2010年07月

 

 今朝の産経新聞は1面トップで、「参院議長ポスト大混乱」という記事を載せています。先の通常国会で民主党の強引かつ強権的な国会運営を容認し、あまつさえ首相問責決議案の採決を行わないために参院本会議を開かないという禁じ手まで使った江田五月議長(この人も北朝鮮工作員のシン・ガンス元死刑囚の釈放嘆願書に署名しています)を替えるということまでは、各党おおむね一致していますが、問題は次が誰になるかですね。

で、私はかねがね、このブログや産経紙面、他媒体などで、民主党の小沢一郎前幹事長が、参院議長ポストについて「今回の参院選で当選さえすれば、輿石東参院議員会長がなる」と〝約束〟していることを指摘してきました。

そうなれば、横路孝弘衆院議長(父の節雄氏は北海道教職員組合の結成に携わり、日教組副委員長も務めた)と合わせて、衆参両院議長を日教組の組織内議員が独占するという異常事態が出現することも繰り返し書いてきました。

衆参両院議長は、首相、最高裁長官と並ぶ日本国の「三権の長」であり、皇室会議のメンバーにもなります。その4人のうち2人までも、長年、国旗・国家反対運動を続けて国を貶め続けてきた日教組という特定政治団体の組織内議員が占めるわけです。こんな笑えない喜劇は滅多にありません。こんなことを国民が望むでしょうか?

実際、輿石氏は3700票という僅差で勝利しました。ただ、与党は参院で過半数の議席を失ったので、議長ポストは野党が獲りに行くだろうと少し安心していたら、公明党がひよりました。

山口那津男代表は12日、「(比較第一党の)民主党から議長を出すべきだ」と表明したのです。みんなの党の渡辺喜美代表が真っ先に、議長は野党から出そうと呼びかけていたにもかかわらず、です。

この山口代表の姿勢を見て、私は今年3月に覚えた「嫌な予感」を思い出しました。ある意味、「点」が「線」としてつながったなと。

それは、2月26日に、小沢氏が都内のホテルで公明党の支持母体である創価学会の首脳クラスと会談し、その席に輿石氏が同席していた件です。産経は3月2日付の紙面でこれについて「参院選後の民主党と公明党との連携も視野に入れながら、選挙協力の可能性についても意見交換したとみられる」と報じていました。

私個人は、「北教組による違法献金事件などで選挙が苦しくなった輿石氏が、何らかの譲歩、歩み寄りを条件に学会に票提供を要請したのではないか」と思っていました。実に嫌な感じだと。

それから4カ月余りがたち、昨日、ネットで読売新聞の山梨県版を見たところ、「山教組弱体化 業界、公明票が穴埋め」という記事が掲載されていました。以下、一部引用します。

 

《… 3745票の僅差(きんさ)で3選を果たした輿石氏の支持組織の中核は、出身母体でもある山教組だ。

山教組には「3日選挙」の伝説がある。「劣勢な選挙も短期間でひっくり返す」ほどの組織力を持つというわけだ。

だが、北海道教職員組合の違法献金事件などで、「先生と選挙」への世間の視線は厳しくなり、今回の参院選は、現職教諭の動きは鈍った。代わって法的に選挙活動の制限がないOBを中心に活動したが、結果は自民党の新人、宮川典子氏(31)にぎりぎりまで追いつめられた。

 輿石氏陣営は今回、別の組織票を頼った。公明票だ。

 「バーターしませんか」

 輿石陣営幹部が複数の公明党議員らの自宅を訪ね歩いていた。同党が山梨選挙区の「自主投票」を表明した6月17日以降のことだ。

 輿石陣営が「比例は公明」を指示する代わりに、公明支持者に「選挙区は輿石」を依頼するという非公式の選挙協力の打診だった。

 ある公明党市議は証言する。「バーターに応じた。自民党側からは何の働きかけもなかったから」

 読売新聞の参院選出口調査にも「バーター」の効果が見て取れる。公明支持層の約5割が宮川氏、2割以上は輿石氏に投票していた。今回、公明党の比例選の得票は4万7646票に上った。(中略)

だが、山教組幹部は意気盛んだ。「宮川氏を支持した自民党県議は来春の県議選で落選させる。選挙の恨みは選挙で晴らす」

山教組が再び「選挙集団」に戻るのかどうか。それを決めるのは現職教諭たちだ。

…他紙の記事ですし、これが全く正しいかどうかは断言できませんが、「なるほど、やはりな」と頷けました。山教組のいやらしさがよくにじみ出ています。そしてまた、こういう選挙協力の実態があればこそ、山口代表の「議長は民主党から」発言が飛び出したのかな、とも考えさせられます。そりゃ、せっかくの輿石氏とのパイプは手放したくないでしょう。

そしてまた、そういういやらしさは、自民党側も似たようなものでした。読売の記事にもあるように、今回の選挙戦で、自民党県連は人にもよりますがおおむね消極的な活動しかしていません。

「新人の宮川氏が勝つより、むしろ与党大幹部として中央政府に強い影響力を持つ輿石氏が勝ってくれた方が助かる」という自民党系首長の話も聞いています。

民主も公明も自民も、そして行政もなれ合い、もたれ合っていて、その構図を輿石氏や教職員組合が利用しているという構図です。だからこそ、私は山梨県の政治・行政は古い日本政治の縮図であり、宿痾であると思い繰り返し取り上げてきたわけですし、今回もそこに風穴を開けてほしいと願っていましたが、果たされませんでした。

しっかし、それが政治の常とはいえ、公明党のやり方には神経を逆撫でするものがありますね。いつもきれいごとばかり唱える党ですが、結局、発想にあるのは組織維持だけで、国民のことなど毫も考えていやしない…。

公明党は、今年1月の人事でも、政界から引退していた小沢氏に近い市川雄一元書記長をわざわざ常任顧問に起用して将来の連携の準備をするなど、ホント、利にさとい露骨な党であります。

 

 政局はあれこれ動いていますが、あまり政治のことばかり考えていたくはないので、きょうは約1カ月ぶりに読書紹介エントリといたします。といっても、このところ多忙だったり、気力・体力が萎えていたりでそんなに読書がはかどったわけではないし、どちらかというとあっさり読めるものばかり選んだのですが。

 

 ともあれ、私はもともとSFというジャンルが好きで、若いころは集中的に読んだ方です。で、今回、全然知らない作家でしたが、面白そうだと手にしたのがバーナード・ベケット氏(ニュージーランド人)の「創世の島」(☆☆☆☆)という作品でした。世界大戦と疫病により、外界と途絶された「共和国」に住む少女が、「アカデミー」の入学試験として口頭試問を受け、知らないうちに世界の成り立ち、AI(人口知性)の謎を解き明かしていく…というストーリーです。

 

          

 

 細かいことは、これから読まれる方の邪魔になるので触れませんが、とても興味深く、知的刺激を受ける内容でした。まあ、SF好きとしては、「落ち」の部分は半分予想がつきましたし、もともとは児童書という扱いのようですが、お薦めです。

 

 次は、すでに今年1月に出版されていたのを、楽しみにとっておいた万城目学氏の「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」(☆☆☆★)です。私はこの人の作品では何といっても疾風怒濤的雰囲気のある「鴨川ホルモー」が好きですが、この本はもっと落ち着いた味わいとなっています。

 

          

 

 主人公は小学校1年生の女の子とその飼い猫なのですが、その何気ないはずの日常が驚きと優しさに満ちて描かれています。主人公がせっかく仲良くなった同級生の女の子の転校で、「さらばでござる」となぜか武士言葉で別れのあいさつを交わすシーンがいいですね。また、はっきりとは書かれていませんが、作者の別の作品「鹿男あをによし」との関連もにおわせています。

 

 で、今度も初めて読む室積光氏の「達人山を下る」(☆☆☆)です。「抱腹感涙」という帯の宣伝文句にひかれ、何の達人だか分からない80歳の老人が、腐れ政治家に鉄槌を下すという場面を読んでみたくて買い求めたのですが…。

 

          

 

 …意味不明の言葉の羅列で「友愛」を説く畠山首相と、秘書の犠牲の上に私腹を肥やす野玉幹事長という「悪役」が出てきました(笑)。野玉幹事長は最後に、春の園遊会で重大の「粗相」をしでかすのですが、これも読んでのお楽しみということで。

 

 さて次は、おなじみの堂場瞬一氏の警視庁失踪課・高城賢吾シリーズの第5弾「裂壊」(☆☆☆★)ですが、何ですか、この帯の「阿比留が失踪」という文句は。主人公の上司、阿比留真弓室長のことなのですが、うーん。

  

          

 

 今巻では、今まで私生活を隠してきた阿比留室長の過去と現在が明らかにされ、そして同時に、主人公との間に大きな亀裂が入ります。これからどう展開するのか、気になります。あっ、そういえば、このシリーズはテレビドラマ化されていましたね。まだ観ていないのですが。

 

 なんとなくタイトルにひかれて読んでみたの西條奈加氏の「善人長屋」(☆☆★)でした。帯には「世を忍ぶ悪党の巣に、うぶなお人好しひとり」とありますが、つまりはそういうお話です。

 

          

 

  まあ、悪くはないのですが、ちょっと話がストンと腑に落ちないというか、物足りないというか。人情モノであるならば、もう少し、一つひとつのエピソードにひねりと深みを加えた方が…余計なお世話でしょうが。

 

 最後に、これまた「常連」の上田秀人氏の奥右筆秘帳シリーズ第6弾「秘闘」(☆☆☆)です。もういいや、と思いつつ、新刊が出たらつい買ってしまい、さらに面白く読んでしまう。プロの筆力を感じます。

 

          

 

 …話は飛びますが、岡田克也外相は昨日の記者会見で、仙谷由人官房長官の戦後個人補償再検討発言と、日韓基本条約締結当時は韓国は軍政下だった発言について、「もうすでに日韓で一つの答えに至ったことを覆す意味で言ったのではないと受け止めているが、事実関係を含めてよく確認したい」と述べました。

 

 岡田氏の現時点での受け止め通りならいいのですが、仙谷氏はあの、高木健一弁護士を「友人」と呼び、かつ「香港軍票と戦後補償」(明石書店)という本の共同執筆者の一人となっているある種「筋金入り」の人ですから、どうでしょうか。この問題は、細心の注意を払って今後もウオッチしていくつもりです。

 

 菅首相は本日、本気かどうかは分かりませんが一応辞意を伝えてきた千葉景子法相を慰留し、千葉氏はこれを受け入れました。菅氏としては、千葉氏に閣外に去られると、北朝鮮工作員のシン・ガンス元死刑囚の助命嘆願書にサインした議員は内閣で自分一人だけになってしまうので都合が悪かったのかもしれません。

 

 でも、神奈川選挙区で落選した人を、9月にどうせ党代表選と人事があるからと、党内事情で続投させるというセンスはいかがなものでしょうか。菅氏たちは3年前の参院選で勝って以降、「直近の民意」を繰り返し強調して政府・与党を揺さぶってきましたが、自分たちに示された民意には頓着しないようです。

 

 で、この菅政権と千葉氏のやり方について、本紙の杉本康士記者が本日の千葉法相記者会見で追及してくれたので紹介します。千葉氏は、杉本氏の厳しい(嫌味な)質問に声を荒げる場面もあったということで、いい仕事をしてくれました。以下、記者会見のやりとり(全部の質疑を掲載すると長いので約半分にしています)です。杉本記者は後半で出てきます。

 

記者 選挙終わって大臣の感想は?

 

千葉氏 本当に大変、結果としては厳しい結果が出ましたが、多くのみなさんに選挙を支えていただき、そしてまた多くのみなさんから頑張れという声も、それから、そういう意味ではたくさんの票をいただいたことについて、心から私も感謝をしたい気持ちでいっぱいでございます。ただ、そのみなさんにこたえきれなかったということが残念でございますし、私の責任の重さを感じているところでございます。ただ、大変意義のある選挙をさせて頂けたと思っております。

 

記者 選挙で落選されたが、今後大臣としての職務を続けるかどうかについて、菅とどういう話があったのか?

 

千葉氏 先ほど菅総理にご報告と御礼を申し上げてまいりました。で、私はやはり議員の1人として内閣に、閣僚に指名をいただいて職務を務めてきたわけですので、これは議員の任期というのが1つの区切りであろうというふうに私は思っております。ただ、総理から「内閣これまで一体として進めてきた。ここで内閣全体としてこれを維持しながらしっかりと1つの節目までやっていきたい。それについてはぜひその一員として継続をしてもらいたい」と、こういうご要請がございました。

まあ、私も内閣の一員として、この間、総理を支えてがんばってきたという、こういうこともありますので、私の気持ちとしてはいろいろございますけれども、総理のご要請ということについて、じゃあ私もその責任の一端はあるわけですので、ご要請に応えて、1つの節目というところまで内閣の一員としての役割だけは果たさせていただくということにさせていただくつもりでございます。

 

記者 大臣が進めてきた法務政策に問題があったか?取り調べの可視化とか、選択的夫婦別姓などマニフェストに謳ったもの(夫婦別姓はマニフェストには載っていない)が進んでこなかったり、死刑執行を執行していなかったことなど問題があったが故に落選したと思うか?

 

千葉氏 それはそうは考えておりません。やってきたこと自体については私は私なりの考え方、それからマニフェストでみなさんにもしっかりと示させていただいた。それにのっとって職務を、政策実現を図ってきたわけですので、これ自体に間違いがあったとかいうことはないと思っております。

ただ、それぞれの課題については非常にご意見が、ま、なんというか、分かれる課題であることは確かだろうというふうに思います。そういう意味ではそれをあまり是としない方にとっては、まあマイナスの評価になるでしょうし、逆に是とする人はまだできないかと、こういうことにもなるのかもしれませんが、進めてきたことについて間違いというか、それは私はないと思っておりますし、それが大きな原因だとは私は思っておりません。これ、私の、みなさんからの評価がこういう結果だったと思っております。

 

記者 閣僚が落選した後に長く務めた例はほとんどないようだが、一部批判の声もあると思いますが、どのようなつもりで、どのような考え方で職務をまっとうしていくのか?

 

千葉氏 私はこれまで内閣の政策というか、一体としての政策の1つとして法務行政、そして政策の実現に向けてまいりましたので、それをより前に進めてきちっと道筋をつけると。これが私のこれからの任務だというふうに思います。あとはそれを、きちっとその道筋にのっとって次へ引き継いでいくということだというふうに私は考えております。

 

記者 国会議員でない方が法務大臣を務めることについて今まで通り進めていくということだが、心理的な面でもまったく国民の代表として選ばれたわけじゃない方が死刑で人の命を奪ったり、指揮権を発動して人を拘束することは可能か?

 

千葉氏 これは基本的には憲法上でも認められているというか、憲法に反するということではありません。ただ、基本的な考え方自体は、常々これまでも申し上げてまいりました。新たに議員の立場ではないということの故を持って、それに大きく反することをやるべきではないというふうに思っております。

 

杉本記者 今後の大臣の進退だが、衆院、参院含めて国政選挙に再挑戦するつもりなのか?議員としての活動はないのか?

 

千葉氏 基本的には私はずっと参議院議員という立場でやってまいりました。それ以外のことをこれまで考えたことは基本的にはございません。で、参議院の議員としては1つの区切りであると思っております。

 

杉本記者 先ほど政策を進めて次の方に引き継ぎたいと発言した。これから大臣は具体的にどういった政策テーマを進めるのか?

 

千葉氏 これはもう、マニフェストに基づいて、これまで進めてきた、道半ばというか、あるいは一定の歩みを進めてきた、いるものがいくつかあるわけですので、それをよりきちっと道筋をつけて、次へお渡しをすることができるようにしておきたいということです。

 

杉本記者 先ほど大臣は政策テーマの中には賛否両論あるものがあって、それに反対する人は票を入れないだろうし…。

 

千葉氏 票を入れるかどうかはわかりませんけどね。

 

杉本記者 そういう趣旨の発言をしたが、たとえば夫婦別姓とか人権侵害救済機関設置法案などといった法案について大臣が推進してきたことは周知の事実だ。その事実について今回の参院選でNOを突きつけられた、あるいは支持が得られなかった。そうなると、残る任期の間にそうした政策を進める正統性はあるのか?

 

千葉氏 私の認識はそれ自体が否定されたというふうには思っておりません。それはそれに対してご批判というか、反対の意見をお持ちの方はいらっしゃると思いますが、しかも、これは私個人のということだけではなくて、マニフェスト、あるいは党として進めてきたということでもありますので、今、私がここで大きくここで変えるとか、変えないとかいうことはやるべき物ではないというふうに思っております。党としてやっぱりこれはマニフェストを変更しようとか、あるいは政策を変更しようと、こういう考え方になるのであれば、それはそれだとおもいますけれども、ただそれに従うということで、今、特段変更が加えられているということではございませんので、特段変わることはありません。

 

杉本記者 民主党は平成19年の参院選で勝利をして以降、安倍内閣、福田内閣、麻生内閣に対して直近の民意は自民党政権にNOを突きつけたのであるから解散総選挙なり信を問うべきだと議論してきた。現段階での直近の民意は、民主党が選挙で大敗し、大臣は落選した。にもかかわらず大臣の座にいる。最初から民間枠じゃなくて、議員として内閣の一員となり、そして落選したにもかかわらず大臣のままでいることは民主政治のあり方として適正なことだと考えるか?

 

千葉氏 先ほど申し上げました。私もそれは1つの区切りではないかというふうに思っております。総理にもそういうことを申しておりますが、内閣としての1つのけじめをつける。けじめというか、区切りまでという、総理からのご要請、これについて私も一員であったものとして、そのご要請を受けてまっとうさせていただくという、総理に返事をさせていただいたということでございます。

 

杉本記者 総理の要請があったことはわかるが、その前に民主政治のあり方としてそのまま大臣の座にいることは問題ないのか?

 

千葉氏 (声を荒げ)今、申し上げました、通りです。

 

記者 民間人になってもこれまで通りということであれば、これまで死刑執行のサインをしていないが、今後もサインはしないのか?

 

千葉氏 あの、私、サインをしないとは一度も申し上げたことはありません。

 

 …まあ、千葉氏の言う通り、受け取り方は各人各様でいろいろあるでしょう。でもねえ、やはり潔くないと感じてしまうのですが。千葉氏に限らず、党執行部もこういう選挙結果を受けても誰も責任をとろうとしていないし、なんだかなあ。

 

 

 参院選から一夜が明けて、新聞の社会面を開いて驚きました。劇作家のつかこうへい氏の死去が報じられていたからです。以前のエントリにも書いたことですが、私はつか氏にインタビューしたことがあり、そのときの話がとても印象深かったので、本日は政局がどうのこうのという話は抜きにして、その際の記事を紹介したいと思います(選挙結果については、現在、新聞紙面をつくるので精一杯なので、また改めて書くつもりです)。

 

つか氏は当時、演劇のことなど何も知らない社会部の若手記者だった私を相手に、実に分かりやすく、かつ懇切丁寧に答えてくれました。心よりご冥福をお祈りします。

 

作家・つかこうへいさん語る 「慰安婦報道一部マスコミに違和感」 [ 19970404  東京朝刊  社会面 ]

 

 歴史は、もっと優しいまなざしで見つめなければいけない-。在日韓国人で、このほど『娘に語る祖国 満州駅伝-従軍慰安婦編』(光文社)を出版した直木賞作家、つかこうへいさん(四八)は慰安婦問題について、こう語りかける。執筆に当たって取材をし、実態を知れば知るほど疑問は深まり、慰安婦を「悲惨」という視点ばかりで描きたがる一部マスコミ報道への違和感が募ったという。(教科書問題取材班)

 

 『娘に語る祖国』は平成二年、つかさんが当時四歳だったまな娘のみな子さんに、日韓両国への思いや人間観など、さまざまなメッセージを優しく語るという形でまとめられた。今回、発売されたのは続編。題の「満州駅伝」は、戦中のある日、満州の平原で慰安婦と日本兵による男女混合駅伝が催された-というつかさんの創作物語だ。

 

 「慰安婦制度自体、ひどいことはひどい。でも、この問題は多面的で、真実を一つの見方にくくってはいけないと思う。韓国の人が読んだら反感を覚えるかもしれないが、僕はオタオタしながらも誠実に書いたつもりだ」と、つかさんは言葉を選びながら話す。

 

 「ぼくは『従軍』という言葉から、鎖につながれて殴られたりけられたりして犯される奴隷的な存在と思っていたけど、実態は違った。将校に恋をしてお金を貢いだり、休日に一緒に映画や喫茶店に行ったりという人間的付き合いもあった。不勉強だったが、僕はマスコミで独り歩きしているイメージに洗脳されていた」

 

 つかさんは当初、慰安婦問題についてエイズ、オウムと並んで同時代に生きる作家として避けて通れないテーマだと感じ、『二等兵物語』という劇の脚本を書き下ろすつもりだった。

 

 「悲惨な境遇にあった慰安婦と、同情した日本兵との恋もあり得たのでは」と作家として想像。「慰安婦のつらい日々にも、救いはあっていい」と、あくまでフィクションで描こうと元日本兵らに取材を進めると、何度も「あれっ」と驚かされることになった。

 

 「悲惨さを調べようと思っていたら、思惑が外れてバツが悪かったが、慰安婦と日本兵の恋はもちろん、心中もあった。僕は『従軍慰安婦』という言葉が戦後に作られたことや、慰安婦の主流が日本人だったことも知らなかった。彼女たちの境遇は必ずしも悲惨ではなかったことが分かった」

 

 とはいえ、つかさんは「慰安婦の二百人中百九十九人が違っても、一人にでも強制性があれば、言い訳はできない」という立場だ。また、「営業行為の側面が大きくても、人間の尊厳の問題なのだから、元慰安婦には何らかの誠意を見せ続けるべきだ」とも。その上で、「時代の貧しい状況も考慮しなければいけないのでは」と問いかける。

 

 「日本はよくないことをしたし、中には悪い兵隊もいただろう。でも、常識的に考えて、いくら戦中でも、慰安婦を殴ったりけったりしながら引き連れていくようなやり方では、軍隊は機能しない。大東亜共栄圏をつくろうとしていたのだから、業者と通じてはいても、自分で住民から一番嫌われる行為であるあこぎな強制連行はしていないと思う。マスコミの多くは強制連行にしたがっているようだけど」

 

 もともと、生活習慣が朝型のつかさんは、深夜テレビの討論番組などは見たことがない。『娘に語る-』は、教科書論争のことはほとんど知らず、たまたま出したという。

 

 「慰安婦問題を教科書に載せるべきかどうかを声高に発言する立場にないけれど、『従軍慰安婦』という言葉はあまりに強すぎるから。載せるのであれば、それを読む子供が自分で考え、(どちらが正しいか)選択する余地が残る記述にすべきだと思う」

 

 読者からは「社会科の先生はみんな、この本を読んでから(慰安婦問題を)生徒に教えたらいい」(東京都中野区の女性)といった励ましの手紙が寄せられている。

 

最後に、つかさんは「人間の業(ごう)というか、こういう難しい問題は、自分の娘に語るような優しい口調で、一つひとつ説いていかなければ伝えられない。人は、人をうらむために生まれてきたのではない。歴史は優しい穏やかな目で見るべきではないか」と訴えている。

 

                

つかこうへいさんの本名は、金原峰雄。昭和四十五年、戯曲『郵便屋さんちょっと』でデビュー。四十九年、『熱海殺人事件』で岸田国士戯曲賞を最年少で受賞し、五十七年に『蒲田行進曲』で直木賞。平成三年、『飛龍伝90』で読売文学賞。六年に東京都北区文化振興財団と「北区つかこうへい劇団」を、七年には「大分市つかこうへい劇団」を旗揚げした。

 

 …下の写真は、そのときにつか氏にもらったサインです。大事にしなくてはいけませんね。私も娘がいるので、この本は特に胸に響きます。本日は時間がないので簡単ですが、ここまでとします。

 

     

 

     

 

 それにしても、山梨は惜しかったなあ…。

 

 

 さあ、泣いても笑っても明日が参院選の投開票日となりました。各党の幹部、候補者らはいま、祈るような気持ちでしょうね。というか、ずばり神仏だか何だかにそれぞれ祈っているでしょう。私も3年前の参院選時は、この選挙の帰趨がそのまま日本の将来に直結する、場合によっては日本は10年は時を失うと考えていたので、かなりはらはらしながらじっと見守っていました。

 

 でも、すでにその結果が出てしまった今回は、割と冷めた、突き放したような気持ちで淡々と見ています。特定選挙区には強い関心がありますが、あまり一喜一憂するような気分ではありません。

 

 まあ、投開票の前日にあれこれ書いてももう仕方がないので、本日は勝海舟の「氷川清話」(江藤淳、松浦玲編)を読み返していて、何となく現在の気分に合うなあと感じた文を二、三紹介してお茶を濁します。いつの時代も人間は変わらないものです。

 

     真の国家問題

 今日は、実に上下一致して、ドウやって此の東洋の逆運を切り抜けようかと肝胆を砕かねばならぬ時で、国家問題とは、実にこの事だ。今頃世間で国家問題といつて居るのはみな嘘だ。あれはみな、自分の頭の上の計算(カンジョウ)ばかりだ。今日の場合、議員の頭の揃ふ揃わんのと気を揉むのも、あまり賞めたことではあるまいよ。

 幕府の末に、いろいろ当局者の頭を痛めたのも、畢竟、この国家問題のためだ。あの頃もずいぶんやかましかったが、三十年後の今日も、やはり昔の通りだ。おれも国家問題のためには、群議を斥けてしまつて、徳川氏三百年の幕府をすら棒に振つて顧みなかつた。当時には、一身の死生はもとより、徳川氏の存亡も眼中にはおかなかつたが、おれの生き残つたのも、徳川氏が七十万石の大名になつたのも、今から考へると、まるで一場の夢サ。

 

     気運は恐ろしい

 世の気運が一転するには自ずから時機がある。昔西洋人は七の数をもつてこれを論ずると聞いたが、これは真だろうヨ。いつか、おれはかういふ文を作つた。

 

 人心漸く移転せんとする前先づその機動くの兆顕然として生ず。機先転じて漸く顕著ならんとす。此際人心穏やかならず、論争紛々、彼我得失を争ひ、誹謗百出、旧主改良を論ずるもの三、四年、或は五、六年究極なきを。或は有力者あれば其説に附和雷同して団結の勢を生ず。

 

 気運といふものは、実に恐るべきものだ。西郷でも、木戸でも、大久保でも、個人としては、別に驚くほどの人物でもなかつたけれど、彼らは、王政維新といふ気運に乗じてきたから、おれもたうとう閉口したのヨ。しかし気運の潮勢が、次第に静まるにつれて、人物の価も通常に復し、非常にえらくみえた人も、案外小さくなるものサ。

 

 …まあ、私は今後も、その各政党、議員の「自分の頭の上の計算」や「あまり賞めたことではない」ことを熱心に記事にしていかなければならないわけで、いまさら「一場の夢」うんぬん言う資格も何もないのですが。さて、現政権の「気運の潮勢が静まる」スピードはこれまででも最速の部類に入るわけですが、国会が「小さい」人ばかりになってもなあ。勝海舟はこうも言っています。

 

     人材は製造できない

 全体、政治の善悪は、みんな人に在るので、決して法にあるのではない。それから人物が出なければ、世の中は到底治まらない。しかし人物は、勝手に拵へうといつても、それはいけない。世間では、よく人材養成などといつて居るが、神武天皇以来、果して誰が英雄を拵へ上げたか。誰が豪傑を作り出したか。人材といふものが、さう勝手に製造せられるものなら造作ないが、世の中の事は、さうはいかない。人物になると、ならないのとは、畢竟自己の修養いかんにあるのだ。決して他人の世話によるものではない。

 

 …参院選後は忙しくなりそうですが、私は今年は何があろうと、周囲や上の顰蹙を買おうと夏休みをきちんととるつもりでいます。この世の中は結局、なるようになるとしか言いようがない場所なのでしょうから。

 

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