前回読書エントリを投稿したのが4月26日でしたから、もう1カ月以上がたちました。ですので、読んだ本もたまってきたこともあり、きょうは久しぶりに最近読んだ本について感想を記します。今回は、読み応えある大作というよりも、どうも気軽に読めて手頃な感じの作品が多くなりました。前回に引き続き、「☆」マークで私の独断と偏見と嗜好と気分に基づくいい加減な評価も加えていきます。
まずは、前回読書エントリのコメント欄で一閑様が紹介してくれた万城目学氏の「鴨川ホルモー」(☆☆☆☆)からです。これは、ストーリー、登場人物の設定ともにかなり気に入りました。ちょうど映画化されてもいたので、わざわざ映画館にも足を運んだのですが、タッチの差で「もう(上映期間は)終わりました」とのことでした。あいかわらず愚かな日々を送っています。
学生時代に、漠然と小説家に憧れたときもあった(実際は何も書かず、いや思いつかず挫折)のですが、当時、書きたかったのはこういう話だったかもしれないなと思い出しました。で、読み終わって作者のプロフィールを読むと私より10歳も下で、かつこれがデビュー作なんですね。ともあれ、京都を舞台に、大学生たちがちょっと変わったサークルに入ったつもりが、知らないうちに式神、鬼を操る競技をするはめになり…という恋あり、青春の蹉跌あり、スポ根的要素ありのバカバカしくも楽しいお話です。
次は、その続編というか、本編を補うエピソードを集めた短編集「ホルモー6景」(☆☆☆★)です。これも面白かった。万城目氏はこの中の短編「もっちゃん」で、登場人物にある有名作家について「何というか、うますぎる。俺はもっと不器用な感じがいいんだ」と語らせていますが、読みながら、自分も相当うまいではないかと突っ込みたくなりました。
勢いがついたので、続けて万城目氏の作品に手を出し、今度はテレビドラマ化されていた「鹿男あをによし」(☆☆☆★)を読みました。今度の舞台は奈良で、ふとしたことで大学の研究室を休み、奈良の女子高で教鞭をとることになった「おれ」がそこで見たものは…。そして鹿へと変貌していく顔…。主人公と少し目の離れた野性的な魚顔のヒロインとの心の交流を示すシーンが、もう少しあった方がいいのではとも思ったのですが、同僚の女性記者にそう感想を述べると、「あれぐらいだからいいんじゃないですか」と却下されました。
で、とうとう万城目氏の最新刊の「プリンセス・トヨトミ」(☆☆☆)となります。これは大阪をめぐる物語、帯には最高傑作とありますが、これは好みが分かれるところでしょうね。私は続けてこの人の作品を読んだせいか、ちょっと悪乗りかなあとも感じました。あるいは、自分が大阪に地縁があれば、もっと面白いのかなあとも。登場人物のキャラが立っているのはいいのですが、立ちすぎで、続編でも出さないとこの1冊では描き切れていない気もします。まあ、趣味の問題でしょうが。
さて、またまた警察小説の登場です。堂場瞬一氏の新シリーズ第2作「相克」(☆☆☆)では、謎の多い阿比留真弓・失踪人捜査課三方面分室長のプライベートの側面がちらりとのぞけました。また、同室所属刑事、醍醐塁もただのバカではなく、なかなか複雑な境遇にあることが描かれています。ストーリーは…うーん、まあこんなものかなあ。
この山本甲士氏の「かび」(☆☆☆★)は、何年も前に買ってあったものの、暗そうな話なのでずっと積ん読になっていた作品でした。読後感も、決して明るくはないのですが、ストレス解消にもなるという不思議な本でした。日常生活で不満を溜め込んだある平凡な主婦が、勤務中に脳梗塞で倒れた夫を退職に追い込もうとする会社のやり口にぶち切れ、手段を選ばぬ報復に…という山本氏の得意とする内容でした。
この鳥羽亮氏の「わけあり円十郎江戸暦」(☆☆★)はまあ、あっさりと読めました。この作家の「剣客春秋」シリーズなどはけっこう読み応えがあるのですが、これは…ご本人も気軽にさっさとやっつけたのかな、という感じです。面白くないわけではないのですが、特に紹介するべきことも思い浮かばず…。
次の北森鴻氏の「メイン・ディッシュ」(☆☆☆)も、おそらく買ってから5年はたっていることと思います。職場に置いていた資料に紛れてずっと忘れていました。小劇団を主宰する女優の周りで起きるさまざまな事件、出来事をおいしい料理のスパイスで包んでいて、楽しめます。連作短編集の形になっているのですが、それが読者が思わぬ形でつながっているという仕掛けもいいですね。それにしても、この作家は料理の描写が本当にうまい。
次は、林業青春もの、とでも言いましょうか。三浦しをん氏の「神去なあなあ日常」(☆☆☆★)は、自分の知らないうち就職先を決められ、三重県の山間部で林業の修行をすることになった横浜の高校生が、ゆるゆるとした日常の中で少しずつ成長(かなあ)していく姿を描いた気持ちのよい作品です。
前々回のエントリで「かつどん協議会」を紹介した原宏一氏の「東京箱庭鉄道」(☆☆☆★)は、最初はバカバカしく思えて、でもすぐ引き込まれ、最後はちょっと切なくなるという王道的な小説でした。牛丼屋でビールを飲んでいた主人公が持ちかけられた話とは、「400億円出すから東京に鉄道をつくってほしい」という突拍子もないもので…。皇室弱体化のためGHQに臣籍降下されられ、財産を失った旧皇族の悲劇もからみ、一気に読みました。
最後は、同じく原氏の短編集「天下り酒場」(☆☆☆)となります。表題作は、ある地方の小さな割烹居酒屋が頼まれた定年後の県庁職員を雇ったところ、役人ネットワークで経営状態は好転したものの、やがて拡大していく店は役人の新たな天下り先となり、いつのまにか第三セクターになって…という実に恐ろしいストーリーです。この作品は2001年に発表されたものですが、いま世に問うた方がうけるのかもしれません。
それではまた、約1カ月後に読書エントリをアップしようと思います。もしよろしければ、ご推薦の本を教えてください。時間の許す限り、毎日書店をのぞくようにしているのですが、知らない作家の作品にはなかなか手が出ず、判断基準が分からないので、ご紹介いただけると幸いです。