2009年01月

 

 さて、今朝の産経は政治面に2段見出しで「教頭 ほとんど組合推薦」「日教組究明議連 会報で告白と指摘」という記事を載せています。昨日の自民党有志でつくる日教組問題究明議連で資料配付された昨年12月4日発行の兵庫県の西宮市教職員組合の会報「西教組ニュース」が、「ここ数年は、教頭任用者のほとんどは組合推薦です」と書き、本来は県教育委員会の権限である昇任人事について深く介入していることを堂々と自ら告白していた件について報じたものです。記事は、イザニュースにもアップされているので読まれた方もあることでしょう。本日は、記事の補足も含め、その議連でのやりとりを紹介します。

 

   

 

 まず、写真を掲載しておきますが、この西教組ニュースは「長年の粘り強いとりくみの成果として、89年以降、教頭任用者に対する組合推薦の割合を高めてきました。ここ数年は、教頭任用者のほとんどは組合推薦です」「受験する組合員をいかに増やしていくか、行政や非組合員からの任用をどう減らしていくかが今の重要な課題です」「『民主的な職場』『ゆとりある職場』づくりのため、教頭推薦を完全に集約しましょう」などとあからさまに記していました。

 

   

 

 昨日の議連第4回会合には、国会議員が私が気づいた範囲で18人、文部科学省からは担当者ら5人が出席しました。報道関係者はというと、産経のほかは日経1社だけだったようです。相変わらず、この手の問題に対するマスコミの関心の薄さ、あるいは教職員組合の問題点は見ない、触れないという「日教組タブー」のようなものを感じますね。

 

 それはともかく、会合ではまず、教員と教育委員の双方を経験した義家弘介氏がこの西宮市教組の問題について「この構造が、大分県の教員昇進汚職につながった」と問題提起しました。昨年夏に発覚して逮捕者も出した大分県の教員採用・昇進にかかわる汚職事件では、大分県教組による推薦・斡旋など不適切な事例があったことが、県の報告書でも指摘されていますからね。そして、こうした実態は、他県でも同様であるか似たようなものだと言われています。以下、議員らと文科省側とのやりとりの概略です。

 

 義家氏 文科省は組合が人事権をにぎっている実態をどう把握しているか

 

 文科官僚A まさにここ(西教組ニュース)にあるように、人事について教職員組合がある役割を果たしているのはあってはならないことだ。人事は教育委員会の責任で行うべきものであるが、大分でも、組合の推薦とかが指摘されている。現場に対しては、誤解を招いたり、不適切な事例があってはならないということを指導している。

 

 山谷えり子氏 この西宮市の件は知っていたか

 

 文科官僚A 申し訳ない。この事実はここで初めて承知させていただいた。

 

 山谷氏 大分県のほかで同様の事例は把握しているか

 

 文科官僚A 教委のレベルで推薦などを受けているということは、必ずしも把握できてない。

 

 尾身幸次氏 組合は推薦リストを市町村教委に渡しているはずだ。また、教委の議事を調べればすぐ分かることだろう

 

 文科官僚A 大分の場合は、校長、教頭の選考に当たって、教組の各支部役員が、市町村教委にリストを出していた。大分県教委に聞くと、県教委本庁自体がそれを掌握していたわけではないという説明だ。文科省としては、ってはいけないと改善を求めている。

 

 中川義雄氏 それはあまりに現場を知らなさすぎる議論だ。人事は県教委(教育委員の意味か?)やっているんじゃなく、教委の事務職員がやっている。問題は談合だ。事務職員が実際の権限を持っている。そこに関与してくるのが組合だ。彼らはものすごく巧妙にやっている。泥棒に泥棒をしたかと聞いても、していないというに決まっている。文書や通達を出して調査したと言っても意味がない。

 

 山谷氏 次回の議連で文科省に報告を求めます(文科省側、「はい」と頷く)

 

 …この日の会合で出された資料には、このほか兵庫県教職員組合の会報「教育ひょうご 速報」(同じく昨年12月4日発表)もありました。これも写真を掲載しておきますが、これまた堂々と違法なストライキの計画とその中止の経過が記されています。こんな感じです。

 

   

 

 「今回の県教委回答は、細部については継続交渉課題があるものの、現在の情勢にあっては、重要案件とした諸課題について当初提案から前進をはかり、勤勉手当査定原資の特例措置継続や勤務実態の短縮、勤務時間的成果に向けての具体化についても一定の成果があったと判断し、満場一致でこれらを確認し、12月4日午前3時35分、本日の早朝2時間ストライキ体制は中止することを決定しました」

 

 児童への連絡にあたっては、「ストライキ」という文言は使用せず、次のように説明することになっていた(していた?)そうです。親に報告されたらまずいとは、一応考えたのでしょうか。

 

 「先生たちは組合で給料や待遇などを決める交渉があります。この交渉で、先生たちが納得できない内容ならば、先生たちは明日の朝、2時間の集会に参加します。その場合は、みなさんのことは校長先生が指示しますから、それを聞いてください。納得できる内容ならば、普通通り授業を行います」

 

 この「2時間の集会」は中央運動公園広場という場所で行われることが決まっており、日教組の歌や兵教組(兵庫県教組)の歌を斉唱したり、要求決議採択をしたりする予定だったようです。日本の国歌は嫌いなくせに、本当は歌が好きなようです。兵庫県教組の関連で言えば、私も昨年10月7日のエントリ「主任手当・神戸市教組の指令文書」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/745313/)で取り上げたことがありましたが、なかなか強かな運動体であるようです。文科官僚もこう言っていました。

 

 文科官僚B 教員は一般の公務員と同じように交渉権は認められているが、ストライキをする争議権は完全に禁じられている。大分と兵庫は、県教委自体がしっかりしていない。正直に言って、一番てこずる県の一つが兵庫県だ。

 

 このほか、出席議員からは「安保と教育は、自民と民主が最も異なるところであり、次期衆院選の争点となりうる」(義家氏)「次の総選挙の争点の一つにクローズアップする値は十分ある」(萩生田光一氏)といった意見も出ていました。また、中山成彬氏が、「民主党の輿石東参院議員会長は『教育の政治的中立はありえない』と言っているが、民主党が政権を取り、日教組の代表が文科省に乗り込んできたら大変なことになる」と述べると、文部官僚5人がいっせいに「うん、うん」と強く頷いていたのが印象的でした。とはいえ、文科省側は日教組議員たちともウラで気脈を通じているといいますから、意外と平気なのかもしれませんね…。

 

 

 昨日たまたま知ったというか気付いたのですが、私の2008年10月11日のエントリ「小沢一郎氏の初当選からの言動を振り返る・その一」が、面白いブログ記事を選ぶコンテスト「アルファブロガー・アワード2008」にいつのまにかノミネートされていました。昨年12月24日から今年2月18日までネット上で投票が募集されていて、上記エントリが「中間報告」で発表された70のブログ記事の一つとして挙がっていたのです。

 

 いやあ、誰が推薦してくれたのか分かりませんが、ちょっと驚きました。このような偏った書き手による政治系ブログは、そういう催しとは縁がないものだろうと思っていましたし。また、昨年中に私が書いた262のエントリの中で、何でまたこれなんだろうかという点も不思議ですね。たいしたことを書いた記憶はありませんし、さっぱり分かりません。まあ、昨年の262エントリのうち、自分でも多少は内容があると自信があるのはせいぜい20本程度ですし、どれを選ばれようと感謝するのみですが。小沢氏の言行録に関しては、昨年11月8日に「その九」まで書いたところで面倒になって放っておいたのですが、これを機にまた再開するか…。

 

 ともかく、最近はあまり心弾むような出来事がなく、楽しみが少ない日々を送っていたので、久しぶりにちょっと嬉しくなるニュースでした。最終的な「ブログ記事対象」の結果発表は2月20日だそうで、選ばれるはずはないと思いつつも、なんだか楽しみです。ときどき、ブログを書き続けることの意味を見失いそうになりますが、ちょっとやる気が出ました。単純な人間です。

 

 きょうは、20日のエントリ「ミスター日教組、槙枝元文氏と北朝鮮の関係について」の続きを書きます。この中で私は、12年間もの長きにわたって日教組の委員長職に在任した槙枝氏と北朝鮮の異様な親密さについて記し、また、槙枝氏が現在議長を務める「朝鮮の自主的平和統一支持日本委員会」という団体の過去の集会アピールや決議について触れました。

 

 それに関連して本日、この団体が社民党の某国会議員を通じて昨年12月、麻生太郎首相と中曽根弘文外相に宛てて送った「要請書」のコピーを入手したので、紹介したいと思います。まずは、ちょっと読みにくいかもしれませんが、以下の写真をどうぞご覧ください。

 

   

 

 対北制裁解除、万景峰号の入港、6カ国協議からの拉致問題の排除…などと相変わらず好き勝手なことを求めていますが、「事務局 連絡先」にある北川広和という名前を見て、アレ?と気になりました。この人は確か、ある意味で有名な人だったはずだと思い、産経のデータベースで検索すると、早速、次の記事がヒットしました。ああ、やはりこの人だったか。

 

拉致事件 社民HPに「拉致は創作」 5年前の機関誌論文「北」謝罪後も削除せず [ 20021004  東京朝刊  総合・内政面 ]

 

 九月十七日の日朝首脳会談で、北朝鮮の金正日総書記が日本人拉致事件を認め謝罪したにもかかわらず、社民党が同党のホームページ上に「(拉致は)新しく創作された事件というほかない」とする機関誌「月刊社会民主」(平成九年七月号)の論文を掲載し続けていることが三日、明らかになった。

論文のタイトルは「食糧援助拒否する日本政府」で、筆者は社会科学研究所の北川広和・日韓分析編集。

北川氏は、九年四月に開かれた日米首脳会談で、日本が拉致事件などを理由に北朝鮮への食糧支援を拒否した背景を分析している。

その中で、拉致事件については、韓国の国家安全企画部(安企部)が北朝鮮の元工作員の証言に基づいた情報であるとした上で、「元工作員が本当に存在するのかさえきわめてあやしいと言わざるをえない」と指摘。また、産経新聞が九年三月十三日に報じた元工作員のインタビューにも「証言そのものが創作ではないかとの疑念が生じる」とし、「拉致疑惑事件が安企部の脚本、産経の脚色によるデッチあげ事件との疑惑が浮かび上がる」と指摘している。

さらに、日本語の教育係を必要としたため拉致したとする説については、「見ず知らずの日本人を連れてきて、日本語教育係に育てあげることができるのか。(中略)北朝鮮には多くの日本からの帰国者がいて、わざわざ危険を犯して拉致する必要などない」と北朝鮮の犯行説を疑問視している。

最後に「拉致疑惑事件は、日本政府に北朝鮮への食糧支援をさせないことを狙いとして、最近になって考え出され発表された事件なのである」と拉致の事実そのものを真っ向から否定している。

拉致が明らかになったにもかかわらず、拉致否定の見解をホームページに掲載していることについて、社民党総合企画室は「機関誌の主要論文についてはこれまでホームページに掲載してきたが、(北川論文ついても)現時点で取りやめるつもりはない」とコメントしている。

一方、「横田めぐみさん等被拉致日本人救出新潟の会」の小島晴則さん(七一)は「時代遅れ以上に、反日思想の典型の表れ。日本国民を敵に回してまで北朝鮮を担ぐのか。謝罪して即刻(論文を)取り下げるべきだ。拉致被害者家族の心情を考えても、このまま掲載を続けるとは信じられない。そうでないなら、日本から去ってもらいたい」と社民党の姿勢を激しく批判している。

 

当面は掲載続ける意向 保坂・総合企画室長

 

社民党は三日の常任幹事会で、「友党」としている朝鮮労働党に対して拉致事件について近く抗議するとともに、事実関係をただすことを確認した。一方、「月刊社会民主」の拉致事件をめぐる論文が同党ホームページ上に掲載されていることについて、保坂展人総合企画室長は常任幹事会後の記者会見で「党の見解と同一かを確認したことはないが、なるべく早い時期に見解を出したい」と述べ、当面は掲載を続ける考えを示した。》

 

 …この人は、拉致事件は「でっち上げだ」と主張してきた、この上なく正統的なあっち側の人物でした。こういう人が、金日成を崇拝する槙枝氏の下で事務局を務めているというのは、あまりに分かりやすすぎる構図です。一方、社民党はこの産経の記事が出た後に国民から批判が集中したため、ホームページから北川氏の論文を削除しましたが、いまだに政府との連絡役・橋渡しを務めるほど仲良しなのですね。まあ、同志なのでしょうから、当然といえば当然ですが。また、「要請書」の中で言及されている朝鮮統一支持運動第26回全国(大阪)集会アピールを読むと、こんなことが書いてあります。

 

 《拉致問題は、日朝2国間で解決すべき課題です。その場合、日朝平壌宣言に基づいて、過去精算を原点とした日朝国交正常化を優先させ、拉致問題は交渉の開催中に作業部会などで話し合うべきです。》

 

 拉致問題を矮小化したい北朝鮮の意向そのものの主張だと感じます。社民党と言えば、2001年12月17日には、副党首の渕上貞夫参院議員と金子哲夫衆院議員が朝鮮総連中央本部の副議長らを伴って警察庁を訪れ、警察庁捜査2課課長補佐に「中央本部に対する強制捜査は不当な政治弾圧」という決議文を手渡したことがありました。こっちの方が政治による捜査への介入とも言えますね。また、翌18日には他の社民党議員がやはり総連幹部と首相官邸を訪れていますし、日本には北朝鮮の強い味方が本当に多いようです。

 

 本日は、国連北朝鮮人権状況特別報告者であるタイのチュラロンコン大学のムンタポーン教授が外務省を訪れ、中曽根外相を表敬しました。教授は、国連人権委員会(現在は国連人権理事会に改組)の決議に基づき報告者に任命され、北朝鮮の人権状況に関する情報収集を行うため来日中とのことでした。ぜひ有益な、拉致被害者とその家族の心が伝わる情報を集めていってほしいものです。

 

   

 

 写真右がムンタボーン教授です。中曽根氏は会談の冒頭、いわゆる頭撮りの場面で、「去年の国連総会(第3委員会)に提出されたあなたの報告書は示唆に富み、バランスがとれていると歓迎している。特に、拉致問題の解決に向けて、説明責任と透明性を持って協力するように北朝鮮に要請していることを高く評価する」と語っていました。これに対し、ムンタボーン氏は「今回の訪問では新潟県の拉致現場も訪問した。この問題を引き続き報告書で取り上げ、国際的関心を喚起していく考えだ」と答えたそうです。あまり注目はされなくても、こういう人たちが地道に活動を続けることで、拉致問題への国際社会の認識が深まっていくことを期待します。

 

 さて、この日本の最大の関心事の一つである拉致問題について、米新政権はどんな姿勢をとるのでしょうか。以前のエントリで、バイデン副大統領が「米国の加藤紘一氏」とも呼ばれる融和主義者であることへの懸念は書きましたが、やはり気になるのは国務長官に就任したヒラリー・クリントン氏がどうでるかです。

 

 ヒラリー氏は一応、23日の中曽根氏との電話会談では、拉致問題について「大変重視している。被害者家族と日本国民に強い思い、シンパシーを感じている」と述べてはいますが、どこまで本気でどこまでリップサービスなのかは、まだ分かったものではありません。この人も「米国の田中真紀子氏」という見方もあったぐらいですからね。まあ、この見方についてある外務省幹部に話したら、「それは田中真紀子氏の実像を知らない人の意見でしょう」と、田中氏と比較するのはいくら何でも失礼だとたしなめられましたが。

 

 ともあれ、私は2006年9月3日のエントリ「中国と米民主党と日本のナイーブさ」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/33356/)の中で、米民主党とクリントン夫妻が、いかに中国と親密か、あるいはべったりとした関係にあるかについて少し触れています。それでは北朝鮮についてはどうなのか。古い取材メモをめくっていて、3年ほど前に、旧ソ連、北朝鮮、中国に関する情報分析を専門とした元公安調査庁第2調査部長、菅沼光弘氏から聞いたエピソードを見つけました。菅沼氏は私にこう語っています。

 

 「北朝鮮は米国への働きかけ(工作)に相当カネを使っている。そして、もともとクリントン(元大統領)は大阪のある在日朝鮮人を通じ、北からカネをもらっていた。この在日朝鮮人は、クリントンの大統領就任演説にも呼ばれていたし、クリントンは来日し際にも会おうとした。いま、北はターゲットをヒラリーに向けている。北の対米戦略は、(核、拉致などの)問題をヒラリー大統領誕生まで引き延ばそうというものだ。当然、ヒラリーはブッシュの対北政策を非難するさ」

 

 …正直なところ、菅沼氏の話はどこからどこまで事実なのか分からない、ウラのとりようのない部分があり、かつ、菅沼氏自身、公安関係者からは「ミイラとりがミイラになった」と北朝鮮とのかかわりを指摘されることがあります。ですので、このコメントは当時は使わなかった経緯があります。

 

 米オバマ政権が北朝鮮に対してどんなアプローチをとるかは、外務省内でも「米民主党はクリントン政権下の1994年の米朝枠組み合意を北に裏切られたことを忘れていない。対話ばかりに傾くということはない」(幹部)という見方もあれば、「政権交代のたびにスタッフが大きく入れ替わる米国は、前例を忘れて一から始めるため、同じ失敗を繰り返すという宿命がある」(別の幹部)という観測もあります。

 

 また、米朝枠組み合意による北朝鮮への軽水炉建設支援や、完成までの間の重油提供に際し、日本は大きな負担を一方的に負わされました。この事業にかかわった外務官僚の一人は激しい言葉で「あのとき、日本は米国に強姦されるような屈辱を味わった。米国を信用してはならない」と語っています。先日のエントリで取り上げたオバマ大統領の就任演説に関しても、省内から「テロ集団を『打倒する』と言っているのはいいが、米国は北朝鮮のテロ支援国家指定を解除しちゃったしなあ…」という嘆息も聞こえます。

 

 ヒラリー氏は、人権問題には厳しいはずだという指摘もあり、まだ北朝鮮に対してどう対応する気なのかは見えてきませんが、いずれにしろ米国の対北政策のカギを握る立場にいるので、今後も目が離せないところです。3年前に菅沼氏が語ったような方向に傾いていかないことを祈っています。もちろん、米国はどうあれ、何より日本が主体的に行動すべきは言うまでもありませんが…。

 

 あと余談ですが、米民主党の日本の民主党に対する視線は、「非常に厳しい」(日米交渉筋)と言います。私は複数の関係者から「米政府関係者や米大使館関係者に会うと、異口同音に『民主党議員はなぜ、「われわれは本気で(インド洋で補給支援を行う)テロ対策特別措置法に反対しているわけではない」と言い訳したがるのか』と尋ねられる」という話を聞きました。最近では、民主党議員が「まさか本気で反対しているとは思っていませんよね」と言うと、米側が「じゃあ何をしてくれるんですか」と切り返し、民主党議員が言葉に詰まる場面もあったそうです。

 

 小沢一郎代表が、シーファー前大使との会談を記者団にフルオープンにした上で米側の要請をはねつけ、シーファー氏をさらし者にした件(私の07年8月9日のエントリ「小沢・シーファー会談全文と小沢・横路合意文書」http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/262184/をご参照ください)は、「間違いなく米政府内で引き継がれ、米側は決して忘れない」(外務省幹部)とみられています。民主党のネクスト外相は日教組組織内候補の鉢呂吉雄氏ですし、日米関係はなかなか前途は多難であるようです。

 

 さて、本日は恒例なので約1カ月ぶりの読書シリーズです。年末年始の休みや移動時間がけっこうありましたし、面白い本にも出会ったので読書もまあまあはかどりました。まずは、割と寡作(?)の佐江衆一氏の時代小説からです。 独特の味わいがあります。

 

     

 

 表題作は、帯に「五十の手習いで道場の門を叩いたが、いっこうに腕があがらぬ隠居老人幸兵衛が、苦難の果てに会得した剣の極意とは、即ち生きる極意でもあった」と紹介されています。ただ、これが、私には読後もなんだか不得要領で、久しぶりに読解力と理解力の不足を痛感しました。この本には七つの短編が収録されており、どれもまあ面白かったのですが。

 

     

 

  これは、「うたう警官(笑う警官に改題)」「警察庁から来た男」に続く北海道警シリーズ第3作です。佐々木譲氏の本は重厚で、いつも読み応えがあるのですが、今回はちょっと正義と悪の対比が類型的すぎるような気もしました。北海道が舞台(洞爺湖サミットに向けた警備)とあって、「アル中の保守政治家」というキャラが、ちらっと出てくるのですが、モデルはきっと…。

 

     

 

  何を思ったか突然、高校生のボクシングにかけた青春を描いたスポーツ小説に手を出してしまいました。ストレートな、実にストレートな作品で、素直に面白いと言えます。性格もタイプも対照的な2人の主人公もライバルの存在も、憧れの女教師も、いかにもいかにも…と感じはするのですが、やはりストレートは強い。

 

     

 

 で、これまたスポーツ小説です。箱根駅伝を舞台にした小説は、以前のエントリで三浦しおん氏の「風が強く吹いてる」を紹介しましたが、より設定をリアルにし、勝負そのものにスポットを当てたようなイメージでしょうか。作者はこれまた何度か紹介した「刑事・鳴沢了」シリーズの堂場瞬一氏です。ストーリー展開は多少先が読めてしまいますが、人物設定がうまく、一気に読了しました。敗者復活戦の要素と、チームメイトに心を開かない孤高のランナーが最後に「仲間」に目覚めるところが感動的です。

 

     

 

 さて、ここからは最近はまっている誉田哲也氏の作品です。まずは。警視庁捜査一課の29歳の警部補、姫川玲子シリーズの第1作からです。文庫版になったのを機に読んでみたのですが、おいおい、そんなに事件を大きく派手に展開していいのかと制止したくなるほど圧倒されました。

 

     

 

 姫川警部補と年上の部下(巡査部長)との不器用でなかなか進展しない恋の行方や、他のベテラン捜査官らとの確執など、興味深い人間関係が、陰惨な事件捜査を救っています。29歳の女性捜査一課殺人捜査班主任という肩書きは、ちょっと無理があるような気もしますが、その点についても、ある事情(作品をお読みください)から、大学時代から警察官向けの昇進試験勉強をしていたというエピソードなどでフォローされています。

 

     

 

 このシリーズは「シンメトリー」までの3作が出ているようです。この本は短編集となっていて、姫川警部補が反省も示さず、社会をなめきっている援助交際少女を徹底的に「あなたの社会性を将来にわたって滅茶苦茶にしてあげる」と言葉で追いつめるシーンが印象的でした。実際にこんな取り調べがあるのかどうかは知りませんが。

 

 

     

 

 これは連作短編集の形をとった1本の作品です。やはり警察小説なのですが、最初は妙に不気味な話だと感じ、だんだんとストーリーが展開していくうちに、この主人公の少女は一体何者なんだと思わされ、最後に深く考えさせられました。幸せの形はそれぞれに見えて、実はこういう場所にしかないのかもしれないと。

 

     

 

 最後は、韓国による侵食で今話題の対馬を舞台にした公安警察モノです。以前紹介した「ジウ」シリーズに出てくる東警部補が重要な役割を果たしており、誉田ファンには嬉しいほか、北朝鮮、小型核、在日社会…と設定が細かく、読み応えがあります。陸自の対馬警備隊が格好良く描かれているのはいいのですが、公安は悪者扱いされすぎていて、少しかわいそうな印象も受けました。

 

 …なんだかんだ言って、今回も紹介した9冊中、6冊が警察関連小説でした。私は新人時代に宮城県警担当を1年間、社会部時代に警視庁担当を1年間務めただけで、警察はあまり詳しくありません(よほど好きで適性がある人でもない限り、政治でも何でも、1年間やそこらでは「分かる」ものではないと思っています)し、警察取材はむしろ苦手ですらあったのですが、やはりこれだけ好んで読んでしまうというのは、それだけ気になるのかもしれません。

 

 私が警視庁一課を同僚二人とともに担当したのは10年以上前のことで、しかも成果を上げられないので7カ月でクビ(担当替えで生活安全部担当に)になったダメ記者でした。その後、政治部に異動して最初に感じたことは、「政治家や役人は、家に必ず帰ってくるからやりやすいなあ」ということでした。警察官の夜回り・朝周りは空振りが多く、私の実力・努力不足もあってそもそも取材相手に滅多に会えない(不在・居留守その他)ことが普通だったので、遅くなっても必ず自宅や宿舎に帰ってくる政治家や役人の取材の方が(話をしてくれるかどうかは別として)気持ちは楽だなと感じたのです。

 

 まあ逆に、相手が必ず帰ってくるということは、「会えませんでした」は通用せず、上司に毎日何らかの報告をしないといけないということで、それはそれで面倒ではありますが。また、あくまで一般論ですが、警察官に事件について何かを教えてもらう際には、相手にとっては見返りなど何もなく、むしろ情報漏洩を疑われる危険だけが伴うという場合が多いのに対し、政治家や役人と記者は情報交換を通じて「ギブアンドテーク」が成り立つ場合が少なくありません(簡単に比較するものではないでしょうが、「インテリジェンスの世界は基本的にすべてギブアンドテークだ」とその分野の人から聞いています)。

 

 もちろん、情報交換が成り立つためには、こちらも相手側にそれなりに有益な情報・視点を提供しなければなりません。それにはやはり日頃の取材・勉強が欠かせませんし、また相手との一定の人間関係・信頼関係も築かなければ成り立ちません。大げさな部分もありますが、「深淵をのぞき込む人間はまた、深淵にも見られている」ということを感じることもあります。

 

 ただ、表に見えている情報を分析・解説する評論家ではなく、ナマの情報そのものに接し、報じる記者であろうとすれば、ある程度対象の内部に入り込む努力をする必要があると考えます。批判的に見るにしろ、共感を覚えるにしろ、相手を知り、理解する努力をきちんとしなければ始まらないのだろうなと。また、その結果に対するスタンス、判断は最終的に自分ですればいいことだろうと。自分が警察取材ではとてもそこまでいかず、どこか「次の部署に移るまでの腰かけ」的な気分があったと認めざるを得ないので、かえって警察小説を面白く、興味深く読めるのかもしれませんが。

 

 本の話が少しずれてしまいましたが、小説を読みながら、そんなことを考え、少し反省することもあります。とりとめのない無駄話ですいません。

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