今朝の新聞各紙をチェックしていたら、毎日新聞と日経新聞に、安倍内閣支持率に関するなかなかショッキングな世論調査の結果が載っていました。毎日の調査(5月26、27両日)では、支持率は4月の前回調査から11ポイントも下がって政権発足以来最低の32%になり、日経の調査(5月25-27日)でも同じく4月の前回調査から12ポイント急落して最低の41%となったそうです。野党側は勢いづくでしょうが、正直なところ、少々、意外な気もする結果でした。

 毎日と日経とで9ポイントも違う点が、調査の誤差としても大きすぎる気はしますが、それはともかく安倍内閣が急速にある程度、国民の支持を失ったのは事実のようです。ちなみに、24日調査のフジテレビ報道2001の世論調査(首都圏対象)では、内閣支持率は47%に上りますから、単純比較はできませんが、その後の2、3日で安倍政権が大きな失望をかったということになりますね。

 じゃあ、それは一体何なのかというと、毎日は「年金保険料納付記録5095万件が不明になっている問題に有権者が厳しい目を向けていることをうかがわせた」と書いています。日経は「今回の急低下の背景には、公的年金保険料の納付記録漏れが参院選の争点に浮上してきたことや『政治とカネ』の問題を巡る対応への不満などが影響しているとみられる」と分析していました。ともに、やはり「年金」が原因だと見ているようです。

 確かに、私も今回の年金不祥事には呆れ果てましたし、社会保険庁は想像を絶するダメダメ役所だなとの思いを新たにしました。でも、私が支持率下落を「少々意外」と書いたのは、ここまで批判の矛先がストレートに政府・与党に向けられるとは思っていなかったからです。もちろん、今回の件を民主党などが参院選に向けた政府・与党追及の材料にしようとしていたことは鳩山由紀夫幹事長の言動などから明確でしたが、かといってそれは民主党にとっても諸刃の刃ではないか、下手するとまたブーメランが飛んでくるぞと思っていたのです。

 というのは、そもそも社会保険庁がここまでろくに仕事もせずに、のうのうと胡坐をかいてやってこれたのは、この役所が公務員労組である自治労にしっかりと守られてきたからだからです。だって自治労は日教組と並んで民主党の支援団体ですし、昨年から政府・与党はその社会保険庁=自治労の公務員天国体質をずっと批判し、改めさせようとしてきたわけでもあるし。安倍首相は就任以来、繰り返し社会保険庁の現状を批判し、その解体・廃止・分割をまさに進めようとしているところだし。

 ちなみに、私は昨年12月25日のエントリ「自民党のミニパンフ『あきれた社会保険庁の実態』…。」でも、この問題についてちょっと触れています。この問題では、無為無策を続けてきた歴代政権が批判されるのは当然だと思いますが、それと同時に選挙での票目当てに自治労と馴れ合ってきた野党側も同じかそれ以上に悪質なのではないかと感じているのです。それとも私の認識が間違っているのか…。

 あるいは、民主党の支持基盤が労組、中でも自治労、日教組などの官公労であり、その官公労がこれまで何をしてきて、どんな特権的立場に安住しているのかが、国民にあまり広く知られていないためかもしれないな、とも思います。今回の参院選は、明確な争点が見当たらないと言われてきましたが、この消えた年金記録についてどう評価し、対応するかが焦点になってくるのかもしれません。

 ちょうど、自民党の中川秀直幹事長が昨日、徳島市であいさつした際に、この問題に言及しているので紹介します。まさに、労組の問題を指摘しているのですが、こうした訴えは今のところ、国民の耳に届いていないようです。新聞やテレビではなかなかあいさつの関連部分全文を伝えることは難しいのですが、その点、ネットは便利ですね。

 《昨日の新聞を拝見したら、日本の国政史上一大事件となる、その現場が写し出されていた。野党議員らが、わが党の桜田義孝厚労委長の口を封じる、襲いかかっているような写真が掲載されていた。国会は言論の府だ。どんなことがあろうと口を封ずる、そのようなことをすることがあってはならない。戦前の議会でもあのような光景はなかった。言論の府である国会の危機といっても言い過ぎでない。

学歴も高いはずの野党議員が何故あんなことをするのか。所属政党の問題だ。どんなに優秀で世の中をよくしたいと思った議員も、民主党に入ると委員長の口を封ずるなどというおかしなこと、普通の感覚、庶民の感覚をなくしてしまうのでないか。口封じで世の中を変えられる国でない。そんなことは断じてあってはならない。

彼らは何を守ろうとしているのか。彼らは年金記録紛失問題、これが解決されない限り社保庁問題は解決しないと言っている。法案を潰し労働組合を守ることが目的といっていささかの過言もない

社保庁は言語道断の不祥事をずっと続けてきた。年金の不正免除問題、のぞき見。社保庁の大多数を占める自治労、国費評議会の諸君が45分働いたら15分休むなど、ありとあらゆる要求を当局に突きつけ、100を超える確認書を得た。国民にとって迷惑至極の職場をずっと続けてきた。国民無視の業務怠慢のための闘争が起こした現象だ

社保庁を根本から解体し、職員は一度すべて首を切る。まともな人だけ再雇用する。それも非公務員型とする。抜本改革案に与党は責任を持って年金への信頼を回復するために国会に法案を提出し、衆院段階で採決した。

彼らの狙いは改革を先送りし、国家公務員としての職員身分を守る。首切りから守ろうとしているここ徳島でも、自治労・国費評議会は民主党候補の支持母体だ

年金の記録は2億5000万件くらいある。そのうち2880万件くらいが、年金記録に統合されていない。これをできれば15月以内にやろう、時効も撤廃して年金者の権限を守る。これを政府与党は決定をし、首相自ら国会の採決にあたって方針を明確化した。年金は政争のたぐいでなく、与野党協力して、50年でもしっかり収支計算して守っていく制度だ。我々は責任を持って対応している。

社保庁を解体して民間業務にする。ミスがあればきちんと責任を取らせる。これが我々の改革案だ。民主党はミスがあっても責任を取らない、国家公務員の身分を自治労国費評議会に保障しようとしている。このような政党は、今回の選挙で何としても解体に追い込まなければならない。》

 でも、毎日の調査では、参院選で勝って欲しい政党が民主42%、自民33%と初めて逆転していました。ここから7月の選挙までに巻き返せるかどうか。自民党も苦しい立場に追い込まれつつあるのは事実でしょう。

 余談ですが、先日、職場の後輩記者と食事をしながら年金問題と世代論について話した際のことです。今の各種世論調査では、年金をはじめ社会保障分野に対する国民の関心が高いし、年金の給付額の減少などが批判を受けていますが、われわれ二人は「自分たちのころには、どうせ年金制度は機能していないだろう。もう制度自体がなくなっているかもしれないし、あっても支給額はごく僅かだろう」という考えで一致しました。

 これは安倍政権がどうのこうのという話ではないし、数字的な裏づけから論理的に突き詰めたものでもなく、酒の席で「少子化社会が進む中で、これを続けるのは長期的にはもう無理だろう。老後の蓄え、対策は自分達でなんとかしないといけないね」というただの感想のようなものですが。ただ、小泉内閣で政府高官を務めた人物と雑談している際に、「年金はいずれ破綻するよ」とはっきり言われたこともあります。どういう根拠があって言ったのか、いずれとはどの時期のことなのかとか、細かいことは分かりません。

 だから、まさに数年後に受給資格を得るような世代にはとても切実な問題なのでしょうが、私の同世代にとっては、どうなのでしょうか。私自身は、きちんと支給を受けている世代を少し羨やみつつも、逆にあまり関心がなかったのも本当です。不謹慎な言い方かもしれませんが、だから、今回の世論調査結果には、どこかしっくりこないものを感じています。