2009年04月

 

今朝の産経は政治面に小さく「自民議連、偏向問題でNHK」に質問状という記事を載せています。イザニュースでも以下のようにアップされていましたので、まず、それを再掲しますが、いかにも短い記事なので、質問内容など詳しいことは分かりませんね。実は私はこの番組を観ていないので、自分自身はどう感じたか、ということは記せないのですが、雑誌などで番組を批判した記事や、私の耳に入ってくる情報などを総合すると、相当、ひどいものだったのだろうと思います。

《NHK総合テレビが4月5日に放送した「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー第1回『アジアの“一等国”』」に、日台友好団体などから「内容が偏向している」と批判が上がっている問題で、自民党の議員連盟「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は28日、NHKの福地茂雄会長あてに質問状を発送した。

質問状では、同番組の内容について、(1)1910年にロンドンで開催された「日英博覧会」の紹介で、日本人と台湾パイワン族との集合写真に「人間動物園」とのキャプションを表記していた(2)台湾で神社参拝を強制して、道教を禁止した-など13項目にわたり、資料の有無などの明示を求めている。

 同番組をめぐっては「日本李登輝友の会」(小田村四郎会長)がすでに、福地会長あてに、「日本が一方的に台湾人を弾圧したとするような史観で番組を制作することは、公共放送として許されるべきではない」とする抗議声明を出した。》

 

 で、同じく今朝の産経の社会面には、《いわゆる「従軍慰安婦」を特集したNHKの番組が放送前、政治家の意図を忖度して改編された疑いが持たれた問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は28日、「番組制作の幹部が放送前に政治家らと面会し、前後して改編指示した一連の行動は、NHKの自主自律を危うくし、重大な疑念を抱かせた」との意見を発表した。ただ、川端委員長は会見で「自主自律をゆがめる改編を、外部圧力で行ったと認定したのではない」と説明した…》という内容の記事が出ていました。

 

 期せずして、政治(家)と公共放送の関係、距離の置き方について考えさせられる記事が並んだわけです。この問題については、この慰安婦番組が話題になったときにさんざん論じられたし、私自身も何か意見を述べた記憶があるのであまり長々と書く気はありませんが、一つ改めて強調しておきたいことがあります。それは、政治家にとってNHKとは非常に有難い存在であるということです。

 

 政治家が閣僚や政党の役職に就くと、潤沢な予算(取材費)を持つNHKの記者は、まずほとんどの出張や講演、政治資金パーティーなどに同行し、その際の発言を報じてくれます。これは政治家にとって、ただで自分の宣伝をしてくれるようなものです。また、新聞は政局記事が多いと批判されていますが、それだけ政治家自身の本音や思惑、所属する派閥の事情や人間関係、国会での駆け引きの舞台裏の類を書かれた相手に嫌がられながらも書いているともいえます。私も、自民党の山崎派と亀井派について書いた記事で、この二つの派閥から「出入り禁止」処分を受けたことがあります(だからといって、別にどうということはありませんが)。

 

一方、NHKは不祥事でも起こさない限り、そういうどろどろとした部分はまず報じず、ひたすら表の発言を視聴者に伝えてくれます。また、新聞などではあまり大きく言動が報じられることのない社民党や国民新党など小政党の幹部も、NHKの番組に出れば、所属議員数に比例した以上の時間を与えられ、自分と自党の宣伝の場にすることができます。実際、以前、ある小政党の幹部がNHKの不祥事を批判した際、NHKの記者が「あんなにテレビに出してやっているのに」と怒っていた姿を見たこともあります。まあ、そんな感じで、NHK予算などは、だいたいいつも与野党双方から特に異論も出ずに「しゃんしゃん」で可決されます。

 

 数年前のことですが、26日に名古屋市長選に当選した民主党の河村たかし氏に、NHKと政治家の関係をどう思うか聞いたことがあります。そのとき、河村氏は例の名古屋弁で「NHKに逆らおうなんて政治家はいない。そりゃ有難い存在だし、逆に敵に回して無視されたりしたら大変だから」という趣旨のことを語りました。私は、NHKと政治(家)の関係を論じるのであれば、単純に政治家による圧力だとか何だとかすぐ「分かりやすく俗受けする」視点にばかり囚われるのではなく、実際のところ、NHKはどういう存在なのかの実態を踏まえて議論した方がいいと常々感じてきました。

 

 例の慰安婦番組の件で、安倍元首相(当時は官房副長官)と中川昭一氏(当時は無役)が圧力をかけて番組を改編させたという虚報を朝日が書いたのは記憶に新しいところですが、あのころ若手政治家に過ぎなかった二人と、自民党の主流派閥だった橋本派と密接につながっていたNHKの力関係は、もう問題にならないほど後者が上でした。実際、党の関係部会などで安倍、中川両氏と同じくあの番組はおかしいと感じた古屋圭司氏らが発言しようとすると、橋本派議員らが「全く問題はない!」などと大声を上げて発言を封じていました。まあもっとも、現在のNHKはその後頻発した不祥事で国民の批判を浴びたこともあり、このころに比べれば直接的な政治力は小さくなっている気もしますが…。

 

 さて、余談がやたらと長くなってしまいました。今回のエントリで私がやりたかったのは、記事ではほとんど省略された冒頭の歴史教育議連の質問状の内容を、ここで改めて紹介することでした。あとは番組を観てもいない私の余分な所感などはさまず、質問状の文言をそのまま書き写すこととします。

 

 《質問状

 

 日本を代表する報道機関NHK総合テレビは、国民の財産であるテレビ電波を、国民の「公共の福祉」に貢献して頂けることを前提に、破格な電波利用管理費(年間・NHK・12億1500万円)だけで付託され、年間約7500億円の事業収入を得ています。

 ここでの「公共の福祉」とは、国民の知る権利を充たすことであります。

 NHKは、平成21年4月5日「NHKスペシャル シリーズJAPANデビュー第1回『アジアの一等国』」を放送しました。

 その番組に対して、日本・台湾の友好親善団体ならびに日・台の有識者から、番組が、偏った視点で制作されていると、尋常ならざる批判が巻き起こっていることは、ご承知のことと存じます。

 それは、世紀をこえる日本・台湾国民双方の市民交流にまで、拭いがたい不信感を及ぼしたからに他なりません。

 そこで、自由民主党「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」は、国民が当該番組に抱いた疑問に則して下記の質問をします。

 尚、国民が、報道番組制作者の基本的姿勢を知る為と、貴社番組の質の向上を実現するため、質問は、誤解が生じることのない方法として、択一で回答して頂くことにしました。宜しくお願いいたします。

 

一、1910年に、ロンドンで開催された『日英博覧会』を紹介した映像で、日本人と台湾パイワン族との「一枚の集合写真」に「人間動物園」と侮辱的キャプションを表記していたが、「集合写真」に「人間動物園」と記述してあったか否か。

(イ)記述してあった

(ロ)記述してなかった

 

二、「一枚の集合写真」に関して、日英博覧会関係資料に、台湾パイワン族を「人間動物園」と指摘した当時の資料があったか否か。

 (イ)指摘した資料はあった

 (ロ)指摘した資料はなかった

 (ハ)調べていない

 

 三、台湾で実施された「改正名」(1937年)が、強制的に実施されたように報道したが、強制を示す資料があったか否か。

 (イ)示す資料はある

 (ロ)示す資料はない

 (ハ)調べていない

 

 四、公務員は、仕方なく「改正名」をしたと報道したが、全公務員が「改正名」をしたことを示す資料があったのか否か。

 (イ)示す資料はある

 (ロ)示す資料はない

 (ハ)調べていない

 

 五、台湾の南北400㎞の鉄道建設は、樟脳貿易のため敷設したように報道したが、それを裏付ける資料があったか否か。

 (イ)裏付ける資料はある

 (ロ)裏付ける資料はない

 (ハ)調べていない

 

 六、本来、鉄道建設は、社会基盤整備事業であるが、仮に、貿易のために特化したものとして、当時の台湾貿易統計で、樟脳が占める比率を調べたか否か。

 (イ)比率を調べた

 (ロ)比率を調べていない

 

 七、台湾で、神社参拝を強制して、道教を禁止したと報道したが、それを裏付ける資料があったか否か。

 (イ)裏付ける資料はあった

 (ロ)裏付ける資料はなかった

 (ハ)調べていない

 

 八、日本語を話せないものは、バスに乗せなかったと報道したが、行政政策として、指し示す資料はあったか否か。

 (イ)指し示す資料はあった

 (ロ)指し示す資料はなかった

 (ハ)調べていない

 

 九、学校・新聞などで、中国語を禁止して日本語を強要したと報道したが、行政政策として、それを指し示す資料があったか否か。

 (イ)指し示す資料はあった

 (ロ)指し示す資料はなかった

 (ハ)調べていない

 

 十、台湾人女性が日本人と結婚しても、戸籍に入れなかったと報道したが、朝鮮での「創氏改名」は、民事令の改正の中で実施された。その改正は三項目、一、氏名の共通、二、内鮮通婚、三、内鮮縁組。以上の改正だった。朝日新聞『朝鮮版』(昭和15年2月11日付、中鮮版)には、「内地人同様の待遇、内地人の戸籍に入籍の朝鮮人 京城府が率先実施」との記事がある。台湾では、朝鮮と違い日本人の戸籍に入れなかったと受け取れるが、行政政策として、結婚しても終戦まで、日本人の戸籍に入れなかったことを示す資料があったか否か。

 (イ)指し示す資料はあった

 (ロ)指し示す資料はなかった

 (ハ)調べていない

 

 十一、日中戦争当時、台湾に500万人の漢民族がいたと報道したが、原住民の人口比率などの資料を精査したうえで示した数字か否か。

(イ)精査した数字である

(ロ)調べていない

 

 十二、1919年、パリ講話会議に於いて、ウィルソン(米国大統領)議長が「民族自決主義」を唱えたことで、東ヨーロッパ・インド・ベトナムなどの独立運動が始まったと報道したが、同講和会議でウィルソン議長は、日本が提出した「人種差別撤廃決議案」が、19人の委員の内11人の委員が賛成したにも拘わらず、採択しなかったことを知っていたか否か。

(イ)知っていた

(ロ)知らなかった

(ハ)調べていない

 

 十三、同番組に出演していた柯徳三氏は、日本で『母国は日本、祖国は台湾』を上梓して、植民地時代の功罪をバランスよく執筆している。しかし、同番組は、柯氏が「罪」だけを語ったこととして放送したが、柯氏は、インタビューに対して「功」について語らなかったか否か。

 (イ)「功」も語った

 (ロ)「功」は語らなかった

 (ハ)「功」についても語ったが使わなかった

 

 以上、右記質問は、国民の視点に立脚して、シリーズ・JAPANデビューが、真に「未来を見通す鍵は歴史にある」ことを実証して頂きたく、国民の疑問とシリーズ番組の「質」の向上を願って質問させていただきました。

 

 尚、右記質問、13問に関して、わが国を代表する報道機関の代表としての誠意ある回答を、書状受け取り後1週間以内に頂けることを願っています。》

 

 

 

 

 

   

 

 別にシリーズ化するつもりはありませんが、本日は文部科学省の屋上の鯉のぼりです。暑くも寒くもない晴天の屋外を歩くと、それだけで少し気分が明るくなりますね。

 

 虎ノ門で所用を済ませ、外務省へと戻る途中、ちょうど文科省の鯉のぼりが見えるあたりで著名な某外交評論家とばったり行き会ったので、ちょっと立ち話をしました。話題は、集団的自衛権の政府解釈見直しの行方についてです。

 

  次期衆院選の自民党のマニフェスト(政権公約)に、集団的自衛権の政府解釈見直しが盛り込まれるという話が出ている。聞くところによると、麻生首相も前向きだという。

 

 某氏 その話自体は私も賛成だ。ただ、私もいろいろと聞いているが、マニフェスト盛り込みはうまくいかないかもしれない。というのは、(政府・自民党内に)慎重論があるからだ。「マニフェストに掲げて選挙に負けたら、集団的自衛権の問題もそれまでになってしまう」という意見だ。

 

  選挙に負けたら見直しの話はお終いだろうから、どの道、同じ事でしょうに…

 

 某氏 私は、マニフェストに入れるよりも、いま解釈変更をして、それを選挙で国民に問うたらどうかと思う。内閣法制局長官は辞表を出すかもしれないが、今の時代は、役人をクビにするぐらいの方が国民に受けるのではないか。

 

  まあ、それはそうだが、麻生首相は「役人を使いこなすことが大事だ」と何度も強調しているぐらいだから、官僚のクビをとろうとはしないのではないか。

 

 某氏  麻生さんが役人を大切にしているのはそういうこととは違うんだ。内閣法制局の場合は、そういうのと違う…じゃあ、それじゃ。

 

 …立ち話だったので、話は肝心なところで尻切れトンボになってしまいました。この某氏も官僚出身者であり、麻生首相の役人観についてどう見ているのかもう少し聞いてみたかったのですが。まあ、集団的自衛権をめぐっては、解釈変更派の外務省と現行解釈墨守派の内閣法制局が対立していて、政治家への根回し合戦などでも争っていますから、そのへんも含めて、また機会があれば意見を聞いてみようと思います。

 

   

 

 いつものように外務省に入るとき、ふと空を見上げると屋上で鯉のぼりがはためいていました。やはりいいものです。

 

 衆院選がいつになるのかは分かりませんが、どうやら自民党のマニフェスト(政権公約)の一つに、集団的自衛権の政府解釈見直しが盛り込まれる気配が出てきました。まだ確定したわけではなく、また、あまり国民ウケするテーマではないでしょうが、今後の日米同盟と国際社会の中での日本の立ち位置を方向付けていくという意味でも、政権の本気度を占うという意味でも重要な問題だと考えます。時代も日本を取り巻く国際環境も大きく変化しているのに、国内政治を見ると、内向きで、かつ昔へ後戻りすることばかり考えているような議論が続いています。そういう中で、この集団的自衛権の問題が、新風を吹き込んでくれることを期待します。

 

 鯉のぼりの方は、眺めているうちに風がやんで垂れ下がってしまいましたが…。さてさて。

 

  さて、日曜日でもあり、前回の読書エントリから1カ月以上過ぎたこともあり、本日はまた読書紹介シリーズでいこうと思います。前回のコメントの中で、私の評価ほ「☆印」で示したらどうかというご提案があったので、それも実験的に5段階評価で添えてみます。今回は残念ながら「☆☆☆☆☆」の満点の作品はありませんでしたが。また、この評価はあくまで私の独断と偏見、趣味と嗜好の結果であり、本それ自体の出来とはあまり関係がないものとなるかもしれません。

 

 まずは、読書シリーズでは〝常連〟の堂場瞬一氏の野球小説「大延長」(☆☆☆★、3.5)からです。この作者のスポーツものは、アスリートたちが決して「爽やかな存在」に描かれていないところに、リアリティーを感じます。それこそ私の偏見かもしれませんが。ストーリーはというと、甲子園大会の決勝戦をめぐり、両校の監督同士、選手同士の二つの因縁を軸に、「何が起きるか分からない」大熱戦が展開されていくというもので、読み出したら途中でなかなか中断できませんでした。

 

   

 

 次は、「時の人」となった感のある今野敏氏の人気シリーズ「隠蔽捜査」の第三作、「疑心」(☆☆☆★)です。私はこのシリーズの主人公、警察庁キャリア官僚の竜崎伸也のキャラクターが好きなのですが、今回は何と部下に対して恋におちます。うーん、前二作だったら「☆☆☆☆」か「☆☆☆☆★」をつけたのですが、これはなあ。まさに趣味の問題だとも思いますが、登場人物の米政府のシークレットサービスの手法などにいまひとつリアリティーを感じなかったこともあり(これまた私の方の認識不足かもしれませんが)、読後感は期待していたほどてはなかったというものでした。でも十分面白いですが。

 

   

 

  今度は、以前、釣りを題材にした作品「あたり魚信」を紹介したことのある山本甲士氏の「ひろいもの」(☆☆☆★)です。帯の宣伝文句にも「ハートウォーム・ストーリー」とありましたが、まさにそんな感じの連作短編集で、いろいろな事情でくすぶっている人や悲嘆にくれている人たちが、バッグ、サングラス、警察手帳…と何かを拾うことをきっかけに立ち直り、再生していくという大人のファンタジーといえる作品でした。疲れたときにお勧めです。

 

   

 

  この「優雅なハリネズミ」(☆☆☆☆)は、会社の労働組合の書棚(持ち出し自由)にあったので、ただで読めたのですが、非常に面白かったです。作者は、ミュリエル・バルベリ氏というフランス人女性で、この作品の中にも日本人紳士、オヅ氏という人物が出てきて重要な作品を果たします。上流・富裕階層という名の俗物の集団に取り囲まれながら新鮮な感性と知性、哲学する心を失わない初老にさしかかった管理人の女性と、家族から浮いている賢い少女が、オヅ氏の存在を仲介して互いの存在に気づき、心を通わせていきます。この本を読んで改めて、移民国、フランスは堅固な階級社会でもあるのだなあと実感させられました。

 

 作者は相当の日本通(現在は京都在住だとか)らしく、作中には映画監督の小津安二郎や芭蕉、侘などの言葉も出てきますが、読んでいて驚いたのは、主人公の一人である少女が、漫画家の谷口ジロー氏に傾倒していて、たびたび谷口作品に言及することでした。そういえば、谷口氏はヨーロッパの漫画賞を取っていたなあとうろ覚えの記憶がありました。

 

   

 

  本棚をひっくり返して4年前に読んだ谷口氏のその賞をとった作品を見つけました。帯にも、確かに「ついに、ヨーロッパが谷口ジローを発見した!」とありますが、実際この本は欧州で最も著名なアングレーム・マンガ祭(仏)をはじめ、欧州の三大コミック大賞を受賞したそうです。48歳の主人公が、母の墓参をしているうちに意識を失い、気が付くと14歳の少年時代に戻っており、やがて訪れることを知っている家族の崩壊を食い止めようとするが…という内容で、味わいがあります。家族というテーマは普遍的なのでしょうね。

 

   

 

  さて、澤田ふじ子氏の京都を舞台にした公事宿事件留帳シリーズもこの「遠い椿」(☆☆☆★)で第17作となりました。私は毎度毎度、このシリーズは説教くさいだの、くどいだの、京都弁がしっくりこないだの文句をつけつつ、目頭を熱くしながら読んでいます。ぶつぶつこぼしながら読むのをやめられないというのも、作者の力量ゆえなのでしょうか。

 

   

 

  山本周五郎氏の初文庫化作品といえば、これは買わざるをえないところですが、「美少女一番乗り」(☆☆☆)という題名はちょっとレジカウンターに持っていくのに抵抗がありました。なんか変な内容の本だと誤解されそうでしたし、実際、レジの女性店員もそういう目で見ていたような…。それはともかく、巻末の解説によると、この本の収録作品はほとんど少女向け雑誌「少女倶楽部」に発表されたものだそうです。なるほど、そういう印象はありますが、大人が読んでも楽しめると思います。

 

   

 

 中学生のさまざまな煩悩と向き合いながら成長する日々を描いたあさのあつこ氏の「The MANZAI」(☆☆★)も、今回で第5巻となりました。主人公たちも中3の1月を迎え、近く卒業してそれぞれの道を歩いていく…というわけなのですが、主人公はなぜ自分が漫才をやらされるのかいまだに納得していません。

 

   

 

  これは、以前のエントリで紹介した押川國秋氏の「見習い用心棒」の続編「本所剣客長屋 左利きの剣法」(☆☆★)です。一作目についていまひとつだと評しておきながら、続きが読みたいという欲求は抑えられず…。まあ、無事敵討ちを果たしたはずの主人公が藩に復帰せず、どこか無頼の日々に慣れ親しんでいき、市井の生活を選ぼうとしている描写が、徐々に面白くなってきました。

 

   

 

 これまた、以前のエントリで紹介した坂岡真氏の「のうらく侍」の第二作、「百石手鼻 のうらく侍御用箱」(☆☆★)です。書店で見かけると、つい手が出て…と言い訳ばかりですね。のうらく者(脳天気な変わり者)と呼ばれ左遷された主人公が、今回はさらに減石されますが、一方で悪を討つための密かな活躍も本格化します。 

 

   

 

 …もうそろそろゴールデンウィークですね。「16連休」という報道もありましたが、今年は仕事の関係で、3連休がやっとかなあという状態です。連休明けの土日はすでに仕事が入っているし。どこか旅にでも行きたいのですが、それが適わない以上は、本を読んで楽しむしかありません。

 

 今朝の産経は1面トップで、「集団的自衛権行使 解釈変更 首相、本格検討へ」という記事を掲載しています。これは、日米同盟の片務性を双務性に近づけ、同盟の実効性を高めるとともに、両国関係を対等に近づけるうえで大きな意義があることだと考えています。この問題について麻生首相は就任時、政府解釈変更に着手していた安倍元首相に対し、「この問題で後退はしない」と約束したと聞いていました。まだ今後どう動き出すのか頓挫するのか分かりませんが、とりあえず歓迎したいと思います。

 

ですので、本日はこのテーマを取り上げようかとも思ったのですが、この件については過去エントリで何度も書いてきたし、きょうの紙面でも5面の解説記事も含めてある程度詳しく記述しているので、別の話題にします。このブログでは、できるだけ紙面に載らない(乗りにくい)内容を書こうと思いやってきましたから。

 

 さて、昨日は木曜日でしたが、この日は毎週昼に自民党の各派閥の会合が開かれ、各担当記者がそのもようを取材します。その中で、町村派の会合の取材メモをメールで読んでいて、少し興味をひかれる内容がありました。それは、先日も参院決算委員会で民主党の小沢代表の不動産問題を追及した西田昌司氏が、「これを何らかの形で党で活用してもらいたい」として、小沢氏に対する公開質問状を配布したというくだりです。そこで、西田事務所にその公開質問状の中身を問い合わせたところ、「オープンにしても結構だ」とのことだったので参考までに紹介します。

 

ちなみに先日、小沢氏をよく知る民主党のベテラン議員と話をしていたら、彼は「(7人いる)党の副代表で、小沢さんに辞めるなと言っているのは石井一さんだけだ。だけど、小沢さんは周囲が『辞めろ』といったら辞めないで、『辞めるな』と言ったら辞めるようなところがあるからなあ」と苦笑していました。私が、「そういう天の邪鬼というか、意地になるところがある」と水を向けると、「そうそう!」と大笑いもしていましたが…。

 

最近の小沢氏の動向を見ていると、最後まで代表の座に居座るつもりであるようにも見えますね。26日投開票の名古屋市長選はもともと民主党候補が有利でまず勝つとされていますから、小沢氏はいよいよ「勝ったのに辞めるのは筋が通らない」と開き直りそうです。小沢氏に代表を続けてほしい自民党側は大喜びでしょうが。

 

 ベテラン議員は「小沢さんも各種世論調査の厳しい結果などは確実に見ている。このまま小沢さんが辞めないで衆院選で民主党が負ければ、小沢さんはもう終わりだ。二度と浮かび上がれない。でも辞めておけば、選挙後も影響力を保てる」と指摘し、いずれ辞めるだろうと言うのですが、なにせ小沢氏は意地になる性格ですからねえ…。余談が長くなりました。以下が公開質問状です。

 

     〈公開質問状〉

1.            平成17年に陸山会(小沢氏の資金管理団体)が約3億6千万円で取得した世田谷の宅地建物は、その政治資金報告書並びに小沢代表の資産報告書により、小沢代表が第三者から借りた4億円を陸山会に貸し付けたものが原資になっていると推測される。しかし、その不動産には、第三者による抵当権等の設定が登記されていない。4億円という大金が無担保で第三者から融資されるとは甚だ不自然である。小沢代表は、その資金を誰から借り入れたのか説明すべきである。

2.            また、これらの資金を陸山会は小沢代表に2年間で返還しているが、その際、平成17年で約600万円、18年で約200万円の支払い利息が支払われている。これは小沢代表にとっての雑所得になるはずであるが、その所得申告の記載がないのはなぜか。小沢代表の説明を求める。

3.            陸山会が権利能力なき社団としての要件を備えているのか断定できないとして、東京高裁の判決は、権利能力なき社団でない可能性を示している。権利なき社団の条件は、最高裁判決により多数決原理の採用をはじめ4条件が示されている。この4条件を満たさない場合は、陸山会は小沢代表の雑所得課税として課税の対象となる。小沢代表は、陸山会が権利能力なき社団であることを明確にすべきである。また、その資格を満たさない場合は、直ちに小沢代表の個人所得の修正申告をすべきである。

4.            政治資金規正法が平成19年6月に改正され、以後政治資金管理団体の不動産取得が禁止された。陸山会はこの議論がされている最中の平成19年4月に世田谷に建物を新築取得している。これは、非常識きわまりない行為であり、小沢代表はその取得について国民に説明すべきである。

5.            小沢代表は、政治資金規正法改正後、陸山会の不動産は順次手放す旨の意思表明をされているが、平成20年4月現在、そのほとんどが陸山会の所有のままである。一体いつ手放すつもりなのか、国民に説明すべきである。

6.            その一方で、陸山会が平成6年に1億1千万円で取得した不動産を財団法人ジョン万次郎ホイットフィールド記念国際草の根交流センターに寄付している。しかしその財団は、小沢代表が理事になっており、実質的には何ら変わらないのではないか。これは、国民の目を欺くものではないか。小沢代表は国民に説明をすべきである。

 

 …小沢氏はこのまま代表の座にとどまり、民主党が次期衆院選に勝利した場合、やっぱり一度は首相になるつもりなんだろうと私には思えます。今朝の産経政治面の記事では、名古屋市長選の応援に入った小沢氏が、選挙事務所でスタッフを激励したものの、街頭演説は行わなかったことについて、民主党中堅議員の「表に出ると批判されると分かっているんだろ。そんな党首では、与党と戦えない」というコメントが載っていました。小沢氏は記者会見などでは、いつも「すべてきちんと説明している」「法にのっとって適切に処理している」と繰り返しますが、その処理の肝心な中身についてはまったく説明しようとはしません。まるで、ただ自分は悪くないと言い募るばかりで、反省を促す大人の言葉に一切耳を貸さない幼児を見るような気がしますね。

 

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