昨日は、映画「南京の真実」の完成披露記者会見に行ってきました、実はその時点では記事にできるかどうかは決まっていませんでした。たとえ趣旨に賛同していようと、政治部として特定の映画のピーアールを紙面で行う形になるのは少しまずいからです。事前に上司にも「政治家が何か発言するならともかく、政治面では載せにくいな。ブログで書けばいいだろう」なんて言われ、どうしたら取り上げられるかな、と考えながら会場に向かいました。

 ところが、案ずるより産むがやすし、というのとはちょっと違いますが、会場には自民、民主、無所属の計8人の議員が来ていて、それぞれ非常に興味深いあいさつをしていました。映画そのものも内容の紹介は難しくても、これは記事になるなとデスクに売り込み、以下のような記事を書き、政治面に掲載されました。イザニュースにもアップされています。

南京事件「子供に本当の歴史を」

 昭和12年の南京攻略戦や極東国際軍事裁判(東京裁判)の実相を検証する映画「南京の真実」の第1部「七人の『死刑囚』」の完成披露記者会見が25日、東京都内で開かれ、自民、民主両党などの保守系衆院議員8人が出席した。それぞれが異口同音に、中国の宣伝工作に負けずに子供たちに正しい歴史を伝える重要性を強調した。
 昨年から今年にかけ、中国や米国では約10本の南京事件をテーマとした映画が製作され、日本軍の残虐行為や被害者数を誇大に描いている。
 「われわれが政治家として受けて立たないといけない課題だ。仕掛けられている思想戦に勝たないといけない」
 無所属の西村真悟氏がこう指摘すると、民主党の渡辺周氏は「歴史の捏造(ねつぞう)は、中国にとって何の罪の意識もない」、松原仁氏は「まだ中国の手が回っていないところで、いかにして防護さくをつくるかが重要だ」と呼応した。
 一方、自民党の赤池誠章氏は「一番の問題は日本の中に(外国勢力の)協力者がいることだ」と述べ、稲田朋美氏も「日本ほど自国の名誉に無関心な政治家の多い国はない」と語った。また、元文部科学相の中山成彬氏は「日本の子供たちにとって残念なのは、本当の歴史を(偏向した)教科書からは学べないことだ」と現在の教科書のあり方を批判した。》

 ただ、当番デスクに「こういう記事が書けます」と売り込んだり、議員の発言を精査して記事を書いたり、予想される問い合わせに答えるために待機したりする必要が生じ、残念ながら記者会見を途中退席することになりました。冬季で、東北地方の降雪などで締め切りが早くなっている事情もあって仕方がなかったのですが、最後まで会場にいられなかったのは残念でした。記事にはできないと判断すればずっといられたのにと変なジレンマを感じます。

 上の記事の通り、出席議員からは気合いの入った言葉が聞けてなかなか有意義だったのですが、いかんせん紙面では発言の一部のそのまた一部しか紹介できません。この記事は11字組で50行なのですが、本当に発言の詳細を伝えようとすれば300行ぐらいになってしまい、一つの面の半分はそれで埋まってしまうということになります。各部署の記者がそれぞれ読者に届けたい記事があって、なかなか私が面白いと感じたことに、自由なスペースがもらえるものではないし、内容によって扱いの大きさの「相場観」みたいなものがあって、現場記者にはどうしようもないのだと言い訳をしておきます。

 というわけで、紙面では到底書ききれなかった8人の参加議員の発言をメモがとれた範囲で紹介したいと思います。ブログは便利だなとつくづく思います。以前なら、記事に書ききれなかったことを何とか伝えられないかと悔しい思いをしたものですが、今はこうして報告できるのですから。国会議員で最初にあいさつしたのは、今月9日に息子さんを亡くしたばかりの西村真悟氏でした。よく分からない理由で国会の本会議やダボス会議をドタキャンする某党代表に爪のあかでも飲ませたいところです。

 西村氏(無所属) 政治家である我々がなぜここに来たのか。「事実の認定を政治的立場で歪めることは、最大の不正の一つだ」という言葉がある。(南京問題は)政治的立場で事実の認定を歪めるという政治闘争であり、我々が政治家として受けて立たないといけない課題だ。鉄砲の玉が飛ぶのだけが戦争ではない。思想戦というものがある。これに負ければ民族の魂が滅ぼされる。我々は今仕掛けられている思想戦に勝たなければならない。私はこの戦いに立つために政治家になっているようなものだ。

 戸井田とおる氏(自民) 私は自民党の議連(日本の前途と歴史教育を考える議員の会)で南京問題小委員長を引き受けた。実は私の父が(東京裁判日本側弁護人の)清瀬一郎氏の秘書を長いことやっていた。その流れをくむ者として、何かをやらないといけないという思いでいた。(小委員会では)南京は通常の戦場以上でも以下でもなかったと結論づけた。そして総括文の発表をしたが、その中で反論と言える反論は出てこなかった。我々が政治に携わる人間として何をやらなければいけないか。まさに、一次資料を精査し、資料を公開できる態勢をつくっていく必要がある。

 渡辺氏(民主) 昨年私は、盧溝橋の抗日記念館に行った。相変わらず30万人虐殺(の記述)があり、そこに飾られているパネルが、日本軍とは関係のないものであると歴史が証明していることがそこに展示されている。また、馬賊、山賊を成敗している一体いつのものか分からない写真が、あたかも日本が戦時中にやったとして陳列されていた。ちょうど地元の若い人たちが反日教育の一環で連れてこられていたが、これを見たら日本に対する言いようのない憎しみを覚えるだろう。中国は、一番この地球上で著作権にうるさいルイヴィトンだろうとディズニーだろうと、全部捏造し、偽造する国で、偽物が蔓延してそれを屁とも思わない。歴史を簡単に捏造することは、彼らにとって何の罪の意識もない。この問題は、党派を超えて国会の場で日本の政治家として取り組みたい。

 松原氏(民主) 南京の問題は、たとえて言えば、客観的資料を見る限り、大虐殺がなかったことを証明する資料はあるが、あったことを証明する資料はない。その前後に南京の人口が減っていないことを、国民党政府が人口統計で持っている。また、(当時の国民党の)300回の記者会見でも、直接(南京事件に)触れることすらしなかった。これは逆に言えばなかった証明とも言える。なかったことは明確だと言い切って構わないと思う。問題は、西村氏も言っている通り、これを思想闘争として中国側は使っている。中国の教師用教本は、歴史教育を思想闘争の一環としてやると書いている。事実は問題ではない。我々の議論、真実が世界で認知されることが大事だ。正しい歴史をどうやって米国の世論に訴えるのか、EUの世論に訴えるのか。また中国の手が回っていないところで、いかにして我々が防護柵をつくるのかだ。昨年11月に拉致問題で平沼さんらと米国に行った。ヘリテージ財団の極めて紳士的で親日的な学者すら、南京大虐殺を信じている。その理由は、中国人じゃない人間がそう書いているからだという。私は、大虐殺が真実だと言っている人物は、中国国民党のスパイで御用学者だと言ったが、彼らを説得するところまでは時間がなかった。そういう人たちにも我々の主張をきちんと発信し、事実を読んでもらうねばり強い努力が必要だ。

 田村謙治氏(民主)  民主党の若手には、相当いわゆる保守系の人間がたくさんいるということを、ご認識願いたい。日本と日本人の誇りと未来のために、日本人が正しい歴史認識を持てるよう努力していく。また、中国との戦いに負けないために頑張っていきたい。

 赤池氏(自民) 昨年来、沖縄戦の教科書問題もあった。今国会では人権擁護、外国人地方参政権問題と、さまざまな課題が出ているが、すべてこれは南京とも共通している。政治が、国家、国民をどう守っていくかすべて共通する課題だ。拉致もそうだが、対外的な部分は分かりやすく、戦いやすいが、一番の問題は国内に、日本の中でいわゆる(外国勢力の)協力者がいることだ。

 稲田氏(自民) この国ほど、自国の名誉に無関心な国、また無関心な政治家が多い国はないんじゃないか。昨年は米国で慰安婦決議があった。20万人の若い女性を朝鮮半島から強制連行し、セックススレイブにして殺害したり、自殺に追い込んだりした、日本の首相は公式に謝れ、日本の子供達に20世紀最大の人身売買だと教えろという、まったく事実と違う決議がなされた。民間の杉山こういちさんという作曲家が私財を投じ、事実はこうだと広告を出した。私が賛同者として名前を連ねたことにすら、政治家やマスコミから批判された。悔しい思いをした。一体この国はどうなっていくのか、名誉を守る気持ちはないのか。昨年は安倍総理が退陣された。戦後レジームからの脱却という本当に素晴らしい理念を掲げた総理が退陣されたのは残念だが、私たちは戦後レジームからの脱却を引き継いでいかなければならない。私がA級戦犯の分祀に反対するのは、戦後レジームからの脱却の中核にある東京裁判史観を正当化することはできないというその一点だ。

 中山氏(自民) 私は自民党の日本の前途と歴史教育を考える議員の会の会長で、去年は南京事件を検証する小委員会をつくり、原資料にあたって検討した結果、(南京事件は)通常の戦争であり、それ以上でもそれ以下でもないという結論を出した。(その発表時には)内外のマスコミがたくさん憲政記念館に来て、いろんな質問も出た。ところが結局、どこも取り上げてくれなかった。自分の社の方針と違うことは載せないと、まさにねぐられた。残念だが、これが日本の現状なんだと思う。この前の沖縄戦の教科書検定についても、「軍の関与があったという事実が削除された」という全くの誤報に基づいて沖縄の人々が怒った。もう少しマスコミの方々も公正な立場で報道してほしい。私は日本史こそ必須にすべきだという考えを持っているが、間違った教科書で子供に教えている。これだったら、必須にする必要はないと逆に思ってもいる。日本の子供たちは残念ながら、本当の歴史を教科書から学べない。それ以外のことで日本の歴史を学ばないといけない。日本の教育は本当に間違っている。いま政治は非常に内向きになって矮小化されているが、日本は本当に恥ずかしい状況だが、世界の中で生きていかなければならない子供たちに正しい真実を伝える努力をしていかなければならない。

 …この議連小委員会の報告は、産経は昨年6月20日の紙面で(大きくはありませんが)取り上げているので、中山氏の言い方は正確ではありませんが、言わんとすることはよく理解できます。私はこのブログで国会議員の方々のことをボロクソに言うことがたまにありますが、この八人の議員の主張や現状認識、問題意識はよく理解できるし、納得できるものだと思います。問題は、彼らは決して多数派ではないということですね。

 この日の記者会見で、監督である日本文化チャンネル桜の水島総社長は、「政治闘争をするためにつくられた映画ではない」と述べ、映画を通して一人ひとりに真実は何かと考えてほしいという趣旨のことを強調していました。ただ、政治家には政治の場できちんと闘ってほしいと思います。逆風も強いでしょうが、決して引かずに強い信念を持って立ち向かえぱ、相手の方が弱気になり、腰砕けになるものだとも思います。