2010年04月

 

  本日は2月1日以来、久しぶりの読書エントリとなります。私もこの4月で入社21年目となり、サラリーマン記者としての会社員生活も丸20年が経過しました。20年も社会人をやっていれば、もう少し人間的に成長したり、大人になったりしてもいいはずなのですが、まあ、人はそうそう変われないものですね。相変わらず愚かな日々を送っています。

 

 さて、というわけできょうはまず、社会部記者を主人公にした堂場瞬一氏の「虚報」(☆☆☆★)からです。警察小説、スポーツ小説が有名な堂場氏ですが、新聞社に勤務していただけあって、小説的な脚色はあるにしろ、記者の生態はかなりリアルに描かれているなと感じました。

 

 集団自殺多発事件をめぐり、地方支局から本社に上がってきたばかりの若手記者と、そろそろ事件記者卒業を考えているベテラン記者が、それぞれの思惑を持ちながら取材を重ね、そこに見えてきたのは…というストーリーです。最近、盛んにマスゴミと揶揄され、お気楽な商売というイメージが定着してきた観がある記者たちが、どういう立場・手法と心理状態で仕事に臨んでいるかの一端が書き込まれているので、(そう多くはないでしょうが)関心のある方にはお薦めです。

 

     

 

  次も同じく堂場氏の警視庁失踪課・高城賢吾シリーズの第4弾「漂白」(☆☆☆)で、帯には「テレビドラマ化決定」とありました。私がこの読書シリーズで紹介した本は、不思議なくらいの確率で映画化されたりドラマ化されたりしてて、われながら「自分の趣味指向って…」と少し情けなくなるほどです。

 

 今回は主人公の相棒、明神愛美刑事が偶然事故にまきこまれ、そこから事件は思わぬ広がりを見せ…まあ、説明はいいか。それにしても、堂場氏の描く登場人物は、「刑事・鳴沢了シリーズ」をはじめ、なんでこう癖のある狷介な人が多いのか。

 

     

 

  珍しいことに、次に紹介する誉田哲也氏の「主よ、永遠の休息を」(☆☆☆)も、主人公は通信社の社会部記者です。性格も仕事への姿勢もどこか「緩い」主人公が、たまたま14年前の女児誘拐殺人事件の「亡霊」(比喩)と出会い、功名心もあってちょっと頑張ってみたところ…。結末は、ある意味、誉田氏らしい、少し哀しい味わいとなっています。

 

 ただ、主人公の設定ゆえか、あるいは誉田氏の取材結果がそうだったのか、出てくる記者たちの「談合体質」が、いかにも今流行の記者クラブ批判の影響をもろに受けた感じがし、少し違和感もありました。堂場氏の作品と比べてみると、ずいぶん見方が違うので面白いかもしれません。

 

     

 

  この「春を嫌いになった理由」(☆☆★)は、割と初期の作品らしく、現在の誉田氏の完成度はありませんが、それなりに楽しく読めました。解説文には「ホラー・ミステリー」とありますが、決して怖さをねらったものではないと思います。

 

     

 

  そして、この笹本稜平氏の越境捜査2「挑発」(☆☆☆★)も、帯に「早くもドラマ化決定」とありました。これは、感動するとか深く考えさせるとかいうよりも、よくできているなあ、と感心させられる作品でした。警視庁と神奈川県警の描かれ方、現場刑事とキャリア官僚の関係が、少し紋切り型のような気もしますが、まあそういうものなのかもしれません。

 

     

 

 佐藤雅美氏の物書同心居眠り紋蔵シリーズもこの「魔物が棲む町」(☆☆☆★)で第10弾目だそうです。いつ襲ってくるか分からない居眠り癖(菅副総理みたいですね)のために窓際生活をしているけれど、もとは有能なので上役から無理難題を押しつけられる紋蔵がまたしても「薄気味の悪い御用」を命じられ…。いつものように安心して読め、しかも面白い。

 

     

 

  なんかシリーズものばかり紹介している気もしますが、この宇江佐真理氏の泣きの銀次シリーズ第3弾「虚ろ舟」(☆☆☆)も、本当に上手い作家さんだとうならせられました。今でいうUFOではないかとされる江戸時代に目撃された光の玉「虚ろ舟」を舞台回しにして主人公の心理の移り変わりを描き、妙に納得させられます。ちょっと悲しいお話でした。

 

     

 

  夢枕獏氏のこの陰陽師シリーズも10巻を超えていると思いますが、新刊の「天鼓の巻」(☆☆☆)も相変わらずいい感じです。私はこのシリーズでほぼ毎回出てくる安倍晴明と源博雅が酒を酌み交わしながら会話するシーンが本当に好きで、いつも「よいなあ」とつぶやきそうになります。

 

     

 

  で、こっちの格闘小説、獅子の門シリーズも第7弾「人狼編」(☆☆★)が出ていました。今回はまた、新たな個性的な新キャラクターが登場したのですが、果たしてこれからどうなるのか、収拾がつくのかと目が離せません。といっても、次巻が出るのは、これまでのストーリーをあらかた忘れたころだろうなあ。

 

     

 

  はい、時代小説に戻って、みをつくし料理帖シリーズも第3弾「想い雲」(☆☆★)が発刊されました。女料理人の澪がつくる料理は、今回も巻末にレシピが添えられています。さらっと読めますが、味わい深いものがあります。

 

     

 

  言わずとしれた大御所、山本周五郎氏の新編傑作選2「山椿」(☆☆☆)も、収録8作品中、何作かは読んだことがあるのだろうなと思いつつ、出張へ向かう羽田空港で買ってしまいました。そして、飛行機の中で目を赤くするはめに陥りました。

 

     

 

 読むべき本が見つからず困ったときや、ちょっと疲れ気味のときにいいのが上田秀人氏の作品で、この「錯綜の系譜」(☆☆★)と「御免状始末」(☆☆★)もともに、楽しませてくれました。この人のエンターテインメントは、筋書きを紹介するより、まあ、手にとって読んでもらった方が早いと思うので失礼ながら省きます。

 

     

 

  

     

 

 今回は2カ月分にしてはあまりたくさんの本は紹介できませんでした。体力・気力が衰えると読書量にも影響するようです。まあ、これから暖かくなるので、調子もよくなるだろうとそう思っています(真夏にもへばりますが)。「常春の国」があれば、そこに住みたいものですね。

 

 ※追伸 本日、このブログの累計アクセスが1700万を超えました。ご愛顧に感謝します。これを励みに今後もさまざまなことを発信していきたいと思います。

 

 何をいまさら、という気がしないでもありませんが、今週は在京各紙の社説で、一斉に鳩山由紀夫首相の首相として、政治家としての「資質」そのものと「統治能力」が問われています。首相の擬装献金問題や米軍普天間飛行場移設をめぐる迷走、改革に逆行して日本を経済破綻に導くような郵貯拡大…などテーマはいろいろですが、ありていにいえば、「その任に値せず」「◯×じゃなかろうか」と各紙の論説委員たちもようやく思い知ったというところでしょうか。日本も一体何の因果でこんな目に…と私も率直にそう感じています。

 

 各紙の社説から、気になる表現をざっと拾ってみると

 

 産経 「首相の元秘書 『裏金』疑惑の解明を急げ」(3月30日)

《首相は贈与税の未申告だったとして約6億円を納付したが、それで自身は「潔白」などというのはおこがましい

 

 読売 「元秘書公判結審 首相は疑問に答えていない」(3月30日)

《自分あての資金の存在自体を「知らない」と堂々と繰り返す姿勢は責任転嫁としか思えない》

 

 東京 「鳩山献金裁判 疑惑の封印を許すな」(3月30日)

《もはや政治家としての資質や発言への誠意も疑問視されている。首相としての統治能力さえ問われている状態だ》

 

 毎日 「郵政改革 首相の統治能力を疑う」(3月31日)

《一体、これまでの迷走は何だったのだろう。鳩山由紀夫首相の政権統治能力に疑問符がつくことだけは間違いない》《そもそも、鳩山首相にどれほどの問題意識があったかも疑わしい

 

 日経 「郵貯拡大を追認した首相の責任は重い」(4月1日)

《自らの指導力不足で広がった閣内の混乱を「自分のリーダーシップ」で鎮めたと言い張る。そんな鳩山由紀夫首相の言葉が空々しく響く

 

 東京 「郵政改革法案 無定見では迷走もする」(4月1日)

《首相と民主党に定見がなければ、亀井氏にいつまでも引きずられてしまう》《無定見のままでは再び迷走の愚が繰り返されかねない》

 

 朝日 「郵政決着 擦り切れる『首相の資質』」(4月1日)

見当違いのリーダーシップだと言わざるを得ない》《鳩山氏のリーダーシップの迷走は、谷垣禎一自民党総裁が言う通り、もはや「首相としての資質」が疑われるところまで来ているのではないか》《きのうの党首討論で谷垣氏は、いろいろな問題を引き起こし、混乱を生んでいる真の原因は、「首相の言葉」そのものにあるのではないかと述べた。的を射た指摘である》《「綸言汗の如し」という言葉をご存じないのだろうか》《5月末までに「命がけで」決着させると聞かされても、有権者は鼻白むしかない》《首相の資質への期待が擦り切れかかっている》

 

 …朝日さんが一番手厳しいですね。つまり、まとめると鳩山氏は、「おこがましくも堂々と責任転嫁するので統治能力を問われていて、さらに問題意識がなく空々しい上に無定見で見当違いなので資質も疑われていて、有権者は鼻白んでいる」と、そういうことですね。分かりました。

 

 でもねえ、ここまで新聞に書かれても、ご本人は蛙の面に何とかとばかりにどうやら平気というか、特に気にかけてもいないようです。今朝のぶらさがりインタビューでも以下のように「へへっ」と笑って自信を示していましたし。

 

 記者 普天間基地の移設問題で、総理は昨日、腹案を持っていると述べた。これから沖縄県民の理解を得るための協議が始まると思いますが、総理は何をもって沖縄県民の理解を得たと判断するか。すべての沖縄県民の理解を得るのは難しいと思うが、基準はいったい何か

 

鳩山氏 ヘヘっ。沖縄はじめ全国の国民の皆さんの理解を求めるということでありまして、それはまさに文字通り、理解を求める。これに尽きる話で、後は、政府にお任せいただきたい。

 

 書いていて自分でバカらしくなってきたのできょうはここまでとします。この半年あまりの出来事が、壮大な「エイプリルフール」だったらいいのですが…。

 

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