者協議で、北朝鮮が拉致問題の再調査を約束してから、6週間が経過していますが、北朝鮮は何の動きも見せていませんね。これは、日本ではだれもが知っていることですが、ライス氏にはそれがちょっと意外だったようです。8月11日の北朝鮮のテロ支援国家指定解除がもう既定事実化している米国としては、日本はまだそんな状態なの?と言いたいところだったのかもしれません。

 日本政府側は、「このタイミングで事実をライス氏に認識させたのは良かった」と喜んでいましたが、私はそれとは異なる二つの感想を抱きました。一つは、「ああ、結局、拉致問題に関する米国の関心はその程度だな」というもので、もう一つは、「ヒル国務次官補はやはり、こういう重要な点も上司であるライス氏やブッシュ大統領にはきちんと伝えていないのだな」というものです。日常的に斎木アジア大洋州局長と電話でやりとりしているヒル氏が、日朝の現状を熟知しているのは疑いようがありませんから。

 この点について日本政府側は「ライス氏は忙しい立場だから、何でも報告されたらたまらないだろう」とヒル氏をかばうような反応を示していましたが、これもどうでしょうか。ライス氏はテロ指定解除に対する日本の世論の反発を気にしており、6月の京都外相会合でも、また別の機会でも、日本世論の慰撫を狙うような発言を繰り返しています。そのライス氏にとって、日朝が実は何も動いていないという日本世論を方向付けるかもしれない問題が、そんなに意味のない情報でしょうか。そんなの、ヒル氏が一言伝えれば2、3分で話は済むことでしょうにね。北朝鮮の核問題を早く決着したことにしたいヒル氏は、そのマイナス要因となる点については報告を手控えていたというのが実態ではないか、というのが私の推測です。

 それはともかく、この会談を受けて、ライス氏はその後の6カ国協議非公式外相会合の場で、次のように発言しました。これについても、日本政府側は「ライスがかなり強く言ってくれた」と喜んでいましたが、私は遅きに失したように感じました。

 「日朝の進展は重要だ。拉致は悲惨であり、北朝鮮が調査を通じて真相を究明し、問題解決に向けた行動をとる必要がある。この問題で米国は日本を強く支持している」

 だって、今になって北朝鮮に多少のプレッシャーを与えたところで、北朝鮮が最もほしがっていた果実であるテロ指定解除の流れは変わりませんしね。この外相会合では、北朝鮮の朴宜春外相も出席していたのですが、高村氏が何を言っても(たいしたことは述べていないようですが)、特に反論はせず、目立った発言もしなかったと言います。とにかく、8月11日まではじっとしていればそれでいいと、本国の指示が出ていたのかもしれません。

 逆に、朴外相はASEAN地域フォーラム閣僚会合の場では、「日朝では話し合いが行われている。6月半ばに約束ができたことについて重視する」と述べました。この点について高村外相は記者団に「約束はできているし、話し合いは進んでいるという印象を(参加各国に)与えたいのかなあ」と語りましたが、実際そうなのだろうと思います。これは今回に限らず以前からですが、北朝鮮とヒル氏の思惑は一致しているように思えて仕方がありません。以前のエントリでも、書いてきたことですが…。

 6カ国協議非公式外相会合に関しては、ライス氏自身が「単なる非公式の機会だった」と記者団に語った通り、事前準備もなく、決定事項もない顔見せのような集まりでしたが、これが開催されたこと自体には別の意味もありました。それは、6カ国協議のプロセスは着実に進展していて、外相会合まで開く段階に来ているのだと、世界に発信するという目的です。

 これは、拉致問題が全く動いていない日本としては歓迎できる話ではなく、実際、外務省幹部は割と直前まで「外相会合を開いて何を話すの?開くにしても、話し合うテーマを決める(実務者の)首席代表会合が先だろう」と見通しを語っていました。それが、議長国である中国の強い意向もあり、急遽ASEAN地域フォーラム開催中にシンガポールで開催されることになり、もともと出張する予定のなかった私も慌てて現地に行くことになったのでした。日本はただ、他国が仕掛けた展開に流されているだけだという感があります。

 ライスが日朝の現状について知らなかった件もそうですが、他国を批判するよりもまず、日本自身に問題があるように思います。それは、日本が知ってほしいこと、訴えたいことについて変に遠慮し、はっきり言ってこなかった現政権のあり方そのものに主因があるように思うのです。

 福田首相は昨年の初訪米でのブッシュ大統領との会談でも、ブッシュ氏が切り出すまで拉致問題について触れず、テロ指定解除に反対する考えも伝えませんでした。北海道洞爺湖サミットでの日米首脳会談でも、指定解除の再考を促すことはせず、ただ米国の対北朝鮮政策に追随しているように見えます。福田氏や政府側はよく「言わなくても、米国は日本の事情はよく分かっている」と説明するのですが、果たしてそれは本当でしょうか。

 今回の日米外相会談まで、ライス氏が現状を把握していなかったように、情報はトップまでなかなか伝わらないことが多いのもまた事実だと思います。だからこそ、トップ同士の首脳会談に大きな意味があるわけですし、相手から直接聞いて初めて頭に入ることだってあるでしょう。今までいろんな省庁で見聞きしてきましたが、事務方は必ずしもすべての情報をトップに上げるものではありませんし、またそれは不可能ですね。あまり都合のよくない話はわざと省くことだって珍しくありませんし。

 ただ、そうであるのは自明なことなのに、日本はこれまでのトップ外交の機会をうまく生かしてこなかったのだろうと、無意味に相手の気持ちばかりに配慮する「お友達外交」の弊害を改めて考えさせられた今回の出張でした。

 

 24日夜には、シンガポールの某ホテルの中庭に面した中華料理店で、藤本特派員にごちそうになりました。この場を借りて改めてお礼を述べたいと思います。ごちそうさまでした。

 
 本日は、今回が初めての6カ国協議非公式外相会合について2本の記事を書き、またそれぞれ早版と遅版で差し替えて、いま一段落しているところです。記者ブログとして、本来ならばその外相会合についてここで書くべきなのかもしれませんが、明日の紙面が出る前にあれこれ先に書いてしまうことにはやはり抵抗があるので、申し訳ありませんが、またまたお気楽エントリとさせてもらいます。すいません。

 きょうは昼間の空き時間に、プレスルームが設置されたホテルの近くにある日系のスーパーをのぞきに行きました。なんとお好み焼き、鯛焼き、たこ焼きの出店があるほか、品揃えも日本のスーパーとあまり変わりません。シンガポールは日本人旅行者も仕事で駐在している人もたくさんいるので、ブログで載せる必要はないかもしれませんが、写真を撮ったのでどんな様子かちょっと紹介してみます。

 

 まるで日本の風景のようですね。魚を少量でパックしてあるのも日本風ですね。アジは新鮮そうでまるまると太っていておいしそうでした。エビは地元産のものでしょうか。

 

 こっちはもっと日本そのものです。どうも干物のたぐいは、日本からそのまま持ち運ばれてきた感じですね。ウナギの蒲焼きまでちゃんとありました。そういえば明日は土用の丑の日ですね。ここにあったウナギが中国産かどうか確かめるのは忘れましたが。

 

 お寿司のパックは「ロールもの」が目立つほかは、やはり日本と似た様子でした。あと、外国人はスシダネでは本当にサーモンが好きですね。私はちょっと油がしつこく感じて苦手なだけに不思議です。してみると、日本人以外の客も多いのかな。

 

 マグロ一貫が0.75シンガポールドルですから、日本円にすれば60円前後でしょうか。けっこう手頃ですね。こっちでは穴子よりもうなぎの握りが主流なのでしょうか。タコも抵抗なく受け入れられているようです。

 

 お弁当コーナーです。ロースとんかつ弁当、焼き鳥弁当、唐揚げ弁当と、日本語の表記からいっても日本人向けのようですね。値段も日本で同様のものを買うのとそう変わらないように思います。そういえば、丸1日、コメの飯を食べていないなあ。

 

 すき焼き用でしょうか、豪州産の和牛、US産の和牛という表示が目につきました。海産物もそうですが、食料品の表示方法はもう一度、整理しないと消費者には何のことやら分からない場合が多いと感じています。シンガポールまで来て言う感想ではないかもしれませんが。

 

 で、きょうの私の昼食です。晩飯は何時にありつけるか分からないと思い、腹持ちのいいニュージーランド牛のリブアイステーキを奮発しました。国内でも国外でも、出張に出るとなぜか食べることばかりに注意が向くのは、私だけでしょうか。肉のグラム数は表示してありませんでしたが、食べた感じでは200グラムぐらいだったと思います。味は、日本でニュージーランド産のステーキ肉を食べるのと何も変わりませんでした。値段は、これにマッシュルームの濃厚スープがついて日本円で1700円ぐらいでした。

 せっかくだから、もっとシンガポールらしい地域色のあるものをと思ったのですが、近くには日本食レストランやピザ店、マクドナルドなどはあっても、「これだ」という店が見あたらなかったので…。さて、日本時間で午後10時を回り、そろそろ何か晩飯を食べに行きたくなってきましたが、両替したシンガポールドルはほぼ使ってしまったし、まだデスクの許可はとっていないし、どうしようかな。

 

 ※追記 夜中に、土地勘も行くあてもないので、泊まっているホテルのレストランでビッフェを食べビール3杯飲んだら、ずいぶんと高くつきました。エスニック風というか、まあ悪くはなかったのですが…。相変わらず愚かな日々で、痩せるわけがありません。

 ※追記の追記(24日) 本日昼、コメント欄で超級大懶猫様が推奨されていたチキン・ライスを食べるため、メリタス・マンデリン・ホテルまで歩いて行ってみました。ご紹介の1階には残念ながら該当する店が見つけられなかったのですが、38~39階の店が大きく写真を掲げてマンデリン・チキン・ライスと宣伝していたので行ってみました。

 そこで、ルームナンバーを聞かれたので、拙い英語で「私はここのホテルにはステイしていないが、チキン・ライスは食べられるか?」と聞いたところ、席に案内されしばらく待たされました。すると、私の英語もどきが通じていなかったらしく、手提げ袋に詰められたテイクアウトのチキン・ライスが運ばれてきました。

 

 これが、超級大懶猫様が書いていたものと同じかどうかは分かりませんでしたが、とにかく持ち帰って食べたところ、とてもおいしかったです。変な表現かもしれませんが、鶏肉がとてもなめらかな味で、ご飯が進みます。トリガラをベースとしたスープもいけました。チキン・ライスを待つ間に、展望レストランの窓から撮ったシンガポールの風景もどうぞ。

 

 私はあくまで仕事でここに来ているのであって、観光しに来たわけでも、食事を楽しみに来たわけでもないのだと、あえてここで一言断っておきます。そうしておかないと、なんだか誤解されそうな気がして…。

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