2009年11月

 

 鳩山政権が「国際公約」として、2020年に温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減することを掲げている問題について、今朝の産経は2面で「温暖化試算〝お蔵入り〟背景は… 有識者会議 数値めぐり『対立』『暗闘』」「政治迎合『学者生命かかわる』」という記事を掲載していました。25%削減が家計に与える影響を検討してきた政府のタスクフォース(有識者会議)が24日にまとめた試算報告書(中間とりまとめ)が、「非公表」とされた経緯について、産経の経済本部が入手した議事録などをもとに検証したものです。

 

 この問題をめぐっては、麻生前政権は今年3月に「1世帯あたりの可処分所得が22万円目減りする一方で、光熱費が14万増え、計36万円の負担増になる」という試算を公表していました。これに対し、民主党側は「脅かしだ」と批判し、鳩山政権発足後、タスクフォースに再試算を依頼していたもので、それがなぜ非公表となったのか。

 

 詳しくはイザ・ニュースにもなっているので記事を読んでいただければ分かりますが、要は5つの研究機関・大学が試算した結果の数値がバラバラで、しかも最大では前政権の試算36万円の倍以上となる76万5000円の負担増(野村浩二・慶大准教授の試算、国内で全部を削減した場合)という数字が出てきたため、国民にそのまま明らかにするのはまずいと判断したようです。

 

 そこで私も、この「取扱注意」と記された議事録を経済本部からもらって読んでみたのですが、なかなか面白いやりとりなので、関心をひかれた部分を抜粋(全部ここで打ち直すのは大変なので)して紹介します。

 

 植田和弘座長(京大教授) 政策パッケージについては、制度設計がどうなるか明確ではないため、今回は入れ込めなかった。そういう意味では試算に限界があった。いずれの試算においても25%削減でGDPは減少するが、国際協調によりその影響は緩和される。例えば、化石燃料の価格は低下する。オイルショックの際と同様、世界的に省エネが進むということ。石油価格が下がるが、そこで関税をかけて国内価格を維持すれば、国民負担の緩和につながる。

 

 小沢鋭仁環境相(事務局長) 麻生政権下における、真水25%で国民負担が36万円という試算が誤りであったことがはっきりしたというだけでも、今回の試算は意味があった。77万円の負担についても、可処分所得が増えているので、トータルではプラス。世界全体で削減に取り組めば、その負担感も減少し、クレジット活用でさらに小さくなる。

 

 福山哲郎外務副大臣 マクロフレームの設定が今回は見直されていない。われわれ(民主党)の政策を入れ込んだらどうなるかが示されなかった。このまま数値が出ていくと、国民にネガティブなイメージを与えてしまう。今後は、固定価格買い取りや新技術を入れ込んでいく必要がある。

 

 植田氏 新技術をどういう根拠でどこまで入れるのか、R&D投資をどこまで入れるのか、その結果どのように変化するのか、これらは大変チャレンジングな課題。新しい依頼事項に応えられるように最大限努力したい。

 

 松井孝治官房副長官 メンバーはどうするのか。

 

 小沢氏 このメンバーでやった方がいいのか、一新した方がいいのか。

 

 植田氏 一度リシャッフルした方が良いとは思う。

 

 松井氏 では、そういうことで。

 

 福山氏 結局、マクロフレームで計算すると、国民負担がマイナスになる。この数値だけを出していくと国民にいいメッセージにならない。われわれの希望もマクロフレームに織り込んで、たとえ「夢」と言われようとも、メッセージを出していく。次の検討では、前向きな話をきっちり入れていくべき。

 

 小沢氏 中間とりまとめの発表の仕方はこのあと考えるとして、新しい試算については、2月ごろに何らかの結果を出すということでよいか(→了解)

 

 松井氏 本日は植田先生からタスクフォースの中間とりまとめをいただいた。発表の仕方は、小沢事務局長に決めていただくこととする。

 

 菅直人副総理・国家戦略担当相 試算がなかったことにするのは難しい。むしろ、これからイノベーションや新産業について入れ込んだ新しい土俵で、試算するように依頼したということを強調して言おう。

 

 …このタスクフォースの会合終了後、小沢環境相は記者団に次のように語りました。

 

 「今回で一区切りをつけてもらい、新たなもう一つの分析を、もっとポジティブな取り組みをしたときにどうなるのかという分析をしようじゃないかということになり、それについて私と植田先生で相談しながら、今後の方針を決めて、閣僚委員会に提案することになった。私のところでまたもう一回整理をして、発表の仕方を考えながら、きちっと整理して、これは客観性を損なうということではなく、みなさんに誤解がないような説明をしないといけない。次回は、われわれ政権が本当にやりたいと思っているものを仮想的に取り入れたときにどうなるか、そういう試算をしたい。民主党が、鳩山政権がこういうことをやりたいという話を本当に応援してくれるみなさんとやりたい

 

 デ、アルカ。記事は、タスクフォースの議論に加わった研究機関の一人の「政治に迎合するようでは、学者生命にかかわる」という言葉を紹介していますが…。

 

 今朝の日経の世論調査結果では、内閣支持率は68%と高い水準を保っており、「本当に応援してくれるみなさん」はまだまだたくさんいそうです。民主党側はきょう、党首討論や「政治とカネ」をテーマとした衆院予算委員会での集中審議などに応じるよう求める野党側の主張をはね除け、国会を4日間だけの短期間、延長することを決めました。まあ、何がどうあろうと何をどうしようと、国民の一定の支持さえあればけっこう大丈夫なものだという政治の現実を示す一つの貴重な実例が現出しているのだなと感じています。

 

 

 産経新聞は毎日、「鳩山日誌」という題名で鳩山首相の動静や面会者などを報じています。ときの首相がどんな人と会い、どのような内容の話をし、また、どこへ出かけるのかは、その政権のありよう、ひいては日本の進路にも直結する場合があるからです。

 

 で、本日の「鳩山日誌」を見ると、鳩山氏が昨日、午前中に美容室に行って散髪し、幸夫人とともに赤坂のホテルで韓国の俳優、イ・ソジン氏と昼食をとり、午後には赤坂のスーパーで買い物をし、その後、首相公邸で菅直人副総理・国家戦略担当相の訪問を受けたことが分かります。

 

 それで私は一応、首相官邸キャップという立場なので、菅氏が公邸に来た際には担当記者から携帯メールで連絡を受けました。当初は、訪問理由は不明とのことだったので、「わざわざ土曜日に首相のプライベートスペースである公邸を訪れるのだから、現在の円高、株安に対処するための経済成長戦略の打ち合わせだろうか」「事業仕分け結果をどう予算に反映させるかの協議だろうか」などと思いをめぐらし、報告を待っていました。

 

 そうして菅氏は1時間あまり、公邸に入って出てきたわけですが、「何の話をされたのか」という記者の問いかけに対する返事は、次のようなものでした。

 

 「(鳩山氏の死んだ愛犬の)アルフィー君の弔問だ

 

 …いやまあ、実際は必ずしもそれだけではないでしょうし、記者を煙に巻いたのかもしれませんが、なんだかなあ。一国の総理のもとを休日に副総理が訪れ、どうしたのかと問いただした記者への返答がこれですから、本当にもうどうしたものかという気にもなります…。

 

ちょっと取材メモを見落としていてさっき気づいたのですが、鳩山首相は昨日、都内の都道府県会館で開かれた全国知事会でのあいさつで、気になることを述べていました。以下、話の文脈を理解するために前後の段落も含めて掲載しますが、鳩山氏は確かに「国というものがなんだかよく分からない」と語っています。

 

…うーん、大上段に構えて国とは何かと聞かれると、咄嗟に答えられないことはあるでしょうが、一国の首相が公の場で知事たちに「なんだかよく分からない」と言っているのには、やはり当惑させられます。だって、この人はかつて永住外国人への地方参政権付与を主張した際に「『日本列島は日本人の所有物と思うな』などという発想は、日本人の意識を開くことであり、死を覚悟せねば成就は不可能であろう。私はそこまで日本を開かない限り、日本自体の延命はないと信じる」(平成14年8月8日付夕刊フジコラム)という哲学を披露していました。

 

ここまで言い切っておきながら、その自分が開こうとしている国について「なんだか分からない」はないだろうと、そう感じる次第です。こういう人だから、普天間飛行場移設問題をはじめ国家の安全保障の重要性などがどうしても理解できないのかとも。政治家それぞれの国家観の違いや何に優先順位を置くかに差異があってもかまわないとは思いますが、鳩山氏の場合、「一体何を言っているのだろう。自分の言っていることが分かってしゃべっているのか」と不思議に思うことしきりです。

 

まあ、とにかくその関連部分を紹介します。

 

《私たちは、ただ政権交代がしたくて政権交代をしたわけではありません。やはり、この国の形を根本から変えなきゃいかん、そんな思いで行動して参った所でございます。私はいろんなご批判もいただいておりますが、友愛社会というものを実現をしたい、そのように思っております。それは、考え方などがいろいろ違っていても、それぞれむしろ違いというものを尊敬をしながら、違いを認め合う、そしてお互いに補い合う、そんな社会を実現をして参りたいと、そのように思っております。

  ということは今までのように、何でもかんでもいわゆる、国というものがあって、国というものがなんだかよく分からないんですが、国というものが力を持って、何でもがんじがらめで、地域を縛ってしまう、そういうやり方は一切やらないと。むしろそのように達している所でございます。それを私たちは地方分権というよりも、むしろ地方に権利を分け与えるという地方分権ではなくて、地域にこそ主権がある、地域主権の国造りに抜本的に変えて参りたいとそのように思っておりまして、だからこそ私はあえて所信表明の中で、国の政治の役割というものはさほど、むしろ大きくないものなのかもしれない。いやむしろその方が望ましいのではないかと、そのような事まで、あえてその時に申し上げたのでございます。

  地域主権、すなわち、地域のことは基本的に地域でかなえられるように、そのようにさせていただくというか、国というものはむしろ、ある意味で、皆さん方が地域でなさることをそれとなく、必要に応じて、それとなく支えることができる、そんな国と地域のあり方に変えていきたい、そのように思っておりまして、それを私たちはいわゆる補完性の原理に基づいて、国と地域のあり方を、むしろ地域があって国があるというような考えに基づいて、行動を強めて参りたいと、そのように感じている所でございまして、私たちは、地域主権を1丁目1番地の思いのように、歩きながらこれから新たな国と地域のあり方というものを、模索をして実現をして参りたいと思っております。》

 

 私もおおむね地方分権には賛成なのですが、鳩山氏のように「国というものがなんだか分からない」ままで、地方主権を主張されると、ちょっと居心地の悪さを覚えてしまいます。政治資金にかかわる法を超越したような奔放な言動とあいまって、日々なんだかなあと頭を悩まされています。

 

     

 

 読売新聞朝刊…。

 

     

 

 毎日新聞朝刊…。

 

     

 

 朝日新聞夕刊…。

 

     

 

 日経新聞夕刊…。

 

     

 

 東京新聞夕刊…。

 

 これだけ政治資金にルーズな政治家も珍しいと思いますが、それにも増して「すごいなあ」と感心するのは、ここまで書かれて内閣支持率がまだ6割という高い水準を維持していることです。恵まれた家庭に育ったお金持ちにはお金持ちなりの苦労があるものだと、あるいは同情でもされているのでしょうか。

 

 いやすごい人だな、ホント。心からたいしたものだと敬服します。遵法精神も何もあったものではないし、またそれを国民に納得させるとは…。本当に宇宙人なのかもしれません。

 

 ※追記 今夜の首相ぶらさがりインタビューで関連の質問があったので、ついでに掲載しておきます。なんか情けないような…

 

記者 総理の資金管理団体の偽装献金問題で、お母様から数千万円の資金提供があったことが新たに判明したということですが、総理は以前委員会答弁の中で、家族からの資金提供について「無いと信じている」とおっしゃっていました。また、以前秘書の問題は政治家自身にも責任があるとおっしゃっていましたが、このことについてどうお考えでしょうか。

 

鳩山氏 確かに私もそう信じておりましたし、今でもそう信じたいと思っています。現実ですね、そういう報道がなされていることを大変驚いています。全く私の知らない所で、何が行われていたのか。私自身今は、これは事実かどうかということも含めて大変驚いていると。

いずれにしても、地検が今捜査をしているところですから、その地検が正確な情報というものを導いてくださるものだと思っておりますから、いろんな情報が錯綜しておるものですから、どこに真実があるか見えないところもあって、私自身大変驚いています。まずは地検の捜査が進んでですね、真実がひとつに明らかになっていくことを強く願っています。

 

記者 総理、先ほどのお母様からの献金の件に関して、事実かどうかも含めて驚いていらっしゃるというお話だったんですけれども、これは、要するにまだ事実確認が全くできていない、されていない、そういうことでしょうか。

 

鳩山氏 恐縮ですけれども、事実確認はできておりません。

 

 

 今朝の産経は1面トップで「水谷建設 小沢氏側に接待攻勢 ダム受注後 元会長『計1億渡す』」という記事を掲載していました。この件は今後、どういう展開を見せるのか情報のない私にはさっぱり分かりませんが、いろいろと問題の根深さは紙面からも伝わってきますね。

 

 で、こういう話が出るたびに、小沢氏はいったい集めたカネを何に使っているのか、という疑問が膨らみます(確かに不動産はたくさん買っていますが)。師匠の田中角栄元首相は気前よく自分で集めたカネをあちこちで配っていたことで知られますが、小沢氏の場合は、分配するのはあくまでコントロール下にある党のカネであって、自分のカネではないと言われていますし。逆に周囲からは「小沢さんは自分のカネにはとことん細かい」という類の話ばかり聞こえてきます。

 

 そんなことをつらつら考えていて、以前、ある信頼できる人物(A氏)から聞いた話をふと思い出しました。政官界では広く知られている小沢氏のギャンブル好き(特にカジノ)、英国好きにまつわる話で、実名での会話でしたが、まあ、差し障りがあるし、確実に裏がとれる話でもないので匿名とします。

 

 もう十数年前のこと、A氏のもとに近く小沢氏が訪英するという情報がもたらされました。そこでA氏は、部下にあたるロンドン駐在員B氏に「小沢さんがそっちに行くそうだ。彼はかなりのカジノ好きだから、事前によさそうな場所を二、三カ所調べておいて案内したらどうか」と伝えておいたそうです。

 

 B氏はA氏の言葉をきちんと実行したらしく、しばらく後にA氏のところに「小沢さんを案内したら、本当に喜んくれました」と弾んだ声で報告があったそうです(小沢氏は勝ったということでしょうか)。A氏は「よかったね」とそれでその話は忘れていたそうですが…。

 

 A氏が驚いたことに、B氏は次の衆院選で、小沢氏の引きで立候補しました。現在は民主党の中堅議員となっていて、ときどきテレビでもその姿を見ます。私も議員としてのB氏とは以前に少し話したことがあり、A氏の話を聞いて、へえ、そういうきっかけでリクルートされたのかと改めて人の縁の不思議さに思いを致しました。まあ、一時は小沢氏にかわいがられたB氏も、最近は少し疎まれているとも聞きますが。

 

 これまた簡単に確認できる話ではありませんが、永田町ではよく「小沢氏はときどき韓国・済州島のカジノに行っている。VIPルームで遊んでいるらしい」という話もいろんな人から異口同音に聞きます。ラスベガスで大散財したハマコー議員のようなことにはなっていないのだろうと思いますが、どうなんでしょうね。

 

 かくいう私も以前はギャンブル好き(特に麻雀)で、分不相応なカネを遣い、窮地に陥ったことも二度や三度ではきかないので、他人のことを言えた義理ではないのですが。本日のエントリは、あくまで記事からの連想の中で思い出したことを紹介するものですが、A氏とB氏は当然実在しますし、名前を聞けば「ああ、あの人か」と思い当たる人も少なくないと思います(いや、当てようとはしないでくださいね)。

 

 

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