2010年12月

 

 いよいよ大晦日となりました。今年を振り返るよすがに、この1年間で産経本紙と僚紙、SANKEI EXPRESSに書いた単独署名の記事の見出しを記録しておこうと考えました。今年何が話題になったか、また、自分自身が何を取り上げてきたか備忘録代わりにもなるし。「新民主党解剖」「仙谷由人研究」のように、連名での署名記事もありますが、今回はそれは省きます。

 

    1月10日付本紙 コラム日曜日に書く「政局左右する政治とカネ」…藤井裕久元財務相の辞任と民主党の小沢一郎元代表の政治資金問題をめぐって

    1月13日付本紙 「『参政権で帰化促進』 〝小沢理論〟データと矛盾」…小沢氏の外国人参政権付与論の論理の飛躍について

    1月15日付本紙 「ひたすら『適正処理』 言い逃れ繰り返す小沢氏 土地取引疑惑も強気崩さず」…小沢氏の木で鼻をくくったような説明が全く説明になっていないことについて

    1月21日付本紙 「矛盾と謎 不可解説明 政治資金めぐり小沢氏強気どこまで…」…小沢氏の遺産、秘書寮、政治資金収支報告書に関する主張の矛盾と謎について

    1月23日付本紙 「3年前の会見検証 小沢氏ほころぶ主張 『原資は寄付金』『土地相続できず』」…産経が平成19年1月に報じた小沢不動産問題に対し、同年2月に小沢氏が行った記者会見の実態について

    2月6日付EX コラム鳩山政権考「メディアにも実態が見えにくいわけ」…小沢氏と側近達の忖度政治について

    2月15日付本紙 「国会議員アンケート 論拠弱い賛成派 結びつかぬ『納税』と『参政権』」…産経の外国人参政権に関する国会議員アンケートを通じ、参政権付与賛成派の論拠がいいかげんなことが浮かび上がる

    2月25日付本紙 コラム政論「3分の2が違和感…子供の視点を」…政治家の夫婦別姓(親子別姓)制度導入の議論に、当事者である子供の視点が欠けていることについて

    3月3日付本紙 「北教組事件 民主、労組癒着のツケ 丸抱え選挙、事件…自浄作用働かず」…北教組事件が起こった背景には、輿石東参院議員会長をめぐる山梨県教組事件を教訓とせず、自浄作用を働かせなかった民主党の体質があることについて

    3月6日付本紙 コラム政論「首相が特例法改正検討 罰則規定は教員も救う」…教職員による政治活動に罰則を設けることは、いやいや選挙運動にかり出されている真面目な教員も救うことになることについて

    3月13日付EX コラム鳩山政権考「ミスター日教組と北朝鮮」…ミスター日教組と呼ばれた槙枝元文元委員長と北朝鮮の親密すぎる関係について

    4月4日付本紙 コラム日曜日に書く「前提失った参政権推進論」…外国人参政権推進論の論拠が、自民党の高市早苗氏が発掘した在日外国人に関する外務省資料によって根底から覆ったことについて

    4月17日付EX コラム鳩山政権考「不実で不透明な普天間論議」…鳩山由紀夫前首相のあまりにデタラメな普天間関連答弁と、その議事録公開にストップをかける民主党政権について

    4月23日付本紙 コラム政論「『愚か』と『愚直』 首相のすり替えに違和感」…鳩山氏が自身に対する「愚か(ルーピー)」という評価を、巧妙に肯定的ニュアンスの「愚直」と言い換えたことについて

    5月12日付本紙 「揺らぎ続ける首相 普天間『何か本質的な間違いというか…』」…普天間問題に関し、首尾一貫してブレ続ける鳩山氏の現在と過去の言葉について

    5月22日付EX 鳩山政権考「さながら『オール無責任内閣』」…普天間問題も口蹄疫事件も、失政をすべて他者のせいにする鳩山政権について

    5月27日付本紙 「『辺野古』明記せず 普天間移設政府方針 首相、究極の〝二枚舌〟」…鳩山政権が連立相手だった社民党に配慮し、普天間の移設先に関する政府方針からいったん、「辺野古」の文字を削ろうとしたことについて

    5月29日付本紙 「食言と優柔不断…失った半年」…当初は前年12月に普天間問題を決着させると言っていた鳩山氏のその後半年間の迷走で、沖縄県民を傷つけ、日米関係を毀損したことについて

    6月2日付本紙 「追跡『鳩山ワード』意外と… 『したたか』で『ずぶとい』」…鳩山氏がああ見えて意外とずるく、保身のために巧妙に立ち回る…を指摘

    6月3日付本紙 「小鳩退場 『権力』が結んだ〝水と油〟」…以前は厳しく小沢氏を批判していた鳩山氏が、権力掌握のため小沢氏と結ぶが、やはり無理があった点について

    6月5日付本紙 「菅登板 湿った『軽さ』吉か凶か パフォーマンス先行 実った『30年計画』」…新首相となった菅直人氏の政治家としての軌跡と、軽いが明るくはない言動について

    6月9日付本紙 「舌鋒封印…守り、逃げる」…就任記者会見からいきなり「逃げ」の姿勢をあらわにした菅氏について

    同日付本紙 「首相、報道陣への警戒心あらわ 本紙、またも質問できず」…取材を受けることを怖がる菅氏について

    6月12日付本紙 「失政総括せず『反省なき再出発』」…鳩山政権への反省が見られない菅氏の所信表明演説について

    6月17日付本紙 「『論戦なく力づく』国民軽視」…発足して国会を閉じ、予算委員会での質疑からも党首討論からも逃げた菅氏について

    6月19日付本紙 コラム政論「輿石氏に自責の念はないのか」…北教組事件をめぐり小林千代美衆院議員が引責辞任したが、さらに悪質な山教組事件の当事者だった輿石氏は今も偉そうに参院のドンとして居座っていることについて

    6月25日付本紙 「争点隠し 菅戦略 消費税前面、小沢氏も批判」…参院選のスタートにあたって、自民党に抱きつく菅戦略について

    6月26日付EX コラム菅政権考「情報統制に走っていないか」…菅政権の隠蔽体質と情報統制志向について

    7月10日付本紙 「仙谷氏、見せ始めた『超リベラル』志向 詭弁を弄して本音隠し 狙いは慰安婦賠償法案?」…仙谷由人官房長官の日韓基本条約否定発言の真意と狙い、はぐらかし答弁について。

    7月31日付EX コラム菅政権考「日々『キレ仙』の官房長官」…記者会見で無意味にいら立ち、不必要に敵を増やし続ける仙谷氏について

    8月1日付本紙 コラム日曜日に書く「仙谷長官の危うい思想背景」…仙谷氏の極左弁護士との友人関係と陰湿な左翼政権ぶりについて

    8月3日付本紙 「重要課題『ブレ菅』変わらず」…国家戦略局構想や外国人参政権問題など重要課題でブレ続ける菅政権について

    8月16日付本紙 「全閣僚靖国参拝せず 民主党政権下異例の8・15」…首相以下、閣僚が1人も靖国に行かなかった終戦の日について。

    8月23日付本紙 「首相『国歌斉唱』疑惑 『促され、ようやく立った』 否定に躍起も…スタッフ〝証言〟」…君が代を歌わないなんてことはありえないと国会答弁した菅氏は、実は自分では国歌斉唱時に立とうともしなかったことを、ラジオの番組スタッフが証言

    9月3日付本紙 「抽象的、追及逃れ…うつろな2人」…民主党代表選での菅、小沢両氏の公開討論会で垣間見えた双方のうつろな中身について。

    9月4日付EX コラム菅政権考「長い長い政争劇の幕開け」…民主党代表選は、当人たちがどう言い繕おうと、大きなしこりを残し、政争劇はそう簡単には終わらないという見通しについて

    9月7日付本紙 コラム政論「民主党代表選 外国人にも投票権 驚くべきいいかげんさと無責任」…民主党代表選は外国人も首相を選べる仕組みになっていることに関する、小沢氏と仙谷氏の無責任発言について

    9月8日付本紙 「小沢氏対決姿勢鮮明 強制起訴でも『辞職必要ない』」…代表選の帰趨次第で、日本社会は初めて被告席に立つため裁判所に通う首相をいただくことになることについて

    9月18日付本紙 「岡崎氏で大丈夫? 『サプライズ』国家公安委員長 会期中に反日デモ、外国人から寄付」…菅改造内閣で、あの岡崎トミ子氏が警察の総目付である国家公安委員長に就いたことについて

    9月25日付本紙 企画・敗北尖閣事件・上「歪んだ『政治主導』 動かぬ証拠アピールせず特例再び 事なかれ主義の果て」…沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で、超法規的に船長を釈放した政府の因循姑息について

    9月26日付本紙 企画。敗北尖閣事件・下「戦略なく〝思考停止〟 『冷静対応』一辺倒の日本政府」…外交ゲームを理解せず、冷静という美名の下に思考停止に陥り、無策を続けた政府について

    同日付本紙 コラム日曜日に書く「鳩山前首相に引退を勧める」…ルーピーは政界に有害無益な害鳥なので引退してほしいという切なる願い

    9月29日付本紙 コラム政論「日中会談に釣られるな」…菅首相はASEMでの首脳会談実現をエサとする中国の常套手段に引っかかるなという戒め、忠言

    10月2日付本紙 コラム政論「踊る言葉と場当たり主義」…菅首相の所信表明演説に見る、現実主義の名を借りた場当たり主義について

    10月5日付本紙 コラム政論「首相にも説明責任 民由〝結納金〟小沢氏側に3億円」…クリーンを自称し、小沢氏を追及する菅氏だって、小沢氏の錬金術に協力した過去があるではないかと指摘

    10月9日付EX コラム菅政権考「愚かな内閣から卑怯な内閣へ」…鳩山政権から菅政権へと変わり、少しはマシになるかと思ったら、愚か者から卑怯者に代わっただけだったという指摘

    同日付本紙 「尖閣衝突 ビデオ公開先延ばし 対中配慮、責任なすり合い」…中国漁船衝突映像をめぐる政府内の責任の押し付け合いと、菅政権の隠蔽体質について

    10月18日付本紙 コラム政論「『語るに落ちた』仙谷氏 過去の言葉をお忘れか」…仙谷氏の嘘、強弁、はぐらかし答弁は、国民を欺いているだけでなく、自身の過去の言葉をも裏切っていることについて

    11月2日付本紙 「主権に鈍感な首相 日本を不幸にする」…尖閣諸島も北方領土も、国家主権に無知蒙昧な首相によって事態が悪化し、国民が不幸になっていることについて

    11月6日付本紙 「『倒閣運動』と危機感」…中国漁船衝突映像の流出を、まるで民主党政権への攻撃のようにうろたえ慌てる政府のドタバタ

    11月11日付本紙 「菅政権 論点すり替え」…映像流出が起きた背景に、国民の知る権利をないがしろにしてきた菅政権の隠蔽体質があるにもかかわらず、個人の悪質な犯行だと問題を矮小化する政府の姿勢について

    11月13日付本紙 コラム政論「仙谷氏、笑えぬ〝喜劇〟に磨き」…映像流出をきっかけに、ますます独善と詭弁に磨きがかかってきた仙谷氏の世迷い言ととんちんかんについて。

    同日付EX コラム菅政権考「国民との信頼関係なき漂流」…国民が何に怒っているかも理解できず、国民を騙し続けられると信じている菅政権はもう長くないことについて。

    11月18日付本紙 「謝罪、撤回 政権末期の様相」…菅政権の舌禍事件の連続は政権末期の雰囲気を漂わせていることについて

    11月19日付本紙 「『自衛隊は暴力装置』 仙谷氏の本質あらわ 『社会主義夢見た』過去」…菅政権の暴言装置、仙谷氏の失言と、自衛隊や警察に対する反感の思想的背景について

    11月23日付本紙 「末期政権二重ショック」…ナントカの二つ覚え発言による柳田稔前法相の更迭と内閣支持率の急落というダブルショックと、菅氏の指導力の欠如について。

    11月29日付本紙 「足引っ張る仙谷氏 政権の『守護神』辞任も…」…菅政権を独りで支えているつもりの仙谷氏が、実は傲岸不遜な言動で政権のアキレス腱になっていることについて

    12月5日付本紙 コラム日曜日に書く「『逃げ』が本質の菅政権」…高杉晋作の逃げ足の早さが一番好きだと臆面もなく公言する菅氏と、その政権の本質について。

    12月16日付本紙 コラム政論「青島さんも泣いている 無責任首相」…菅首相の政治姿勢は、同じく市川房枝氏に師事した青島幸男元東京都知事が作詞したクレージーキャッツの名曲の歌詞と妙に似通っていることについて

    12月18日付EX コラム菅政権考「言葉の軽さ 抜けない野党気分」…菅氏と仙谷氏の無責任な言動の背景には、深く考えずに発言できた野党時代の習慣が抜きがたく残っていることについて

    12月21日付本紙 コラム政論「思いつきの『即興劇』 菅政治の本質」…国会閉会後、何の成算もなくいきなり小沢氏の国会招致に躍起になり出した菅首相の政治手法はいつも、ただの思いつきであることについて

    12月30日付本紙 企画・激動2010政界回顧録・上「大荒れ〝ルーピー〟旋風」…民主党政権への期待が失望へと変わった今年前半の政界の主役は、やはりルーピー氏だったことと、その支離滅裂な言動のダイジェスト

    12月31日付本紙 企画・激動2010政界回顧録・下「国を守れぬ『仙谷時代』」…今年後半は与野党激突の仙谷時代に突入したことと、仙谷氏の独りよがりで牽強付会で我田引水の言動のダイジェスト

 

…気軽に書き始めたら、けっこう分量があったので時間がかかりました。こうしてみると、やはり年明けしばらくは小沢氏の政治資金問題が中心で、あとは北教組事件があり、やがて普天間が焦点になると。そして菅政権では、話題はすぐに菅氏から特異な存在感を発揮した仙谷氏へと移り、尖閣事件が起きてからはほとんどそれ一色となっています。

 

 もちろん、上に挙げたのは単独署名記事だけなので、無署名や連名ではその他の問題も当然、取り上げています。でもまあ、今年はそんなこんなで明け暮れたのだなと改めて感じました。さて、来年はどんな年になるでしょうか。

 

 それではみなさま、よいお年を! 来年もよろしくお願いします。

 

         

 

 ※追記 さきほど、帰省中の実家の玄関を出たところ、南天に大きな氷柱ができていました。やはり、福岡は東京よりはるかに寒い。みなさまも風邪などひかぬようお気をつけください。

     

 

 

  今年も政界はジェットコースターから見る景色のようにめまぐるしく移り変わり、私もこれまで以上に忙しく、あれこれと記事を書きまくる(書かされる)1年を過ごしました。私にとっては「政権交代したからどうだというのだ。その意味は過大評価されていないか」という疑念を再確認するとともに、いまだに綱領すら持たない(持てない)党が政権を握るとどういうことが起きるかが、広く国民に周知された1年であったように思います。

 

 で、年末用原稿の書きためなどもようやく終わり、本日から正月休みに入ったので、久しぶりに読書シリーズをアップしようと思います。例によって、政治関連のものは取り上げません。

 

 まずは、数々の銀行小説をものしてきた池井戸潤氏の「下町ロケット」(小学館、☆☆☆☆)からです。舞台は、元ロケット研究者だった2代目が社長を務める下町の町工場。不景気の世の中とあって、日々資金繰りに頭を悩ませ、社員とはもめ、銀行や競合大手企業からはいじめられている主人公が、それに立ち向かい、一つの夢を実現する…というストーリーです。

 

     

 

 池井戸氏は自身が元銀行員だっただけあり、銀行の内幕、銀行員の貸し渋り・貸しはがしの手段とその理由などを描かせると本当にうまいですね。そして、物語の王道として、きちんとカタルシスが用意されているので満足感が得られます。うん。

 

 次も、私のお気に入り作家である原宏一氏の「佳代のキッチン」(祥伝社、☆☆☆★)を紹介します。主人公が、中学生のときに失踪した両親を捜すため、キッチンカーで「移動調理屋」をしながら旅をしているという設定も面白いですが、その両親が理想の生活共同体「コミューン」を立ち上げようとしていた、というところも、なんだか…。どうしても、団塊の世代が中枢を抑えている今の政権が提唱する「新しい公共」を連想してしまったり…。

 

      

 

 佳代がつくる料理がどれもおいしそうで、登場人物も魅力的で、やはり小説って、人物がきちんと存在感をもって立ち上がっているかどうかだなあと、今更のように思うのでした。 

 

 さて、安普請のアパートを舞台にした連作構成の三浦しおん氏の「木暮荘物語」(祥伝社、☆☆☆)を手に取りました。本の帯の宣伝文句に「人肌のぬくもりと、心地よいつながりがあるアパートです」とあったので、何となくほのぼのとした人情モノを期待して読み始めたのですが、実はこれ、さまざまな「性のあり方」をテーマにした内容でした。

 

 

     

 

 最初は、それこそほとんど共感が持てない登場人物ばかりに感じてなかなか読み進められなかったのですが、一話一話と読んでいくうちに、作者の仕掛けに乗せられ、だんだん面白くなっていきました。まあ、最後まで好みとは言えませんでしたが、ちょっと切ない素敵な話ではありました。

 

 流行作家3人(今野敏氏、東直己氏、堂場瞬一氏)による警察小説の競作「誇り」(双葉社、☆☆☆)は、題名そのものの内容です。窃盗係のベテラン刑事、退職警官、たたき上げの県警刑事部長とお気楽なキャリアの捜査2課長…などが登場し、それぞれの意地と誇りを見せてくれます。 

 

 

     

 

  特に東氏の作品「猫バスの先生」で、学生運動崩れの工事会社社長が主人公が元警官であることを知り、執拗にからむシーンが印象的でした。仙谷由人官房長官も、相手が自衛隊や海上保安官だと、とたんに言葉と要求がきつくなることを、これまた連想しながら読んだ次第です。

 

 一時期。集中的に読んだ横山秀夫氏のデビュー作「ルパンの消息」(光文社、☆☆★)をようやく読了しました(図書館で借りた本なので、ちょっとシワが寄っています)。非常に凝っていて、いろんな要素を盛り込んであるのはよく分かりますが、デビュー作だけあって、やはり無理があるというか、完成度はいまひとつかなと感じました。

 

 

     

 

  この作家の後の作品で、映画化もされた「クライマーズ・ハイ」であれば、大興奮して夢中で読んだので「☆☆☆☆★」ぐらいの評価ができるのですが…。この「ルパン」の最後に、若い女性記者が得ダネをもらうシーンは妙に好きです。

 

 熟練した時代小説作家である佐藤雅美氏の「町医 北村宗哲」シリーズは、この第4作「男嫌いの姉と妹」(角川書店、☆☆☆★)で完結だそうです。他にも未完のシリーズものがいくつかあるので仕方がありませんが、ちょっと残念です。

 

 

     

 

  今回も、表看板の町医者としての宗哲よりも、元裏社会で名を売った渡世人としての宗哲の方にウエイトが置かれており、つくづく巧みな設定だなあと感心します。表題作も、皮肉なテイストたっぷりに、そのくせ大団円というオチで、世の中そんなものだと納得させられます。

 

 「とびっきりの人情譚」というコピーに負けて購入したのが山本一力氏の「ほかげ橋夕景」(文藝春秋、☆☆☆)でした。8編の物語が納められており、バラエティーに富んでいて楽しめました。毎度毎度、山本氏の書くものはどれを読んでも同じように感じるとブツブツ言っているわけですが、それでもつい手に取ってしまいます。

 

     

 

 同じ山本氏の「研ぎ師太吉」(新潮文庫、☆☆★)は、どうなんだろう。いつものように、登場人物の器量と器量がぶつかって、格の差を見せつけて…というパターンが全面に出てくるわけですが、あまり説得力を感じず…。 

 

 

     

 

 いつか読もうと思っていたのが、この鳥羽亮氏の「ももんじや」(朝日文庫、☆☆★)でした。さまざまな獣肉を食べさせる百獣屋は、実は多士済々な御助人が集う「御助人宿」で…というストーリーです。ただ、せっかくももんじやを舞台にしたのであれば、もっと調理や食事の場面、食材の解説などがあってもいいのになあと少し不満が残りました。

 

     

 

  上田秀人氏の「奥右筆秘帳」シリーズ第7弾「隠密」(講談社文庫、☆☆☆)も、相変わらず江戸時代を舞台にしたサラリーマン小説として楽しめます。いま、上田氏の作品はどれもベストセラーとなっているようですが、私のような中年サラリーマンが主な読者層なのかなと…。

 

     

 

 最後は、米村圭吾氏の「ひやめし冬馬四季綴」シリーズの「桜小町」と「ふくら雀」(徳間文庫、☆☆)となります。うーん、まあ、ほのぼのとした味わいはいいのですが、荒唐無稽というか、いくらなんでもそれはなあ、という印象もあります。でも、もともと最初からリアリティーやディテールで勝負している作品ではないでしょうから、それはそれでいいのか。

 

 部屋住みの主人公は、 身分降格された父の汚名を晴らし、一家を興すことができるのか?…これまた、文句をいいつつ、続刊が出たら、行方が気になるので読んでしまうのだろうなあ。

 

 

     

 

 というわけで、今年の読書エントリはこれまでです。来年はどんな本に出会えるでしょうか。政治はどうせ激動し、政権の枠組みが変わったり、解散・総選挙があったりするかもしれませんが、そんなときでも本は手放せません。本で心を安定させ、ストレスを解消しなければ、たちまち煮詰まってしまいます。

 

 なので、来年もときおり、こうした読書エントリを続けようと思います。よろしくお願いします。さて、これから帰省します。

 

 昨日のテレビ朝日の番組に出演した仙谷由人官房長官が、ちょっと聞き捨てならないことを言っていたので、記録しておきます。内閣のスポークスマンである仙谷氏は、菅直人首相が「朦朧とした状態」にあるという重大な国家機密(?)を告白したのです。

 

 そう言われてみると、あの行き当たりばったりで整合性のとれない発言も、口に出しては仙谷氏をはじめ閣僚に否定される思いつきの言葉も、最近の「これが俺のリーダーシップだ、後は知らん」と言わんばかりの無責任さも、社民党とたちあがれ日本の双方にこなをかけて平然としている無神経さも、すべて「朦朧」状態にあったからだと説明がつきますね。

 

 ともあれ、仙谷氏の発言の関連部分は以下の通りです。

 

 陰の総理と言われているが、表になると、なろうという気持ちはあるか?

 

仙谷氏 まあ絶対ないでしょうね、ええ。

 

 来ればやれるんじゃないか。

 

仙谷氏 それはね、トップリーダーの気力、体力というのはちょっと別ですよね。そら、僕は菅さん見てても、鳩山さん見てても「よくやるな」と思うんだけど、これは外交的、何と言うんですかね…儀礼というと叱られるんだけども、外交的な日程が3分の1から半分ぐらいありますでしょう、今。これはね大変ですよね、う~ん。だから朦朧とした状態になる。う~ん。

 

 …さて、手元にある広辞苑で「朦朧」の意味を確認してみました。それによると、

 

    おぼろなさま。かすんで暗いさま。

    物事の不分明なさま。

    意識が確かでないさま

 

 ちなみに、同じ辞書で「朦朧状態」についてはこうあります。

 

 「意識障害の一種。ヒステリー・てんかん・慢性アルコール中毒などに起る発作的無意識状態。意識野が狭まり、誤認や錯覚があり、外界を広く把握できないため状況にそぐわない行動をとる。意識の流れが突然変り、それから醒めても、その間の記憶を喪失していることが多い」

 

 …なるほど。うーん、首相職が極めて多忙であり、さまざまな決断を迫られる精神的・肉体的に大変な立場であることは私も全く否定しませんが、最近の菅氏はやたらと飲み歩き、土日にも夜日程を入れ(SP泣かせ)、二次会へとはしごすることも少なくないし…。

 

 一国のリーダーが、本当に仙谷氏の言うような朦朧とした状態にあるとしたら、仮に「ときおり」であるにしろ、これは洒落になりません。そんなときに重大問題が発生したら、日本は恐ろしい目に遭いかねません。

 

 それにしても、仙谷氏はポロッと怖いことを言うなあ。さすが、ご自分で「ちょっと放言癖があるわ」と言うだけあって。しっかし、「それだけきつい仕事だ」と強調したかったのだとしても、こういうことをテレビでしゃべっていいのかしらん。「暴力装置」にしてもそうですが、この人の日本語感覚はやはり少しヘンだと思うのです。

 

 

 さて…。菅政権はもう、誰の目から見ても詰んでしまっているわけですが、菅直人首相も仙谷由人官房長官も、せっかく掴んだ夢にまで見た権力の椅子を手放したくないためか、自分たちが「すでに終わっている」ことから必死に目をそらしているようです。

 

 端から見れば滑稽だし、さらに迷惑この上ないのですが、ご本人たちは溺れる者はワラをも掴むの思いで、何とか延命できないものかと思案に暮れているのでしょう。これも、特に有効な策を講じているようにはとても見えないので、「そのうちなんとかなるだろう~」とたかをくくって腕をこまぬいているようにも思えるのですが…まあ、分かりません。

 

 そんな中で、少し旧聞になりますが、12月8日に突如、「大主筆」(仙谷氏)と呼ばれる大物マスコミ人が自民党本部を訪れ、谷垣禎一総裁に会いましたね。このとき、大主筆は消費税率上げを大義名分にした「大連立」を持ちかけたとされます。

 

 谷垣氏は、菅政権という泥船に乗るのはまっぴら御免だとして断ったようです。この大連立の動きについて、みんなの党の渡辺喜美代表は「消費税増税を至上命題とする増税翼賛体制」と名付けましたが、この人はさすがに上手いものだと感心します。その通り、ろくなものではないと思います。

 

 ただ、大主筆はその後もこの消費税率上げを掲げての大連立構想は捨てていないようで、その後も有力・著名な政治家が大主筆から「この事態を打破することを考えないといけない」と持ちかけられているようです。福田内閣のときに福田康夫首相と民主党の小沢一郎代表の仲立ちをし、結果的にああいうことになったのに、このエネルギーはどこからくるのでしょうか。

 

 16日夜には、この大主筆がホテルオークラの日本料理屋から、仙谷氏、馬淵澄夫国土交通相と時を同じくして出てくるのが目撃され、我々はちょっと緊張しました。大主筆は「問責可決コンビ」と一体、何を話し、相談したのだろうかと。

 

 その後の取材で、仙谷、馬淵両氏は某鉄道会社幹部と会っていたことが分かりましたが、大主筆と全く接触していないかどうかは分かりませんし、この某鉄道会社幹部自身、仙谷氏とつながりがある人物なので怪しいところです。仙谷氏もまた、社会党時代から福祉目的での消費税増率上げに言及し、鳩山政権時代にもたびたびその持論を語っていたということもあります。

 

 ただ、もともと経済に疎く、ましてや経営などさっぱり分からない私は、大主筆がどうしてそうも消費税率上げにこだわっているのかが、理解できませんでした。だって、消費税が上がれば、新聞の紙代も印刷代も上がり、ただでさえ苦しい新聞経営をさらに苦しくするのではないかと考えていたからです。

 

 なので、不得要領のまま放っておいたのですが、本日、ある議員秘書さんと雑談をしていて、なるほどと思える「仮説」を聞きました。この秘書さんの見立てはこんなものでした。

 

 「そりゃ、新聞購読代の値上げがしたいからだろう。新聞代はもうずっと上がっていない。一方で、広告はどんどん減って経営は苦しくなっている。そこに消費税率上げがあれば、それを名目にして新聞代を一気に、消費税分以上に上げることができる。大主筆のところは部数が大きいから、その効果も大きい」

 

 なるほど、大連立でもなければ消費税上げは実現しないはなと、得心がいった次第でした。もちろん、これは一つの仮説であり、本当に大主筆がそう考えているのかどうかは分かりません。

 

 また、もとより、人が何かの行為に出る際の動機は一つとは限りませんから、私のような下っ端にはうかがいしれず、理解もできない真実の憂国の情が迸っているだけなのかもしれません。

 

 しかしまあ、いずれにしろ、もういい加減にしてほしいと、大主筆の会社の社員たちが一番そう思っているだろうなと。もう、いいでしょう。

 

 

 最近、政治家の言葉とは何だろうかと、薄らぼんやりとした頭で考えることがよくあります。言葉で他者を説得し、味方に引き入れ、協力させることが仕事である政治家の浮沈は、当然のことながら、いかに言葉を操ることができるかで決まるのだと感じる機会が多いからです。

 

 政治家は、その発した言葉で大きな力を得るものだし、同時に、口に出してしまった失言、暴言、食言、寝言で地位や名誉や信用を失い、没落していきます。菅内閣は特に舌禍内閣の様相を呈しており、特に仙谷由人官房長官に至っては権力の「暴言装置」といった感すらありますね。

 

 そしてまた、政治家の言葉は思わぬ本音や深層心理を表していることもありますね。福田康夫元首相が退任の記者会見で思わず語った「あなたとは違うんです」など、それまで彼が首相として語ったどんな言葉より、彼の真実、実態を示しているように思いました。無意識に出てくる言葉だからこそ、あるいは本人も意識していない本当の姿が現れてくるのかもしれません。

 

 さて、ここからが本題なのですが、今や民主党の小沢一郎元代表の一の子分という自分の居場所を見つけた鳩山由紀夫前首相の話です。この「ルーピー」の愛称で世界中に親しまれている道化師は18日、苫小牧市のホテルで開いた後援会との会合で、政界引退を撤回し、またもや見事に国民を笑わせてくれました。

 

 ただ、もうこんな人をここで取り上げるのにも抵抗がありましたし、何をどうしようとルーピーはルーピーなので放っておき、現地取材をした小島優記者のメモもあまり真剣に読んでいませんでした。

 

 ところが、新聞各紙のスクラップをしていて、19日付の東京新聞を手にしたところ、「鳩山氏 引退撤回を正式表明 叫ぶは『友愛』 行動は火に油」というまことに的確な見出しの記事の一節が目につきました。そこには、こうありました。

 

 《鳩山氏は後援会会合で「国益に資する政治を行うため、次の衆院選でも行動を共にしたい」と強調。「私が民主党をつくった張本人。党の友愛の体質が壊れ始めている。一致団結して挙党態勢をつくらなければならない」と訴えた。》

 

 えっと驚いて、小島記者のメモを再読すると、確かにこうありました。

 

 《私が民主党をつくった張本人。その張本人として申し上げれば…》

 

 なるほど、鳩山氏は「犯意」を認めていて、それを表明したわけですね。だって、広辞苑によると、張本人とは以下の意味ですから。

 

 「事件を起すいちばんもとになった者。発頭人。首謀者」

 

 念のため、岩波国語辞典も引いてみましたが、やはりこうありました。

 

 「事件を起こす一番もとになった者。事件が起こるもと」

 

 事件には単に「出来事」という意味と、「もめ事」という意味と両方ありますが、いずれにしろ、張本人というと、「悪事を企む張本人」だとか「騒動の張本人」だとか、あまりいい意味で使用される言葉ではありませんね。なので、「民主党をつくった張本人」というと…。

 

 鳩山氏も、実は心の奥底では本当のところをよく理解していて反省しており、その思いをほのめかしてみせた…わけはないか。なにせ、「国民が聞く耳を持たなくなった」なんて、頑迷な国民が悪いと言わんばかりの言葉を残して首相を辞めていったルーピーですからね。

 

 もちろん、言葉遣いが難しいのは政治家に限ったことではありません。新聞に文を書くのが仕事である私自身も、言葉の誤用や誤変換、選択ミスで日々、恥をかいたり、青くなったりしています。このブログでも、しょっちゅう、誤字脱字を指摘されていますし(感謝しています)。

 

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