2010年05月

 

 きょう、何気なく新聞各紙をチェックしていて東京新聞を手に取り、思わず目が点になりました。「移設現行案は『極めて良い』 北沢防衛相」という見出しの小さなベタ記事に驚愕したのでした。記事には、北沢俊美防衛相が29日に、長野市で開かれた会合で語った米軍普天間飛行場移設問題に関する発言がこう記されていました。

 

 「普天間飛行場を外に出し、さらに嘉手納基地から南の米軍基地を全部返還する。前政権のものは極めて良い内容になっている

 

 …これまで散々、現行案を批判、否定しておいて、今さらそれを言うか。我が目を疑い、何度か記事を読み返しましたが、やはりそう書いてあります。記事には「日米両政府は28日、名護市辺野古を移設先とした共同声明を発表したが、その基となった自民党政権時代の現行計画を高く評価した発言だ」とありました。やはり、私の目がloopyになったわけではないようです。

 

 なんだかなあ、ある意味、正直だとも言えますが、じゃあ、今まであなた方は何をやってきたのか。ホント、この政権と付き合うのは心の芯の方から疲れます。で、現在、主役の鳩山首相は済州島で何かやっているらしい(関心すらわきません)のですが、同行した船津寛記者によると、すこぶる元気で、記者との内政懇(映像なしのミニ記者会見みたいなもの)でも冗談を連発していたそうです。もはや人外の生き物としか…。

 

 というわけで本日は、今回の鳩山氏の普天間問題をめぐるドタバタ劇について、在京各紙がなんと総括しているか、記録の意味も込めて記しておこうと思います。紙面には、はっきりと鳩山氏に対する「軽蔑」が表れていて、日経には至っては「万死に値する」とまで踏み込みました。民主党内でも、「鳩山降ろし」の動きが出てきたようですが、新聞はしばらく前からはっきり「辞めろ」と書いていますしね。朝日だけは、明確に続投支持を打ち出していますが。

 

 ・日経 社説「取り返しのつかぬ鳩山首相の普天間失政

 《罪万死に値する失政である》《混乱を招いた大きな原因は、なぜ日米同盟が必要なのかという基本的な知識すら、首相が持ち合わせていなかったことだ》

 

毎日 社説「この首相に託せるのか

《私たちは、鳩山首相が政治の最高責任者の座に就き続けることに大きな疑念を抱かざるを得ない》《鳩山首相の言葉は、羽根よりも軽い

 

読売 社説「混乱の責任は鳩山首相にある

《「国民との約束」を簡単に破る。一応謝罪はするが、責任は取らない。これが鳩山首相の本質だろう》《首相に求められるのは、自己流の「思い」を語ったり、会談相手に迎合したりすることではない》

 

・産経 主張「国益損なう首相は退陣を 逃れられぬ迷走と失政の責任

《国益を損なう「愚かな首相」は、一刻も早く退陣すべきである》《結果が伴わないことの政治責任に向き合わず、自己の立場を正当化するのは開き直りである》

 

東京 社説「福島氏罷免は筋が違う

《鳩山首相は今後、地元の反対を押し切ってでも移設を推し進める愚を犯すつもりなのだろうか。それでは自民党政権以下だ。》《この際、国民の意思を参院選で示すほかあるまい》

 

朝日 社説「政権の態勢から立て直せ

鳩山首相が退いても事態が改善されるわけではないし、辞めて済む話でもない》《何より考えるべきなのは鳩山政権誕生の歴史的意義である。有権者が総選挙を通じ直接首相を代えたのは、日本近代政治史上初めてのことだ》

 

 …このほか東京は、1面の連載企画記事「普天間問題 迷走の深層(上)首相の資質」で、《政治の相場観が狂っている》《「常識」が分からない》と書いています。とうとう、いろいろな制約から新聞紙面では滅多に仕えない「狂う」という言葉すら出てきました。直接的に鳩山氏を指したものではありませんが。

 

 また、読売の村岡彰敏政治部長は解説記事「責任感欠如が迷走招いた」の中で《安保に対する認識の欠如。自民党と反対のことさえすればよしとする施政。根拠なき甘え。悪しき政治主導》と鳩山氏の傾向を指摘しています。どれも当てはまると考えますが、私はこの中で特に「自民党と反対のことされすればよし」の部分が気になるのです。鳩山氏が、政権発足から8カ月以上がたつのに、いまだに「自民が、自民が」と繰り返すのがとても見苦しいと感じてきたからです。

 

 鳩山氏は、23日に沖縄県を再訪した際に、自民党政権時代のことを引き合いに出して仲井真知事に対してこう述べています。

 

 「今回の政府方針は、(前政権が)米国と全く交渉してこなかったような点も含め、沖縄の負担軽減と危険性の除去を前進させる」

 

 さらに、28日の記者会見でもこう強調していました。

 

 「今回は、前政権の下では米国と交渉してこなかったものが含まれている」

 

 ボク頑張ったんだから、認めよ、褒めてよ、と言わんばかりですが、果たして実際のところどうでしょうね。今回の日米共同声明は、前政権下の平成18年5月に合意した日米ロードマップ(行程表)を「着実に実施する」としており、基本的に微修正にすぎないものだと思います。第一、北沢防衛相自身が、前政権のときに決まっていた内容に関して「極めて良い」と明言しているわけですから。

 

 つまり、鳩山氏は自分のプライドと虚栄心を満足させるためだけに、ことここに至っても前政権のやったことを否定したくてごまかしを続けているというわけでしょうね。なんと小さな人物かと哀れにもなりますが、その人が日本の首相である現実はいかんともし難い。どうしたものかと。そういえば、ミスターLはかつてこうつぶやいていました。

 

 「私も何度か辺野古に行ってきたが、あのような大変美しいジュゴンの住む海域に、一時的だったとせよ、米軍基地を持ってくることはとても理解できないなと、そのとき感じた。(中略)私どもも、あと数カ月で政権を取るという覚悟で戦っているわけだから、そうなった場合にオバマ新政権との間でこの問題が最も喫緊の大きな課題となってくる。沖縄県議会ともよく相談し、理想論と具体的な現実論との間を付き合わせながら、最適な『解』をもう一度見つめ直していくことが必要ではないか」(2009年1月30日の記者会見)

 

 …結論。すべて口先だけ。

 

 

 民主党の「ナンバー3」で、小沢一郎幹事長の右腕と言われる「日教組のドン」、輿石東参院議員会長(幹事長職務)の甲府市にある総合選対本部2階には、このような推薦決定通知書が堂々と掲げられています。たとえ選挙権はなくとも、全力を挙げて支援をしようということでしょうね。いやはや、感服いたしました。さすが人望厚き輿石氏の支持団体は山教組だけではない、ということですね。 

 

   

 

 本日は社民党の連立離脱騒動その他でバタバタしているので、手短に一点、報告しておきたいと思います。鳩山首相は昨日、米軍普天間飛行場の訓練移転への協力を呼びかけた全国知事会議の場で、「日本固有の領土で、歴史上、国際法上ともに疑いがない」(政府答弁)沖縄・尖閣諸島について、次のように述べました。

 

 「施政権は当然日本が有しているということでありますだけに、もし日本と中国との間で例えば衝突があったときには、米国は日本に対して安全保障条約の立場の中から行動するということである。しかしながら、(米国は)帰属問題に関して言えば、これは日本と中国の当事者同士でしっかりと議論して結論を見出してもらいたいということであると私は理解しております。尖閣列島に対しては、有事ということで衝突が起きたときには、安全保障条約が適用されるという理解をしておりますが、米国にも確かめる必要があると思います」

 

 私はこれを聞いて、鳩山氏に対してはいつものことながら、心底、あきれました。かつ、背筋が寒くなる思いもしました。まあ、日本が尖閣諸島を実効支配していて、施政権を持っているという当たり前のことは一応、鳩山氏も分かっているようですが、その後がいただけません。

 

 ある外交関係者はこの鳩山発言について、「えっ、そんなこと言ったの…」と絶句して固まっていましたが、尖閣諸島の帰属問題に関する鳩山氏の発言は、不用意どころか明らかに外患誘致に当たると考えます。

 

 まず、尖閣諸島の帰属に関しては、日本政府の従来の公式見解は「解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない」というものです。それなのに、首相の言葉はまるで、領土問題の存在を認めた上で、これから中国と話し合いのテーブルにつく用意があると言っているかのようにも聞こえます。たとえ、首相の意図がそこになくても、中国側に付け入る隙を見せたのは間違いありません。

 

 次に、米国へも誤ったメッセージを与えかねない懸念があります。外交関係者はこの発言について「米国に対し、そんな『中立でいい』ようなことを言ってしまったのか…」と驚愕していましたが、これは安保条約の効力を自ら薄めると同時に、米国が何らかの事情で安保条約適用をサボタージュしたくなった際の言い訳に利用されかねません。鳩山氏は、ただ息をして、ふつうに話すだけで国益をどんどん損なう天才です。

 

 さらに、現状認識、事実認識にも大きな疑問がわきます。鳩山氏は、「安保が適用されるかどうか米国に確かめる必要がある」と述べました。でもこれは、日本の立場として力強く「適用される」と明言すべき場面でした。

 

 しかも、麻生政権のときに民主党の前原誠司氏らがさんざん、オバマ政権に確かめろと要求して、実際に麻生政権が米側に照会し、返事をもらっている話でもありますね。こういうことをあまり表でやって信頼関係に不信のタネを撒くのもいかがと思いますが、ともあれ昨年3月、米国は「尖閣諸島は日本の施政下にある。日米安保条約5条は日本の施政下にある領域に適用される」と公式に回答しているのです。そしてそれは、麻生首相の国会答弁、河村建夫官房長官の記者会見などで繰り返し表明されました。

 

 鳩山氏は、民主党が火をつけたこの話を全く知らないのか、それとも知っていてもう一度確かめたいというのか。前者なら間抜けな話だし、後者なら、改めて米国に対して「日本は米国に不信を抱いている」との言わずもがななメッセージを送るつもりでしょうか。鳩山氏はどうしてこうまで問題を複雑化し、こじらせる特殊能力に恵まれているのか。日本に仇なす無能の総理というしかありません。

 

 かつては民主党の小沢一郎幹事長が「壊し屋」と呼ばれていましたが、今では鳩山氏が日本そのものを壊しています。それも本人は何も意識しないまま…。

 

 

 もう、仕事とはいえ普通の人間の言葉が通じない鳩山首相の批判や問題点を書き続けるのはつくづく空しく、ひたすら面倒な気分になったので、本日は純粋な宣伝エントリでお茶を濁したいと思います。このブログももう丸4年になるので、私もずいぶんと面の皮が厚くなったというか、図々しくなりました。何か大事なものを失った気もしないではないのですが…。

 

 というわけで、本日、本社での夕刊当番を終えて官邸に戻る途中、大手町の某巨大書店をのぞくと、明日発売のはずの私の本『決定版 民主党と日教組』(産経新聞出版、税込み1575円)がすでに売られていました。最新刊ということで、それなりにいい場所に置かれていました。うんうん。

 

 

 

 最初に「宣伝」であると断ったので堂々と宣伝すれば、多くの識者が指摘してきたいわゆる偏向・自虐歴史教育だけではない日教組の構造的的問題、国政、県政とのかかわりと力の背景、政治とカネの問題などをかなり取り上げています。通読してもらえば、「これはこのままにしてはいけない」と多くの人にそう思ってもらえるのではないかと。資料的な要素もあります。

 

 何より、類書と大きく違うのは、日教組問題を考える上でわかりやすいモデルケースとなる民主党の輿石東参院議員会長のお膝元、山梨県の問題に全310ページの大半を割いているという点で、ある意味とてもローカルな本でもあります。その特定地方の問題が、小沢一郎幹事長という政治家とも結びついて、大きな国政の問題となっているということが分かっていただければと願う次第です。

 

 ここまで露骨に宣伝するのは、この本が売れなければ私の社内的立場がないということや、小遣い稼ぎにならないという理由ももちろんあります。でもそれ以上に、まだまだ日教組問題の根の深さ、問題の悪質さが全国的には知られていないと考えていることがあります。なのでここまで読んでくれた奇特なみなさんには、なにとぞよろしくお願いいたします。

 

 

 さて、本日はこのブログの主要なウオッチ対象である民主党の小沢一郎幹事長と輿石東参院議員会長(幹事長職務代行)について、ちょっと気になったというか、目にとまった情報について書きます。この二人が、いかに厚い友情によって結びついた運命的な親友、魂の片割れ同士であるかの、傍証のようなどうでもいいような内容です。

 

 ちょっと前のことですが今月20日、自民党で憲法改正推進本部の会合があり、その場で福田康夫元首相が次のような発言をしました。「ウフウフッ」という例の含み笑いを交えて話していたようです。この人は大連立騒動をはじめ、小沢氏には振り回されましたからね…。

 

 「小沢さんが民主党で力があるのは、参院を握っているからだ。参院を握っているから、衆院でも大きな顔ができる。言っちゃあ悪いが、輿石さんがコケたら、小沢さんはやりようがなくなってくるんじゃないか」

 

 7月の参院選は、今のままいけば民主党は大敗するだろうと言われていますね。小沢氏は60議席をとって単独過半数を目指すとかのたまっていますが、最近では民主党議員からも「1人区は4議席しかとれないかも」「30台前半じゃないか」などの声が出ています。そして確かに、輿石氏もかなり苦戦が伝えられていますから、小沢氏の権力基盤にも大きなひびが入りそうな様相となっています。

 

 で、23日の読売新聞は政治面で「『小沢ガールズ始動』 輿石氏応援に」という記事を掲載していました。記事は「夏の参院選で3選を目指す民主党の輿石東参院議員会長を支援するため、小沢同党幹事長と親しい『小沢ガールズ』と呼ばれる同党女性議員の応援が22日、始まった」と書いています。輿石氏が選挙区の山梨県昭和町で開いた総決起集会に、「ガールズ」の一人、青木愛副幹事長が出席して「輿石先生は信念と優しい心をお持ちだ」と応援のあいさつを行ったことを報じたものでした。

 

 少年時代にはホームレスに石を投げてからかっていた輿石氏(日経新聞、平成21年4月2日付記者手帳)が「優しい」ねえ…。ともあれ、そこで、青木氏がなんとあいさつしたのかを現地取材した原川貴郎記者のメモで確かめたところ、以下のようでした。日教組が泣いて喜ぶことでしょう。果たして小沢氏にこれを言わされているのか、それとも本気でこんなこと考えているのかちょっと興味があります。

 

 「輿石東先生は、民主党にとってそれはもう、なくてはならない先生でいらっしゃいますし、また将来の日本を背負って立つ子供たちの教育問題について全身全霊を傾けて長年にわたり取り組んできた先生でございます」

 

 総決起集会の会場には、いかにも山梨県教組などから動員されたという感じの人たちが約1300人も集まり、輿石氏のあいさつ中にも寝ていたり、うつむいて携帯をいじったりしていたそうですが、この青木氏のあいさつには驚いたのではないでしょうか。私もここ数年ずっと輿石氏の言動を見続けてきましたが、子供たちの教育問題に全身全霊を傾けているなんていう評判は、一度も聞いたことがありませんから。

 

 また、青木氏のいう「民主党にとってなくてはならない」とは、「小沢氏にとってなくてはならない」という意味かなあともぼんやり考えてみました。まあ、分かりませんが。ちなみにこの集会で、輿石氏が青木氏のことを「鈴木愛さん」と呼び間違えたので、聴衆はなんのことか分からずキョトンとする場面もあったそうです。

 

 読売の記事によるとまた、来月には田中美絵子、福田衣里子両衆院議員が相次いで山梨入りするとのことです。まあ、意図も思惑もよく分かりますが、選挙って一体なんなんでしょうね。一方、輿石氏に対抗する自民党の側も、選挙区で新人で30代の宮川典子氏を擁立するほか、比例代表には甲府市出身で元読売ジャイアンツ監督の堀内恒夫氏を出馬させ、相乗効果で輿石氏を追い込もうとしているわけですから…。

 

 さらに24日の産経政治面には「静岡県連に活動費支給停止 『小沢反抗』への報復?」という記事が掲載されていました。夏の参院選で2人区には2人の候補を擁立する意向の小沢氏に反抗的な民主党静岡県連とその候補に、党本部が活動費の支給を止めているという内容で、いかにも小沢氏らしい強権的で一方的なやり口ですね。兵糧攻めで言うことに従わせよう、あるいは懲罰を加えようというわけです。

 

 手元にある小沢氏の著書「小沢主義(オザワイズム)」(集英社)は第1章がずばり「選挙の重さ」とあり、小沢氏はまず「今の日本では、そうした『選挙の重さ』が理解されていないのではないか」と書いて例によってマスコミ批判を展開し、自身の選挙手法を自画自賛しています。でも、こんなの評価したり、称賛したりできるはずがないではないかと、私のような末端のヒラ記者はそう思うのでした。

 

 ※追記(26日午後2時10分) さきほどチェックしたところ、累計アクセス数が1801万6818と1800万を超えていました。訪問者のみなさんに感謝します。そして、今後もよろしくお願いします。 

 

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