2012年05月

 

  今朝の産経政治面に、「部外秘の民主国対ニュース 政治日程にAKB総選挙」という秀逸な囲み記事が載っていました。これについては、紙面やMSN産経ニュースですでにご覧になった方も多いと思いますが、25日発行の民主党・新緑風会国会対策委員会ニュースの「日程欄」に、なぜかAKB選抜総選挙の日程が盛り込まれていたというものです。

 

 これは洒落、遊び心の表れなのか、それとも現在の民主党の混乱状態、あるいは底知れぬ闇を映し出したものなのか。ともあれ、同僚記者にニュースのコピーをファクスで送ってもらったので、写真を紹介します。まずは全体写真です。

 

     

 

 これは、一応「部外秘」となっていますが、もともとたいした内容ではなく、国会議員会館をうろうろすれば比較的容易に入手できる文書です。…確かに、6月6日(水)AKB選抜総選挙とありますね。次にその部分をアップします。

 

   

 

 うーん、AKBの動向は、民主党にとってよほど重要なのでしょうか。あるいは、今後の政局の行方と密接に関連しているということでしょうか。それとも、民主党にはAKBのファンがたくさんいて、この総選挙情報は外せないということなのか。

 

 ちなみに私は、AKBにはあまり関心がありませんが、最近は「きゃりーぱみゅぱみゅは面白いなあ」と思っています。どうでもいいことですみません。たまにはこんなエントリもいいかなと。

 

 昨日の国会事故調の菅直人前首相参考人聴取の件は、もうなんかお腹一杯というか、あまり振り返りたくもないのであれこれ論評するのは控えます。ただ、最後に菅氏が、昨年3月15日未明に東電本店に乗り込み、部屋の外にいた記者にもはっきり聞こえる大声で「撤退したら東電はつぶれるぞ!」などと怒鳴り散らしていた件について、以下のように述べていたので参考までに掲載しておきます。

 

 まあ、菅氏の話法、修辞、言葉の用い方、その背後にある性質、気質については、これも今までさんざん書いてきたのであえて記しません。昨日は国会事故調の追及も妙に甘く、弛緩していたように感じたし、それに答える菅氏の様子も相変わらずで疲れました。

 

野村修也委員(中央大法科大学院教授) 総理、私どもがヒアリングした限りでお伝えしたことがあるので申し上げますが、総理は15日の朝に東京電力本店に行かれて、それで多くの方々の証言では叱責をされたということだが、このご様子がいまご発言された相手の福島原発におられた作業員の方々にも届いていたことは、その時お考えになってご発言されていたんでしょうか?

 

菅氏 私がどういう話をしたかというのはかなり表に出ておりますが、私の気持ちで申し上げると、叱責という気持ちはまったくありません。直前に撤退という話があったことは、それを清水社長に「撤退はありませんよ」といった直後でありますから、まだみなさんがそのことで意思一致されているかどうか分かりませんでしたので、「なんとか一番厳しい状況はみなさんが分かっておられるだろうと。だから、本当にこれは命をかけても頑張ってもらいたい」という、そういうことを強くは言いました。

それから撤退しても、つまり、現場から撤退しても放射能はどんどん広がるかっていくわけですから、そういう意味で「撤退しても逃げ切れませんよ」ということを言いました。そういうことは言いましたけれども、現場にいる皆さんを何か叱責するとか、そういう気持ちはまったくありません。

それからそういう皆さんが聞いておられたということは後になって気付きました。つまりは私も東電に入るのは初めてですから。東電のそういうところに。入ってみると大きなテレビ会議のスクリーンが各サイトとつながっていて、24時間、たとえば第二サイトの状況が分かるようになっていました。ですから、後になって、あそこで私が話したことは、そこにおられた200名あまりのみなさんだけではなくて、各サイトで聞かれた方もあったんだろうと。私はそれを公開する、しないという話があったが、私自身は公開していただいてもまったく構わないというか、決して私が止めているというわけではありません。

それを聞いて頂ければ、私がですね、いろんなことを申し上げたが、最後には60歳を超えている会長とか、社長とか、私などはある意味先頭切って行こうじゃないかということも申し上げたわでありまして、決して現場の人に対してね、なんか叱責するというような、そういう気持ちはまったくありませんでしたので、そこだけは是非ご理解頂きたいと思います。

 

野村氏 お気持ちはよく分かるが、その前にまさに会社のために、国のためにということで自分たちが命を張っておられる方が、まさか現場から逃げることはないと伝わっているわけですよね。で、電話で確認されているわけです。枝野官房長官、昨日の発言であれば現場にも連絡して撤退の意思がないと確認はされているわけですが、そういう方々が総理が来られて、自分たちは撤退するつもりがないと思っている方に「何で撤退するんだ」ということを怒鳴っている姿は、やはり今まさにサイトと、命をともに、これを何とか防いでいこうと思っておられる方々に対する態度として、先ほど人としてというご発言がありましたけれども、何か反省すべき点はないんでしょうか?

 

菅氏 同じことになるんですけれども、私は本当に叱責するというような気持ちは、特に現場の皆さんに対してそういう気持ちはまったくありません。先程来、撤退の経緯についてはいろいろお聞きになったが、少なくとも私が3時に起こされた時点では、撤退するということを社長が経産大臣に言ってきたという、そこからスタートしているわけです。ですからその意思は、普通に考えれば東電の、少なくとも上層部は共有されていると理解するのが普通だと思うんです。

私は本店に入ったので、そこには上層部の幹部の人が基本的にはおられたわけです。現場のところにもテレビ電話でつながっていたかもしれないが、私自身はそのことは、そこにおられる幹部の皆さんに撤退ということをもし考えておられたとしても、それは考え直して、なんとしても命がけでも頑張ってもらいたい。そういう気持ちで申し上げたんでありましたんで、そこは是非ご理解いただきたいと思います。

 

田中耕一委員(島津製作所フェロー) 今の叱責されることに関してだが、前々回の海江田氏が「初めて会われた方には(菅氏の演説は)違和感がある、誤解されやすい」と。また前回の海江田氏(枝野氏の間違い?)からはスポークスマン、上に立つものとして分かりやすく話すべきだというふうにおっしゃられた。今振り返って、上に立つものとしてどうあるべきか。これからの未来に対しての話になると思うが、何かございますか?

 

菅氏 私の言葉が受け止められる方にとってはやや厳しく受け止められたとしたら、そのこと自体は私の本意ではありませんので、その点については、もしそういうことがあれば申し訳なく思っております。私の本意は、その時を含めていろんな場面がありますけれども、海江田さんとも40年来の古いおつきあいでございますが、やはりこれは政治家でなくてもそうだと思いますが、はっきりものをいわなければいけないときはあるわけです。

その意味で私が、たとえば清水社長に「撤退はありませんよ」と言った。あるいは大勢の前で皆さん分かっておられるかもしれないが「撤退はしないでくださいよ」と言ったことは、私からすると私の気持ちを率直にお伝えしたいと思ったわけで、決して叱責のつもりでもありませんし、何か、よく怒鳴ったと言われるんですが、まあ、私の夫婦げんかよりは小さな声でしゃべったつもりでありますけれども、少なくともそういう何か怒ったとか、誰かを叱ったというつもりで申し上げたんではなくて、はっきりものを言うために多少声が大きくなったことはあって、それが不快な念を受け止められた方があったとすれば、それは申し訳ないと思います。

 

 ……まったく、反省もなければ自身を客観視することもない人ですね。実際、複数の議員や官僚から聞きましたが、菅氏とまともに話すには、まず怒鳴り合う必要があるそうです。菅氏側がなにやらわめいて攻撃してきたら、それにひるまず同様に「ワーッ」と言い返さなければならないと。そうして初めて普通の会話が成り立つようになるそうです。菅氏は「政治は野良犬のけんか」を持論としていますし、対人関係でもまず吠え合って力量を計らないと安心できないタイプなのでしょう。

 

 世の中には、ごく自然に相手を不快にする人、当たり前のコミュニケーションの難しい相手もいるんだろうなとは理解できますが、そんなのが首相や上司だったらたまらないなとつくづく思う次第です。このクソつまらない嫁ネタももううんざりですしね。……もういいや、ここらでやめます。

 

 

   明日はいよいよ、福島第1原発に関する国会事故調が、菅直人前首相から聴取を行います。以前のエントリでも書きましたが、どうせ菅氏のことだから、のらりくらりと言い逃れ、悪いことはすべて他人に責任を押しつけ、「自分としてはやるべきことはやった」などど必死に自己正当化と自己美化に努めることでしょう。

 

 また、菅氏の脳内ではすでに自分が実際にとった行動と、あるべき理想の行動が自分に都合よく混同され、記憶が変換されて区別がつかなくなっている可能性もあるでしょうから、事故調の委員たちも事実を引き出すのには苦労することだと思います。

 

 ただそれでも、いやそうであるからこそ、これまでの自身の過去の言動との矛盾、食い違いを多く露呈することになり、結果としていかに自身の発言が信用できないものかを世間に知らしめることになるだろうと予想します。まあ、昔から言われるように「隠すより現る」ということですね。

 

 明日は、私もこの事故調での聴取について何らかの記事を書く予定なので、昨日は過去記事や過去の取材メモなどで菅氏の過去の発言などをおさらいしてみました。そして改めて、本当にひどい、めちゃくちゃで破壊的で自分勝手で支離滅裂で姑息で卑怯で救いようのない宰相だったのだなと振り返りました。

 

 いまだにこの人物に一定の評価を与え、あるいは持ち上げている人をみると、決して渡ることのできない深くて広い川の対岸にいるのだなと、自分の脳の永遠の虜囚である人間という生き物の孤独を感じ、どこかうすら寂しさすら覚えます。

 

 みんな、見たいものしか見ないし、見えない。聞きたいことしか聞かないし、聞こえない。五感も理性も実態などなく、それぞれの脳が都合よく操作したものを受け取っているわけですね。まあ、その性向を誰よりも強く持っているのが菅氏なのでしょうが。やはり、色即是空であり、空即是色は真理であります。

 

 で、菅氏と、菅氏という不条理について考えたことについてアレコレ語りだすと止まらないので、本日は昨年7月にSANKEI EXPRESS紙に書いたコラムを、現在の思いに代えて再掲し、お茶を濁します。韓非子の普遍性はすごい、日本でもっと読まれた方がいいと常々思っています。

 

【菅政権考】韓非子が戒める亡国のトップ

 

 中国・戦国時代の韓の公子で法家思想の大成者とされる韓非子を読むと、約2200年も前に書かれたにもかかわらず、あまりに菅直人首相(64)の失政・失態とぴたりと重なることに驚かされる。秦の始皇帝も愛読したという韓非子が描く愚かで無能な「亡国の君主」の姿は、首相のあり方そのものなのだ。

 ■短気で軽率で自分勝手

 《君主がせっかちで気が短く、軽率で事を起こしやすく、すぐに激怒して前後の見さかいもなくなるという場合は、その国は滅びるであろう

 韓非子はこう指摘するが、首相は1980(昭和55)年の衆院初当選以前から、すでに「イラ菅」とあだ名されていた。

 特に3月11日の東日本大震災発生後、最初の1週間から10日間はパニック状態に陥り、周囲に怒鳴り、あたり散らす。周囲の反対を押し切って東京電力福島第一原発を視察したり、午前5時半に東電本店に押しかけ社員を恫喝したりするなど、その振る舞いは常軌を逸していた。

 《君主がねじけてかたくなで人と和合せず、諫言に逆らって人に勝つことを好み、国家のことを考えないで、軽率な行動で自信たっぷりという場合は、その国は滅びるであろう

記事本文の続き 3月中旬、民主党幹部が首相に歴代首相経験者を回って協力を求めるよう進言したところ、首相は「今さらおれが頭を下げるのか」とこれを拒否した。与野党協力の実現よりも、自身のプライドを優先させている。

 《過失をおかしながら忠臣のことばを聴きいれず、一人で思ったとおりにしていると、名声を失って人の笑いものになっていく始まりである

 こうした首相の独善的で国民生活も国会運営も考慮しない姿勢に、これまで首相を支えてきた閣僚や仙谷由人官房副長官、民主党の岡田克也幹事長らもあきれ果て、離れていく。

 いまや首相は与野党双方から「裸の王様」と嘲笑され、国会でも「恥知らずな史上最低の首相」(公明党の佐藤茂樹衆院議員)といわれる始末だ。

 ■法律ゆがめて知らん顔

 「内閣で一致した言葉でないなら一私人の言葉だ。それは鴻毛(こうもう)より軽い」

 海江田万里経済産業相は21日の参院予算委員会で、中国の歴史家、司馬遷の言葉を引用してこう首相を批判した。首相が閣議にも諮らず、関係閣僚との調整もせずに「脱原発宣言」を行い、批判されると「個人の考えだ」と引っ込めたいい加減さが我慢ならなかったようだ。

 客観的な統治の原則として、法を何より重視した韓非子は、指導者が国を危うくする政治手法としてこう例示する。

 《第一は、規則があるのにそのなかでかってな裁量をすること、第二は、法規をはみ出してその外でかってな裁断をくだすこと、第三は、人が受けた損害を自分の利益とすること

 これも、まるで首相の姿を鏡に映したかのようだ。首相は法的根拠のないまま中部電力浜岡原発への停止要請を行い、担当閣僚の海江田氏が出した「安全宣言」をひっくり返して、思いつきで原発へのストレステスト(耐性検査)実施を指示した。

 民主党の太田和美衆院議員によると、首相は震災発生直後に「これで(首相を)2年できる」と言い放ったという。事実だとすると、まさに被災者の悲嘆と損失を食い物にしていることになる。

 《君主が好んでかってな知恵をふるって法をゆがめ、時には公法のなかに私情をすりこませ、法律禁制がよく変わって、政令がたびたび出されるという場合は、その国は滅びるであろう

 首相は昨年6月の就任以降、自身の延命のために次々と新しい政策テーマを打ち出しては、言いっ放しにして投げ出してきた。これ以上こんな菅政治が続けば、本当に国が壊れてしまう。(政治部 阿比留瑠比

  ……幸い、菅政治は昨年8月、少数の人が惜しむ中で幕を閉じました。やはり、「挫するなかれ、折(くじ)くるなかれ。神州必ず滅びざるなり」(吉田松陰)だと思ったものです。あれから首相が代わり、そしてまた当然のように政治は停滞していますが、焦らずくじけず行くしかありませんね。

  ※追伸 今、枝野幸男経済産業相(当時・官房長官)に対する国会事故調の聴取をネット中継で見ていたら、私が何度か産経紙面やこのブログで触れたSPEEDI情報の公開遅れの件が追及されていました。例えば私は、今年1月のコラム「日曜日に書く」にはこう書いています。

 

 《官邸筋によるとこのSPEEDI情報の公開をストップしたのが当時の枝野幸男官房長官だった。

 

 「情報はどこかで一元化して勝手に出さないように」

 

 枝野氏が原子力安全・保安院などにこう指示した3月17日のデータでは、後に全村避難を余儀なくされた福島県飯舘村で「相当な数字が出ていた」(官邸筋)。

 

 官邸筋は、福山哲郎官房副長官(当時)が後に官邸内で「(枝野)官房長官が『情報管理を徹底しろ』という趣旨のことを言ったにしても、ちゃんと必要な情報は公開すべきではなかったか」と議論していたのを記憶している。》

 

 これについて本日、枝野氏は「部局各々が一覧性のない生データをそのまま公表すると混乱するから、文科省にはデータを分かりやすく整理して、安全委にはその意味するところを評価してから公表するように指示した」という趣旨の説明をしていました。

 

 私の取材では、当時、官邸首脳らは官庁や東電をすべて指揮下に置くことに腐心しており、この枝野氏の「勝手に出すな」という指示を受けて保安院はSPEEDI情報をぴたっと止めたと聞いています。つまり、枝野氏がそれを意図していたかどうかはともかく、23日に一部公表されるまでの約1週間、SPEEDI情報がストップしていたのは枝野氏自身の指示が原因だったことが裏付けられた形です。

 

 今朝の日経新聞に、「小沢元代表と決別を 森元首相」というミニ・ニュースが載っていました。記事内容は、自民党の森喜朗元首相が昨夜のパーティーでのあいさつで、野田佳彦首相に民主党の小沢一郎元代表と決別して民主、自民両党による「大連立」を目指すよう求めた、というものでした。

 ……森氏に限らず、自民党の長老連中には同様の考えを持つ人が少なくないようですし、民主党側も仙谷由人政調会長代行をはじめ大連立を志向する人がけっこういるようです。ですが、私はこれに明確に大反対です。だって、こんなの民意を全く無視した「あまりにふしだら」(安倍晋三元首相)な行為ではありませんか。

 前回衆院選で民主党を支持して政権交代を望んだ人も、逆に民主党は危ないとして自民党を支持した人も、いったい誰が民主と自民の野合、大連立を想定して投票したでしょうか。民主党支持者も自民党支持者もその他の政党支持者も誰も望まない政体を、一部の議員の権力欲と利害損得でつくられてはたまりません。これこそ国民不在の政治そのものですね。

 ただ、今の政治の流れはどうでしょうか。自民党は、何とか民主党政権に消費税増税法案を成立させたくて仕方がないようです。消費税増税のタイミングが本当に今かどうかではなく、面倒で国民に不人気なことは、できるだけ今の政権にやらせて後々、自分たちに矛先が向かないようにしたいというせこい打算だとしか言いようがありません。

 そういう皮算用があるものだから、国会審議を見ていても自民の質問に相手を倒そうという「本気」は感じられず、むしろ、盛んに暗黙のシグナルを送っている様子がうかがえます。「俺の本音は分かっているよなっ、なっ……」と確認しているかのようで見苦しい。

 一方の野田首相は、消費税増税法案に賛成してくれるなら、自民党側の対案や条件をすべて丸呑みせんばかりの勢いです。野田首相の著書には「政権交代に大義あり」とありますが、そんなものはどこにもないことを自ら証明しているようです。まあ、仮にこの消費税増税法案が通らなければ、自ら繰り返し表明してきたように「政治生命」は終わりとなるでしょうし、あの有害無益の前任者2人以上に何もできなかった首相として歴史に名を残しかねませんからね。

 野田首相としては、森氏の言うように小沢氏を本当に切るにしろ、それとも小沢氏と妥協し、増税法案の採決を「自民党との修正協議」を大義名分にして秋以降に先送りするにしろ、とにかく衆院解散・総選挙だけは避けたいのでしょう。口では解散権は封じられていないと強調しつつ、輿石東幹事長との間に「齟齬はない」と繰り返すのも、本音と建て前を使い分けているからかもしれません。まあ、いま選挙をすれば、民主党は壊滅状態になるのは火を見るより明らかですし、野田首相は民主党崩壊の引き金をひいたと言われるでしょうから。

 今後、解散を経ずに小沢氏を切って、実は利害が一致している自民党に抱きついて増税法案を通すにしろ、9月の党代表戦で再選されて政策の正統性を上書きしてから増税法案を採決するにしろ、行き着く先には「大連立」が見えています。ここまでまると、民主と自民に根本的な違いなどあまりないということになっているでしょうし、自民党側も、どうせ解散がないなら政権に入って権力のうまみを味わいたい人はたくさんいるはずです。

 でも、民自大連立なんてぞっとします。自民党の長老連中と民主党の仙谷氏やアレなんかが手を組んでわいわいがやがや仲良くやっている姿を想像すると、寒気どころか吐き気すらします。それで政局はほんの一瞬、安定するかに見えるでしょうが、どうせ来年夏には衆院議員の任期がきて選挙があるわけですから、すぐにそんな枠組みは音を立ててきしみ出すことだと思います。

 そして結局、そのふしだらな行為のツケを払わされ、次期衆院選で民主も自民も大敗北を喫することでしょう。私は別に2大政党論者じゃないので、民主と自民が消えてなくなろうとかまいませんが、少なくとも大連立なんてろくなもんじゃないということは強調しておきたいと思います。

 私は、民意がいつも正解を選ぶだなんて思っていませんが、それでも民意は大事です。民意を問うべきときに問わない政治なんて、いくら政治の安定だとか国民生活のためだとか何だとか言葉を飾っても、結局は国会議員の自己保身のためだとしか受け取ることができません。

 

 

 今朝の毎日新聞で、久しぶりに「山梨県教組」の文字を見つけました。それは1面の「職員政治活動に刑罰 大阪市、条例提案へ」という記事の関連記事(2面)にありました。記事は、大阪市が市職員の政治活動を国家公務員並みに厳しく規制し、罰則規定を盛り込んだ条例案をまとめたという内容で、山梨県教組が出てくるのは以下のくだりです。

 《自民党は小泉純一郎首相時代の05年、地方公務員の政治活動を制限し、罰則規定を設ける法改正を検討した。04年に発覚した大阪市の厚遇問題や山梨県教組の選挙活動などを挙げ、「労働組合が公務員制度改革の障害になっている」と指摘。民主党支持母体の公務員労組を弱体化する狙いが見え、自治労の弁護団は「思想・表現の自由を侵害する」と猛反発。結局、05年夏の郵政解散を巡る混乱などで提出は見送られた。》

 この経緯はちょっと私の認識と異なる部分があります。当時、この問題を熱心に取材していたのは新聞各紙の政治部記者の中でたぶん私1人だと思いますが、この自民党が準備した地方公務員法改正案と教育公務員特例法改正案がつぶれた理由は違います。

 それは、以前のエントリにも記しましたが、現業職を中心として地方公務員に支持母体の創価学会員がたくさんいる公明党が、いったんは自民党との幹事長会談で法改正を合意しておきながら、党本部に殺到した「これでは選挙運動ができない」という抗議に驚きひるみ、あっさりと約束を反故にして法改正に反対しだしたからです。

 あのころ、衆議院議員会館でたまたますれ違った公明党幹部(後に落選)に、「国家公務員には罰則規定があるのに、地方公務員にはそれがないため、違法な選挙活動をやり放題になっている。やはり法改正は必要ではないか」と詰め寄ったことがありますが、相手は「憲法に抵触する可能性がゴニョゴニョ」と逃げました。いったん自民党との間で合意しておきながら、後で憲法解釈を持ち出す姑息さを今も想い出します。

 それ以降、自民党側が、公明党の支持者層と重ならないように、地方公務員法改正案は取り下げて、教育公務員特例法改正案だけでもやらせてもらえないかと申し込んでも懇願しても、公明党は羮に懲りて膾を吹くばかりで、もう二度と手を出そうとしませんでした。

いま、日教組出身の輿石東氏が民主党の幹事長として権勢をほしいままにしているのも、このときの公明党の「グズラ」な対応が遠因にあると言えます。もし自治労や日教組が選挙運動を表立ってできなくなっていたら、権力基盤も求心力もとっくに失っていたでしょうからね。

 ちょっと回想部分が長くなってしまいました。大阪市の橋下徹市長はきょう午前の登庁時の記者ぶらさがり取材に、こんなことを述べています。

 橋下氏 国家公務員は罰則がある。国家公務員と地方公務員の区別はない。地方公務員ではたまたま罰則が抜けている。学説でも、罰則がたまたま抜け落ちているという方が多数じゃないか。区別する必要はない。

 記者 全国初だ。これまで数十年やってこなかったことだ

 橋下氏 それは国会議員がきちんと対処しなかったから、国家公務員と地方公務員を分ける理由があるなら、教えてもらいたい。法律以上に制限を加えるわけではない。国家公務員法がある以上、そこまでは当然できる。(以下略)

 ……この動きには期待せずにはいられません。これは単に大阪市だけの話にはとどまらず、維新の会が国政に進出すれば必ず全国に波及する問題だと考えるからです。公務員労組の旧弊と宿痾、そしてそれに乗っかった労組議員の問題を正常化する第一歩となってほしいと願います。

 維新の会については、いろいろな意見が寄せられていますが、私は、明らかにおかしいこと、法律やルールに反したことが、それがただ昔からの慣習であるというだけで誰も疑問視せず、延々と続けられているような閉塞状況に、橋下氏らが切り込んでいることは高く評価したいと思います。

 それにつけても、早く衆院・解散してほしいものですね。

 

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