2009年12月

 

 今朝の産経は2面で「特例会見問題『国事行為』ではなく『公的行為』」という見出しで、民主党の小沢一郎幹事長が14日の記者会見で断言した天皇陛下と中国の習近平副主席との特例会見は「国事行為」論に異を唱えています。実は当初は、皇室関係法令の専門家である國學院大の大原康男教授の「小沢氏は不勉強だ」との解説をもとに記事をつくろうと思っていたのですが、タイミングよく共産党の志位和夫委員長が小沢氏発言の問題点を指摘してくれたので、それも取り込みました。

 

 私は常々、共産党は社民党よりはるかに筋が通っていると考えてきました。私の人間観、社会観、価値観とは全く相容れないものの、デタラメで論理が破綻し、不勉強で情緒的で自己都合でどうとでも転ぶ社民党よりはずっとマシだと感じてきましたし、今回の志位氏の言葉についてもそう思います。

 

 以下、昨日夕、都内のホテルで志位氏が記者団に語ったことを紹介します。自分の思い込みで憲法解釈も何もかもねじ曲げる小沢氏と違い、きちんと原則を押さえていますね。

 

記者 中国の習近平副主席の訪日は、特例の扱いについて批判がうずまく中での訪日となった。委員長はどこに原因があって何が問題だったのかと考えるのか

 

志位氏 この問題、きちんと整理して考えますと、すなわち、外国の賓客と会見をする、天皇が会見をするというのは、これは、憲法上、内閣の助言や承認を必要とする国事行為ではないんですよ。国事行為の中には、憲法を読んでもそういう項目、出てきませんでしょう。国事行為ではない行為なんですね。で、こういう国事行為でない天皇の行為についてはですね、あの、政治的性格を与えてはならないというのが憲法の定めなんですね。すなわち政治的な、さまざまな性格を与えてはならない。政治的に中立であるべきだというのが憲法の定めなわけですね。そういう点から考えますとね、今回は政府がその問題に関与することによって、政治的性格を与えてしまったわけですね。日本政府が。これはですね、やはり憲法の趣旨をたがえたもんだと、私は考えております

 

記者 特例扱いの件。今回は政府として会談は設定するべきではなかった?

 

志位氏 うーん、あのー、すべきであったか、ないかっていうその判断、うんぬんの前の考え方として私は言いました。すなわち、何度も先ほど言った通りなんですけども、まあ、日本国憲法に照らしてどうなのかということをきちっと、整理して考えると、外国の賓客と会見をすると、天皇が会見するというのはこれは国事行為ではないわけですね。内閣の助言と承認を必要とする国事行為ではないんですよ、この行為というのは。で、国事行為以外の行為なんですよ。国事行為以外の公的行為なんですね。この国事行為以外の公的行為については、政治的性格を与えてはならない、というのが日本国憲法の定めるところなわけですよ。ところが、そこに政府が関与するということになれば、やはり、それに政治的性格を与えてしまうことになった、と。それはやはり憲法の精神をたがえるもんだと。もしこれがですね、同じことが繰り返されたら、例えば、開会式での天皇の発言がある。あれは国事行為ではない行為ですよね。それについて、内閣の判断でどういうものでもやれるようになったら大変です。ですからこれはね、大変原則的に大きな問題が問われているという風に思っています

 

記者 昨日の小沢さんの会見の論理は破綻とはいいませんけど、おかしいという認識か

 

志位氏 うーん、日本国憲法をよく読めということを小沢さんはおっしゃられておりましたけども、日本国憲法をよく読みますとね、そこには国事行為として厳格に定められてる項目がある。その中には外国の賓客との会見は国事行為には入ってないんですよ。内閣の助言と承認を必要とする国事行為には入っていない、国事行為以外の公的行為なんですね。そういうものには政治的な性格を与えてはならないというのが、日本国憲法の定めるところなんですよ。だから、小沢さんこそ憲法をよく読んでほしいと思いますね。

 

 小沢氏の憲法論は、例の国連至上主義をはじめ、世間では全く認識が共有されていない独自の「小沢理論」(小沢氏の言う「民主主義」もさっぱり理解できません)が特色ですね。今のような権力の座にいなければ、だれも相手をしない類の与太話なのですが、それを「おれは全く正しいことを言っている」(昨日の自身の政治資金パーティーでの発言)とごり押ししかねない立場にいるのが本当に困りものです。熱心な信者も抱えていることだし…。

 

 

 天皇陛下と中国の習近平副主席との会見問題で昨夕、民主党の小沢一郎幹事長は「国事行為」と「公的行為」を取り違えて記者を批判したうえで、「天皇陛下のお体がすぐれない、体調がすぐれないというならば、それ(会見)よりも優位性の低い行事はお休みになればいいことじゃないですか」とまるで陛下を「こうしろ」と言わんばかりの発言をしていました。さらに、「天皇陛下ご自身に聞いてみたら『会いましょう』と必ずそうおっしゃると思うよ」と、陛下のお心を勝手に決めつけ代弁するような発言もしています。絵に描いたような傲慢不遜、増上漫ぶりですね。いかにも小沢氏らしい。

 

 で、この問題について今朝、鳩山首相が一言二言なにか述べていましたので、紹介します。首相公邸前で記者団の語ったものですが、そうですか、国民は中国の副主席を迎えてもっと大喜びすべきだったと。外交関係者によると、鳩山氏については米政権内では「スペース・イシュー」と言えばすぐ「ああ」と通じるそうですが、あなたの地球外生物的な思考回路を国民に押しつけないでほしいですね、まったく。

 

記者 習近平副主席の天皇陛下との会見問題についてですが、小沢幹事長が昨日、羽毛田長官に対して、反対をするならば、辞表を提出してから言えというふうに言ってましたけれども、総理としては羽毛田長官は辞任すべきだとお考えでしょうか。

 

鳩山氏 そのご質問には、今お答えできませんが、いずれにしても習近平、中国の副主席がね、このようにおいでをいただいて、日本で活動されている最中にこういう状況になったことは大変残念だとは思います。もっと、やはり、国民の皆さん挙げてね、将来のリーダーになれる可能性の高い方ですから、そういった方をもっと喜びの中でお迎えをすべきではないかと、そのように思っています。

 

記者 残念な状態になったのはどこに問題があったと、進め方のどこに問題があったと。

  

鳩山氏 それは様々でしょ。しかし、あのやはり、私は(1カ月ルールに)何日間か足りなかったからと言って、お役所仕事のようにスパッと切るようなことで、外交的な話が良いのかどうかということ。ただ一方で天皇陛下のお体を大事にされなきゃならない、その気持ちも分かります。その中で出た問題だと思っています。

 

 …外務省幹部は米政府側に「鳩山首相の言うことをあまり真に受けないでくれ」とも説明しているそうです。また、今朝は与党3党の党首クラスによる基本政策閣僚委員会が開かれ、米軍普天間飛行場の移設問題に関する政府方針を決めたわけですが、その方針とは「移設先は当分決めず、候補地を3党で協議して決める」ということだそうです。鳩山政権が発足して明日で丸3カ月。3カ月もたってようやく決定したことがこれかい!あー、朝から血圧が上がりそうです。

 

 

 天皇陛下と中国の習近平副主席の会見問題について、鳩山由紀夫首相は今朝、首相公邸前で記者団に「間違っていなかった」と明言しました。以下、そのやりとりを報告します。この会見については、私の得た情報では、政府は11月の段階で「無理だ」と中国側に伝えていたのですが、中国側が「なんとか是非頼むよ」と強く言ってきたのに動揺し、無理矢理に会見実現を図ったようです。

 

記者 習近平氏と天皇との会見について、週末に政府内からも批判の声が出ていましたが、それについてはどのように思われますか。

 

鳩山氏 まぁ、いろんな声がやはりあるとは思いますけれども、あまり、私は杓子定規に考えるよりも、本当に大事な方であれば、まぁ若干の変更があっても当然、天皇陛下のお体が一番ですけれどもね、その中で許す限りお会いになって頂くと、それは今回の場合、中関係をさらに未来的に発展させるために大変大きな意味があると思っていますから、私は判断は間違ってなかった。そう思っています。

 

 今朝、二人の外務省筋と電話で話しましたが、一人は「亡国内閣」、もう一人は「民主党は中国の走狗」と表現していました。これは私がそう思っているという話ではなく、外務省筋が自分でそう言っていたことです。事態はとてつもなく深刻です。

 

 ※追記 12時15分ごろチェックしてみたところ、このブログのアクセス数が「累計 15,000,685 アクセス」と1500万を突破していました。苦節3年半近く、ようやくここまできたかという感慨も覚えます。訪問者のみなさん、ありがとうございます。そして、至らないブログですが、これからもよろしくお願いします。

 

 

 平成15年に前立腺がん摘出手術を受けられた後、決して健康状態が万全とはいえない天皇陛下の外国要人との会見については平成16年以降、重量級の人物から求めがあっても、それが1カ月前までに文書できちんと申請されない限り受けないという「1カ月ルール」が厳正に運用されてきました。

 

 安倍元首相は本日付のメールマガジンで「陛下のご健康を守るため、小泉、安倍、福田、麻生内閣に於いて厳守されてきました。私の知る限りでも、来日する賓客の多くが陛下への謁見を望み、1カ月を切って申し込んでくる国も多々あります。その中には日本にとって重要な要人もいましたが、例外なく断ってきました。陛下のご日程に政治的、外交的思惑を入れてはいけないと、その時々の政権は自制してきました」と書いています。

 

 また、1カ月ルールには別の目的もあります。周知の通り、陛下は外国の要人と会う際や外国訪問にあたっては、相手について極めて熱心に勉強され、準備されるのです。多忙を極める公務、宮中祭祀をこなした上での話です。

 

 だからこそ、陛下と会見した外国首脳らが、「ここまでわが国と私のことを理解されているのか」と感銘を受けもするし、日本とはそういう国なのだなと理解するわけです。そして、今回来日する中国の習近平国家副主席は、あるいは将来の国家主席なのかもしれませんが、現在は元首でも何でもないただの「共産党幹部」なのです。

 

 中国側には二つの狙いがあったと思います。一つは、陛下といつでも会える習副主席という実績をつくって習氏に箔をつけること。もう一つは、中国の「要望」という踏み絵を日本が踏むかどうかを確かめること。結果的に、日本はほいほいと簡単に踏み絵を踏んでみせたわけで、中国は「日本は何でも言うことを聞くんだな」とさぞほくそ笑んでいることでしょう。平成4年に天皇、皇后両陛下の訪中を実現させ、国際社会への復帰の足がかりとして利用したときのように。

 

 それなのに、小沢一郎幹事長の働きかけを受けた鳩山由起夫首相は平野博文官房長官に宮内庁との調整を指示し、宮内庁は抵抗したものの押し切られた形です。しかも、ルール破りについて記者団に質問された、鳩山氏は逆にこう言い放ちました。

 

 「1か月を数日間切れば、もう杓子定規でダメだというようなことで、果たしてそれが本当にたとえば諸外国との国際的な親善の意味で、正しいことなのかどうか」

 

 これはいわば逆ギレです。自己正当化のあまり、1カ月ルールの方がおかしいと言っているようです。天皇の政治利用など当たり前だと言っているようにすら受け取れます。鳩山氏は万事がそうで、在日米軍再編問題への対応を見ても、「国と国との契約」(政務三役)など、どうとでもテキトーに変えられると考えているように見えます。法治主義よりも人治主義が優先するという考え方は、中国に近いのかもしれません。

 

 しかし、米国は大統領が就任式の際に聖書に手を置くように、基本的にキリスト教の原理が幅をきかせている国です。キリスト教は、神と人との契約によって成り立っています。いわば、契約は神聖なのです。なのに、鳩山氏は以前、「オバマさんは分かってくれる人だ」などと甘えとしか思えない人治主義が法治主義に優先するようなことを口走っていました。大統領来日直前に「キリスト教は独善的で排他的だ」と平気でのたまう小沢氏を身近で見ていると、ついそう思い込んでしまうのかもしれませんが。

 

 ともあれ、私と官邸で一緒に働いている後輩記者が先日、首相発言に関する記事を書きながらさかんにため息をついているので「どうしたのか」と聞くと、「このバカ政権に対する怒りで目がくらみそうです」と言っていました。同感です。はっきり言えば、あの阪神大震災で大失態を犯した村山富市元首相以下ではないかと最近は感じています。

 

 鳩山氏は最近では、米国は米軍普天間飛行場は現状維持がベストだと思っているようだとまで語っていますが、宜野湾市民の背負う危険がそのまま残るとしたら、それは米国のせいというより鳩山政権のしでかした不始末でしょう。そんな明々白々な事実すら認識できないようです。本当にどうしたらいいのか、この人は。

 

 というわけで、真面目にこの政権のことを考えると絶句状態となり、ときに言葉がでてこなくなるのです。

 

   

 

 本日は所用で新幹線に乗り、某所へと赴き、帰りの新幹線で名物だというこの弁当を買いました。けっこうおいしくいただきました。これ以上、政治のことを考えても頭に血がのぼるばかりなので、漫画でも読んでビールを飲んで寝ます。

 

 きょうは久しぶりに民主党の輿石東参院議員会長と、輿石氏を支える山梨県教職員組合に関連する話を書こうと思います。私は10月13日のエントリ「世はもはや輿石東氏の天下となっているようです。」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1268676/)で、輿石氏の選挙支援にかかわり政治資金規正法違反の罪に問われ、略式起訴(罰金刑)を受けたほか、県教育委員会からも停職3カ月の処分を受けた山教組の元財政部長がこの春、何事もなかったかのように小学校教頭に昇進していることを記しました。

 

 いやはや、いやしくも刑事罰に問われた人物が、教育委員会の推薦を受けて「狭き門」をかいくぐって出世するとは…と山梨県の教組支配の堅牢さに脱力したのでしたが、その件で少し新しい動きがあったので、報告します。

 

 この件について産経の社会部が現地で教頭本人も含めた現地取材を行い、今月6日になって紙面で取り上げたところ、8日の山梨県議会で内田健県議が取り上げたのです。私はこの議会での質疑は見ていませんが、9日の産経によると内田氏は、この元財政部長の人事に関連して、昭和63年以降、委員長や財政部長といった山教組本部の「六役」と呼ばれる幹部経験者29人のうち、9割近い25人が校長・教頭職に昇進していると指摘し、「異常ではないか」と迫ったそうです。

 

 これに対し、古屋知子教育委員長は「厳正な手続きを踏んでおり、問題ない」と木で鼻をくくったような答弁をしたとありました。そこで私は、知り合いの山梨県の現職教員に電話をかけて山梨県の教員の昇進事情について聞いてみました。すると彼は、こう語りました。

 

 「ここ数年をみると、毎年500~700人の教員が教頭試験を受けているが、そのうち通るのは1割ぐらいだ。組合幹部の昇進率が非常に高いのは明らかだ」

 

 さて、この問題は当然のことながら他紙は全国版には掲載していないので、山梨県版はどうだろうかとネットで見たところ、読売、毎日、朝日とも県版では取り上げていたようです。まず、読売が紹介している山梨県教員委員会義務教育課のコメントに呆れさせられました。

 

 「(元山教組財政部長は)処罰歴はあるが、その他の成績などを考慮して教頭試験に合格した。車の速度違反で免許停止になったようなもので、停職3か月の懲戒処分も終えており、問題はない」

 

 いかにも遵法意識に欠けた世の中なめたようはコメントですが、私はこれを読んで今年3月18日に、鳩山首相(当時・民主党幹事長)が小沢一郎幹事長(当時・党代表)の公設第1秘書の逮捕と企業献金問題に関して述べた言葉を連想しました。それは、小沢氏が示した企業献金廃止方針にかかわる以下のようなものでした。

 

 「小沢代表は、企業献金を悪だと思っていない。だが、横断歩道を青信号だから安心して渡っていたら、捕まっちゃった。ならばこの信号自体をなくし、渡れなくすればいいという話だ」

 

 明確に違法でなければ、脱法でも何でも構わないと言い放つ小沢氏の場合、青信号を渡っていたというより、黄信号が点滅しても一切止まろうとはしないようなやり方だと思いますが…。それにしても乱暴な発想だと感じます。

 

 また、読売によると松土清教育長は「組合への優遇があったとは理解していない」と答弁し、毎日によると古屋教育委員長は「市町村教育委員会の推薦と試験の結果で公正に判断している」と強調したそうですが、果たしてどうでしょうね。また、朝日によると佐藤安紀教育次長は「賞罰も吟味したうえで判断している」、佐野勝彦義務教育課長は「懲戒処分の時点で十分な罰則を受けている」と反論したとあります。県教育委員会ぐるみで組合をかばっているのが見え見えです。

 

 先日も、ある民主党議員らと話していて輿石氏や山教組の話題となり、「北海道教職員組合みたいに極端にイデオロギー的ではなく、比較的穏健ではないか」という意見がありました。ただ、ここを訪問してくれる皆さんはご承知の通り、思想的には穏健派でも県・市町村教委に深く潜り込み、選挙支援を通じて与野党議員にも影響力を行使して父兄・市民には見えにくい形で県政を支配する教組もあり、それが組合員以外は人にあらずといわんばかりに専横を極めるのも非常に問題だと思います。

 

 ちなみに、朝日の記事には「隣の長野県によると、教職員組合の幹部を務めた教職員が市町村教委の推薦を経て管理職になる例はないと説明。問題の軽重によるが、県教委の懲戒処分を受けた教職員が管理職に昇進する例もないという」とも書かれていました。輿石氏は今ごろ、遠く中国の地で万里の長城でも見学して楽しんでいるところかもしれませんが、一体どうしたものか…。

 

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