えー、本日は3週間ぶりの読書シリーズとなります。今回は比較的に豊作でして、紹介する作品は個人的にはどれも面白かったと言えるものです。通勤・帰宅途上の電車内で読み、きりのいいところまで読みたくて歩きながら読み続けたということもありました(マナーとしてはいかがなものか、ですが)。まずは、服部真澄氏の新刊からです。
待ちに待った「清談 佛々堂先生」の第2作です。この人の作品では、1995年の「龍の契り」、97年の「鷲の驕り」など、国際的なミステリーが有名ですし、私も面白く読んだのですが、好みで言えばこっちの方がいいですね。平成の魯山人と呼ばれる風流人の主人公が、古びたワンボックス・カーで西に東へと飛び回り、一期一会の「夢まぼろし」を紡ぐというもので、読後感はとても爽やかです。
次は映画化もされた「チーム・バチスタの栄光」シリーズのいわゆる医療ものです。作者は現役の勤務医だそうで、医療現場のさまざまな問題点、厚生労働省の医療行政のおかしさが、これでもかというぐらいに掘り下げられています。
実は、刊行された順番を逆にして「イノセント・ゲリラ」を先に読み、次に「螺鈿迷宮」を読んでしまいました。まあ、それでそれほど困ることはありませんでしたが、やはりちょっと…。司法と医療などテーマはとても重いものですが、しっかりエンターテインメントとして仕立てられ、作者の力量がうかがえます。ただ、お気に入りキャラの医療過誤死関連中立的第三者機関設置推進準備室室長、白鳥圭輔のロジカルモンスターぶりがちょっと影を潜め、なんだかまともな人になってきたのが気になりました。でも、次作がとても楽しみです。
これは、前回紹介した作品の続きなので、解説は省きますが、明治時代の柔道の黎明期がいきいきと描かれ、「肉体的な強さ」をどこまでも追求する群像の姿が、鮮明に浮かび上がってきます。帯の言葉通り「面白い、面白すぎる」ですね、これは。夢枕ワールド全開です。
誉田哲也氏の作品では、以前に「武士道シックスティーン」「武士道セブンティーン」の2作を紹介しましたが、これもタイプの異なる対照的な2人の女性が主人公という点が共通しています。お薦めです。ただ、中央公論新社のノベルスは、あまり書店の取り扱いがないのか、「ジウ」も続編(ジウ2、ジウ3)が出ているのに、なかなか見つけられません。まあ、楽しみを後にとっておくのもいいものですが。
大好きな時代小説のシリーズ第5弾です。諸田玲子氏の作品の中では、この「お鳥見女房」シリーズが一番好きかもしれません。下級武士の哀感を描いてしみじみとした味わいがあり、ほっとさせられます。
これまたお気に入りの作家、佐藤雅美氏の人気シリーズ「半次捕物控」の最新刊ですが、こっちは何作目か分かりません。帯にも「人気シリーズ最新刊」としか書いてありませんし、講談社も少し不親切ですね。佐藤氏の作品はいつも納得させられるというか、人の世の常識というか、落としどころがきちんと押さえられているように感じます。
さて、最後に紹介するのは初めて読んだ浜田文人氏の文庫書き下ろしで、帯の「高村薫の合田刑事、大沢在昌の鮫島刑事に匹敵する名主人公の登場!!」というコピーに惹かれました。
「捌き屋」(企業交渉人)というキャラ設定が珍しく、興味深いですね。作者は元麻雀プロだとのことですが、はい、素直に面白かったです。これもシリーズとして続きそうなので、次巻が出るのが楽しみです。この人の他の作品も読んでみようという気にさせられました。
で、今回は「おまけ」というか「番外編」というのか、漫画も一つ紹介しようと思います。「とめはねっ!」といい、高校の書道部を舞台にした「書道漫画」という、ちょっと普通はありえない設定なのですが、これが実に面白い。帯で評論家の宮崎哲也氏が「なんなんだ!?このたぎる血潮は」と述べていますが、実に熱く楽しい作品です。
昨日、最新刊(4巻)が出ているのに気付いた買いました。日本の漫画の裾野は広いと改めて感じている次第です。
コメント
コメント一覧 (20)
隣人に裁判所から、封筒が届いていましたね。私でなくて良かった。
本日の産経、岡本氏のコラムで氏は田母神元空幕長の論文に対し、「検証に耐えられない論文」と評してますが、てことは検証してないとぴうことか?頭から否定してる、と言う事ですね。歴史の科学的検証の態度は、変化を容認する事でしょう、新発見によって修正される。権力で変更するのとは違うものであるべき。
ところで「太平洋戦争」の呼称そのものの検証から、示して貰いたい。
また、史上で両者の対談なども、企画してもらいたいものです。
感心しますなあ、忙しいのによく本を読んでられますね。
見習わなくっちゃ!
継続は力なり!
うちの奥さんがこの人の作品が好きで図書館からよく借りてきています。小生も便乗してほとんど読んでおります。
今から図書館に行くところでした。
お鳥見女房の新作が出たんですね、探してみましょう。
阿比留さんは仕事のなかで、疲労であるとか、ストレスやプレッシャーで読書をしたいんだけど、読めない時期とかってないですか??
私も本は大好きなんですが、そういうことで読めなくなる時期がよくあるんです・・。
いつもブログを見てると一定のスピードでコンスタントに本をお読みになってるから・・・
最近漫画は読んでいなくて知らなかったのですが、「とめはねっ!」って「帯ギュ」の人ではないですか。
阿比留様ご推薦本では以前「コンシェルジュ」を購入した事があるのですが、久々にAmazonにて購入してみようかという気になりました。
初めてコメントさせていただきます。
読書量は多い方、と自負していたのですが、阿比留さんが紹介してくださった本、未読のものばかりで、参考になりました。お忙しい生活の中で、貪欲に読んでおられる様子、目に浮かぶようです。
さて、今朝のサンケイ一面を読んで、「朝日」を読んでいるような錯覚に陥りました。岡本行夫氏の寄稿文のことです。こういうものを掲載するにあたって、社内で反対はなかったのでしょうか。
中国への阿りばかり目立つ論調に、朝からうんざりしました。こんな調子でかの国で講演すれば、そりゃあ、あちらの聴衆は拍手喝采でしょう。司馬遼太郎さんが愛したサンケイ新聞、私も応援しているからこそ、寄稿者は厳選してほしい。本とは関係の無い話題で失礼しました。
> 3週間ぶりの読書シリーズ...
で、9冊...ペース早すぎますって...(笑)
諸田玲子氏はAmazonでの代理購入をパートのおばちゃんに頼まれた(「姦婦にあらず」だったかな?)のですが、読む閑無くってスルーしてしまったなぁ...
小生は最近短編指向(守人旅人除く♪)なのですが、火坂雅志の「羊羹合戦」が結構楽しかったかなぁ...NHK大河の原作者という事で過去作品の文庫化が進んでくれると有り難いのですけど、何故か単行本で買った作品ばかりが文庫化される最近の傾向が非常に不満です(苦笑)
>日本の漫画の裾野は広い
特に河合氏は、「モンキーターン」の時もそうでしたが、
他が扱わないジャンルを漫画にするのが上手ですね。
このあたりは、日本漫画の間口の広さと、
それを読ませる形に構成する能力の高さを感じます。
ご存知か分かりませんが、
H×Hの連載再開と休載を報じる新聞社は私の知る限り
産経新聞だけなのですが、これはどなたかの方針なのでしょうか。
ちょっと興味があります。
最後に、土曜日の産経EX「麻生政権考」を拝見しました。
韓国の北朝鮮への姿勢転換は日本にとって好材料ですね。
各国の思惑に左右されず、不退転の決意と姿勢で臨んで欲しいのは
同感ですが、現政権が不安定になっているこの状況で、注力して頂けるのか少々不安ではあります。
>本のことでなくてすみません。
>隣人に裁判所から、封筒が届いていましたね。私でなくて良かった。
>本日の産経、岡本氏のコラムで氏は田母神元空幕長の論文に対し、「検証に耐えられない論文」と評してますが、てことは検証してないとぴうことか?頭から否定してる、と言う事ですね。歴史の科学的検証の態度は、変化を容認する事でしょう、新発見によって修正される。権力で変更するのとは違うものであるべき。
>ところで「太平洋戦争」の呼称そのものの検証から、示して貰いたい。
>また、史上で両者の対談なども、企画してもらいたいものです。
岡本氏の「人界観望楼」コラムに関しては、永山英樹さんが、ご自身のブログで反論されていますね。 岡本氏はまともな事を書いているな、と思う事も過去にはあるんですが。
我々、今の日本人には確固とした価値観、史観が欠落している為でしょうか、岡本氏のように、場当たり的に右往左往することも、多いのでしょうかね。 この国の住民で、自分自身が「日本人」と云うよりも、「宇宙人」、「地球人」、「国際人」って妄想しているのも多いですから... それだけでなく、メディア界には「メディア芸者」が蔓延っている事も事実です。
http://mamoretaiwan.blog100.fc2.com/blog-entry-577.html
>ところで「太平洋戦争」の呼称そのものの検証から、示して貰いたい。…これについては、私は産経紙面でもこのブログでも何度も書いてきています。
こんにちは。私は活字中毒者ですから、本なしにはじっとしていられないのです。
お鳥見女房シリーズはいいですね。情景が目に浮かぶような気持ちでいつも読んでいます。
こんにちは。>疲労であるとか、ストレスやプレッシャーで読書をしたいんだけど、読めない時期とかってないですか??…私はそういうときこそ、煩わしい現実から一歩距離を置くため、さらに本が読みたくなります。疲労の度合いによって読む本の内容は異なるということはありますが。
こんにちは。まさか書道でわくわくさせられるとは思いませんでした(笑)。
こんにちは。岡本氏に関しては、現場の記者の評判はよくないのですが、社の上の方の人とつながっているらしく、よく登場します。われわれ現場のヒラ記者にこうした人選は全く相談も事前通告もありませんし、申し訳ありませんがいかんともし難いところです。
>読書傾向が時代小説には似た傾向が・・・。 光栄です。
>何故か単行本で買った作品ばかりが文庫化される最近の傾向が非常に不満です(苦笑) …。私も、「螺鈿迷宮」を単行本で買って読み終えた途端に文庫本が出て、ちょっとがっかりしました(笑)。
拙い記事を読んでいたたぎありがとうございます。拉致問題で退くことだけは許されないと思っています。大事な問題はたくさんあるのでしょうが、最優先して注力してほしいものです。