2010年09月

  

 

 昨夜は政治部の歓送迎会があったため、きょうは二日酔い気味です。そろそろ、本気で酒を控えないと、命取りだなと思いつつ、夜になるとつい…。さきほど書店に立ち寄ったところ、好きな漫画、ベルセルクの最新刊(35巻)が発売されていたので早速購入しましたが、一杯やりながら読むと余計に楽しめるし…ああ心は千々に乱れます。

 

  それはともかく、本日午前の定例記者会見で、仙谷由人官房長官が沖縄・尖閣諸島沖の漁船衝突事件に関し「中国様はあまりお変わりになっていない」という認識を示して、反省の弁を述べたので紹介します。あまりに中国に対する見方がナイーブなので笑ってしまいました。少なくとも、これまでの日本の対中外交から何も学んでこなかったということがよく分かります。

 

 記者会見では、某社の記者が仙谷氏が13日の記者会見で「(船長を除く14名と船がお帰りになれば、また違った状況が開けてくるのではないか」と楽観論を述べていた点についてただしました。私も13日にその部分を聞いて、ずいぶんと甘いことを言うなと感じたのでよく覚えていました。

 

 「お帰りになれば」、ねえ。それで、きょうは仙谷氏は、そのときの判断についてこう悄然と語りました。いつもは強弁とすり替えで誤魔化すことの多いこの人にしては珍しく素直な口ぶりでした。

 

「多分、これでいいんだろうと。というよりも、中国側も理解してくれるだろうと、ある種、判断をしておったわけですが、やっぱり司法過程についての理解がまったくここまで異なるということについて、もう少しわれわれが習熟すべきだったのかなと思います。もっと言えば、『20年前ならいざ知らず』という気分が、私にはありました。つまり、司法権の独立とか、政治・行政と司法の関係というものがこの間近代化されて、随分、変わってきているなあという認識を持っていたんですけども、そこはあまりお変わりになっていないんだなあと改めて考えたところです」

 

 …まあ、今さら遅いですが、本当に反省をして中国への見方を改めたのなら、全く無反省であるよりはマシですね。それにしても、なぜ仙谷氏は中国に対しては「お変わりになっていない」などと敬語を使うのか。昨日の記者会見でも、東シナ海のガス田、白樺付近で中国の海洋調査船がうろついていることについてこう述べました。

 

 「まあ、周辺にいらっしゃるということは確認をしているようです。

 

 いったいどんなトラウマから、中国の船にまで敬語を使うような精神状態に陥っているのか分かりませんが、いやはや不思議です。よほど恐ろしい目にでも遭ったのか。それとも、深く心にしみこんだ何かのコンプレックスがそうさせているのか。

 

 それで、全然違う話なのですが、今朝の朝刊に社会学者の小室直樹氏の訃報が載っていました。小室氏といえば、ソ連崩壊を予測した「ソビエト帝国の崩壊」など数々のベストセラーを書いた人であり、私も大学生のころに著書を片っ端から読んだ記憶があります。中には、「これはちょっと…」というものもなくはありませんでしたが、該博な知識と独特の理論に基づく一本筋の通った論はとても勉強になりました。

 

 たまたま、以前何かの折に職場に持ってきてそのままになっていた小室氏の著書「これでも国家と呼べるのか」(クレスト社、平成8年刊)が手元にあるので、追悼の意を込めて少しそこから引用します。

 

 《日本人はまだ「土下座外交」の本当の恐ろしさを理解していない。国際慣行上、みずから謝罪するとは責任を取ることである。責任を取るとは補償に応じることである。このとき、挙証責任はこっちに押し付けられてしまうのだから、相手の言いなり以外にどうしようもない。(中略)

国際法上、講和条約またはそれに該当する条約(例、日中共同声明、日韓基本条約など)を結べば、それ以前のことは一切なかったことになる。もはや賠償の義務はない。それなのに、日本のほうから謝罪したので、一切が蒸し返されてしまった。佐藤内閣の日韓基本条約や田中角栄が周恩来に賠償を放棄させた日中共同声明など、せっかくの努力がみんな無駄になった。》(第一章 謝罪外交は国際法違反)

 

 《「歴史観」は個人の内面の問題である。権力がこれに介入することは絶対に許されない。これ「デモクラシー」の、いやそれよりずっと前の「リベラリズム」の鉄則ではないか。個人の内面の「歴史観」に、外国の権力者が介入し、これを必ず改めさせる。これ、日本を属国(植民地)視したことである。いや、属国視しただけではない。奴隷扱いしたことでもある》(第二章 誰がデモクラシーの敵か)

 

 《大蔵省銀行局は、アメリカの法律も慣行も知らなかった。ルールに反して、大蔵省は、大和銀行から不正の報告を受けながら、米当局に六週間も通告を怠ったのであった。通報を怠ったことに関する榊原英資国際金融局長の説明が、日本の金融機関と当局の信用を泥土に落とした。榊原局長は通報遅延の理由説明で、何と、「日米の文化の違い」に言及し、「対米連絡の遅れについては不適切な措置は何もなかった」と述べた。(中略)

この「文化の違い」という説明は、大蔵省(特に国際金融局、銀行局)が、自由市場について何も知らないことの告白である。自由市場においては、完全情報が前提である。何の法律もルールもなくても、それは当たり前のことである。それと正反対の解釈をして、通報を遅延させるとは。これは文化の差ではない。自由市場の何たるかを知らない白痴的無能ぶりが招来させた結果にほかならない。(中略)

ちなみに、この榊原英資という男、昭和六十年、理財局国庫課長として「昭和天皇在位60年記念10万円金貨」発行を画策した人物である。だが翌年に発行された金貨の原価は4万円。販売価格の10万円とは6万円の差があった。日本経済バブル化第一号の事件を起こした犯人だが、ここに逸早く着目した海外の偽造団は偽金貨を大量に偽造。結局、大蔵省でも見通しが甘かったということで、改修策を講じることになった。だが、この大事件を犯した榊原は、国際金融局長に上りつめ、日米交渉の最高実務責任者となっている》(第六章 ただちに、大蔵省を解体せよ)

 

 …ちょっと引用が長くなってしまいましたが、快刀乱麻を断つかのような小室氏の文章がもう読めないかと思うと残念です。謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

 

 今回の中国漁船衝突事件と、その後の政府対応、政治家や国民の反応を見ていて、昨年10月4日に惜しくも急逝し、もうすぐ1年を迎える中川昭一元財務相のある言葉を思い出しました。

 

 あれは福田内閣のころだったか、ある日、中国による東シナ海のガス田開発と、日本側の抗議に対するけんもほろろの傍若無人な対応が話題になった際のことです。中川氏は私にこう語りました。

 

「まあ、中国批判はたやすいんだけど、むしろ『誠意を持って話せば分かる』と言うようなことばかり言って行動しない、きちんと対抗しない日本側の方が問題だ。政治は自国の国益を守るのが第一だ。私が中国の政治家なら、やはり今の中国のようなやり方をすると思う。より大きな問題は日本側にあるんだ」

 

 当時、私はこの言葉に深く頷き、全くその通りだと同意しました。国際社会の倫理レベルはまだまだ低いものだし、ましてや中国がどういう国であるかは初めから分かり切っていることなのです。それなのに、中国側が中国としては当然の振る舞いをすると一々うろたえるというのは、うろたえる側がおかしいということですね。

 

 この言葉を思い出した理由は、民主党の岡田克也幹事長(前外相)が25日に奈良市内で記者団に語った次の言葉がとても気になったからです。

 

「私は、中国にとってももう少し冷静に対応された方がいいのではないかと。国際社会の中で、民主主義国家でないし自由とか人権とかそういう観点で見ると少し違うと言うことがみんな分かってはいると思うがこういうことがあからさまになってしまうということはやはり決して中国にとってプラスじゃないと思いますし、がっかりしている日本人も多いのではないか」

 

 …なぜか日本の国益より先に中国の国益を慮っているように聞こえます。日本としては、むしろ中国がどういう国であるかをこの際、国際社会にどんどんアピールすべきなのに、「中国様、お気を付け下さい」と言っているようです。しかも、「みんな分かっていると思うが」と自分で言っている内容について、暴露されて公になっては困るという矛盾した、どこまでも中国をかばうような姿勢もうかがえます。

 

 そんな戯言を言っている暇があるなら、この現在は日本の一方的な敗北となっている事態をどう逆転させ、利用するかを考え、その一端なりとも示してほしいものです。そして、これに関連し、民主党幹部は26日、オフレコで次のように述べ、中国漁船側が体当たりをしかけてきたのが一目瞭然だとされる海保のビデオテープ公開に後ろ向きな姿勢をあらわにしました。

 

出したら、国民は激昂するだろうなあ

 

 中国様に不利なことは国民に見せたくないというのです。また、強い国民世論を受けて中国に立ち向かおうという発想もみられません。世論の後押しを受けた外交は強く、世論が引いてしまうと弱いというのは常識なのに。ここにも事なかれ主義が顔をのぞかせています。やれやれ。

 

 外交はときに、相手国だけでなく国民をも騙しながら、初期の目的(国益)を増進するためのものですから、何もいつも正直に手の内のカードをさらせ、なんて言うつもりは全くありません。

 

 中川氏は、東シナ海のガス田の共同開発合意ができた際、表向きは「これでは中国側に有利なばかりだ」と不満を表明していましたが、その裏では外務省の事務方を慰労し、「先行開発を進めていた中国から、よくぞここまで譲歩を引き出した」と使い分けていました。それは、自分のような対中強硬派が下手に「これでいい」と評価してしまうと、中国側に「それではもう少し押してみようか」という隙を与えることになることが分かっていたからです。

 

 外務省事務方もこれをよく心得ていて、「中川氏のような人が、ガス田合意は全然不十分だと言ってくれると、中国側に『日本の世論はこうなんだぞ』と言えるので助かる」と語っていました。

 

 今回の件にしても、国民世論をもっと激昂させて、それをもとに断固たる毅然とした対応をとるという選択肢だってあるはずなのです。東シナ海を「友愛の海」と呼んで中国の好き放題に任せたルーピー氏はじめ、民主党の外交はなぜこうも幼稚なのかと頭が痛くなるのでした。

 

 

 《…もう一度やりなおす?しかしそれはなんにもなるまい。やりなおしたところで、またこうなってしまうだろう。なぜといって、ある人々は必然的に道に迷うのだ。彼等にとっては、もともと本道というものがないのだから》

 

 《――彼はいえそうな文句を、ひそかに案じて見たが、それを口に出すだけの勇気は見出せなかった。それにまた無論いつもの通り、二人は彼を理解せぬであろう。彼がやっと何かいっても、けげんそうにそれを聞くのであろう。なぜなら彼等の言葉は、彼の言葉とは違うのだから》

 

あまり適当な引用とはいえない(全く関係ない!)でしょうが、菅直人首相と鳩山由紀夫前首相のことをぼんやり考えていたところ、なぜか高校時代に何度も読み返した一節が頭に浮かんだので、トオマス・マンの「トニオ・クレエゲル」から上の言葉を抜き出してみました。

 

 私は民主党の旧社会党系議員や社民党の議員、また、自民党でも加藤紘一氏や河野洋平氏、谷垣禎一氏らの発言を聞いていると、よく「ルーピーの壁」を感じます。もとより、私が絶対正しいわけではないので、向こうも私の書いたものを読む機会があれば似たような感想を持つのかもしれませんが、どちらにしろ根本的に異質なものがあるようです。

 

 今朝の産経紙面でも、1面では菅首相のことの重大さを理解していない脳天気な無責任ぶりを指摘し、オピニオン面では鳩山前首相のそもそも政治家としての資質が全くないどころか社会人としても落第である立ち居振る舞いについて批判しました。でも、こうした私の言葉は、当人たちが仮に目を通したとしても、せいぜいちょっと不愉快にさせるだけで、真剣に受け止められることはないのだろうとも思っています。

 

 先日も、某省副大臣は、産経の記者があいさつしたところ、「民主党をたたいてナンボの産経か!」と反応したそうです。批判されている問題点についての反省はなく、ただ「敵性新聞」(元政府高官)と色分けするだけである場合が多いようです。もちろん、少数ですが、産経の批判記事を歓迎か、そこまではいかなくてもきちんと受け止める民主党議員もいますが。

 

 ただ、効果が薄くても、自分たちの仕事がどこまで建設的な意味があるのかときに分からなくなっても、「おかしいことはおかしい」「それは違うだろう」と言い続けるしかないのだろうと思います。民主党の某閣僚は「産経もほめるときにはほめなきゃダメだ」と文句を言ってきましたが、ほめたくてもなかなかほめるところがない、というのもまた事実です。

 

 ルーピー氏本人には、もう宇宙語しか通じないのであるいは何を言っても仕方がないのかもしれませんが、その周囲の心ある人には何かが伝わってほしいと願っています。また、菅首相は、心には何も響いていなくても、ポピュリストなのであるいは批判も一定の効果を及ぼすかもしれません。

 

 とにかく、徹底的にやるしかありませんね。

 

 

 昨日の中国人船長の釈放の報に接し、不謹慎かも知れませんが私の脳裏には「日本終了」という言葉が駆けめぐりました。官邸記者クラブの他紙のブースからも「最低だ」といううめき声が聞こえましたが、この決定については千万言を費やしても語り尽くせない憤りと脱力を覚えます。で、昨日はそんな思いにとらわれつつも、とりあえず関連記事で紙面を埋めなくてはいけないので原稿執筆に励んだのですが…。

 

 一夜明けても、もう何も書きたくない思いが募ります。でも、それではせっかくここを訪問してくれた人にナンなので、本日は昨日のくだらない釈放劇について、政治家たちがどんなコメントをしたかを紹介します。私の感想はつけません。何かの参考になればと思います。

 

【民主党】

 

松木謙公農水政務官「うーん。まあ、どういうことなのかねえ。まあ、私ごときがどうのこうのいうことじゃないでしょ、こんなのは、まだ」

 

 鉢呂吉雄国対委員長私は国対委員長として、今、述べる立場にないと思ってます

 

 山口壮政調筆頭副会長中国が本当に経済大国のみならず、政治的にもさらに大きな役割を果たそうとするならば、こういう子供みたいなことやらないようにしないと、友達がなくなっちゃう。中国と一緒にやっていても、いつこんなことをやられるか分からないとなったら、安心して友達になれない。今、中国は覇道できている。力でねじ伏せようという覇道だ。日本はここは王道でいかないといけない。対抗措置をとるとかいうことはすべきではない。船長の処分保留については、今回、筋を通すということが必要だから、何で処分保留したかの筋が見えてこないといけない。日本の国内法に従って処分を行おうとしたのだから、裁判を、いろいろな事情を斟酌して、異例に早くするということはあり得るが、それなしに処分保留しちゃうというのはちょっと筋がおかしい」

 

 仙谷由人官房長官刑事事件として刑事訴訟法248条の意を体して、そういう判断に到達したという報告を受けたので、それはそれとして了としている。私自身も起訴便宜主義の、行使して検察官が、総合的な判断のもとに、身柄の釈放やあるいは、処分をどうするかということを考えたとすれば、それはそれで、そういうこともありうるのかなと。戦略的互恵関係を構築するについて、刑事事件との処理とは別に何が良くて、何が悪いかというのは、それは別途の我々が考えるべき大局的な政治判断が必要だ。日中関係が悪化する可能性、あるいはその兆候が見えていたことはまがうことなき事実ですから、ここから改めて日中関係が重要な二国間関係であって、戦略的互恵関係の中身を豊かに充実させる方途を両国とも努力しなければならない」

 

 平野博文前官房長官おかしいと思う。どういう理由なのかはっきり説明しないといけない。勾留延長して途中でと。それなら、何のために勾留延長したのか意味がよく分からない

 

 柳田稔法相「検察当局において被疑者を釈放することを決定した後、その発表の前に報告を受けた。法務大臣として検察庁法第14条に基づく、指揮権を行使した事実はない。いまだ、被疑者に確認すべき事項もあり、手続きにも時間を要するので、被疑者の釈放の具体的日時等は未定であると承知をいたしております。被疑者を釈放することとした理由は、検察当局において被疑者が操船していた漁船を石垣海上保安部所属の巡視船「みずき」に故意に衝突させたことはこれまで収集した証拠によって明白であると認めたものの、計画性等がみとめられないこと、海上保安官が負傷するなどの人身被害がなかったこと、被疑者はトロール漁船の一船長で本邦における前科がないこと、日中関係の重要性、関係当局による今後の再発防止の努力等を考慮して、処分保留の上、釈放することとしたものと承知している。個別の事件における検察当局の処分にちて、法務大臣として所感を述べることは差し控えるが、一般論として申し上げれば、検察当局において諸般の事情にかんがみ、法と証拠に基づいて適切に判断したものと承知している。 以上が、現時点で私がお話しすることができるすべてだ」

 

岡田克也幹事長経緯は聞いていない。もう既に、私は政府の人間ではない。政府であっても、聞いていることはないと思う。那覇地検がそういう判断をしたということであれば、それについて憶測を交えてモノを言うことはできない。地検の判断は、尊重されるべきだ。基本的に検察がどうするか。今回、最終判断はしていない。起訴するかどうかについては判断をしていない。身柄を釈放したということにとどまっているわけだ。そのときに、総合的に判断するということは、現行制度上ありうることだ。検察の判断に対して政府あるいは政治家がいちいちコメントすることは、なるべく避けるべきだ。まだ最終的には結論は出ていない。そのことはよく踏まえた上で議論したほうがよい。大事なことは、やはり司法の独立。検察が自ら判断したということが重要なことであって、それが何かどっかの、日本政府であれ、中国側であれ、何らかの影響を受けて、本来の判断を曲げてしまったという風に受け取られることが、最大の国益を損なうことになる。だから、そういうことではないとしっかりと発信していくことが重要である。まるで中国から言われたから判断を曲げたような、そういう風に理解をされたとしたら、それはまさしく国益を損なうことだ」

 

 馬淵澄夫国土交通相今回の判断は司法当局、検察の判断だ。これについて我々は今、口を挟む立場ではない。海上保安庁の、我々職員の仲間達は、しっかりとその警備に対して当たっていただいたと思う。(衝突場面のビデオ映像を公開するかは)これもその捜査の中での判断ということになるので、私どもとしてはコメントを差し控えたい。今回の判断については特段の思いというのはない」

 

 松本剛明外務副大臣司法が判断をされた内容は法に基づいて判断したと思うので、それが政治的であるかいなかは私どもがいう立場にはない。日中関係については冷静に対応してもらいたいと言ってきたわけだが、仙谷官房長官も日中関係に悪化の兆候が見られるのも事実と言っている。諸般の情勢からすれば、そういう認識もあるのかなと思っているが、私どもとしては戦略的互恵関係の構築に努力していきたい」

 

 芝博一副幹事長「個人の立場は別にして、がっかりしている。無条件の釈放は、納得いかない部分がある。しかし、政治状況を考えれば、日本は大人の対応をした。中国と同じ立ち位置で喧嘩したら、よいことは残らない。政治経済を含めて中国の体質を見極めて判断だと思う。外交は相手の国の思想信条を踏まえて考慮しないと」

 

 中津川博郷衆院議員「民主党内の保守派は怒り心頭だ。その話で持ちきり。皆、びっくりしているし、弱腰の対応にあきれている。あくまで想像だが、検察の信頼が地に墜ちている今だったからこそ、上としては(圧力をかけるのが)やりやすかったのでは。日本外交の敗北だ。初動の段階で、漁船がぶつかってきたのを写したビデオを公開し、世界の世論を見方につけておけばよかった。中国にしてやられた。罪のないフジタ社員を「人質」にとったり。外交交渉をしたたかにしないと国益を損ねる。そこを同じ党員ではあるが、果たしてどこまでわかっていたのだろうか。(政府の一番の問題は)親中派が1人もいないことが露呈されたこと。中国はそれを見透かし、日本をなめている。田中真紀子さんや小沢一郎さんに活躍してもらうのも一つの手だったのかもしれない」

 

 松崎公昭衆院議員「弱腰外交と非難すれば済む話ではない。日本は主体的な安全保障を考えていく必要がある。これまでも、こういう状態を放置してきた。今後の反省材料にしなければならない」

 

 前原誠司外相「検察が判断したことについては、政府の一つの機関が決めたことだから、我々はその対応に従う。閣僚の一人として、それに従うというか、了としたい。もし同様の事案が起きれば、また同じような対応を粛々とすることに尽きる」

 

【自民党】

 

 谷垣禎一総裁「今まで政府は国内法に基づいて粛々と処理すると言ってきた。ところが今回、処分保留で那覇地検が釈放した。那覇地検のコメントを見ると「捜査を継続した場合、我が国国民への影響や今後の日中関係も考慮すると、これ以上身柄拘束を継続するのは妥当でないと判断した」と言っている。まず第一に、捜査機関が言うべきことでない。外交を考え、政治的判断を加えた。その役割は政府が担うべきことであって、検察がこういうことを言うのはまったく理解できない。なぜこういう判断をしたのか、政府が責任を持って説明しなければならない。政治的判断を加えた末にこういうことを言ったのなら、国民にきちんと説明する必要がある。ビデオテープなどを発表しなかったが、それが問題の敏速な、妥当な解決を妨げたのでないか。小泉政権の時は、尖閣に上陸した者に対し、すぐ国外退去にした。そういう処理の仕方もあり得たと思う。国内法に基づいて粛々となると、ちょっと今度の処理は腑に落ちない。少し腰砕けになったのでないか。そういう反応が出てくる恐れもある。検察が今のように政治的判断を加えてやるというところで、間違ったメッセージになっちゃってるんじゃないか」

 

 石破茂政調会長「那覇地検の会見を見ると『今後の日中関係を考慮して』などと言っているが、こんなことを判断する権能がいつ検察に与えられたのか。それはおかしい。その判断の正しいおかしいの前に、こういうことを検察が判断する立場にないはずだ。そこは権限を越えた政治的な判断を検察が行ったというのは極めて問題だ。なぜ検察がこのような判断をしたのか、いかなる権限を持って判断したのか、政府は明らかにする必要がある。官房長官は今は総理の臨時代理だろうから、総理の臨時代理である官房長官の仙谷由人氏がこういうような判断を検察がするに至った理由を法律のプロとして日本国の統治機構の観点から述べる必要があるだろう。会見でこの部分(日中関係のくだり)はなくてもいい。何でこれが入っているのか。そこはかの国へのメッセージかもしれないが、こんなことを検事正が言っていいのだろうか。政府の責任の所在が全く不明だ。検察は何でもやるのかということになる。仙谷さんが一番分かっていると思う。あらゆる泥をかぶるというのなら、臨時代理が言えばいいのではないか」

 

 安倍晋三元首相「日本の領海を侵犯し主権を侵害し、さらに海保の巡視船に体当たりした船の船長を中国の圧力に屈して釈放する。最悪の判断だ。この間違った決断は結果として新たな危機を呼び寄せることになるだろう。民主党政権の領土領海を、国益を守る意志の強さを中国は見ていた。そして見極めた。その結果の領海侵犯であり、逮捕に対する傲慢な圧力だった。叩頭し続ける民主党政権はさらなる叩頭を求められ、日本は尖閣を失うだろう」

 

【公明党】

 

 山口那津男代表「処分保留ということは形式的には結論が出ていないわけだから、最終的にどうするかは見守らなければならない。しかし、身柄を釈放するわけだから、一つの転機にはなりうる。日中の外交関係をこれ以上、こじらせる、ひいては経済社会関係にいろいろな影響を及ぼすことはだれしも本来望んでいないことなので、ここは法的な主張をぶつけあうよりも、むしろ政治的な解決をしていくべき場面に転じたと思う。日中関係は国際関係の中でも日米関係に匹敵する重要な関係になりつつある。戦略的互恵関係をお互いに認識し高めていこうと、こういう流れもできた。また、東シナ海は平和と協力の海にしようということも共通の認識になっているわけだから、あくまで日中としては様々な課題、あるいは波風があったとしても対話を重ねて平和的な解決に努力をするのが基本でなければならない。いろいろ日中双方にあったが、大局観に立って冷静にこれに対応することは今後とも必要なことであり、起きてしまったことについても冷静に振り返るということも重要だ。もっと大きな大局観に立ってむしろ関係を前進させる、中国あるいはその他の東アジアの国々を含めてこの地域を安定化させることに努力すべきだ」

 

【みんなの党】

 

渡辺喜美代表「中国の圧力に屈したとしか思えないような決定だ。一連の中国の圧力に屈して日本の領海で犯罪を犯した船長を釈放したのならば、菅内閣の弱腰外交を糾弾しないといけない。常識的に地検の判断でできる話ではない。当然のことながら政権のトップの決断によるものだろう。一連の中国の強硬姿勢は民主党政権の足下を見透かして日本政府を試しにかかってきていたということが言える。試されている以上、日本が毅然とした態度を取り続けるのが当然なことで、それを途中でこうした腰砕けの決定をしてしまうのは、この先大変な状況に日本を陥らせてしまったなという感じだ。ここまで明白な外交的敗北で解決するというのは開いた口がふさがらない。これから日本に対して、中国のみならず何か要求がある時には無理難題をふっかけてくるだろうということが当然予測される。もう無理難題をふっかけられたらすぐ腰砕けになって釈放でも何でもしてしまうということを見せつけてしまったわけだから。今回も映像が出てくるのかと思っていたのだが、そういうものが全く公開されずに、うやむやのままに唖然とする腰砕け釈放をやってしまった。きちんとその映像を公開すべきだと思う」

 

【社民党】

 

 福島瑞穂党首「那覇地検の処分を尊重するしかない。関係諸国ときちんと協議をした上で、このようなことが起きないように再発防止の必要がある。やはり政治上、経済上、非常に緊密な関係なので、こういう緊張関係が発生しないように再発防止も含めきちっとやる必要があると考える。釈放したのは那覇地検なので、それは那覇地検の判断だと思う。それは刑事上の処分としての検察庁の判断だと思うので、それがいいとか悪いとかいうよりもそれは尊重せざるを得ないと思う」

 

【国民新党】

 

 亀井亜紀子政調会長「日本に東シナ海の領土問題は存在しないわけですから、そこで起きた事件について公務執行妨害、国内法に基づいて粛々と進めればよかったことだ。それを釈放したということは何らかの政治的判断が働いたと考えざるを得ない。それは検察の仕事ではない。やはり、外交・安全保障政策に関しては、民主党の中にもいろんな方がいる。保守派もいらっしゃるが、非常に不安を感じている。夏に防衛白書の公表を遅らせたことがあった。あの時に、やはり連立を組む国民新党はまったく相談を受けていないが、やはり私は質問主意書も出して、なぜ遅らせたのか、竹島問題のことをからめながら質問したが、まともな回答を得られていない。真実は分からないが、対外的に竹島問題を考慮したのではないかと思われてしまうこと自体、それは東シナ海で領海を侵犯される隙を中国に対して与えたということだ。国益は安全保障という観点で考えたら損なわれたと思う。やはりスタートで間違えていると思う。初めに毅然と対応しないので、どんどん隙を与えてしまう。そして解決がいっそう難しくなっていくことがある。中国が過剰に反応したことに乗るべきではなかったと思う」

 

 下地幹郎幹事長「この決定に政治的な配慮は無かったことを私どもは信じて疑うものではない。しかしながら、拘留延長し、取調べをするという決定から今日の結果に至るまでの間、何があったのかについて、国民からも、世界の司法関係者からも疑問をもたれないように説明責任をしっかりと那覇地検は行うべきだ。『わが国国民への影響や、今後の日中関係を考慮した』という那覇地検のコメントには、法にのっとり粛々と処理を進めることが役割である検察の判断としては、非常に大きな問題があるのではないか。改めて、那覇地検に対して、国民の納得と法的な納得が得られる説明を求める」

 

【たちあがれ日本】

 

平沼赳夫代表「私共は非常に今回の措置というは遺憾なことだと思っている。ここで船長を釈放しましたら、暗に国際社会において、中国の領有権を日本が認めたということにもつながりかねない。たちあがれ日本としては非常に残念な措置だ。これは毅然とやらなければいけない。こういう考え方を持っている」

 

与謝野馨共同代表「元々、尖閣列島の帰属については、何ら国際法上、問題がないというのは、平沼代表がご説明した通りだ。日本の漁船もロシアの水域に入って捕まることもあるし、また、他の国から拿捕されることも過去あったと思うが、それは一つ一つ小さな事件として処理されるべきことで、大きな国際問題に発展するような言動はあらゆる関係者が慎まなければならない」

 

【地方首長】

 

 仲井真弘多沖縄県知事「無論、尖閣は沖縄県そのものではあるのですけど、こういう国際的な問題とか課題は、やっぱりお国の方で前面に出ていろいろご苦労されている。皆さんの報道で知っているだけですが、早い時期にいい形で治まるというか、解決をやっていただければと思っているのですがね。今の釈放についてもどんな形で、どんな内容なのか僕ら正確には分かりかねるんで、また正確に分かってからお答えします」

 

石原慎太郎東京都知事「言語道断だね。何であのビデオをもっと早く出さなかったのか。本当ねえ、ヤクザのやり方と一緒だ。こんなのに屈するとはねえ、屈辱じゃ済まない問題だ。これから国会が始まるんだろうからね。あなた方(記者団)が頑張って、保安庁の持っているビデオ公開させろよ。国民がそれを持ってどう判断するかだ。今の政府をだよ。何のために、何の利益を追求するのか。観光?貿易?そういう金銭の利益以上のものが国家にとってあるだろ。これでとんでもないものを失うんだよ」

 

    

 

今朝、夕刊当番のため出社したら、私宛にこの本が届いていました。私の名前もちらっと出てくるので、ご関心のある方は読んでみてください。…にしても、海保の士気は落ちるでしょうねえ。

 

 

 今朝の産経オピニオン面の山内昌之東大教授のコラム「幕末から学ぶ現在」(80)を読み、共感を覚えたので紹介します。私は面識もなく、この人がどういう考え方の持ち主なのかよく知らないのですが、この連載コラムは面白いのでよく読んでいます。今回、山内氏はまず、今回の中国漁船による尖閣諸島付近への侵犯と海保巡視船への体当たり行為について、こう書いています。

 

 「もし鳩山由紀夫前首相と小沢一郎元幹事長のコンビであれば、法律に照らして正当な中国人船長の逮捕や起訴に踏み切るか否か、疑問も残ったのである」

 「『友愛の海』で中国の勝手な跳梁を許し抗議もしなかった鳩山氏や、多数の民主党議員を嬉々と胡錦涛国家主席との記念写真に応じさせた小沢氏」

 

 これはまさしく、私自身も「鳩山・小沢ライン」ではなくてよかったと胸をなで下ろしていた部分でした。現在の菅内閣の対中姿勢も、いたずらに「冷静に」と繰り返すばかりで十分とは言えないでしょうが、少なくとも悪質にも2度もぶつかってきた中国人船長の逮捕は実行し、踏みとどまりました。

 

 一方、これが鳩山・小沢ラインだったらどうだったか。昨年12月の中国の習近平国家副主席の来日時には、中国様の要求に迎合してルールを破ってまで天皇陛下との「特例会見」を実現させ、しかもそこに至る経緯をごまかし、国民にうそをついてとりつくろうことまでしました。あのときは、日本の外交当局者らからも「官邸を見損なった」「鳩山内閣は中国の走狗」「亡国政権」という激しい批判の声が聞かれました。

 

 この鳩山氏と小沢氏、さらに例の輿石東参院議員会長の3人は昨夜、国会近くの日本料理店で会食して気勢を上げたようですが、私にはこの取り合わせは趣味の悪い冗談か悪夢のたぐいにしか思えません。

 

  私は決して菅内閣支持ではなく、この政権にもいずれ近いうちにご退場願いたいと考えていますが、この3人がのさばるよりは、まだ多少は我慢ができます。菅政権の問題点は今後もずっと厳しく指摘していくつもりですが、菅首相本人に中身も思想も薄い分、まだ危険性は薄いとみています。

 

 さて、もとより、ルーピーこと鳩山氏にものの道理や世の理など分かろうはずもありません。おそらくあのまま首相を続けていたら、中国の言うがままに船長を釈放し、何の処分もせずにうやうやしく送り届けたことだろうと思います。そういう懸念を、山内氏も共有していたのだなと思うと、少しうれしくなった次第です。山内氏はさらに、西郷隆盛の言葉を引用しています。

 

 《正道を踏み国を以て斃るるの精神無くば、外国交際は全かる可からず。彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する時は、軽侮を招き、好親却って破れ、終に彼の制を受るに至らん》(「西郷南洲遺訓」17)

 

 正義のために正道を歩み、国家と一緒に倒れてもよい精神がなければ、外国との交際は満足にできない。その強大さに畏まって小さくなり、揉めずに形だけすらすらと進めばよいと考えるあまり、主権や国威を忘れてみじめにも外国の意に従うならば、ただちに外国からあなどりを招く。その結果、かえって友好的な関係は終わりを告げ、最後には外国による命令を受けることになる…。

 

  西郷の言葉と同様のことは、マキャベリも述べていますね。いわばものの道理、常識なわけですが、この当たり前のことがどうしても理解できないのが鳩山氏であるようです。山内氏はこう書いています。抑えた筆致ですが、たぶん、相当鳩山氏に対し怒り呆れているのでしょう。分かります。

 

 「(鳩山氏は)今回の事案でも自分の首相在任中は日中関係が良くなっていたと呑気なことを語っている」

 「鳩山氏の姿勢は、『彼の強大に畏縮し、円滑を主として、曲げて彼の意に順従する』典型と言われても仕方がない。氏に『正道を踏み国を以て斃るるの精神』がないのを今更あげつらうつもりはない。しかし、アメリカから自立するポーズをどれほど取ろうとも、国益を毀損し中国の『制を受るに至らん』危険を生むなら、何のための自主外交なのかという疑問が湧かないのだろうか」

 

 …鳩山氏には、その疑問が湧かないのでしょうねえ。実は、私は昨日締め切りの本紙26日付コラム「日曜日に書く」で、この鳩山氏のことを取り上げ、「己を知らず、道理をわきまえない鳩山前首相に引退を勧める」と書きました。その中で、私の記した趣旨と、本日の山内氏のコラムに通底する認識が感じられ、やっぱり世の中の人はそういう目で鳩山氏を見ているのだなと再確認しました。本人だけは気付いていないようですが。

 

一生自分だけの楽しい夢を見て過ごしてくれてもかまいませんから、せめて政界からは消えてなくなってほしいと心から願います。お金はいくらでもあるんだから、もうどこかに引っ込んでいてほしい。それこそスペースシャトルでも借り切って、故郷の宇宙にでも…。

 

↑このページのトップヘ