2013年03月

 

 もうすぐ新年度ですね。何か定かな理由があるわけではないけれど、こういう節目があると気分一新が果たしやすく、妙に有り難く感じます。諸行は無常なので、とらわれず、また新たに前を向いて進んでいこうという気に、ちょっとだけなれます。

 

 で、そろそろ紹介する本がたまってきたので、本日は恒例の読書エントリとします。今回は、またまた警察モノに手を出しました。まずは、笹本稜平氏の「突破口 組織犯罪対策部マネロン室」(幻冬舎、☆☆☆★)からです。

 

 政官財界で巨大な影響力を持つフィクサーに、刑事達が身内の裏切りに遭いつつ挑戦を続けるというストーリーです。それ自体、面白いのですが、感心したのは、作者が意図したわけではないでしょうが、奇しくも北朝鮮に対する金融制裁がどのように効くかの解説にもなっている点です。

 

 

     

 

 《売買代金をアンダーグラウンドで決済する手段が違法薬物の密貿易にとっていかに重要かは、1995年に米国による金融制裁で営業停止を余儀なくされた、マカオに本店を置く北朝鮮系の銀行----バンコ・デルタ・アジアの事例が示している。

 北朝鮮で印刷された成功な偽ドル紙幣の流通に関わる疑惑も指摘されたが、いちばん重要な点は、密貿易の上がりのマネーロンダリングに関与してきたことだった。そこには北朝鮮で製造された覚醒剤の密輸代金も含まれていたはずだった。

 金融制裁の発動後、北朝鮮ルートの覚醒剤の摘発量が激減した。(中略)日本の当局は、バンコ・デルタ・アジアの閉鎖で代金の決済に不自由をきたし、覚醒剤の密輸がビジネスとして成立しにくくなったことが大きいとみている。》

 

 などの説明がはさまれ、新聞も分かりやすく書かなければなあと改めて反省させられました。暴力団担当刑事や、生活安全部が癒着の温床の悪役のように描かれている部分には、ちょっと極端かな、という気もしましたが。

 

 次は、今野敏氏の「東京湾臨海署安積班」シリーズの新刊「晩夏」(角川春樹事務所、☆☆☆)です。周囲の評価は非常に高いのに、自己評価は低く、どこか自信を持てずにいる安積が、今回は生意気な若手刑事の教育係の役割も果たします。

 

     

 

 これは、警察小説であると同時に、やはりサラリーマン小説なのですよね。私ももういい年なので、会社組織やそこにいる同僚、後輩のことをつい思い浮かべなから読んでしまいました。

 

 この本で勢いがついたので、もう一冊、今野氏の「同期」シリーズの第二弾「欠落」(講談社、☆☆☆)も読んでみました。この本では、当初、公安部が「悪役」として描写されていますが、途中から中国の諜報機関などと戦う「公安の正義」も描かれています。

 

     

 

 それにしても、堂場瞬一氏の執筆のこのハイペースぶりは何なのか。前回の読書エントリで「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズの第8作を紹介したばかりだというのに、もう第9作「闇夜」(中公文庫、☆☆☆★)が出ました。しかも重厚な内容です。

 

     

 

 ストーリーは……まあ、これは細かく述べても仕方がないので省略します。帯の「高城は絶望から甦る」がすべてですね。改めて、犯罪被害者の家族が直面する苦しみや絶望について考えさせられました。

 

 だいぶ以前に集中して読んでいた真保裕一氏の「ローカル線で行こう」(講談社、☆☆☆)は、帯の文句通り「読めば元気が出てくる」を目指した作品です。

 

     

 

 廃線も近いとみられている宮城県の赤字ローカル線立て直しの切り札として送りこまれたのは、新幹線のカリスマアテンダント、という設定が楽しいですね。それに当初は反発を覚えながらも協力していく県庁からの出向者……上手い!

 

 私は漫画の「コンシェルジュ」(原作いしぜきひでゆき氏、漫画藤栄道彦氏)が好きなので、題名にひかれて買い求めたのがこの門井慶喜氏の「ホテル・コンシェルジュ」(文藝春秋、☆☆★)でしたが……。

 

     

 

 うーん、登場人物の設定も物語もなんか地に足がつかないというか、軽すぎて感情移入できませんでした。やはり、好みに合う合わないというのはあるようです。

 

 お気に入りの川上健一氏の「月の魔法」(角川書店、☆☆☆★)も出ていたので早速読みました。「大切なことは、言葉にしないと伝わらない」という当たり前のことが、つくづく大事なのだと改めて感じました。舞台が小笠原というのもいいですね。登場人物が愛おしくて、ちょっと泣けました。

 

     

 

 川上氏と言えば、以前当欄で紹介した名作「渾身」がせっかく映画化されていたのに、近くの映画館では上映されず、観ることができませんでした。残念でなりません。

 

 三上延氏の「ビブリア古書堂の事件手帳」の第四弾「栞子さんと二つの顔」(メディアワークス文庫、☆☆☆)も出ていました。まあ、本の方はなかなかよいのですが、テレビドラマの主人公役は明らかなミスマッチですよね。原作のイメージとまったく重ならない(すみません、観ていません。配役を聞いて観る気にもならなかった)。

 

     

 

 浜田文人氏の「情報売買 探偵・かまわれ玲人」(祥伝社文庫、☆☆☆)は、元SPの私立探偵で、実は非常勤の内閣官房特別調査官という設定の主人公が、政権再交代前夜の永田町で活躍します。舞台が私の職場に近いし、主人公の友人として政治記者なんかも登場するので楽しく読めました。物語の中で、政治記者がこう語ります。

 

 「俺たちに守秘義務はない。酒場で聞く政治家のオフレコ話には裏があって、大抵の場合は、政治家が外部に漏れるのを望んでいるのだ」

 

 これは全くその通りだと、うんうんと頷きながら読みました。政治家に限らず、官僚の場合もそうであることが多いのですが。

 

     

 

 一方、「(政治家から)祝儀や車代を受けとらない記者など相手にされない」というセリフには、ちょっと違うなあと感じました。田中角栄元首相の時代やその後しばらくは、そういう時代もあったやに聞きますが、今はそんなにカネを持っている政治家もいないし、世間の目もそういう悪弊に厳しくなっているし、そういう慣習はなくなっていると思います。まあ小説の話なのだから、いいのですが。

 

 瀧羽麻子氏の本は、この「株式会社ネバーラ北関東支社」(幻冬舎文庫、☆☆☆)が初めてです。いろいろあって東京の証券会社を退職した主人公の女性が転職先に選んだのは、納豆がこよなく愛されている某地方だった……。

 

     

 

 納豆がやたらと出てくる割に、さらっと読めます。帯のいう通り、疲れている時の読書にぴったりかもしれません。それにしても、もう転職なんてそう簡単にはできない年齢になってしまったなあ。

 

 話は飛びますが、昨日の参院予算委員会の民主党の小西洋之氏の「クイズ質問」は下品でひどかったですね。どうして民主党の人たちは、あんなやり方は自分たちの評判を下げるだけだと気づかないのか。それが不思議でなりません。

 

 さて、ちょっと以前の話ですが、民主党の海江田万里代表は今月17日、岡山市での党会合であいさつし、自民党が昨年まとめた憲法改正案について、次のように批判しました。

 「大きな勘違いがある。前近代に戻る考え方だ」

 私はこの海江田氏の言葉を、毎日新聞と東京新聞の記事で読み、ずっと心に引っかかるものを覚えてきました。民主党が自民党の改憲案を否定するのは当然だとして、海江田氏のいう「前近代」って何だろうか。随分久しぶりに聞くキーワードだなあと。

 一般的には、近代とは封建社会以降、日本の場合は明治以降を指すことが多いので、前近代とはそれ以前ということになりますが、まあ、海江田氏も自民党改憲案が「江戸時代の考え方」と言っているわけではないでしょうね。ざくっと言えば、「古い」と言いたいのだろうという気はします。

 ただ、最近は政治家が「前近代」なんて言葉を口にする場面にはとんとお目にかかれないので、かえって海江田氏の「古さ」が印象に残ったようです。

 で、その後、この件はすっかり忘れていました。すると先日、元神奈川県教職員組合委員長の小林正元参院議員が、今年2月の日教組第157回中央委員会議案要約を送ってくれたので読んでいたところ、そこにはこんな一文が目を引きました。

 「衆議院では、自民党や日本維新の会など改憲勢力が憲法96条『改正』発議要件(総議員の3分の2)を超える4分の3に達しており、参議院選挙結果によっては憲法96条『改正』が俎上にのぼり、戦後最大の憲法危機に直面する。前近代的な理念なき憲法『改正』の政治的結集を許してはならない」

 ……なんとなく、そうだよね、と得心した次第でした。もともと民主党と日教組は立ち位置が近いというか一緒なんだから当たり前でもあるし。でも面白いなあと。

 ちなみに、この日教組の議案には、他にもこんな言葉が記されています。(※印は阿比留の注釈です)

 「7月の参議院選挙は、競争至上主義、押し付けの教育政策からの脱却、学校現場からの教育改革を求める私たち自らの主体的なたたかいである。参議院での改憲勢力の過半数阻止のためにも、日政連(※日教組の政治団体)『神本みえ子』3選にむけ、法令遵守のもと現退(※現職教員と退職教員)一致、最重要・最優先課題として、組織の総力をあげてとりくまなければならない」

 ……取って付けたように「法令遵守」を盛り込んでいるところに、日教組が自分たちの違法・脱法の政治活動に対する世間の厳しい目を多少、意識していることがうかがえますね。じゃあ、選挙運動なんかやるなよ、と言ってもやるのでしょうね。

 議案には、さらに安全保障政策について「米国追従ではなく、共同の利益を守るための東アジア共同の安全保障政策を追及すべきである」なんて書いてありました。中国や北朝鮮と「共同の利益」って何なんでしょうね。こんなタワケた前近代的な空理空論を作文しているひまがあったら、教育に専念すればいいのに。

 

 

 数日前の話になりますが、民主党の細野豪志幹事長は岐阜市内での記者会見で次のように述べ、日本維新の会などとの共闘実現に向けて、民主党最大の支持団体である連合離れを図る考えに言及しました。

 「連合に依存せずに戦える態勢をつくらねばならない。他党との協力はそういう積み上げで出てくる」

 ……まあ、既視感があるというか、民主党は選挙に負けるといつもこんな声が党内からわき出てくるのですが、いつの間にか立ち消えになるのですよね。だから今回、細野氏がこう言っても、みんな白々しい、冷めた気持ちで聞いていただろうと思います。

まして、細野氏は連合との太いパイプをもとに長年にわたり党内権力を維持してきた日教組の守護天使、輿石東参院議員会長に何事も相談しているそうですし、海江田万里代表自身が、輿石氏のバックアップがあってこそ代表の座に就けた人物ですしね。

で、私はこの若い細野氏の発言を新聞記事で読みながら、今から8年前の平成17年にある雑誌に書いた拙文を連想していました。民主党が官公労を切れないことを指摘した記事で、私はこう記しています。

《惨敗を喫した今回の衆院選後、新代表に選ばれた前原誠司が「民主党が本来、打ち破るべき旧弊に(自ら)とらわれていた。官公労の問題は解決しなければならない」と言い始めたが、時すでに遅しである。しかも、43歳と若く党内基盤も弱い前原には、早くも実行力に疑問の声が出ている。インド洋での米軍などへの給油活動を1年間再延長する改正テロ特措法について、いったんは賛成の姿勢を示していた前原だが、旧社会党系議員などの反発に押し切られて反対に回った経緯もある》

……細野氏と前原氏、幹事長と代表と違いはありますが、根っ子は同じ問題だろうと思います。特定労組だけを重用し、依存していては未来はないと、民主党議員だってだいたい()分かってはいるのだろうと思います。ただ、結局は選挙の際に動員をかけて人を集めてくれ、あるいはポスターを張ってくれ、一定の票を投じてくれる団体を切ることはできないのですね。

そういう構図の上に輿石氏がいつまでもあぐらをかいて居座っているわけです。輿石氏は参院議員会長として臨んだ前回参院選で大きく負けても辞任せず、幹事長として臨んだ衆院選で壊滅的に負けても幹事長を辞しただけで参院議員会長の立場、要職は死守しました。

そして、そんな恥を知らない「決して責任を知らない」人物にあいかわらず民主党はいいように振り回され、支配されているわけです。みんな労組の支援が後生大事だということでしょう。そうしているうちに、目線は一般有権者にではなく、特定団体、労組にばかり向けられていくと。輿石氏が権勢をふるっている限り、国民の目にそれは明々白々です。

その民主党は夏の参院選では1人区ではほぼ全滅すると言われています。2人区でも維新やみんなの党に食われるでしょうし、もうすでに惨敗は見えています。そうなると、さらなる分裂や溶解も必至でしょう。いつまでも党の体質改善を果たせずに、滅んでいく宿命なのかもしれません。

また、民主党政権が発足した際に、この政権は「連合政権」「労組の天下盗り」と言われたことも忘れてはなりません。つまり、民主党政権の失敗は連合の失敗でもあるわけです。多くの組合員を動員してこんな政権をつくってしまい、あげく、一部の政治家だけに栄耀栄華を味わわせて結局は労働者のクビを締めるような結果を招いているわけです。責任は連合も大きい。

夏の参院選に敗北しても、輿石氏はそれでも参院議員の任期が丸3年も残っているので、また責任を取らずに参院議員会長の椅子にとどまるとの見方もあります。そして民主党は有権者から、所詮そんな党であると見透かされてしまったというわけです。さすがに3年後には引退するでしょうが、そのときには

民主党は輿石氏ととも去りぬ

ということになるのではないでしょうか。露と消える、だろうと思います。「だから言わんこっちゃない」と、輿石氏の存在の有害さをずっと指摘してきたのですが、もういいや。好きにすればいいですね。

 以下は社告です。関心のある方はよろしくお願いします。

■産経志塾3月29、30日開講 増田明美氏らが講義

 日本の次代を担う若者たちの人間力向上を目指す第15回「産経志塾」を3月29、30日に開講、塾生を募集します。

 29日は、外交評論家の宮家邦彦氏の指導のもと「外交ゲーム」に参加してもらいます。仮想の国際問題への対処法などを塾生自らが考えます。30日は都留文科大学教授の新保祐司氏が「歴史精神の鍛錬」をテーマに講義。本質的議論を避けてきた戦後民主主義の問題点に切り込みます。また、29日の昼食会には、スポーツジャーナリストの増田明美氏を迎えます。

     ◇

 【日時・場所】3月29日(金)午前時半~午後6時▽3月30日(土)午後1~6時。産経新聞東京本社(東京・大手町)

 【参加費】8000円(2日間。29日は昼食付き)

 【参加資格】中・高・大・大学院生、または代までの社会人

 【定員】40人(先着順)

 【申し込み】郵便番号、住所、氏名、年齢、学校名、職業、電話番号を明記し、〒100―8077 ウェーブ産経「産経志塾」係(住所不要)。はがきまたはFAX(03・3279・6342)で。「ウェーブ産経」ホームページ(http://www.sankei.co.jp/wave/)からも申し込めます。問い合わせは03・3275・8134(平日午前10時~午後5時半)。

 

 

 産経新聞は5日付の紙面で「『中国刺激するな』 野田政権の尖閣での消極姿勢また判明」(http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130305/plc13030508500009-n1.htm)という記事を掲載しています。で、きょう午前の衆院予算委員会で、自民党の萩生田光一氏が、この記事について安倍晋三首相に事実関係を聞いたところ、安倍氏は詳細は語らなかったものの「(前政権は)警備、警戒の手法に極度の縛りを掛けていた」と答弁しました。

 産経の記事は、こうした対中弱腰対応の中心は当時の岡田克也副総理だと指摘しています。それで、午後の予算委で質問に立った岡田氏は冒頭、この問題について取り上げたわけですが、見事に墓穴を掘ったというか、極大ブーメランを額に受け止めた形でした。

 岡田氏はときおり、声を震わせて青ざめて見えしたが、以下がその関連やりとりです。

 

岡田氏:今日午前中の質疑について一言申し上げたい。一昨日の産経新聞の記事をとりあげて、私の発言について質問された方がいた。この記事については事実に反するということで私は産経新聞社にすでに抗議文を出しております。何らかのプラスアルファの根拠があったのであればともかく、そういったことがないのであれば、こういった場で取り上げることは私は適切ではないというふうに考えております。そのことをまず申し上げておきたい。その上で、例えばこの記事の中にありました、民主党政権下で海上自衛隊の艦船と中国軍艦との間に15海里、28キロの距離をおくことを決めていた。そういう事実は民主党政権下であったというふうにご認識ですか。総理は。

 

安倍首相:今の岡田委員のご質問は、こちらの体制の詳細に関わることでありますから、前政権のこととはいえ、今ここでつまびらかにすることは控えさせていただきたい。しかし、安倍政権ができたときに、それまでの対応を全体的に見直した結果、中国に対して過度な配慮をした結果、十分な対応をできてないと私が判断したことは事実だ。

 

岡田氏:私の承知しているかぎり、民主党政権下で15海里距離を空けるべきだというようなことはなかったと承知をしている。もしあるというならば、そのことを堂々と言って頂きたい。そして、そのことは総理、きちんと確認したら分かるはずだ。事務方に。防衛省の事務方に確認して下さい。そういうことはなかったわけであります。何かありますか。

 

安倍首相:私は、総理になってまさに事務方から体制について聞いた結果、今個々のことについてはあえて申しあげませんよ。それはね。これは、いわばこちらの手の内をあかすことになりますから、過去のこととはいえ申し上げませんが、私は事務方から態勢について聞いた。防衛省と海上保安庁から聞いた。で、この態勢は、明らかに過度な配慮をした結果であろうと思って全面的に見直しをした。

 

岡田氏:まあ、私は具体的なことを聞いたわけだ。それは確認されればすぐ、総理、総理であれば知ることができるはずだ。そして、今日、総理も答弁の中で、「過度に軋轢を恐れるあまり」という表現がありました。政権がかわっていろんなことの取り扱いが変わるということは理解できる。しかし、民主党政権下において、「過度に軋轢を恐れるあまり」というのは何を根拠にそういうふうに言っているのか。

 

安倍首相:これは、実際、私は確信しているからこの場で述べている。しかし、それは今あえて、個々のことについては、手の内に関わることだから申し上げない。ただこれは、別に民主党を非難するためだけに申し上げているわけではない。幾つかの対応。これは海上における対応もそうだし、領空あるいは防空識別圏における対応もそうだが、これも含めて全面的に対応を見直し、そしてしかるべき対応にかえたわけだ。

 

岡田氏:個々のことについては言えないと言いながら、前政権のことをこういった表現をつかって批判するのは私はフェアではないと思う。総理大臣としてはもう少し公平に物事を言われたらどうか。もちろん中国の軍と、日本の自衛隊が必要以上に対峙することになれば、それは色んなことが起こりうるということは考えて、我々、一つ一つの判断をしてきたことは事実だ。しかし、そのことは私は、おそらく安倍政権だって同じだと思う。具体的な対応について色々違うところはあるかもしれないが、そのことを民主党政権が「過度に軋轢を恐れるあまり」とか、そういう感情的な表現は私は使うべきではないと思うがどうか。

 

安倍首相これは感情的ではなくて、申し訳ないが、これは事実を、ファクトを述べているわけだ。で、個別について、これ申し上げることはできますよ。しかし、それは中国に対して、かつての政権がやっていたこととはいえ、これは手の内を明かすことになるから、あえて申し上げていないわけで、何も私はここで、そんなものを引き出してきて、みなさんを非難する必要なんでないわけだから、質問に答えて、むしろ私はファクトについて申し上げたわけだ。

 

岡田氏:総理。「過度に軋轢を恐れるあまり」というのはファクトじゃないですよ。それは。だから私は申し上げている。だいたい総理のパターンは一つある。民主党のことを根拠なく批判をして、そして、私はそれを変えましたと言って誇る。そういったことを時々やられる。しかし、それは内閣総理大臣としてとるべきではないと思う。私は言わないでおこうかと思ったが、じゃあ、一つ日米首脳会談について申し上げたいと思います。安倍総理は、日米首脳会談後の記者会見で、この3年間で著しく損なわれた日米のきずなと信頼を取り戻し、緊密な日米同盟が完全に復活したと宣言されました。何を根拠にそういうふうに言われたのか。

 

安倍首相:それは、民主党政権の3年において、普天間の移設問題について、最低でも県外とこういったわけですね。そして、結局、その間において大統領に対して、まあトラストミーといったわけだ。結局それは、実行できなかったじゃありませんか。これはかなり私は致命的なことだったと思う。失われた信頼というのを回復するのはそう簡単なことではないんだろうと思う。

 

岡田氏:もちろん普天間の問題は私も責任を感じている。しかし、にも関わらず日米間、それぞれの首脳間で、あるいは外務大臣をはじめ閣僚間で、あるいは事務方でさまざまな問題について取り組んで、そして信頼関係をはぐくんできたということも事実じゃないですか。そのことをあなたが一方的に否定すると言うことは理解できない。例えば、クリントン長官が退任にあたって、日米両国間は、北朝鮮、ASEANといった地域間問題やアフガン、イランといった国際的な課題に取り組んできた。日米同盟を継続して強化してきた。日本国民および日本国の指導者のみなさんに対して、日米同盟の協力と献身を感謝したい、お礼を申しあげたいと。こういうふうに最後の会見で言われました。岸田大臣おられたから、事実だということはご理解いただけると思う。例えば、こういう発言と総理の発言の間であまりにも乖離があるわけだ。いかがか。

 

安倍首相:まあ、それは、米国の国務長官が辞任会見において、「日米関係は大変なことになった」と。そんな発言をしたら、これはまあ、大変なことになると言うのは誰が考えても分かることだから、それは当然外交の責任者としては、責任ある立場で発言をされるんだろうと。このように思う。

 

岡田氏:クリントン長官の発言が責任ある発言だということであれば、最初に紹介した安倍総理の発言は無責任そのものではないか。日米同盟をお互い努力をしてさまざまなレベルで、これは育てていかなければいけない。例えば、キャンベル国務次官補が朝日新聞の記者会見でこういっている。「日米関係の維持深化は党派をこえ、政権交代をこえた共通の取り組みでなければならない」。私はその通りだと思う。で、あなたの言い方は、前の政権はでたらめやっていた。俺が全部ちゃんとやっている。そういうふうに聞こえかねない。それはまさしく、日本だけではなくて、米国との同盟関係に携わってきた、そういう人間に対しても、人々に対しても、これは侮辱だと受け止めても仕方ない。総理大臣であれば、もう少し国益を考えて、日米同盟をいかに育てていくか、そういう観点でお話をするべきだと思うがいかがか。

 

安倍首相:日米間においては、むしろ事務方、それを担ってきた国務省、外務省がある。例えば、米国の国防省と日本の防衛省。あるいは、米国の三軍と日本の自衛隊。ここにおいて私は必死にがんばってきたんだと思う。政治がなかなかちゃんとやってこなかったからなんですね。それによって守られていたのは事実だ。そして、同時に国民の中に、日米同盟の絆はやっぱり大切だな。という思いが強くあった。これはやっぱり、日米同盟を下支えしていたんだと思う。しかし、民主党政権において、岡田さんが胸を張っていえるような状況であったのか。私はそうではなかったからこそ、選挙の結果において、こういう政党には残念ながら政権を任せるわけにはいかないという結果になったんだろうと思う。

 

 ……岡田氏は産経に抗議したと強調していますが、弊紙としては「またいつもの手口だな」と思うばかりです。とりあえず、都合の悪い記事が載ると新聞社側に形式的な抗議をして、支持者や関係者に事実はそうではないと言い訳がしたいのだろうと。政治家がよく使うパターンです。

 

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