東電福島第一原発事故を検証する国会の事故調は28日、いよいよ最高責任者だった菅直人前首相の参考人聴取を行う運びとなりました。菅氏のことですから、言を左右に自分勝手な言い逃れを続けるでしょうが、いかに隠したいと思っても真実は言葉の端々からこぼれ漏れてくることでしょう。
あの原発事故で、東電や原子力安全・保安院などに大きな責任があるのは当然です。そしてそれは現在も多方面から厳しく追及されています。しかし、現場をかき回し、事故被害を拡大し、本来はもっと迅速に行うべきだった住民・被災者支援をろくに考えなかった首相官邸中枢の責任は、今よりもっと注目されるべきだと考えます。
なぜなら、菅氏をはじめ当時の政治サイドの責任者たちは、今ものうのうと要職に就き、しかも自分に都合のいいメディアを使って自己正当化と自己美化に努め続けているからです。それを見逃し、水に流すことはお天道さまが許さないと思います。また、トップと官邸がどう動き、そのどこに問題があったかをきちんと検証することは、何より大事なことでしょう。
……と、前置きのつもりがつい長くなりましたが、本日は原発事故とは関係のない読書エントリです。重度の活字中毒者である私は、手元に読む本がきれると、電車の中吊り広告でも定食屋のお品書きでも繰り返し読むはめに陥ります。
というわけで今回は、前回に続き文庫化された村上春樹氏の「1Q84」のBOOK2(新潮文庫、☆☆☆★)に手を出したところ、続きが読みたくなって単行本のBOOK3も買ってしまいました。この中に出てくる「牛河」という登場人物が、一時期かかわったある知人を連想させてつい引っ張られました。
それにしても、この本はBOOK3で一応完結なのでしょうか。リトルピープルがつくっている最中の空気さなぎなど、まだどうなるか分からない謎が残されているのですが……。まあいいや。とにかく、村上氏は本当に上手い作家であると再確認しました。
で、ベストセラー作家、東野圭吾氏の作品をいまさらのように初めて読んでみました。あらゆる悩み相談に応じる雑貨店を舞台にした「ナミヤ雑貨店の奇跡」(角川書店、☆☆☆★)は、5つの章(エピソード)で構成され、それがすべてつながっていて、中盤以降どんどん盛り上がっていきます。
なるほど、この作者の本がよく売れているのがよく分かりました。私もちょっと涙腺を刺激されました。作者の狙い通りなのでしょうが。
次の作者の長崎尚志氏は、あの傑作「MASTER キートン」の原作者の1人だというから、期待しないわけにはいきません。「闇の伴走者 醍醐真司の猟奇事件ファイル」(新潮社、☆☆☆★)はずばり、漫画業界を舞台にしていて、今まで読んだことのない作者論なども展開され、興味深いものでした。
でもこれ、次回作の存在をにおわすような終わり方になっていますが、主人公が元漫画編集者だし、次があるとしたらどんな話にするのだろうかと、余計なことを考えました。
小路幸也氏の「東京バンドワゴン」シリーズはこの「レディ・マドンナ」(集英社、☆☆☆)で第7弾です。巻末に「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ」とある通り、ホームドラマの王道を小説化したかのようで、しみじみと楽しめます。
帯の「ハチャメチャナンセンス料理小説集」という文句にひかれて手に取った多紀ヒカル氏の「神様のラーメン」(左右社、☆☆☆)は、読んでいてその不条理ぶりがかつて愛読した筒井康隆の短編集を想起させる本でした。73歳のデビュー作というのもいいですね。
これ、けっこう面白いと素直に思ったのですが、次回作もいつか出るのでしょうか。気になるところです。
佐藤雅美氏の「縮尻鏡三郎」尻図もこの「夢に見た娑婆」(文藝春秋、☆☆☆)で同じく第7弾でした。まあ、毎回紹介しているのでこれ以上、内容については触れませんが、佐藤氏は相変わらずいいです。納得感があります。
最後に、今回はかつて愛読書として紹介した内海隆一郎氏の作品を突然読み返したくなり、7冊ばかり再読しました。どれももう、5、6回は読んだものばかりなのに、間に数年おくと適度に話を忘れているのでまた楽しめます。
市井に生きる人々の哀感と優しさを、ごく短い作品にまとめてあり、通勤・帰宅途上に4~5作ぐらいずつ読むことができます。内海氏の作品は最近では、あまり書店では見かけなくなったので、大事にとっておこうと思います。おすすめです。
それにしても野田佳彦首相はふらふらしていますね。自民党にすり寄り、小沢一郎元代表に秋波送り、どちらからも足下を見られ、頼みの輿石東幹事長にはいいように手玉にとられ、ただ言葉の上で「命懸け」を強調するばかり。国内情勢から逃げるように外遊を繰り返しては何の成果もなく帰ってきて……。
さあ、きょうは休みなので久しぶりに映画でも見ようかな、と。