2009年12月

 

 今朝の産経社会面に、民主党の小沢一郎幹事長の元秘書で、小沢氏の資金管理団体の会計事務担当だった衆院議員の石川知裕氏が、地元で報道陣に対し「やましいところはない」と語ったという記事が載っていました。この石川氏に関して、今朝の日経は1面で「石川議員 在宅処分へ」との見出しで、「特捜部は来年1月の通常国会までに、在宅のまま刑事処分を出す方向で検討」と報じていましたが…。

 

 石川氏といえば、ご存じの通り、先の衆院選の北海道11区で故中川昭一財務相を破り、当選してきた議員です。どうしてそんな分かり切ったことを今さら書くかというと、昨日、会社に中川家から香典返しとして、下の写真のような図書カードが郵送されてきたので、連想せずにはいられなかったのです。私は本代にはいつも困っているのですが、このカードはちょっと使えないですね。

 

      

 

 また、今朝の産経政治面の「平成21年 鬼籍に入った政治家」の欄にも、当然のことながら中川氏の名前がありました。「北朝鮮による日本人拉致問題や歴史教科書問題などで活躍した」などと、他の政治家と一緒に簡単な記述があるだけでしたが…。この政治家のことを決して忘れてはいけないと改めて思い直しました。

 

 今年を振り返ると、言うまでもなく政権交代があった激動の年であり、「政治の年」でしたが、意外なほど拉致問題にスポットが当たることは少なかったように思います。やはり、中川氏の死去もあり、政治のメインプレイヤーから拉致問題を重視し、積極的に取り組み、あるいは発信する人が減ってしまったということかもしれません。

 

 そこで本日は、少し古い話なのですが、昨年9月16日から19日まで、福田内閣の中山恭子拉致問題担当相が訪米して米国の関係者と拉致問題や日米関係について意見交換した際のリポートの一部を紹介しようと思います。手に入れたのはしばらく前なのですが、取り上げる機会がないまま今に至ってしまいました。ブッシュ政権時代の話なので、オバマ政権とは多少の温度差はあるでしょうが、米側のある時期の北朝鮮に対する見方はある程度分かると思います。

 

    アーミテージ元国務副長官 「金正日の健康状態の悪化により、拉致問題が進むのが遅くなるのではないか。マケイン候補、オバマ候補にはそれぞれ良いアドバイザーがおり、日米関係という観点からは両氏のいずれが大統領になっても変わらない。給油支援の件は日本に努力してもらっている。是非、継続してもらいたい」

 

    ハムレ戦略国際問題研究所(CSIS)所長 「米国は核問題に集中し過ぎてきた。日本の拉致問題を注視し、もっと考えるように転換していく必要がある。拉致被害者の対象が際限なく続くのには抵抗があり、解決の定義がないと米国としてもやりようがない」

 

    ブラウン元CIA東アジア部長 「金正日が8月14日に脳梗塞で倒れたことは間違いない。金正日は決して核を放棄しないだろう。北朝鮮にとって核は国の基盤である。6カ国協議はすでに終わった。6カ国協議に何の成果も期待してはいけない。金正日は6カ国協議でとれるものは全て取った。経済制裁は北朝鮮には極めて有効だ。米国は、マカオのBDA(バンコデルタアジア、北朝鮮と関係の深いマカオの銀行)に対する制裁を実施したが、効果は絶大だった。拉致被害者の『再調査』など全くナンセンスだ。北朝鮮政府は、拉致被害者の実態を全て承知している。拉致被害者の生存を前提として交渉を行うのは当然だ。拉致被害者は価値があり、北朝鮮が価値のあるものを捨てることは考えられない。金正日の病状を考えた場合、北朝鮮の政策決定者としてのキー・パーソンは内妻のキム・オクと、張成沢だと思う」

 

    グリーンCSIS上級顧問 「小沢政権だと、テロ対策特別措置法延長、在日米軍駐留経費問題が心配だ。次期大統領候補の対北朝鮮政策に関し、マケイン候補は、拉致問題は重要であり、また、テロ支援国家指定は解除しないとの考え方を持っている一方で、オバマ候補は、現時点で対北朝鮮政策が明らかでなく、また、同候補のアドバイザーは対北朝鮮融和派と強行派に割れている」

 

…率直にいって、鳩山政権の拉致問題の対応方針はまだよく見えてきません。安倍政権時代に拉致対策本部が決定し、その後も福田、麻生両政権で引き継がれてきた①すべての拉致被害者の即時帰国を強く求める②厳格な法執行を引き続き実施③さらなる制裁措置を検討――など6項目の対応方針については踏襲しない考えをにじませている一方で、新たな方針は示していないからです。

 

 自民党政権は小泉内閣以降、「対話と圧力」という言葉を用いてきましたが、鳩山由紀夫首相は10月の所信表明演説で「拉致問題については、考え得るあらゆる方策を使う」というにとどめ、「圧力」という言葉は使いませんでした。この状態は、よく言えば柔軟ですが、下手をすると北朝鮮の仕掛けに原則なく簡単に嵌ってしまう恐れもあると考えます。

 

 しかし、北朝鮮の実態が上記のリポートでブラウン氏が指摘するようなものであるとすれば、自ずと日本のとるべき道は明らかではないかと思うのです。来年は、もっと拉致問題が関心を集め、解決への方途が示される年であってほしいと心から願います。

 

 

  なんか最近、民主党の小沢一郎幹事長の政治資金問題をめぐって毎日新聞さんをはじめ新聞各紙が頑張っているなあと感じるので、少し写真で紹介しようと思います。ネットでみるのとは、また印象が違うでしょうから。それだけ東京地検の攻勢が強まっているということでしょうか。

 

     26日付毎日朝刊、1面

     

  《04年に小沢氏側のプール金とみられる約5億円がいったん5つの政治団体に分散して移された後、わずか1~2日後に陸山会の口座に全額集約されていたことが関係者の話で分かった》

 

      26日付毎日朝刊、社会面トップ

     

  《この資金移動は陸山会が約3億4000万円で東京都世田谷区の土地を購入した直前に行われており、表に出していなかった資金が土地購入に充てられたとすれば、一種の「資金洗浄」だった疑いも浮かぶ》

 

      27日付毎日朝刊1面トップ

     

  《小沢一郎民主党幹事長が率いた2政党「新生党」と「自由党」を解党した際、党に残った資金の大半に当たる計22億円余を、自分の運営する政治団体に移して支配下に置いていたことが分かった》

 《06~07年には農水省OBの小沢氏の義兄に対し「組織維持費」の名目で計495万円の支出もあった》

 

     27日付毎日朝刊第2社会面

     

  《「改革国民会議の資金について、小沢議員から会計責任者に指示して、随時、小沢議員の関連政治団体へ資金移動がなされており、改革国民会議も小沢議員の財布の一つに過ぎなかった」。18日の初公判で賢察側は、99~01年に小沢氏の事務所で経理事務を担当した元秘書がそう供述した調書を読み上げた》

 

      27日付朝日朝刊1面

     

  《同会(陸山会)は、土地代金の原資について、小沢氏が金融機関から融資を受けた4億円をさらに同会が借りたと説明したが、この融資は代金振り込みの後だったという》

 

     27日付読売朝刊1面

     

  《「小沢氏は『選挙とカネは自分がやる』と言い、政治資金には触らせなかった」。小沢党首の下で自由党幹事長を務めた、野田毅・元自治相(自民党)はこう振り返る》

 

     28日付朝日朝刊第1社会面

     

  《取引相手の不動産会社によると、小沢氏側は「(土地取引の)登記の時期は自由にしていいか」と話したとされる。登記簿上、売買は05年1月7日だ。意識的に収支報告書の記載をずらした疑いはぬぐえない》

 

      28日付日経朝刊、第1社会面

     

  《土地の購入前、陸山会の銀行口座に、小沢氏の関連政治団体「小沢一郎政経研究会」や同氏が代表を務める「民主党岩手県第4区総支部」からそれぞれ数千万円が移された。同じころ現金振り込みでも約4億円の入金があったという。陸山会が土地の代金を不動産会社に支払った後には、逆に同会から関連政治団体に数千万円が振り込まれるなどしていたという。こうした資金の出入りは同会の政治資金収支報告書に記載していなかった》

 

     28日付読売朝刊1面トップ

     

  《関係者によると、同会は購入に先立ち、簿外の資金4億円を現金で用意。小沢氏の複数の関連政治団体の口座に一度入金してから陸山会の口座に移したり、陸山会の口座に直接入金したりして、取引の1~2日前に4億円を集めた》

 

 

29日付毎日夕刊、第1社会面     

《虚偽記載の告発容疑となっている「土地購入日の先送り」は、入念な準備のうえ行われたことが分かった。陸山会は先送りのため固定資産税を負担し、先送りした購入日の直前、原資に見える資金を関係政治団体から受領していた。土地購入を巡っては実際の購入日直前に小沢氏側のプール金とみられる資金が関係5団体に分散後、陸山会に集約されたことが判明しており、購入日先送りはこうした不透明な資金移動を隠す意図があった疑いもある》

 

 …宮内庁長官や記者への八つ当たりにみられるように、小沢氏は沸点が低く、すぐ「プッツン」(小沢氏自身の言葉)する人ですが、そういう人はえてして気が小さいとされますね。けっこう、戦々恐々としているのが実際なのかもしれません。身から出たなんとやらでしょうが。

 

 きょうは12月27日、政界が激動した今年ももうあとわずかですね。来年は果たしてどんな年になるのでしょうか。鬼が笑うことを言っても仕方ありませんが、今年よりいい年になることを心から祈ります。景気はそう簡単には回復しないでしょうが、せめてもっと、なされるべきことが粛々となされ、とるべき責任がきちんととられる日本社会であってほしいと。

 

 というわけで、というほどの脈絡はありませんが、本日は政界の闇将軍、民主党の小沢一郎幹事長の「政治とカネ」の問題をめぐる2007年以降の過去エントリを掲載します(全20回のシリーズ「小沢一郎氏の初当選からの言動を振り返る」を除く)。

 

  ふだんからフォルダにまとめておけばよいのでしょうが、操作を覚えるのが面倒でいまだに使いこなせないもので、おさらいの意味を込めてのものです。最近では、「鳩山首相に対しては呆れ、小沢氏に対しては怒っている」(司法記者)とされる東京地検の動きも慌ただしくなってきた感がありますしね。

 

    07年

    1/13 民主党・小沢代表の事務所費について思うこと(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/100750/

    1/15 事務所費問題・総務省は「要は国民がどう思うかということ」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/101875/

    1/23 小沢氏政治団体の10億超の不動産取得に対する反応(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/106052/

    1/28 資金管理団体が土地を買っているのは小沢氏だけ!?(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/108379/

    2/1 語るに落ちている!?民主党の小沢一郎代表(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/110684/

    2/2 資金管理団体の不動産取得に関する自民党の議論(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/111252/

    2/4 いかにも小沢氏らしい日本論と菅氏の指摘(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/112196/

    2/11 狭まる小沢氏包囲網と勝負に出てきた中川秀直氏(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/115800/

    2/14 ネットで「小沢」「不動産」などと検索してみました(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/117359/

    2/21 「小沢不動産」に関する各紙の報じ方と確認書(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/121253/

    2/28 小沢氏の資金管理団体は家賃2400万円も計上(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/125183/

    5/25 自民・松浪議員への懲罰動議と小沢不動産について(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/179167/

    5/30 松岡農水相の死と小沢不動産の本丸(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/183043/

    7/17 朝日の「政治とカネ」社説と領収書へのこだわり(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/234101/

    9/10 故・松岡農水相による政治とカネ追及と関連写真(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/295920/

    9/16 政治資金収支報告書をみて考えたこと、分からないこと(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/301387/

    10/9 小沢不動産問題・ニュースはつくられる!?(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/334354/

    10/28 WiLL12月号でイザ!と私のエントリが引用されました(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/365864/

    11/7 政治とカネの問題は、何もなかったかのように消えていくのか(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/377741/

 

    08年

    5/31 小沢氏が鳩山氏に「君の財産出せ」と言っている件について(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/592812/

    6/29 東京地裁、高裁での小沢氏「連敗」と不動産問題(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/625532/

    9/13 平成19年政治資金収支報告書の小沢氏関連記事について(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/715387/

    9/26 小沢不動産・週刊現代記事を後追いしてみる(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/731962/

 

    09年

    1/9 国会で追及された小沢不動産売却問題についての補足(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/866368/

    1/19 西松建設のダミー政治団体による脱法的献金について(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/878870/

    3/5 小沢氏と「一蓮托生」を選んだ民主党幹部らの発言について(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/940534/

    3/26 「謎」の鳩山幹事長発言と東京地検の言い分(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/967907/

    3/28 民主党・小沢代表が党所属議員に送った「回答」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/970383/

    4/13 小沢不動産問題に神経質になっている民主党(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/993072/

    4/24 自民・西田議員の民主・小沢代表への公開質問状(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1007979/

    7/17 2大政党どころか、民主党の1党制(小沢院政)に…?

http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1135397/

    9/1 自民は当然ですが民主も前途多難だとみています(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1202472/

    11/9 自民・西田氏による鳩山・小沢政治資金問題追及(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1312142/

    12/10 以前指摘した藤井財務相の件が文藝春秋に掲載されました(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1361446/

 

…来年は参院選の年ですね。国民にはまた日本の将来を決める選択の機会が訪れるわけですが、ちゃんと選択肢はあるでしょうか。また、いま、政界のメインプレーヤーとして栄耀栄華を味わい、権力の絶頂にいる人たちは、どうなっていくでしょうか。なんだかなあと思うことも度々ですが、とりあえず、じっくりと注視していきたいと思います。

 

 

 昨日は鳩山由紀夫首相が自身の偽装献金事件をめぐり、謝罪と釈明の記者会見を行いました。首相としてでも民主党代表としてでもなく、「一衆院議員として」の行為だとして、首相官邸や民主党本部ではなく、わざわざホテルを会見場にするなど、姑息かつカネをかけたやり方をするものだと感じました。「公人」である首相としての立場で会見すると、即座に進退に問われかねないので、私的行為であることを強調したのですが、こういうやり方が通用する、ごまかせると考える甘さがどうにも鼻につくのです。

 

 で、この事件の問題点や疑問点は、産経も含め各紙が紙面で書き尽くしている感があるので、私がここで付け加えることはあまりありません。ですので、本日は、在京各紙の社説(産経の場合は「主張」)が、どう書いているかを少し備忘録代わりに記しておこうと思いました。多少の濃淡はあれ、各紙とも厳しい論調です。当然ですが。

 

    産経 見出し「首相の政治責任は明白 『脱税』の疑い徹底解明せよ」

 《最大の問題は、母親からの約12億6千万円にも及ぶ資金提供である。首相は6億円を超える贈与税を払う意向を示したが、これは修正申告して済む問題ではない。国政の最高責任者が、国民の義務である納税を怠り、発覚しなかったら知らん顔を通す-という脱法行為が問われているのである

 《会見では「今回の件は私腹を肥やしたとか、不正な利得を受けたことはない」とした。過去の発言は自分には該当しないと釈明したのは、あまりにもご都合主義ではないか

 《身内からのカネなら悪質でないとの考えがあるのだとすれば、大きな誤りだ。衆参両院が定めた政治倫理綱領でも、政治不信を招く公私混同を断つことが重要課題に挙げられている

 

    読売 見出し「鳩山首相の政治責任は重大だ」

 《首相は記者会見で、母親からの巨額の資金提供について「全く承知していなかった」と改めて強調した。首相がいかに裕福な家庭環境で育ったとしても、この説明は信じがたい

 《(「故人献金」問題が発覚した6月)当時は、衆院選が迫っていた。自らの保身と、選挙への悪影響を避けるため、母親からの資金提供を隠していたのなら、国民に対する背信行為である

 《資金提供が発覚しなかったら、6億円以上の納税を逃れていたことになる。こうした行為がまかり通れば、まじめに納税しようとする国民の気持ちを踏みにじり、申告納税制度の根幹が揺らぎかねない

 

    朝日 見出し「『続投』で背負った十字架」

 《若手議員時代から政治改革や政治資金の透明化を唱えてきたのは鳩山首相自身である。本人は不起訴であっても、国民の信頼を裏切ったことについて、政治家としての責任は極めて重い

 《動機はどうあれ、長年うそを書いてきたことは、政治家とカネの関係を国民の監視の下に置くために作られた政治資金規正法を空洞化するものだ

 《提供された資金を長年にわたって申告していなかったことは、納税者からみると、脱税に類する行為とみられても仕方がない

 

    毎日 見出し「説得力欠いた鳩山会見」

 《首相は実母からの巨額な資金提供も再度「知らなかった」と釈明したが、「カネの話をすることがなかった」という裕福な家庭だったからというだけでは、「首相に国民生活の苦しさが分かるだろうか」と疑問を感じる人が多いだろう

 《巨額資金を何に使っていたかも疑問が残る。会見では政治活動だけでなく、プライベートな支出までもすべて秘書任せだったと認めたが、そこには相当な公私混同があったのではないか

 《事件が発覚しなければ、結果的に税金逃れになっていた可能性がある。納税者意識の低さを指摘されても仕方がない

 

    日経 見出し「元秘書起訴で首相の責任は極めて重い」

 《現職の首相が、事情聴取を受けたのにも等しい上申書提出に追い込まれたこと自体、極めて異例で、政治責任は免れない》

 《実母からの巨額な資金提供を知らなかったと説明されて、有権者は信じるだろうか。贈与税を払えば済むという話でもない

 《今回の事件は首相の資質への疑念を強め、指導者としての信頼感を失墜させかねないものだ》

 

    東京 見出し「『知らぬ』で疑惑消えず」

 《現職首相が嫌疑を持たれたこと自体が、憲政史上でも異例だ。その重大さを自覚してもらいたい》

 《それほど巨額な資金が渡っているのに、長年、納税していなかったのはなぜか。「脱税ではないか」という声がわき出ても当然だろう》

 《民主党のトップ二人が「政治とカネ」で泥にまみれていては、民心が政権交代からますます離れる》

 

 …日経は「首相としての資質への疑念」について書いていますが、今日のような展開となってくることは、衆院選前から分かっていたことでした。私も8月11日付のエントリ「鳩山由紀夫氏は首相が務まるのかという疑問」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1166114/)で、「大丈夫か?」と指摘しましたが、事態はなるようになってきたというところでしょうか。

 

 鳩山氏の資質というか、「軽さ」については、こんなエピソードを聞いたことがあります。昨年3月、国会は日銀総裁人事をめぐり紛糾していたころのことです。当時の福田内閣は新総裁に武藤敏郎副総裁(元財務次官)を起用する考えで、実は民主党もこれを内諾していました。当時、町村信孝官房長官は鳩山由紀夫幹事長から「武藤さんで決まりだ。クビをかけてもいい」と言われていたそうです。

 

 ところが、これが「政局が第一」でとにかく政府・自民党に何でも反対したい小沢一郎代表の意向でひっくり返り、民主党は前言を翻して武藤氏の総裁就任への反対を決めました。町村氏が鳩山氏に「どうなっているんだ」と抗議すると、鳩山氏はなんと「ケセラセラです」と笑って答えたということです。鳩山氏は自分の言葉に責任を持たない、というよりも以前と違うことを言うことについてまずいとも悪いとも思っていないという話は枚挙にいとまがないのです。

 

 というわけで、私は昨日の記者会見(原稿処理に負われ、残念ながら現場にはいけませんでした)での鳩山氏の神妙な面持ちにも反省の言葉にも、極めてしらけた気持ちで接した次第です。鳩山氏をよく知る人の多くは「本当にいい人だ」というのですが、それっと政治家、特に首相の資質としては別にほめられた話ではないでしょうし。

 

 鳩山氏は今朝、記者団にこう語りました。

 

 「確かに鳩山の家は恵まれていたと、それは事実だと思います。ただ私は、むしろそういう政治ではいけないという思いのもとで、政治改革に炎を燃やしてきた」

 

 何のことやら…。

 

 

 本日、天皇陛下の76歳の誕生日を迎えられました。これにあたって、陛下が文書で公表された「ご感想」全文が今朝の産経に掲載されていました。私は以前、宮内庁担当だったこともあり、強い関心を持って読んだのですが、中でも、次の部分がとても重要であるように感じました。決して直接的・明示的には書かれていませんが、含意は伝わってきますね。

 

 《昨年は十二月初めに体調を崩し、静養期間の間に誕生日を迎えました。多くの人々が心配してくれたことを感謝しています。そのようなことから、今年は日程や行事の内容を少し軽くするようにして過ごしてきました。昨年十二月の体調よりは良くなっていますので、来年も今年のように過ごし、皆に心配をかけないようにしたいと思っています。》

 

 今朝の産経「主張」欄が「天皇の意忖度は不適切だ」と書いているように、あまり勝手に陛下のお考えを解釈するのはよくないと思うので、ここまでにしておきます。そして、しつこいかとも思ったのですが、とても重要な内容であると思うので、改めて17日に開かれた自民党の「天皇陛下の政治利用検証緊急特命委員会」について紹介します。これは、17日のエントリ「天皇陛下の『政治利用』に関する自民党の検証会」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1371841/)で記した16日の会合の翌日に、その続きとして開催されていたものです。合わせて読んでいただくとよく分かると思います。

 

 この日は、大原康男國學院大教授と百地章日大教授が招かれ、それぞれの立場から天皇陛下と中国の習近平副主席との会見、それに対する民主党の小沢一郎幹事長の発言について論じています(議員とのやりとりは、あまりに長文になるので省略しました)。とても分かりやすいです。

 

大原氏 専門的な法律問題は百地章氏から。全般的な事柄について私見を申し上げる。あのような異例の強硬な申し入れを宮内庁長官が受け入れ、このような事態になり、小沢一郎民主党幹事長の記者会見が波紋を広げている。この問題は法的、政治的にどう問題を捉えて整理していくかが大事だ。言うまでもないが、鳩山首相が今回の措置は諸外国と日本の関係を好転させるための話であり、政治利用という言葉は当たらないと言っているが、私なりに言わせれば、今まで他国に対してルールを守るよう要求しながら中国の無理強いだけを受け入れるという極めて卑屈な政治的配慮があった。そのことによって習副主席に天皇会見がなされた。

これは、胡錦涛主席の有力後継者と言われながらもまだ確立していない人に天皇会見によってある種の有利な実績を与えることになるという政治的効果を与えることも間違いがない。その意味で、政治利用と十分に言える。その上、小沢幹事長の動きを見ていると、ちょうど小沢訪中団が中国に行っているさなかの話であり、胡錦涛主席・小沢会談と天皇・習副主席の会談がセットになって、それを世界にアピールしようという極めて政治的なセレモニーのような気がする。ますますもってこれは両国の首脳が、政治的意図でやったことはほぼ間違いなく、否定することはできない。

 元々、皇室外交と言われるものは、現実の国際政治の次元を超えたところでなされる友好と親善だ。宮内庁は外国交際という言葉を使い、外交とは違う政治的ニュアンスを含んだ言葉は使わずに来ている。そういうことがあるだけに、今回の宮内庁としてのはっきりした主張が出されたと思う。

 小沢幹事長の記者会見はいくつも問題があるが、まず1つは、1カ月ルールを法令ではないというようなことを断言しているが、宮内庁法第2条に宮内庁の所掌事務がある。その第9号には「交際に関すること」とある。当然、外国交際を包含している。従って外国交際に関して宮内庁がそれなりのルール作りをする。宮内庁の式部官長から外務省の儀典長に出している正式の文書だ。まさしくこれを宮内庁令などに比べると法令だ。法令なのか、ということを問いただすこと自体が極めて不明な頭の持ち主ではないかと思った。

本当に国事行為と思い、内閣の助言と承認で何でもできるんだとするならば、これは内閣の助言と承認であって、総理や官房長官の助言と承認ではない。つまり、閣議にかけなければそう言うことは言えないが、閣議にかけた形跡がない。仮に国事行為と言っても、それですら外れている。

 政権交代やったんだから何でもできる。それをまた天皇にも強要するような興奮が見られるがそんなことはない。元々、象徴天皇の行為は不偏不党の立場で国民に対しても外国に対しても公明正大に臨む。これが、象徴である天皇および準象徴である皇族方の立場だ。そのことが頭にあれば政権交代で何もかもができるという発想が出てくるわけがない。

 結局、宮内庁長官にああいうことを言うなら辞表を出してくれと、行政の責任者である内閣総理大臣の指揮命令に従わなければ、と言っているが、しかし、宮内庁長官というポストは各省の次官や各省の外局の長官と同じではない。重要なのは、宮内庁長官は認証官だ。認証官は人事院人事官、会計検査院検査官、公正取引委員会委員長、最高裁判事、高裁長官、検事総長、次長検事、高検の検事長などと同じ格だ。ということは、人事院や公取は行政委員会と呼ばれており、人事権は政府にあるが業務は独立して行う。検察官も最終的な法務大臣の指揮下にあるが指揮権発動は極めて異例なことであり、検察官が独立性を持ってやらなければ、司法の独立性は担保できない。宮内庁長官がどうして認証官になったか分からないが、それと並ぶのなら、宮内庁は内閣府の外局になっており内閣総理大臣の管理下にあるとは言え、各省の次官などと同じではない。他の認証官と同じように皇室の事務を行うという特別な役所であって、そこにはある程度の独立性を持ちながら業務にいそしまねばならないということが含まれているので、政権交代が万能だと言うこと自体、皇室の有り様をまったく理解していないと感じる。

 これまで皇室の外国交際が政治利用と言われた例をいくつか。1つはニクソン政権、田中政権末期にご訪米計画が昭和48年(※後で49年と訂正)にあった。これはどちらもウォーターゲート事件、金脈問題があったかどうかは忘れたが、両政権の政権末期の政権浮揚だったので、当時の宮内庁長官が猛烈に蹴って国論を二分するようなときにこういうことをやってはならないと見送られた。2つめが平成4年の天皇、皇后のご訪中。これも国論を二分した。残念ながら強行され、危惧はあたった。当時の担当者であった銭基琛外相が回顧録で、天安門事件の孤立から脱却するために西側の包囲網の中で最も弱い日本をターゲットにした、天皇の政治利用であったことを平然と書いている。そのことが今回、反省された形跡がない。昨年の北京五輪への皇太子出席も中国はかなり言ってきた。しかし、チベット争乱、毒ギョーザ等々の中国側の対処の仕方で国内世論が許さなかったから見送られた。4番目が今回。なお、報道によると、2012年には皇太子殿下を招きたいという動きもあると聞く。この問題をうやむやにすると、また日本人は簡単にものを忘れやすい。どう決着して二度と繰り返さないようにするか。民主党政権を徹底的に追及しなければ一過性のことで終わる可能性がある。

もう1つ気になることは、小沢幹事長がご訪韓まで言及している。こういう皇室に対する考えを持っている民主党政権が来年、天皇訪韓を進めればどうなるか。日韓併合100年にあたる。小沢氏は外国人地方参政権を熱心に推進すると言っている。悪夢は外国人地方参政権を手みやげに日韓併合100年をお詫びするという、そういうような形でひょっとしたらご訪韓を進めるかも知れない。そういうことも考え、この問題は一過性の問題ではなく、将来に大きな禍根を残したという意味で真剣に受け止めねばならない。

 

百地氏 憲法学の立場からそもそも国事行為、公的行為がいかなる性格のものなのかということ、小沢発言のどこに問題があるか申し上げる。今回の陛下のご引見は国事行為でなく公的行為である。小沢氏は国事行為であると思いこんでいるだが、新聞各紙も報道済み。共産党の志位委員長も批判している。

天皇の行為の中には国事行為と公的行為と私的行為の3つがある。公的行為は象徴行為とも言われる。国事行為の中には大使、公使の接受が7条9号にあるが、今回の会見は当たらない。ます、大使、公使ではない。そして接受ではない。接受とは、国際法上、事実行為としての接遇や引見ではなく、外交使節の信任状の奉呈を受けることだと理解されている。もし大使、公使の接受であるなら内閣の助言、承認が必要。もし閣議決定がなければ憲法違反になる。ちなみに、信任状の正本を奉呈されるのが陛下、副本が内閣に提出される。陛下に信任状を提出することで外交官としての活動が始まる。

 今回の会見は小沢氏が平野博文官房長官に要請したとの報道があるとの質問に対し、小沢氏は「天皇の国事行為は国民の代表である内閣の助言と承認で行う」と自ら要請したことは否定した上で、「内閣官房長官からの要請で行われたのに政治利用ということになれば、国事行為はすべて政治利用になる」という言い方をしている。これも非常におかしな話だ。天皇の国事行為はそもそも非政治的なものであり、中立、公平性が必要だ。天皇は国民統合の象徴なので、国事行為についても天皇自身の政治的中立性、公平性が要求される。その意味で非政治的なものだ。この点、憲法4条1項をもって、学説は天皇は政治に関与しないと通説を述べている。しかし、従来の政府見解は必ずしもそうではない。天皇の国事行為の中には国政上の権能もある。例えば衆院の解散だ。だからこの条文は天皇は国事に関する行為のみを行い、その他の国政上の権能を有しない、の意味であるのが制憲時の憲法解釈。しかしながら、そうなると天皇の国事行為の中には国政上の権能も含まれることになるが、しかしそれはすべて内閣の助言と承認による。天皇は絶対的に内閣の助言と承認に拘束されるので、そこに天皇の意思が介在する余地はない。そういう意味で、政治性がそこで払拭される。これが立憲君主制の所以だ。英国では自らを死刑に処すという文書にも内閣の助言があれば署名しなければならないと言われる。 

 天皇の公的行為だが、小沢氏は「天皇陛下御自身に聞いてみたら」と。「手違いで遅れてかも知れないが会いましょうと必ずおっしゃると思うよ」と述べている。率直に言って不遜きわまる発言であって、まるで天皇自身が自分の思い通りなるかのような思い上がりの発言だと思うが、それは感情の問題。公的行為についてもご引見の相手を、どうするかは宮内庁の責任で決定していると思う。天皇自身だけの判断で会うか会わないかを決めることはないと思うし、色々、報道されているところでも、会見の時、突然、招聘されても「内閣が決めることですから」と返事される。陛下自身が自ら行きたいとか言うことは絶対、ないと思う。

公的行為の限界だが、公的行為は国事行為以外の公的行為、つまり象徴としての地位に基づくもの。国事行為というのは国家機関としての地位に基づいてなされる行為。私人の立場で行うのが私的行為と分類されている。国会開会式でのお言葉や外国への公式訪問、植樹祭等への出席、外国元首との●(聞き取れず)。ちなみに、大嘗祭も皇室の公的行為だという答弁が出ている。限界は、事実行為に限られ、法的効果を伴うものではないと考えられるし、国政に影響のある行為や党派性を持った行為は認められない。宗教的色彩を持ってはいけないとは、学説は主張するが、内閣の答弁の中には出ていないと思う。天皇の公的行為と内閣の補佐の問題だが、公的行為も内閣の直接または間接の補佐と責任において行われなければならない。だいぶ昔は閣議で決めていたが、その後は宮内庁の責任で処理していると聞いている。ただし、現在でも外国訪問の決定は宮内庁の一存では決まらないと思う。あるいは外国からの国賓等は閣議決定を行い、その上で宮内庁がお世話していると聞いている。

 宮内庁の1カ月ルールの問題は、「誰が作ったの」と言っているが、これは自社さ政権の平成7年、さきがけの幹事長の鳩山由紀夫さんだった時に作られたそうだが、確認していない。宮内庁による1カ月ルールの設定だが、これは外国からの賓客の引見について天皇をお守りする立場にある宮内庁が陛下のご多忙さ、健康、さらに陛下は接見にあたっては非常に入念に準備をされるのでそのための準備も必要だ。従って一定のルールが作られたのは当然だ。皇室の政治利用に対しては宮内庁が天皇陛下を守り、政治的中立性と公平性を確保するために、毅然とした態度を取るのは当然だ。

1カ月ルールについて、小沢氏は法律で決まっている訳ではないと主張しているが、新憲法の施行にともない旧皇室令はすべて失効した。それでは困るということで、昭和22年5月3日付けで宮内府文書課長名で依命通知が発せられた。それによれば、従前の規定が廃止されて、新しい規定が存在しない場合には従前通り行う、となっている。従って、●(聞き取れず)の儀式もかつての皇室令に従って行われている。コモン・ローと考えても良いという発言がある。従って法律でないから駄目だという発想そのものが法律万能主義によるものであり、理解できない。例えば、官僚が勝手に作った取りきめとはまったく性質を異にする。社会保険庁が45分働いたら15分休むとか、あんなのこそ政治主導で廃止すべきだ。

 宮内庁の役人がどうだこうだと言うが内閣の一部局だという発言は、宮内庁が国家行政組織法上、内閣府の管轄下にあることから、宮内庁長官が上級官庁である内閣府の統括下にあるのは事実だ。従って一般的に言えば、その命令に従わなければならない。しかし、宮内庁は国民統合象徴たる天皇の補佐機関でもある。従って、国民統合の象徴としての天皇を守るべく上級官庁から一定の独立性が確保されなければならない。皇室の尊厳と天皇の政治的中立性、公平性を確保するためだ。その意味で1カ月ルールを無視した内閣からの政治的要求を拒否したのは当然のことであり、非難される言われはない。

 天皇の行為、行動は、2つの原則に基づく。1つは、憲法、法律その他のルールに従って行動するということ。その際には、必ず内閣、宮内庁長官の補佐、助言等によって行動する、それに必ず従う。これが基本原則だ。これが立憲君主たる所以である。従って、動機さえよければ良いという話ではない。あるいは政治的に非常に重要な価値があるからいいという話ではなく、原則に従う、それが中立性、公平性を保つ所以だ。そう考えると、今回の引見はルール違反である点で問題。もう1つは、宮内庁長官が補佐機関であると考えて良いが、その助言を無視して強行した。まったく許されないことだと考えている。

 

外務官僚 習近平国家副主席の訪日について年初以来、中国側から、国家指導者の一人との表現で訪日の打診がございました。今秋、この秋になりなりまして、当該指導者が習近平副主席であるとの想定で日中外交当局間で訪日について進めてきたものでございます。日本側からは、国家副主席の訪日のマネージがしっかりできるようにと、再三にわたり具体的日程を中国側に対して早期に提出するよう求めてきた経緯でございます。昨日も申し上げましたように、23日に中国側より外務省に対して正式に訪日日程が伝達されました。26日に外務の担当局長の方から宮内庁に往訪し、ご引見の可能性について打診した経緯がございます。

宮内庁よりは1カ月ルール、ご説明があり、これに照らし陛下のご引見の実現は極めて困難であるという反応が示されたという風に承知しております。27日に、改めて宮内庁よりご引見の実現は不可能である、そういう回答がなされております。同日に、私どもの方から、在京中国大使館に対してほぼ不可能であるという風に説明、伝達したところであります。また、30日に改めてご引見の実現は不可能であるという風に伝達してございます。12月3日に、中国外交部、これは北京でございます、外交部の方から我が方大使の方にご引見の実現の要請がなされております。また9日には、これは東京でございます。内閣官房長官の方に在京の中国大使からご引見の実現の要請がございました。12月の10日に、宮内庁から外務省に対し、ご引見が15日午前に実現するとの内報がございました。それを含めまして11日に、外務省より習近平副主席の訪日日程、これは陛下のご引見を含むものでございますが、正式に発表した、そういうような経緯でございます。

 (中曽根)元総理への説明は昨日、申し上げた通り。今のような経緯もご説明し、1カ月ルールもあわせて説明した。元総理から「分かりました」ということだった。それ以外に本当になにもございません。

 

大原氏 一つだけ訂正したい。過去の例としてニクソン・田中角栄によるご訪米計画は昭和48年ではなく49年の間違いでした。これは重要なことで、そういうことで宇佐見長官が拒絶した。それはもう1つは、その秋のことだが、ちょうど第60回の伊勢神宮の式年遷宮の翌年で、神宮をご参拝になるということもあって断ったという理由もある。それと今回、関連致しますのは、この15日という日は実は、皇居において賢所御神楽(かしこどころみかぐら)という宮中祭祀が行われる日なんです。本来ならばこれは大祭でなく小祭なので、大祭ほど決済なされませんが、天皇陛下は心を平静に保たれる。その後、午前中、午後にかけてはあるはず。それをも押し切ったというのは、これはまたゆゆしきことだということだけ、ちょっと追加しておきます。

 小沢氏の発言は、非礼不遜であり、国民統合の象徴であり国民の敬愛の対象であるお方に対して非礼な言葉を使いながら強要していることであります。昔から中国に不忠の臣の2つある。1つは君主に対し正しいことを直言せず、口先たくみにへつらう臣下。これを佞臣(ねいしん)と言う。もう1つは袞竜(こんりょう)の袖に隠れる。つまり天皇の徳を利用して自分が責任を逃れる。かつてご訪中の時もあったが、「天皇陛下も中国へ行きたいとおっしゃっている」と、そういう言い方をするのを袞竜の袖に隠れる。今回のことはそこまで言っていませんが、「おっしゃると思う」というのも、袞竜の袖に隠れる、天皇に責任をかぶせるような形で自分の意思を表明するということですから、これはまさし君主の不忠なんて言い方は古いかも知れないが、先ほど何回もあったように国民統合の象徴であり国民の敬愛の対象である、しかも政治的に中立、公平でなければならない天皇に対する、一般国民の言論としても礼を失する。それを公党の最高首脳の一人が公開の場所でああいうことを言うことに対しては、断固として許すことが出来ない。

 

百地氏 小沢氏の発言が憲法違反にあたるかどうかだが、憲法における天皇の地位を正しく理解していない発言であることは間違いない。憲法の基本精神に反する。

 

大原氏 1カ月ルールを守っていなかったら政治利用にならなかったと思う。ただ、どういう資格で呼んだのか。こうした問題は、この問題がおこらなくても検討すべき。後継者レースの人に点数をあげた。当事者の目的、結果においても政治利用だ。<了>

 

 …今回の取材メモも、後輩の田中記者が提供してくれました。私も経験してきましたが、このメモ起こしってけっこう時間と労力が必要なのです。内輪の話ではありますが、改めて感謝したいと思います。飯でもおごるか。

 

 

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