2011年11月

 

 今朝の新聞各紙は、秋篠宮さまが46歳の御誕生日にあたっての記者会見で、野田政権が検討を始めた女性宮家の創設など皇室の将来像をめぐる議論について原則として「制度論としては国会の議論に委ねる」としつつも、次のように率直に述べられたことを報じています。

 

 「今後の皇室のあり方を考えるときには、私もしくは皇太子殿下の意見を聞いてもらうことがあってよいと思っております」

 

 これは、逆にいうとこれまでは、皇室の将来にかかわる大事な問題についても、政府はほとんど何も当事者である皇族の方々に相談せず、勝手に決めようとしてきたことを示すご発言ですね。その意味することはとても重要だと考えます。このタイミングで、公の席で秋篠宮さまにこう言われてしまえば、政府もそうそう無視はできないはずです。

 

 そしてまた、私はこの秋篠宮さまのお言葉から、2005年11月に当時の政府の「皇室典範に関する有識者会議」の吉川弘之座長(ロボット工学)が言い放ったセリフを思い出しました。吉川氏は、皇位継承資格者である寛仁親王殿下が有識者会議の女性・女系天皇容認方針に疑問を呈したことについて「どうってことはない。(会議の議論への影響は)ない」と述べたのでした。

 

 吉川氏は後にこの発言を否定しましたが、これは首相官邸のエントランスホールで大勢の記者たちに取り囲まれて語ったことであり、取り消しようがありません。この有識者会議について、宮内庁長官経験者は私に「あんなのは無識者会議だ」と憤っていましたが、このときも政府は皇族方のお考えやご意見を聞くことなしに話を進めていました。

 

 実はこの当事者である皇族方のご意見を聞くというごく当たり前で常識的なプロセスについて、故橋本龍太郎元首相が有識者会議のメンバーで官僚の大ボス的存在である古川貞二郎元官房長官に勧めたところ、古川氏はこれを断ったのです。私のインタビューに対し、橋本氏は「皇室に対し無礼だ」と憤っていましたが、秋篠宮さまははっきりと「私たちにも聞くように」とおっしゃったわけです。

 

 この橋本氏と古川氏のエピソードに関しては、もう5年以上前となる2006年7月1日のエントリ「故橋本元首相が皇室典範有識者会議に言ったこと」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/9251/)に記していますので、興味を覚えた方はご参照ください。

 

 元宮内庁幹部の一人は、「将来、悠仁さまをお守りし、お助けするためにも一代限りの女性宮家をつくるべきだ」と語っていたそうです。「野田佳彦首相も非常に問題意識は持っている」(政府筋)とされ、この問題がこの先、野田政権内でどう協議されていくのかはわかりませんが、注視していこうと思います。

 

 ちなみに、藤村修官房長官はきょう午前の記者会見で「皇室の一員であられる秋篠宮殿下として、ご自分の考えがあり、それをお話しなるのは別に当然のこととして、個々のご発言について、その中身、内容について政府としてコメントすることは差し控えたい」と述べていました。

 

 

 もう20数年前の話ですが、私は大学生のころ、ものごとを相対化して見ることは大事だけれど、いわゆる価値相対主義には陥るまいと考えました。それは結局、何も決められない、選べないことになりかねないと当時、感じていたからです。

 

 それぞれの人にそれぞれの意見や主張があり、自分と考え方が違うにしろ、どちらかが100%正しく、相手が100%間違っていることはありえない。ただ、どららも似たりよったりで大差はなく、あるいはともに一長一短だったとしても、少しでもマシだと自分が思う方を選択するしかないし、それには当然、リスクもマイナスも付随してくると、まあ、若いころはそんな当たり前のことをあーだこーだと悩んだりするわけです。

 

 で、そのことと関係するようなしないような話なのですが、最近、小渕恵三首相の政務秘書官だった古川俊隆氏にインタビュー(というか雑談に近いものでしたが)をした際に印象に残ったことを、ここで紹介しようと思います。以前のエントリでは小泉純一郎元首相の政務秘書官だった飯島勲氏の話を掲載しましたが、政治家も秘書さんもいろいろです。

 

     

 

 【竹下登元首相】

 

 古川氏 竹下さんが総理になったとき、「最後には51対49の決断をしなくてはいけない立場になった。こういうときは49の反対論の方が多く見えるものだし、選ぶのは難しいけれど、国民の将来のために、どちらがいいかを決めなければならない重い立場になった」と言っていたのを覚えている。

 

 下から慕われた総理と言えば、竹下さんと田中角栄さん。竹下さんについては、小渕内閣の組閣のときにこんなことがあった。竹下さんは、言葉では誰がどうだとか評価は一切言わない。だけど、閣僚になれそうな人たちの一人ひとりについてこれまで経験した役職や、何に強いかなど得意分野などをチェックして点数をつけて表にまとめてくれた。

 それも小渕さんには言わずに、僕に「小渕が何か悩んでいるようだったら渡してくれ」と言う。そういう気配りをする人だった。

 

 【小渕恵三元首相】

 

 古川氏 優ちゃん(小渕優子衆院議員)から国会質問について相談があったとき、「あなたのお父さんはこういうつもりで政治をやったよ」と伝えた言葉がある。それは小渕さん(元首相)が平成11年7月31日に出した総理就任時の談話で、こういうものだ。

 

 「私は、この度、内閣総理大臣の重責を担うことになりました。内外ともに数多くの困難な課題に直面する中、わが身は明日なき立場と覚悟して、この難局を切り拓いていく決意であります」

 

 菅内閣のときに、菅さんに近い記者が僕のところに来て、「菅内閣の支持率が上がらない。小渕さんは最初は支持率は低かったけれど途中からどんどん上がった。どうしたらいいか」と聞いてきたことがあった。

 

 僕は「菅さんが本当に国のためと思うなら、あとどれぐらい総理を続けるとかじゃなくて、捨て身になって『これだけやれれば明日は辞めていい』というつもりになれば、支持率は上がるかもしれない。身を捨ててこそだよ」と話したことがある。

 

 【橋下徹大阪市長】

 

 古川氏 先日、作家の堺屋太一氏が数年ぶりに「会いたい」と言ってやってきた。どうしたのかと思ったら、「橋下氏のバックアップをしてくれる人はだれかいないか」との相談だった。僕は暇な方がいいのでやんわり断ったけど。

 

 ……「わが身は明日なき立場」、か。当時、私は小渕首相の番記者でしたが、こんな談話を出していたことは全く記憶にありませんでした。民主党を見渡しても自民党を振り返っても、政治家がどんどん軽くなっているという印象は正直、否定できませんね。

 

 これももちろん、古川氏からいろいろ話を聞いた中でのごく一部です。小渕氏に関しては、5年以上前の2006年8月11日のエントリ「江沢民を強く疑っていた小渕元首相」(http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/24575/)でも触れていますので、関心のある方はご参照ください。

 

 それにしても、問題発言をした防衛省の沖縄防衛局長は一体どうしちゃったんだか。魔が差したんだか何だか、ちょっとありえませんね……。

 

 

27日にMSN産経ニュースで配信された記者コラム「水内茂幸の夜の政論」を読んでいて、自民党内のTPP反対派の急先鋒であり、親中派議員の代表格である加藤紘一元幹事長が、その反対理由について以下のように説明しているのが注意を引きました。

「僕は農林族だから反対しているが、問題は農業だけじゃない。これからの世界経済の枠組みを考えたとき、日本を仲間に引き込みたい米、豪、カナダと、日中韓の枠組みを築きたいグループの戦いだ。野田さんは悩んで髪の毛が薄くなるんじゃないか」

これは水内記者が政治家と一杯酌み交わしながらインタビュー取材を行うという企画なのですが、紹興酒をデカンタで注文したという加藤氏は、随分と率直に語ったな、という印象を受けました。もちろん、このイザでも侃々諤々、いろんな角度からこの問題が議論されてきたように、「私はTPPに反対だが加藤氏なんかとは全く違う」という人の方が多いのは分かっています。

ただ、加藤氏が意図してか意図せずにか告白したように、この問題は日本がどの陣営につくか、という側面も持つことは事実だと思います。そして、いま現在の日本には第3の道、一つの「極」となって単独で立つような経済力も軍事力もありません。特に後者は現状では、法制度上も装備上も人員上も絶対的に不足しています。

また、この加藤氏の言葉に関連して、外交評論家の佐藤優氏が11月5日付のSANKEI EXPRESSのコラム「佐藤優の地球を斬る」で、次のように書いています。これもあくまで一側面についての指摘ではありますが、かなり重要な点だとも考えています。

《日本政府内部で、TPPに反対する勢力には2つのグループがある。第1は、農業団体や医師会などの業界団体である。このグループが自らの利益を擁護するために動くのは、当然のことだ。

 第2のグループについて、マスメディアはあまり扱わない。TPPに参加すると中国との提携が難しくなると考える東アジア共同体を支持するグループだ。こういう考えを持つ政治家や官僚が少なからずいる。中国は水面下で、「TPPに日本が参加しないならば、レアアース(希土類)を安定的に供給する」「日本の米を買う用意があるので、TPPには参加しないでほしい」という働きかけを強めている。TPPに日本が参加し、日米を基軸とした新秩序がアジア太平洋地域に構築されると中国の帝国主義政策が推進しづらくなると中国指導部は認識している。》

 

 自民党の小泉進次郎青年局長も今月17日、谷垣禎一総裁がTPPに関して「米国と組み過ぎて中国やアジアをオミット(除外)するのは日本にとってよくない」と発言したことにこう反論しています。谷垣氏は、さすがにかつて加藤氏を親分として担いだだけありますね。

 

 「耳を疑う。鳩山元首相が掲げた『東アジア共同体構想』と全く同じ論法だ」

 

 ……以前のエントリでも軽く触れましたが、TPPに反対するさまざまな人々の中に、国のあり方の変容を危惧する人たちだけでなく、東アジア共同体構想をいまだに提唱し続ける鳩山由紀夫元首相や、社民党の福島瑞穂党首や共産党などの左派勢力が混ざっているのは、たまたまではありません。米国をいくら警戒しても批判してもいいですが、国民の中国に対する警戒心の薄さには、どうしてこうまで…と若干不思議に思うのです。

 

 ジャーナリストの櫻井よしこ氏によると、彼女あてのメールにはこのところ、「TPPに反対しないお前はBKDだ」という内容のものが多く届いたそうです。桜井氏は「面白い言葉が流行っているのね」と苦笑していましたが、そういうメールを送った人たちは、彼女を「売国奴」呼ばわりできるほど、我が国に尽くしてきたどんな実績があるのだろうとこれまた不思議に思うのです。

 

 桜井氏は予定していた某所の農協での講演をキャンセルもされもしたとのことでした。ところで同僚記者によると、「AKB48」ならぬ「BKD48」という言い方もあるとか。なにやら私自身も「売国奴」と言われているそうですが、ある問題で見解が違ったぐらいでそこまで簡単に決めつけられるのかと思うと残念です。日々、なんだかなあ、と思うことばかりです。

 

 

 《人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。そして人のごとくに日本もまた堕ちることが必要であろう。堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない。政治による救いなどは上皮だけの愚にもつかない物である》(坂口安吾『堕落論』)

 

 一昨日の話ですが、読売新聞の朝刊に「政治に関する全国世論調査」(面接方式、有効回収数1724人)の記事が掲載されていました。このような金のかかる調査は弊紙にはとてもできないなあと考えながら読み進めていて、ある数字に愕然とするやら、「ああやっぱり」とどこか予想していたような既視感を覚えるやら、複雑な思いにとらわれました。

 

 それは、「どの政党が政権を担当するかによって、あなたの生活や暮らし向きは、変わると思いますか、変わらないと思いますか」という設問でした。これに対する回答は

 

 ・変わる     34%   ・変わらない     62%

 

 だったのです。ああ、やっぱり政治は国民にまともに相手にされていないなあ、政治なんて所詮そんなもんだと思われているのだろうなと受け止めざるを得ませんね。

 

 政権政党が替わる以前に、首相が交代するだけで日本の国力も国際的地位も対外イメージも将来に向けた展開も大いに変わると私個人は考えていますが、多くの国民はそんなふうには思っていないようです。政治に関するあれこれを書き殴って口に糊している身としては、忸怩たる思いもしますが、そんなものなのでしょう。

 

 私が「アレ」と呼んだ前首相のような空前絶後の愚宰相が現れ、現に国民にこれほどの災厄を味わわせたにもかかわらず、誰がやっても同じさ、という声がこれほど多いとしたら、まあ、われわれの仕事、書いてきた記事なんてものは、世の中の意識に何か影響を与えたかという点では、一文の価値もないということでしょう。別に悲観や焦燥感にとらわれてそう言うのではなく、たぶんそういうことなんだろうと淡々とそう思います。

 

 ただ、同じ調査で、「あなたは、最近の日本の政治は、良くなっていると思いますか、悪くなっていると思いますか」との質問に対しては、こんな結果が出ているのです。

 

 ・良くなっている            2%

 ・どちらかといえば良くなっている   13%

 ・どちらかといえば悪くなっている   40%

 ・悪くなっている           36%

 

 これをみると、ここしばらくの政治のありようを肯定的に見ている人は15%に過ぎず、否定的な見方は76%に及んでいます。圧倒的に、政治は劣化しているという感想・実感の方が多いわけです。

 

 また、「今の民主党政権は、政治主導による政策決定を掲げていますが、あなたは、全体的にみて、うまくいっていると思いますか、うまくいっていないと思いますか」との問いへの回答はこうです。

 

 ・うまくいっている           6%

 ・うまくいっていない         88%

 

 これをみても、現在の民主党政権に対する評価はかなり明確に出ているように思います。国民はおおよそ、今の政権のやり方は失敗しており、政治はこれまで以上にダメになっていると感じていることが数字に表れていますね。

 

 そうであるのに、政権が交代しようとすまいと基本的に変化はないと、6割以上の人が答えているわけです。これは、単に自民党前政権のていたらくが愛想を尽かされているからというだけでなく、政治そのものに対するニヒリズム、あきらめが表れているということでしょうか。自民だ民主だ政界再編だ、という以前に、もう何も期待されていないような。

 

これはもう、聖賢の「民主政治は衆愚政治に陥り、独裁政治を生む」という言葉を待つまでもなく、ファシズム待望論まであと一歩、というところまで政治不信が到達しているのかもしれないと危惧します。

 

 ちょっと話がずれますが、このブログのコメント欄でも、あるいは雑誌その他でも、マスコミの影響力の強さが強調してある文をよく見ます。諸悪の根源であると。ただ、仮にそうだとしても、その影響力はマスコミ内部の人間が意図して操れるような種類のものではなくて、世の中全体の大きな潮流に沿ってしか発揮されないものであるように感じています。

 

 伝えたい、知ってほしい、もし可能であれば思いを共有したい、といくら書き手がそう考えても、一部の人には理解してもらえてもほとんどの人には当然、無関係の問題としてスルーされます。逆に、特にこちらが意識せず、何の思い入れもないことでも、国民の集団無意識に合致し、あるいはそのニーズに近いものであれば、大きな渦となり、何人も止められない潮流になることもあるようです。

 

 私は、特に弱小紙の窓際記者なのでそう思うだけかもしれませんが、もともとマスコミになんてたいした力はないし、報道によって社会が動いたと見えるとしたら、それはうまく状況の後追いをしただけだともよく考えます。まあ、私がそう思ったからといって、それこそ何の意味もありませんが。

 

 

 21世紀の国際社会の最大の課題は、台頭する中国とどう向き合い、どのような関係をつくっていくかだと言われます。中国がここまで大きな存在になってしまうと、もう米国だって戦争はできないし、市場としても大切ですから完全な封じ込め戦略などとれません。かといって、独善的で唯我独尊の論理で世界を振り回す中国の好き放題にさせるわけにもいきません。

 

 相対的地位は低下しているとはいえ、いまだ世界の突出した超大国である米国の関心は、どうにもこうにもにっちもさっちも、という状態にある中東や、経済的基盤を弱めている欧州から、将来的にますます成長が見込めるアジアへとシフトしています。オバマ米大統領も経済的にも軍事的にもアジアに力を注ぐ姿勢を明確にしました。当然、中国は米国の動きに反発し、なんとかこれをはねのけたいと考えていることでしょう。

 

 世界は日本が好むか好まないかにかかわらず、常に変容しています。そして、その中で、世界の構成員の一国であり、米中の狭間にある日本がどうそれに適応し、積極的に変化を国益にしていくかが問われているのだと思います。アジアの緊張はいま、確実に高まっていますが、これを我が国のためにうまく利用すべきことは言うまでもありませんね。

 

 というわけで、過去の戦争を引き起こした要因はたいてい、経済問題にあったように、いまも日本を取り巻く国際環境は虚々実々の外交的な駆け引きや軍事的示威に満ちていて、各国とも将来への布石を打ち、生き残りと有利な生存条件を求めて必死なわけです。

 

 ……と、前置きが長くなりましたが、本日のエントリの主題は、そんな厳しく緊張感が漂う世界情勢の中で、日本の安全保障を司る防衛相がこの人でいいのか、という問題です。首相や閣僚の資質を問うと、すぐ個人攻撃であるかのように矮小化した議論をする人がいますが、そうした人は日本の現状に対する危機感がなさすぎると思います。

 

 というわけで今回は、ここ1週間ぐらい新聞各紙で私が切り抜いた記事の中から、米中、そして日本をめぐる情勢が書かれたものと、一川保夫防衛相の言動について書かれたものを抜き取り、以下に紹介します。この二つを対比することによって、この人を起用し、いまだにかばい続ける野田佳彦首相もその政権も、いかに「ぬるい」人たちかが浮き上がるかなと考えました。

 

【米国VS中国、そして日本】

 

 《東アジア首脳会議の直前の19日午前。オバマ米大統領はあからさまに中国をけん制する球を投げた。F16戦闘機を24機、インドネシアに供与すると発表したのだ。両国で過去最大の規模となる武器売却をわざわざこの日公表したのは、中国軍の増強に対抗する姿勢を示すためだ》(20日付日経)

 

 《海兵隊の拠点を沖縄、東南アジア、豪州に分散させる構想には、中国の存在がある。有事の際には西太平洋近海への米軍の侵入を阻止し、弾道ミサイルで沖縄などの米軍基地などを攻撃するのが中国の戦略。拠点を分けるのは、軍事的な常識でもある》(20日付日経)

 

 《首相は十八日に行われた日・ASEAN首脳会議で、海洋安全保障での連携を盛り込んだ「バリ宣言」を提案し、採決された。中国は南シナ海の南沙諸島領有権問題などでASEAN加盟国の一部と対立している。南シナ海の平和と安定や国際法の順守を呼び掛ける宣言が、中国を念頭に置いているのは明らかだ》(20日付東京)

 

 《アジア太平洋地域の自由貿易圏づくりで米中のどちらが主導権を握るかの競争が始まっているのだ。TPPは米国主導、日中韓(※日中韓FTA)は中国主導なのが現実である。日中韓で日中は五分と言いたいが、もはやそういう力関係ではない》(23日付毎日)

 

 《玄葉氏は東京電力福島第1原発事故を受けた日本産食品の輸入規制の一層の緩和を要請。楊外相は「安全確保を前提に真剣に検討したい」と応じた。一方で、中国海軍の艦艇6隻が22日から23日未明にかけ沖縄本島と宮古島の間の海域を通過するなど、中国側の硬軟織り交ぜた対日戦略をうかがわせる》(24日付産経)

 

 《防衛省は23日、中国海軍の艦艇計6隻が22~23日かけて沖縄本島と宮古島の間の公海上を太平洋に向けて通過したと発表した。中国は活発な海洋活動を続けており、南西諸島の防衛強化を図る自衛隊の警戒監視態勢をけん制する狙いがあるとみられる》(24日付日経)

 

 《韓国国土海洋省は24日、竹島(韓国名・独島)に5000トンの旅客船などが接岸できる大型のふ頭兼用の防波堤と、海中の様子を観覧できる観光施設を建設する構想をまとめ、施設の基本設計を完了したことを明らかにした》(25日付毎日=共同)

 

 《中国は米国の攻勢に対抗し、「包囲網」を回避するためにも、米国と同盟関係にある日本との関係改善に乗り出しているとの見方は多い。日中外交筋は「日本がTPP交渉参加に踏み出したことで、中国も焦っている」と分析する》(25日付読売)

 

【一川防衛相の動き】

 

 《野田佳彦首相は21日の参院予算委員会で、ブータン国王夫妻歓迎の宮中晩餐会を欠席して民主党議員のパーティーに参加した一川保夫防衛相について、辞任や更迭の必要はないとの認識を示した》(22日付産経)

 

 《一川氏はこれに先立つ参院外交防衛委員会で、「(ブータン国王に)手紙を出すことも含めてしっかり対応したい」と述べていた。しかし、自民党の佐藤正久氏に国王の名前を尋ねられると、即答できず、秘書官に確認した上で「ワンチュク国王と思う」と答弁》(23日付産経)

 

 《今月16日夜のブータン国王夫妻歓迎の宮中晩餐会を欠席し、民主党議員の政治資金パーティーに出た一川保夫防衛相は22日、東京都内のブータン王国名誉総領事館を訪れて陳謝した。》(24日付朝日)

 

 《航空自衛隊小松基地(石川県小松市)所属のF15戦闘機が10月7日に燃料タンクなどを落下させた事故を受け、同基地では飛行訓練再開の見通しは立っていない。最大の障害は、衆院石川2区で過去4回議席を争い破れた自民党の森喜朗元首相に対する一川氏の強烈なライバル意識だという。同県能美市のタンク落下現場は森氏の自宅近く。防衛省の地元への説明が遅れたことに森氏は不満を強めているが、実はこれを妨げたのが一川氏だった。》(25日付産経)

 

 《一川大臣が全く常識に欠けた人物だということは分かる。一大臣が、国王に謝罪の手紙を出すなどということは無礼だということも分からないのである。自分の内閣の閣僚の不始末を国王に謝れるのは総理だけ》(25日付産経、曾野綾子氏のコラム)

 

 ……曾野綾子氏はさすがに鋭いですね。私も一川氏の「手紙」のエピソードにはどこか違和感を覚えていたのですが、頭の回転が鈍く忘れっぽいせいか、この行為自体が不遜であるということに咄嗟に思いが及びませんでした。指摘されて初めて、ああそれはもっともだと分かったのですから、あまり一川氏のことを言えた義理ではないかもしれません。

 

で、裏が取れる話でもないので確証はありませんが、野田内閣の防衛相に一川氏を推したのは輿石東幹事長だという説がありますね。一川氏は小沢一郎民主党元代表の側近の一人でもありますが、輿石氏にも近い人物です。

 

 で、前の防衛相である北沢俊美氏は参院民主党にあって輿石氏とは犬猿の仲のライバルとされていて、だからこそ今回の参院議長人事でも外されたとされています。そういう背景があって、比較的防衛省で評判のよかった北沢氏の後釜には、その影響力を削ぐためにも輿石氏に近い一川氏を押し込んだ、という情報です。そして、省内では早くも無能大臣呼ばわりが始まっていると。

 

 さらに、北沢氏に冷や飯を食わせておいて輿石氏が参院議長につけた平田健二氏との間では、次の議長は輿石氏と「禅譲」の密約があるとの報道もありました。さもありなん、と万人が納得するところですね。

 

 まあ、どんな会社、組織でも人事は好き嫌いで決まる部分が大きいわけですが、この危機と変化の時代にあって、野田内閣の外交・安保軽視としか言いようのない「党内融和が第1」人事で、このまま日本が立ちゆくのかどうか、一国民として不安を覚えざるをえないところです。

 

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