本日は約2カ月ぶりに読書シリーズのエントリとします。実はこのところ、どうも集中力が途切れがちなのと、なぜだか「これだ」という本(特に小説)に巡り会わないのとで、読書があまり捗っていませんでした。なので、2カ月ぶりにしては、こじんまりとした紹介になりますが、まあ、もともとどうでもいいシリーズなのでご勘弁ください。
まずは、久しぶりに読んだ宮部みゆき氏の「小暮写真館」(講談社、☆☆☆★)からです。高校生が主人公の700ページ以上あるけっこう分厚い作品なのですが、読後感は爽やかです。
元写真館という中古住宅に引っ越してきた主人公の身の回りで起きる不思議なできごとと、いわゆるひとつの青春事情が鮮明に描かれていて、どこかノスタルジアを覚えました。私は、高校生など若者が主人公の物語には共感を持ちにくいのですが、この作品はいいです。あと、鉄道好きの人にも興味深いかもしれません。
次は、今野敏氏の警視庁科学特捜班シリーズのさらに伝説の旅シリーズ第3弾「沖の島伝説殺人ファイル」(講談社、☆☆★)です。これは私の地元・福岡県の「海の正倉院」とも呼ばれる沖ノ島を取り上げた作品です。
まあ、その土地土地のタブー、因習と警察捜査という切り口は面白かったし、地元ゆえの関心もあったのですが、とりたてて盛り上がる部分もなく淡々と話が流れていき、ごく簡単に読み終わったというのが読後感でした。
大人の意識を持ったまま、小学5年生時代に行きつ戻りつして当時を追体験、改変できたら…という珍しくはない設定なのですが、それが自分だけではないとしたらどうなるか。そこに3億円事件がからんで…。小路幸也氏の「カレンダーボーイ」(ポプラ文庫、☆☆☆)はそんなお話です。
読みながら、自分だったらどうだろうかと考えてみたのですが、私は恥の多い人生を生きてきた(現在進行形ですが)ので、あまり昔に戻ってアレを繰り返したくないなあと。主人公が最後になくすものに、少し切なくなりました。
山本甲士氏の「迷わず働け」(小学館文庫、☆☆☆)は、ありていに言って「迷わず働け」という内容です。…これでは何の紹介にもならないので少し付け加えると、怠け者でカネのない主人公が、自分とそっくりの友人になりすましてある会社に潜り込んでみたものの、状況・環境は予想をはかるかに超えて厳しく、嫌が応にも智恵を絞り、死力を尽くして頑張らざるをえず、その結果…というストーリーです。
なんというか、山本氏の小説は確かに痛快です。「とげ」「かび」などの作品は、日頃の鬱憤晴らしにぴったりでしたが、この「迷わず--」はもっと軽い気持ちで楽しめます。
さて、次は浜田文人氏の「CIRO 内閣情報調査室 香月喬」シリーズの第2弾「機密」(朝日文庫、☆☆☆)です。私はずっと以前の読書エントリで、浜田氏の作品が山梨県を取り上げているにもかかわらず、山梨県教職員組合について触れていなかった点をちょっと残念だと書きました。それと関係はないでしょうが、今回の作品は日教組ならぬ「日教連」が重大な役割を果たします。日教連による公選法違反事件なんて舞台装置も出てくるところが楽しいです。
しかも、新聞社の政治部が犯罪がらみでできたり、例の官房機密費がどうしたこうしたという話がでてきたりで、興味深い内容でした。まあ、当然、小説(フィクション)なので、そのまま実際のところが描かれているわけではありませんし、私の実感とは異なりますが、面白く読めました。
で、ここらで時代小説が読みたくなり、いつもの上田秀人氏に手を出し、「関東郡代記録に止めず 家康の遺策」(幻冬舎、☆☆★)を読みました。
関東郡代の伊奈家を主人公に持ってきたところは目新しいと感じましたが、あとは、いつもの徳川の秘密もので、特にオチは「うーん」と首をひねりました。たくさん書き続けるというのは大変だなあと、改めて思った次第です。
そうなると、時代小説の原点に戻りたくなり、これまた久しぶりに山手樹一郎氏の「恋染め浪人」(コスミック、☆☆★)を手に取りました。実は山手氏の作品は10年ぐらい前にけっこうまとめて読んでいました。
内容は…タイトルと帯にある通りです。まあ、リアリティーを重視して「ありえない」と思うよりも、一つの物語世界に遊び、憂き世を忘れる効果を楽しむのがいいですね。で、これは書店で買ったのですが、さらに自宅の本棚から同じく山手氏の「遠山の金さん」シリーズ3冊も引っ張り出して読みふけりました。殺伐とした時代、日々だからこそ、春風駘蕩とした予定調和の世界に憧れてしますます。
…本日の南関東はいい天気で、日差しも温かく、まるっきり春のようです。そんな日曜日に、菅直人首相は現在、写真スタジオに写真撮影のため出かけています。
衆院選のポスター用の写真撮影だったらいいなと、ふとそんなことを思います。菅氏は、明日で鳩山由紀夫前首相と在任日数が並ぶそうですが、それでもういいだろう、もはや思い残すことはないだろうと…。