本日は、昨日の党首討論を現場で見た同僚記者のメモをもとに報告したいと思います(メモを書いた記者の了解は得ました)。秀逸なメモで、読みながら笑ってしまうほどでしたので、このまま眠らせるのはもったいないと考えました。私も党首討論はテレビで見ていましたが、現場にいたからこそ伝わる雰囲気や実情といったものがやはりあるようです。ヤジの中身は聞き取れませんでしたし。メモを見て初めて、ああそうだったのかと納得した次第です。以下、メモに書かれた内容を再構成して紹介します。

 

  《党首討論が行われた参院第一委員会室での雑感。安倍首相は一切笑顔は見せず、全体を通して神妙な面持ち。野党のヤジは品がなく、現場では安倍首相の声が聴取困難になることが何度もあった。途中、安倍首相が逆質問し、小沢代表がとまどう場面もみられた。

まず安倍首相が入室し、少し遅れて小沢代表が入る。ちなみに与党で最初に入室したのは二階国対委員長。開会直前の安倍首相は誰とも話さず、厳しい表情のまま。冒頭の小沢代表の松岡農水相へのお悔やみ、及び、その後の安倍首相の松岡氏の話の際は、ヤジは一切なしで静かなままだった。

 

それが、開会7分後ぐらいから、安倍首相が年金記録不備の対策を説明し始めると、野党のヤジが盛んになってきた。与党側からも応戦があった。

 

野党議員 「審議の時間が足りないぞ」

与党議員 「社保庁なんかつぶせ」「いつまでも審議したってエンドレスだ」

 

小沢代表の「単なる引き延ばしで言っているのではなく…」との発言に対し、与党議員から「だれも引き延ばしなんて言っていないぞ。引き延ばしなのか?」というヤジが飛んだ。

 

以下、ヤジの応酬を抄録する。

 

野党議員 「年金が消えたんだよ」

与党議員 「消えてないよ」

野党議員 「国民をバカにするな」「(年金もらえないなんて)詐欺だ」「(安倍首相の説明に対し)ごまかすな、年金返せ」「謝れ」「本当に1年で凸合できるのか」「法案審議やり直せ」

 

与党側では、武部勤自民党前幹事長がヒートアップし、 「黙って聞け」「おまえは誰だ」「出て行け」「行儀が悪すぎる」「説明しているんだから静かに聞け」と叫ぶ。(→隣にいた二階国対委員長になだめられたのか、後半はおとなしくなる…。※与党で盛んに叫んでいたのは中川秀直幹事長と武部氏)

 

野党議員 「質問に答えろ」

野党議員 「年金が消えたのは誰のせいだ

与党議員 「自治労だ!!」

野党議員 「(安倍首相の説明に対し)ここは言い訳を聞くところなのか? 質問に答えろ」

 

そして、平成9年の基礎年金番号システム導入時の責任を小沢代表が持ち出したところ…

 

与党議員 「そのシステムを導入したのは菅大臣(厚相)のときだ

菅直人民主党代表代行 「違うよ!小泉だ(呼び捨て)」

中川自民党幹事長 「設計したのは君だ!制度設計した人がおわびしろ!」

 

全体に与党側はベテラン議員が多く、ヤジも控えめ。野党は若手が「質問に答えろ」「謝罪しろ」と一方的に糾弾し、断続的にヤジを飛ばす。

 

残り3分というところで小沢代表が「ありがとうございます」と質問をやめてしまう。安倍首相が挙手して話しているとき、菅代表代行が「5000万件をどうするか答えろ」と、まるで自分が党首みたいに安倍首相にヤジを飛ばす。討論を終えた小沢代表は安倍首相と軽く一礼しあいながら、なぜか満面の笑みで早足で退室。安倍首相は淡々と退室した。》

 昨日は党首討論では、安倍首相がヤジを気にして神経質になっているようにも見えたのですが、実際、ヤジで声がかき消されるほどだったとのことなので、それも仕方がなかったのでしょう。私は国会での少々のヤジは今まで「まあいいか」とある程度許容していたのですが、昨日は特にひどく、さすがに国会議員としての品位を自ら落としているように感じました。野党側のヤジには何だか、安倍内閣の支持率が低下したのをかさにきて、首相の説明を嘲笑するかのような嫌な雰囲気がありましたし。それにしても、ヤジの応酬にもドラマがあるのですねぇ。

 この年金記録紛失問題について、公明党の北側幹事長は昨日の記者会見で、次のように述べてヤジと同じく菅氏の責任に言及していました。菅氏は「責任は小泉前首相にある」と主張していますから、これも泥仕合と言われるのでしょうか。それとも民主党お得意のブーメランとなるのでしょうか。

 「基礎年金番号統合の政策決定をしたのは平成8年の閣議決定だ。様々な省令を作り制度設計をしている。その時にきちんと統合問題をどうしてくのか、システムとしてやっていく制度を作らなければいけなったが、それが十分になされていなかったことが今回の未統合問題の一番大きな問題だ。当時の厚生労働大臣(厚生相の間違い)は菅氏だ。統合自体は正しい選択だと思うが、菅直人氏がこの年金番号の統合する際に、様々な問題が出てくる、その1つがこの年金記録の統合の問題であり、それをいかにスムーズに、早く、被保険者の方々の協力を得ながら進めていくかということが大事であり、それが十分でなかった」
 「統合をいかにスムーズに円滑に国民の協力を得ながら進めていくかという問題意識を持っていなかった。ここに一番の大きな問題がある。そういう意味で、当時の厚生大臣の菅氏の責任はあると思う。一番、大きいと思う

 
 話は飛びますが、今度の土日には、フジテレビと産経の合同世論調査があります。新聞に掲載されるのは火曜日になる見込みですが、どういう結果が出るでしょうか。安倍首相は「世論調査に一喜一憂はしない」と述べていますが、毎日、日経、朝日と支持率急落を報じているだけに、その一週間後となる今度の調査結果は注目されるところです。まあ、何にしろ、もう政治の世界は参院選一色で、何をやっても何を言っても参院選に結び付けられるし、事実その対策でもあるという状態になっています。