2010年07月

 

 今朝の産経の「早版」には掲載されているものの、東京など都心部で配達される「遅版」では他のニュースに押されて紙面からこぼれ落ちた小さな記事がありました。それは政治面のミニ・ニュースで、「官房長官、韓国大使と竹島会談?」という見出しの記事でした。中身は以下の通りです。

 

 《仙谷由人官房長官は29日、韓国の権哲賢駐日大使と首相官邸で会談し、北朝鮮による韓国哨戒艦撃沈事件などについて意見交換した。平成22年版防衛白書で竹島を「わが国固有の領土」とする記述に韓国側が反発、政府が白書の閣議了解を先送りした問題について、仙谷氏はその後の記者会見で「(会談では)全くでなかった」と説明したが、政府筋は「白書の話はあった」とし、食い違いが生じている》

 

 この仙谷氏と政府筋の話の齟齬について、私ははっきりと、仙谷氏が記者会見という公の場で嘘をついたものだと考えています。白書の件は話題の核にあったのだろうと。その後の取材でも、その確信を深めましたが、まあ証拠を示せるわけでもないし、政治家や役人が記者会見で嘘や誤魔化しを述べるのは珍しいことではなく、場合によってはそれを見破ってテキトーに聞き流すのも記者の心得なので、その話はここまでとします。

 

 では本日は何を書きたいかというと、仙谷氏がこの権大使との会談の中身について昨日の記者会見で聞かれた際、次のように話を脱線させた点です。

 

 「私は弁護士になって1年目から在日の方の、ある種の権利回復のようなことを、事件を担当してきた。(中略)鳩山前総理についてもそうでありますが、20年前から私と鳩山さん、本当にこれを実行したのは原文兵衛先生(元参院議長、アジア女性基金初代理事長)や五十嵐広三先生(元官房長官)でありますが、サハリン残留韓国人問題についての、私もその末端でちょろちょろしとったわけでありますが、その活動については大変評価するという話を先方(権大使)はされていた」

 

 いきなり自分から元慰安婦への「償い金」支給を進めてきた二人の名前を出してくるところが、先日の新たな戦後個人補償検討発言とあわせて考えると非常にきな臭いですね。仙谷氏は、7月7日の日本外国特派員協会での講演でもこう語っています。

 

 「弁護士としての生活の中で在日韓国人問題については日立就職差別裁判というのを弁護し、一年生のときから相当エネルギーを注いで勝利の内に終わった。そのあと、入管事件などでもある程度のエネルギーを使って日本の植民地主義的な侵略戦争についての、それを受けた側からの視点をしっかりと勉強しなければならないと。(中略)サハリン残留韓国人の帰国問題とか、その集会に出るように友人の高木健一君という弁護士がかかわっていた問題で同行を求められ、そこで実は鳩山由紀夫さんとも親しくなった経緯がある」

 

 さて、ここでもサハリン残留韓国人問題が出てきましたね。仙谷氏はよほどこの問題に関心があるようで、たびたび言及しています。あるいは、8月29日の日韓併合100年に合わせて、菅直人首相による謝罪の「首相談話」のほかに、この問題での新たな支援を打ち出すつもりなのかもしれません。

 

 実は私も、平成11年にサハリンを訪れた際にこの問題を少し取材し、連載「日露共生」という記事の中で触れているので参考までに関連部分を少し引用します。以前のエントリとも参照していただければ幸いです。

 

 《日本サハリン州経済開発促進協会の趙応奎さん(65)によると、韓国人は南樺太が日本領となった日露戦争後の1905年ころからサハリンに移り住み始めたという。

「戦前の樺太は豊かで、うちは祖父が自分で樺太に渡り、養狐場をやっていた。戦後は、ソ連が韓国人を帰国させようとしなかった」

この地に来た韓国人には、①戦前戦中の出稼ぎや自由募集、または日本による徴用②戦後、友好国の北朝鮮からの労働力募集③スターリンの命令で沿海州から中央アジアのカザフスタン、ウズベキスタンに強制移住させられていて、共産主義指導のため再び移されたーーの三通りがある。

南部の港湾都市、コルサコフ(旧大泊)の市場で働く韓国人女性(70)は、日本名「山下花子」と名乗り、話しかけてきた。

「来年三月、五百世帯が韓国に引き揚げるんだよ。今、日本の援助で韓国に家を建てているんだ。一時帰国で家を見に行ったけどなかなかいい家で、私もここ生まれだけど引き揚げる」

「山下さん」がいう一時帰国とは、日本政府が平成元年から毎年、一億二千万円前後の支援をしている事業を指す。また、政府は「自社さ」連立の村山内閣時代の平成七年、〝人道的見地〟から二十七億円以上かけて韓国・ソウル郊外に永住帰国者のため五百戸のアパート建設を計画、今年十二月に完成する予定だ。居住の条件では、日本の徴用でサハリンに来たかどうかは問われない》

 

 …記事には書ききれませんでしたが、文中の③の人たちは「日本帝国主義から開放された人たちを教育する」という名目で送られてきていて、コーリャンの配給もロシア人と同等であるなどおおいに優遇されていたそうです。「山下さん」は今は韓国で暮らしているのでしょうか、日本人が懐かしかったらしく、自分から話しかけてきて、私のメモ帳に日本名を書いてくれました。(私の下手な文字が横に書き込まれていて見苦しいですが…)

 

      

 

ただ、私はこれ以上の際限のない支援や援助には賛成できません。第一、上の記事でも書いたように、「残留」の責任の所在は必ずしも日本にあるわけではありませんし、日韓の個人補償請求問題は、日韓基本条約とそれに伴う協定で「完全かつ最終的に」解決されており、それを無視するかのようなやり方は国際条約の軽視そのものだとも考えます。

 

 また、この手の問題は他の国にも飛び火しがちで、往々にして韓国に出すなら中国も、などという話になっていきます。正直、もううんざりですし、韓国政府側からも「何でまた寝た子を起こすような補償うんぬんの話をするのか」と疑問視する声が聞こえてきます。

 

 29日の朝日夕刊のコラム「窓 論説委員室から」は、「弁護士政治家」として仙谷氏を取り上げ、次のようなエピソードを紹介しています。

 

 《東大在学中に司法試験に合格した仙谷由人さんが弁護士登録をしたのは、25歳のとき。最初に担当したのが、日立製作所の就職差別事件だった。(中略)

「オマエたち日本人が作り出した差別だ」「この裁判にかかわることでオレは生き方を変える」。深夜までよく青年弁護士と議論したのを、来年日立で定年を迎える朴さん(※裁判の原告)は、覚えている。

40年近くが過ぎ、仙谷さんは官房長官に就いた。戦後補償などをめぐる発言に原点の体験がにじむ》

 

 …要するに、仙谷氏の根っ子の一つは「人権派弁護士」にあるのでしょうね。日韓併合100年の首相談話にしても、あるいは終戦の日の声明にしても、熱心なのは菅首相よりむしろ仙谷氏であるように見受けられます。ですが、個人的な思い入れだか思い込みだかで、国政や国際関係をもてあそばれたらたまらないなあと、つくづくそう思うのです。

 

 

 

 今朝の読売新聞は1面トップ記事で、「『厚労相指示に納得』1%」「職員アンケート 『おごり感じる』48%」という記事を掲載していました。記事の短いリード部分には「厚生労働省の職員が、長妻厚生労働相ら同省に常駐する政治家の対応に不満を抱いていることが28日、二つの調査で明らかになった」とありました。記事の体裁から言って、これはあらかじめ予定していた入念に準備された記事ではなくて、内容が面白いので急遽トップに据えたというもののようです。

 

 これに関しては、産経も政治面で「若手官僚〝本音〟 厚労相ら沈黙、逆ギレ」という記事を載せていますが、1面トップのような大きな扱いはしていません。ここらへんが各紙による価値判断だとか編集方針の違いの表れですね。同じことを書いた記事でも、扱いによってインパクトも異なります。

 

 それにしても、「指示に納得」が1%って…。私は厚労省を担当したことはないし、厚労職員の味方でも何でもないのですが、この極端な数字は何を意味しているのかと、しばし考えました。そしてまあ、ただ考えても何も分かるわけがないので、とりあえずこのアンケートを取り寄せてみました。

 

 それによると、調査は長妻氏の肝いりで5月に発足した「若手プロジェクトチーム」が厚労省職員約3200人を対象に実施したもので、約750人の職員から回答があったそうです。無記名による全職員対象のアンケート実施は、厚労省では初の試みだということでした。

 

 で、問題の部分は、「現在仕えている上司について、当てはまると思うものはどれか」という問い(複数回答)でした。対象の上司は「課室長・企画官」「部局長以上」「政務三役」の3つに分かれていて、それぞれについての評価が記されていました。厚労省に問い合わせたところ、いずれホームページに掲載する予定だが、いつになるか分からないということなので紹介します。以下の通りです。

 

 【問】事実関係や政策的整合性の観点から、納得のいく指示がなされている

 課室長・企画官41.4% 部局長以上37.4% 政務三役2.9%

 

 【問】現実的なスケジュール感の観点から、納得のいく指示が示されている

 課室長・企画官37.6% 部局長以上28.6% 政務三役1.0%

 

 【問】対応が急がれる際、速やかに相談することができる

 課室長・企画官43.3% 部局長以上31.3% 政務三役1.2%

 

 【問】驕りを感じる

 課室長・企画官6.0%  部局長以上6.0%  政務三役48.0%

 

 もう一問、厚生労働行政に対する想いやビジョンが伝わってくる、という設問があるのですが、送ってもらったファクスの文字がつぶれていて、パーセンテージがはっきり読めないので省きます。自由記載部分には「政治主導を進めるあまり、政務三役と、職員との連携がうまく取れていないように感じる」「大臣とのコミュニケーションを緊密にして、チームワークを作ってほしい。互いの不信感が著しい」などという意見が載っていました。

 

 …繰り返しますが、私は旧社会保険庁の年金事業をめぐるサボタージュ問題をはじめ、厚労省には決していい感情は持っていません。また、担当の政治家が責任を持って決断を行う「政治主導」自体には賛成の立場です。ですが、それにしてもこれだけ明確な数字が出てくると、さすがにどうかと思いますね。これじゃあ、面従腹背を招くばかりで本当の意味での仕事にはならないだろうと。

 

 産経の記事によると、この調査の報告会に出席していた長浜博行副大臣は「『驕っている』の意味が一体何を指しているのか。政治家は国民意識から離れている場合は選挙で負けるが、公務員にはそういった機能がない」とかみついたそうですが、どうなんでしょうね。

 

 よく「官僚の抵抗」と言いますが、これの実態はだいたいの場合、やるべきこと、指示されたことをきちんとやらず、事態を遅滞させてどうしようもなくしていくサボタージュなのだろうと思います。これを集団でやられると、大臣や担当の政治家がいきりたっても、物事はなかなか前に進みません。結果として、政治家の方が無能の烙印を押されることになるでしょう。

 

 だからといって、政務三役に官僚と馴れ合ってうまくやれ、という気はないのですが、ここまで不信感を高められる前に、この10カ月間にもう少し何とかできなかったものかと率直に感じた次第でした。これは、政治主導への反発うんぬんより、現在の政務三役の属人的な問題なのではないかと。それとも、私がこんな感想を持ったこと自体、官僚にうまく丸め込まれ、誘導されたことになるのでしょうか?

 

 ただ、この「驕り」については、実は私は民主党政権を表すキーワードの一つだと鳩山政権時代からずっと感じてきたことでもあります。昨年9月の政権発足早々から、高飛車に威張り散らす人たちを見てきて、官僚も記者も、政府・与党様にはすぐひれ伏すものだぐらいに思っているのだろうなという印象を受けてきました。なので、今回の調査にも「そうだろう、そうだろう」と得心したのでした。

 

 菅政権は参院選後は、ねじれ国会を何とか動かすために「丁寧」と「謙虚」を合い言葉のように使っていますが、それも背中が透けて見えるようなやり方であり、本心でないのは明々白々です。まあ、おごれる人は久しからず、ですからどうでもいいのですが。

 

 

 いろいろあって「徒労感」と「不遇感」に囚われてしまい、やる気喪失気味なのですが、エントリアップをさぼりすぎてもやはりナンだというか義理を欠くので、今話題の話をちょっとまったりと取り上げてみます。

 

 辻元清美前国土交通副大臣が社民党に離党届けを出しましたね。まあ、選挙区では民主党系の労組の支援がないと当選できないし、社民党に未来があるわけでもないし、いずれ民主党に加わりたくて沈みゆく船から逃れたわけでしょうが…。私は今回、辻元氏自身より、民主党閣僚の反応に関心をひかれました。

 

 元上司である前原誠司国土交通相が本日の記者会見で「素晴らしい政治家。もし無所属になられたら、まずは、同じ会派で共に一緒に仕事をさせていただきたい」と述べたのは、露骨ではあるけれどまだ分かるのですが、引っかかったのは中井ひろし拉致問題担当相のはしゃぎぶりです。中井氏はこう歓迎を表明しました。

 

 「彼女は鳩山内閣で、よく仕事をやっていただいた。一生懸命頑張ってくれたと高い評価をしている。これを契機に何とか一緒にやれる方法をお考えいただければ嬉しいがなぁと思っている

 

 私は辻元氏の過去の拉致問題に関する発言を思うと、やはり納得がいきません。もちろん、人間は過ちを犯すものだし、過去の言動をあまりあげつらうのも生産的ではないかもしれませんが、拉致問題担当相がそうまで辻元氏を持ち上げるのはいかがなものかと思います。

 

 中井氏は先日の金賢姫元北朝鮮工作員の来日時にも、特定失踪者問題調査会の荒木和博代表の面会要請を拒否し、金元工作員に失踪者の写真を見せて心当たりを尋ねることをしませんでした。どうもちぐはぐな言動が目立ち、いまひとつ信用がおけません。ともあれ、辻元氏の拉致問題に対する認識が分かる産経の過去記事を紹介します。

 

《北朝鮮の拉致問題 補償してないのに「返せ」ばかりフェアじゃない[ 20020317  東京朝刊  社会面 ]

 

 辻元清美議員、ネットで主張

 

 社民党の辻元清美政審会長が昨年十一月、インターネットに掲載されたインタビューで、北朝鮮による日本人拉致問題に関連、「北朝鮮には(戦後)補償を何もしていないのだから、そのことをセットにせず『九人、十人返せ』ばかり言ってもフェアじゃない」と発言していたことが十六日、明らかになった。

 辻元氏のインタビューは「カフェグローブ・ドット・コム」に昨年十一月中旬、掲載された。

 この中で、辻元氏は北朝鮮という国家が拉致という罪を犯している問題点を指摘しないまま、「拉致問題というのは、これまでにも世界のいろいろなところで起きている」と提起したうえで、拉致問題解決よりも北朝鮮との国交正常化を優先させるべきだと主張。

 さらに、「国交正常化の中では、戦後補償が出るでしょう。日本は、かつて朝鮮半島を植民地にして言葉まで奪ったことに対して、北朝鮮には補償も何もしていないのだから、あたり前の話」と述べている。(後略)》

 

 …この拉致軽視の発言は当時、それなりに話題になったので、記憶にある方もいると思います。この記事は後輩記者が書いたものですが、記事が掲載された後、辻元氏が真意を述べたいというので、私はその後輩記者と辻元氏に短いインタビューを行いました。以下がそれです。

 

《社民・辻元政審会長「9人、10人返せばかり言ってもフェアじゃない」[ 20020320  東京朝刊  総合・内政面 ]

 

 解決しなくていいとの趣旨ではない

 

 社民党の辻元清美政審会長=写真=は十九日までに産経新聞のインタビューに応じ、北朝鮮による日本人拉致問題に関連し、本紙が十七日に報じた「九人、十人返せばかり言ってもフェアじゃない」などの自身の発言について釈明した。

 --発言の真意は

 「拉致問題を解決しなくていいとの趣旨ではない。解決に向けて、進み出さないといけないと思っている。私は北朝鮮のシンパでもないし、代弁者でもない。ただ、交渉のチャンネル、窓口は持たないといけない」

 --まずは国交正常化というのは拉致家族には厳しい

 「拉致問題を解決しないと国交正常化が前に進まないというなら、拉致問題そのものの解決が難しいのではないか」

 --小泉純一郎首相は拉致問題の前進なくしては国交正常化はないと言っている

 「ひとつの考え方とは思うが、それを延々と言って解決できたのか」

 --社民党幹部は最近まで拉致家族に面会しなかった

 「昔の社会党というのはそれもあると思うが、私は新しいタイプだ。現実的に対応しないといけない。拉致問題は党派を超えて、衆院外務委員会の集中審議でやるべきテーマだと思う」

 --日本は平成十二年、北朝鮮にコメを支援したが、北朝鮮は「行方不明者」捜索を打ち切った

 「北朝鮮を孤立させるのがいいのかという議論はある。ただ、北朝鮮も国際社会にきちんとこたえる姿勢は大事だ。捜索を打ち切るのは不可解な行動で問題だ」

 --発言は軽率ではなかったか

 「自分の真意が伝わらなかったし、反省しなきゃいけないかなと思う」》

 

 …一応、反省は示していますが、まあ、つまりはそういう考えの人であるわけです。このとき辻元氏は私たちに猫なで声で「これからは、産経さんの意見もよく聞いて…ときどき意見交換をやりましょう」などと言っていましたが、その後、何かで意見を求められたことはありませんし、そんな機会は一度もめぐってきませんでした。

 

で、少なくとも、辻元氏は拉致問題担当相が「何とか一緒に…」と懇願するように話す対象ではないと思うのです。首相、法相(民間)と2人も拉致実行犯のシン・ガンス元死刑囚の釈放嘆願書に署名している内閣ですから、これも驚くには足りない話かもしれませんし、つまるところただの党利党略なのでしょうが。

 

 で、話はさかのぼって昨年春ごろの話です。当時、拉致被害者の「家族会」と「救う会」、拉致議連が訪米してオバマ政権の北朝鮮政策担当者らと意見交換しました。その際に米側は、家族会などに対し、岡田克也外相(当時幹事長)と前原氏の名前を挙げて次のような趣旨の懸念を示していました。

 

 「この二人は最近、米国で『日本が拉致問題にこだわることが、核問題解決の障害になっている』という趣旨の発言をしている。日本は拉致より核を優先させると政策転換したのか。オバマ政権はそう認識し始めていて、拉致問題を重視するよう主張してきた私たちの立場はないが…」

 

 その後、民主党代表選を控えて岡田氏は家族会と面会し、「そのようなことは言っていない」と釈明しました。しかし、前原氏の方は、家族会からそういう疑問をぶつけられても何も説明しようとしませんでした。もともと前原氏は「拉致より核優先」を明確にしてきた人なので、それも当然であるのかもしれません。あるいは、そのあたりも辻元氏と意気が合うのかなと…、これは少し牽強付会でしたか。

 

 世間のイメージはまた違うのでしょうが、私は辻元氏というと、この拉致軽視発言と秘書給与詐欺事件がまず頭に浮かぶのです。あとは、PKO部隊への侮辱とか、ピースボートの身勝手さとか。とにかく、ろくな連想はでてきません。

 

 

 数日前のことですが、韓国の連合ニュースは16日に、韓国の太平洋戦争犠牲者遺族会と対日民間請求権訴訟団が同日、記者会見を開いて天皇に明成皇后殺害事件などに関する公式謝罪を求める訴訟を起こすことを計画していると明らかにしたと報じました。両団体はまた、「菅直人政権の仙谷由人官房長官が今月初め、韓国徴用被害者問題を解決しようという政府次元の前向きな立場を見せたのを肯定的に受け入れる」とも表明したとあります。やれやれまたか、ですね。

 

 産経紙面や先日のエントリで触れた、仙谷氏の日韓基本条約とそれに伴う協定で「完全かつ最終的に」解決されている「戦後個人補償」について政府として再検討する考えを示したことに、早速反応していますね。これは予想されたことではありましたが、私がこの記事を読んでいて気になったのは次の部分でした。

 

《遺族会はこの(訴訟の)ためにマイケル・チェ、ロバート・スイフト弁護士、高木健一弁護士を選任した。》

 

 ここで、過去エントリで何度も取り上げてきたあの高木健一弁護士の名前がまたまた出てきました。そして、この高木氏に関して、仙谷氏が7日の日本外国特派員協会での講演で「友人」として紹介したことや、共著もあることも以前のエントリで触れた通りです。

 

官房長官である仙谷氏は、天皇を提訴しようというこの韓国での動きに、「友人」が積極的に関わっていることをどう考えているのでしょうか。さらに、仙谷氏が皇室についてどういう認識・意見を持っているのかも気になるところです。

 

 などと漠然と考えていたところ、仙谷氏の今年1月8日の講演録をまとめた「鳩山内閣による行政刷新」という小冊子に、関連する記述があったので紹介します。以下のようなものでした。

 

 《私は、今の天皇陛下を含めて皇室に何らかの底意を持っている者ではありません。むしろ天皇陛下あるいは皇太子殿下を含めて日本で最もリベラルな方々の集団だというふうに拝見しておりまして、そういうことで敬愛を感じている者の一人であります》

 

 …これだけでどうこう判断するのは早計でしょうが、わざわざ自分から「底意は持っていない」と断っているところが、かえって含むところがあるのではないかと勘ぐりたくなります。また、「日本で最もリベラルな方々」ということで敬愛している、という言い方も屈折を感じさせます。私の穿ちすぎかもしれませんが、独特な言葉の用い方に引っかかるものがあるのです。

 

 「リベラル」という言葉は、もともと言葉通り「自由主義的」という意味なのでしょうが、日本の政治用語としてはもっと別の使われ方をしていますね。社民党系の人が「リベラルの結集」を主張したり、自民党の加藤紘一元幹事長のようなタイプが「リベラル」を自称しているので、永田町で「リベラル」というとむしろ、左派的・社民主義的な政治思想・手法の意味で使われることの方が多い気がします。

 

 さて、仙谷氏はどちらの意味で使っているのか。最近は、菅直人首相よりも仙谷氏の方に興味・関心を覚えています。何を言っても底が浅く、すぐ背景が透けて見えるような菅氏よりも、仙谷氏の方がより「確信犯的」なのではないかと。仙谷氏はやはり今月7日の講演で、自身の全共闘体験に言及した上で、次のように語っています。

 

 「全共闘のときの『孤立を恐れず』を政治の場でやると、すってんてんの少数派になる。政治をやる以上は多数派形成をやる」

 

 つまり、本心・本音はある程度隠し、多数派形成をした上でやりたいことを実現するということですね。まあ政治家としては当たり前の考え方でもあるでしょうが、この人は多数派を形成して何をやろうというのか。隠しているようでいて、言葉の端々、用語(ワーディング)からうかがえることもあるので、注意深く見ていきたいと思います。

 

 

えー、私の6月23日のエントリ「政府答弁書とJR総連と民主・枝野幹事長と」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1666311/と5月12日の「政府答弁書とJR総連と革マル派と民主党と」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/1600639/)などと関連がありそうなことを月刊「新潮45」8月号が取り上げていたので報告します。それは、ライターの山村杳樹氏による「枝野幹事長が交わした『魔の契約』」という、なんだか少しおどろおどろしいタイトルの記事ですが、内容もまた禍々しいものでした。

 

   

 

 他誌の記事なので、簡単に書いてあることをまとめると、以下の通りとなります(A氏の氏名も分かりますが、記事に準じて匿名とします)

 

     枝野氏は1996年、JR東労組大宮支部執行委員長のA氏との間に「『第41回衆議院議員選挙』立候補予定者の推薦に関する覚書」を交わしている。

     A氏は2002年、同僚を脅して退職に追い込んだとして、警視庁公安部に強要の疑いで逮捕された人物である。当時の朝日新聞東京版によると、警視庁は「A容疑者がJR東労組内の『マングローブ』と呼ばれる革マル派組織の幹部で、事件の中心人物とみている」

     A氏らは、他の組合の人間とキャンプに出かけて交流した同僚を罵詈雑言の限りをつくして恫喝、脅迫し、組織を挙げた陰湿、冷酷ないじめで退職に追いやった(浦和電車区事件)。

     革マル派は、共産主義革命を起こすことを究極の目的とする極左暴力集団であり、これまでも殺人など多数の刑事事件を起こしている。JR総連とJR東労組内には、影響力を行使し得る立場に革マル派活動家が相当浸透している(枝野氏もサインし、閣議決定された今年5月の政府答弁書)

     枝野氏とA氏が交わした覚書では、「わたし(枝野氏)は、JR総連及びJR東労組の掲げる綱領(活動方針)を理解し、連携して活動します」とある。

     枝野氏の資金管理団体は、この覚書が交わされた96年から4年間で、JR総連とJR東労組から計404万円の資金提供を受けている(※私の過去エントリを参照願います)

     96年以降、枝野氏はJR総連の大会、集会などにたびたび出席しており、特に06年11月には「えん罪・JR電車区事件から4年~7名の完全無罪をかちとる」埼玉連集会で講演している。最後の講演はまさにA氏のための活動といえる。

     今回の参院選では、JR総連に所属する田城郁氏が民主党の公認を受けて比例代表で立候補し、当選している。新潮45の記事によると、田城氏は「公安当局が革マル派の事実上のトップとみている松崎明氏の運転手を務めた人物で、松崎氏の〝側近〟と目される」

 

    

 

…この新潮45の記事の件は、17日付の産経にも小さく(政治家の資産公開があって紙面が狭かった)掲載されています。人間は、生きていく中で思想も考え方も変わっていくものだとは思いますが、実際のところ、どうなんでしょうね。私には世の中、納得できないことばかりです。

 

 話は飛びますが、今朝の産経に、8日に石川県で遊説して以来、消息が不明となっていた民主党の小沢一郎前幹事長が「18日に八丈島を訪れた」という記事が載っていました。同僚記者たちとは、小沢氏の本会議をさぼって海釣りに行くなどのこれまでの性癖から「どうせ釣りでもやっているんだろう」と言っていたのですが、やはりそうでしたか…。なんだかなあ。

 

 昨日は炎天下、子供を連れて市民プールでたっぷり遊んだため、背中が日焼けでひりひりして痛いのです。しかしまあ、何も考えずに水とたわむれるのはいいですね。小沢氏ではないけれど、私も海に行きたいなあ。

 

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