なぜ、政治家は中国が好きなのか。これは物心ついたころからずっと、中国について頭の上に重くのしかかる分厚い雲のような存在だと認識してきた私には本当に謎なのです。ですが、日本の国会が「親中派はいくらでもいるが、親米派と言える議員はいない」(在日米軍筋)と言われる状況にあるのも事実だろうと思います。米国を恐れ、米国の前では縮こまる議員はたくさんいますが、彼らは必ずしも「親米」ではないし。

 一方、親中派はというと、中国の対日政策責任者が「7人のサムライ」と呼んで頼りにしている自民党議員もいますね。これは2年前の段階での話なので、現在は序列が変わっているかもしれませんが、当時は①河野洋平②福田康夫③野田毅④二階俊博⑤加藤紘一⑥山崎拓⑦高村正彦…の各氏がそれで、順位は「親中」の度合いと期待度だと言われていました。この順位が妥当かどうかは分かりませんが、福田氏は中国側の期待通り、首相になったので、現在は1位になったかもしれませんね。河野、二階、高村各氏も今、要職についています。山崎氏も不必要なぐらいに元気そうに見えますね。

 それぞれ「親中」になった理由は経緯はバラバラでしょうが、こうし確信的な親中派がいる一方、確かに彼らに見合うような親米派は見あたりません。これは長年にわたる中国の対日工作のなせるわざなのか、ハニートラップにでも引っかかったのか、それともよぼとおいしい見返りがあるのか。米ランド研究所がまとめた報告書「中国の政治交渉行動様式」は、次のように記しているそうです。

 《中国と個人的関係を結んだ外国政治家は、その国では「中国に食い込んだ人物」とか「中国にパイプを持つ人物」とされており、中国側とのきずなが自国側での地位や評判の基礎となる》《その種の政治家は中国とのきずな保持による自分の名声を崩さないため、中国の要求を実現させようと懸命になる》

 …また前ふりが長くなってしまいました。さて本題に入ります。記者発表などはされていませんが、今月21日に山形県の斎藤弘知事が外務省を訪れ、高村外相と藪中外務次官の部屋を訪れて、ある要請文を渡しました。都道府県知事が外務省を訪問すること自体あまりないことであり、知事は果たして何を要請したのか興味を覚えるところです。山形には米軍基地もありませんし。

 で、結局それは、加藤紘一氏の意を受けたもので、4月に訪日が予定されている中国の胡錦涛国家主席の訪問先に、ぜひ山形県を加えてほしいという内容だったということが分かりました。斎藤知事は、選挙で加藤氏の支援を受けるなどして、何かと頭が上がらない立場だと言いますが…。

 胡主席の訪日時には、加藤氏の宏池会時代のライバルであり、かつ親中派としても競合関係にある河野氏が、当然のことながら衆院議長として胡氏を接遇することでしょう。加藤氏としては、河野氏に遅れはとりたくない、何とかして自分も胡氏と接触し、親中派の巨頭としての面目をほどこしたいと考えたのでしょうか。この二人は、片方が訪中すると、もう片方も後を追うように訪中して中国様のご機嫌をうかがうという関係にありますし。河野氏ばかりが胡氏と並んでにこにこ笑って映像に納まるのは認め難いと思ったのか。

 外務省としては、こういう政治家らからの公式・非公式の要請は、一応、中国側に伝えるそうですが、行くかどうかを判断するのはあくまで中国側だそうです。各種世論調査では、最近は日本人はあまり中国に好感を持っていないという結果が出ていますが、中国要人が来るのは大歓迎という地方が多いようです。というわけで、私には不思議で仕方ないのですが、相手が中国だと、この手の要請がたくさん舞い込むのだといいます。さすがに、加藤氏のように地元県知事を使い、外相を訪問させてまで頼んでくるということは、非常に珍しいようですが。よくやるよ、と言うべきかどうか。

 なぜ胡主席を来県を求めるのか、山形県庁に聞いてみたところ、「山形特産の紅花はシルクロードから伝来したこともあり、コメも中国から伝わったし、人的な交流、かかわりもあり…」と分かったような分からないような話でした。さて、胡主席が来日時、山形を訪問するかどうか注目ですね。すでに奈良訪問は予定されていますから、実際は難しいのではないかと思いますが、もし胡氏が山形にまで足を延ばしたとしたら、中国側が加藤氏の存在を重視している表れになります。