本日は2月1日以来、久しぶりの読書エントリとなります。私もこの4月で入社21年目となり、サラリーマン記者としての会社員生活も丸20年が経過しました。20年も社会人をやっていれば、もう少し人間的に成長したり、大人になったりしてもいいはずなのですが、まあ、人はそうそう変われないものですね。相変わらず愚かな日々を送っています。
さて、というわけできょうはまず、社会部記者を主人公にした堂場瞬一氏の「虚報」(☆☆☆★)からです。警察小説、スポーツ小説が有名な堂場氏ですが、新聞社に勤務していただけあって、小説的な脚色はあるにしろ、記者の生態はかなりリアルに描かれているなと感じました。
集団自殺多発事件をめぐり、地方支局から本社に上がってきたばかりの若手記者と、そろそろ事件記者卒業を考えているベテラン記者が、それぞれの思惑を持ちながら取材を重ね、そこに見えてきたのは…というストーリーです。最近、盛んにマスゴミと揶揄され、お気楽な商売というイメージが定着してきた観がある記者たちが、どういう立場・手法と心理状態で仕事に臨んでいるかの一端が書き込まれているので、(そう多くはないでしょうが)関心のある方にはお薦めです。
次も同じく堂場氏の警視庁失踪課・高城賢吾シリーズの第4弾「漂白」(☆☆☆)で、帯には「テレビドラマ化決定」とありました。私がこの読書シリーズで紹介した本は、不思議なくらいの確率で映画化されたりドラマ化されたりしてて、われながら「自分の趣味指向って…」と少し情けなくなるほどです。
今回は主人公の相棒、明神愛美刑事が偶然事故にまきこまれ、そこから事件は思わぬ広がりを見せ…まあ、説明はいいか。それにしても、堂場氏の描く登場人物は、「刑事・鳴沢了シリーズ」をはじめ、なんでこう癖のある狷介な人が多いのか。
珍しいことに、次に紹介する誉田哲也氏の「主よ、永遠の休息を」(☆☆☆)も、主人公は通信社の社会部記者です。性格も仕事への姿勢もどこか「緩い」主人公が、たまたま14年前の女児誘拐殺人事件の「亡霊」(比喩)と出会い、功名心もあってちょっと頑張ってみたところ…。結末は、ある意味、誉田氏らしい、少し哀しい味わいとなっています。
ただ、主人公の設定ゆえか、あるいは誉田氏の取材結果がそうだったのか、出てくる記者たちの「談合体質」が、いかにも今流行の記者クラブ批判の影響をもろに受けた感じがし、少し違和感もありました。堂場氏の作品と比べてみると、ずいぶん見方が違うので面白いかもしれません。
この「春を嫌いになった理由」(☆☆★)は、割と初期の作品らしく、現在の誉田氏の完成度はありませんが、それなりに楽しく読めました。解説文には「ホラー・ミステリー」とありますが、決して怖さをねらったものではないと思います。
そして、この笹本稜平氏の越境捜査2「挑発」(☆☆☆★)も、帯に「早くもドラマ化決定」とありました。これは、感動するとか深く考えさせるとかいうよりも、よくできているなあ、と感心させられる作品でした。警視庁と神奈川県警の描かれ方、現場刑事とキャリア官僚の関係が、少し紋切り型のような気もしますが、まあそういうものなのかもしれません。
佐藤雅美氏の物書同心居眠り紋蔵シリーズもこの「魔物が棲む町」(☆☆☆★)で第10弾目だそうです。いつ襲ってくるか分からない居眠り癖(菅副総理みたいですね)のために窓際生活をしているけれど、もとは有能なので上役から無理難題を押しつけられる紋蔵がまたしても「薄気味の悪い御用」を命じられ…。いつものように安心して読め、しかも面白い。
なんかシリーズものばかり紹介している気もしますが、この宇江佐真理氏の泣きの銀次シリーズ第3弾「虚ろ舟」(☆☆☆)も、本当に上手い作家さんだとうならせられました。今でいうUFOではないかとされる江戸時代に目撃された光の玉「虚ろ舟」を舞台回しにして主人公の心理の移り変わりを描き、妙に納得させられます。ちょっと悲しいお話でした。
夢枕獏氏のこの陰陽師シリーズも10巻を超えていると思いますが、新刊の「天鼓の巻」(☆☆☆)も相変わらずいい感じです。私はこのシリーズでほぼ毎回出てくる安倍晴明と源博雅が酒を酌み交わしながら会話するシーンが本当に好きで、いつも「よいなあ」とつぶやきそうになります。
で、こっちの格闘小説、獅子の門シリーズも第7弾「人狼編」(☆☆★)が出ていました。今回はまた、新たな個性的な新キャラクターが登場したのですが、果たしてこれからどうなるのか、収拾がつくのかと目が離せません。といっても、次巻が出るのは、これまでのストーリーをあらかた忘れたころだろうなあ。
はい、時代小説に戻って、みをつくし料理帖シリーズも第3弾「想い雲」(☆☆★)が発刊されました。女料理人の澪がつくる料理は、今回も巻末にレシピが添えられています。さらっと読めますが、味わい深いものがあります。
言わずとしれた大御所、山本周五郎氏の新編傑作選2「山椿」(☆☆☆)も、収録8作品中、何作かは読んだことがあるのだろうなと思いつつ、出張へ向かう羽田空港で買ってしまいました。そして、飛行機の中で目を赤くするはめに陥りました。
読むべき本が見つからず困ったときや、ちょっと疲れ気味のときにいいのが上田秀人氏の作品で、この「錯綜の系譜」(☆☆★)と「御免状始末」(☆☆★)もともに、楽しませてくれました。この人のエンターテインメントは、筋書きを紹介するより、まあ、手にとって読んでもらった方が早いと思うので失礼ながら省きます。
今回は2カ月分にしてはあまりたくさんの本は紹介できませんでした。体力・気力が衰えると読書量にも影響するようです。まあ、これから暖かくなるので、調子もよくなるだろうとそう思っています(真夏にもへばりますが)。「常春の国」があれば、そこに住みたいものですね。
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