2006年10月


 いじめや学級崩壊、不登校や必修科目の未履修…。山積する教育の課題について、日教組出身の国会議員たちは何をやってきたのでしょうか。私が彼らの活動で気づいたことといえば、慰安婦問題で事実検証を抜きにひたすら騒いだりとか、昭和の日の成立の邪魔をしたりとか、あまり教育そのものと関係がないことばかりのような気がします。

 あっ、義務教育国庫負担金の削減には強く反対していました。この点で文部科学省と仲良くやっていたのを思い出しました。カネめの話ですね。

 で、今朝の産経は、教育基本法審議や森喜朗元首相へのインタビュー記事など、日教組関係の記事が盛りだくさんです。弊紙でもこれだけ一度に日教組が取り上げられることは、あまりなかったと思います。ようやく日教組の実態に注目が向けられる時代になったのか。

 本紙の購読者の皆様はすでに紙面でお読みになったと思いますが、重複をお許しください。森氏は次のように述べています。たびたび素っ頓狂な言動で注目を集める人ではありますが、私はさすがに地方の事情も知る文教族だなあと思いました。

 「一番の問題は知事だと思うね。知事は必ず自治労と日教組と妥協するんです。それで次の選挙で応援させる。そうすればよほど失政がない限り、2期、3期はやれる。さらに4期、5期…。地方議会も知事の子分に成り下がっている。

 だから日教組、自治労を壊滅できるかどうかということが次の参院選の争点だろうね。どう決別できるか。民主党にはできないんだから、自民党はそれを争点にすべきだと思うよ」

 私はずっと前から、次の参院選の争点は自治労と日教組だと言い続けてきましたので、「我が意を得たり」の心境でした。こういう認識が自民党内にも広がりつつあるのでしょう。

 山梨県では、教育行政のトップである教育委員長に元山教組幹部が就いています。安倍政権が、教育改革と社会保険庁改革、地方公務員改革を本気で進める気なら、当然、ぶつかるという話ではありますが。

 また、教育基本法特別委員会の関連では、自民党議員が日教組出身の参院議員が5人いることを指摘し、民主党と日教組の癒着をただしたことを記事にしています(当然、他紙は無視)。

 この5人のうち4人は民主党所属議員です。輿石東参院議員会長のことはたびたび書いていますが、たまには別の議員に関しても言及したいと思います。横浜市教組出身の那谷屋正義参院議員という人がいるのですが、この人の選挙でも、輿石氏の選挙同様、スキャンダルがありました。

 ちょっと古い話ですが、平成16年12月1日付の本紙社会面には、次のような小さな記事が載りました。

 「七月の参院選で民主党の比例代表に立候補し、当選した那谷屋正義参院議員への票のとりまとめの報酬に現金を労組幹部に渡したとして、公選法違反(買収など)の罪に問われた元神奈川県教組委員長の○○被告の判決公判が三十日、横浜地裁川崎支部で開かれた。矢村宏裁判官は『買収は悪質で、被告の刑事責任は重い』として、懲役一年六月、執行猶予五年を言い渡した。」

 本人がやったことではないとされたので、那谷屋氏自身は別に罪に問われていませんが、日教組は一体、何をする団体なのでしょうか。もちろん、選挙違反自体は与野党通じて珍しくはありませんが、本来は政治的に中立であるべきで、さらには子供に教育する立場の教師の団体がこういうことをやることに、私は強い抵抗感を覚えます。

 本日の産経には、「公務員労組〝包囲網〟」という記事も掲載されていて、こちらでは匿名の日教組関係者のコメントが出ています。それは「安倍政権が重要課題に掲げた教育再生をやり遂げるために、〝敵〟に仕立て上げられた」というものです。

 というか、最初から安倍政権の誕生を敵視し、何もする前から安倍戦争内閣だの、民主主義否定内閣だの攻撃していたのはそっちでしょうに…。と、ここまで書いたところで、やっぱり輿石氏に触れたくなりました。少し古い資料のコピーですが、輿石氏の衆院議員時代の選挙活動が、堂々と学校内で行われていた事実を示すものです。

 《山梨県選挙区第1区(甲府支部)協力分会会議
                  1995.10.19 18:00~
                       石和中学校
 1.開会のことば
 2.執行委員長あいさつ
 3.情報・経過報告(内藤副委員長・高村甲府支部書記長)
 4.各小学校区においての作業
  (1)連絡方法の確認
  (2)校区の確認
  (3)確票に関する校区の特徴
    (団地の有無・住民層・保守票の地盤など)
  (4)点検活動の計画(組分け・分担等)
  (5)その他
 5.閉会(終了後小学校区ごとに解散)》

 学校内での政治的活動を禁じた教育基本法に違反するのはあまりにも明白なのですが、輿石氏も山教組も、自分たちがさんざん踏みにじった教育基本法を守れ、と唱えています。できの悪い冗談のようです。

 山梨県のある教員は、「当時も県教委も市教委もこんな違法な政治活動を知っていて、見ないふりをしていた。今回の必修科目の未履修だって全部承知していたはずだ」と話しています。

 自治体、県教委と教組のなれ合いに、それを支える教組出身政治家の政治的圧力…。森氏がいうように、こんな構図は壊滅させて、一からやり直した方がいいのかもしれません。


 こういう拙いブログでも続けていると余得があるようで、先日から続けて何冊かの献本を受けました。ありがとうございます。で、せっかくですから、その中からお礼に代えて、最近考えていることに関係する部分にちょっと触れたいと思います。

 まず、メールマガジン「国際派時事コラム・商社マンに技あり!」で有名な泉幸男さんから、『日本の本領 国際派商社マンの辛口メモ』(彩雲出版)を送っていただきました(産経政治部の大先輩である花岡信昭氏が推薦文を書いていらっしゃいました)。

 添えられた手紙には「紙上で、またブログで、阿比留ワールドをいつも楽しみにしております」と書いてありました。あの、ありがたいし光栄なのですが、「阿比留ワールド」って一体…。あまり深く考えずにとりあえず喜んでおこうと思います。

 この本に書かれていることはどれも面白いのですが、私が特に関心を覚えたのが第9章「米紙におくった反論投書」です。米国の、偏見と軽薄さに満ちた皇室報道や反捕鯨報道に対し、泉さんが反論の投書を送り、それが掲載されるまでの顛末が記されているのですが、面白いです。

 私も先日のエントリで「史実を世界に発信する会」のことを紹介しましたが、こういう反論は大事ですね。相手が何も文句を言ってこないと思うと、つい筆がすべっていい加減なことも書き散らしがちになるという心理は、なんとなく分かりますし。

 また、7章の「道州制より府県合併だ」にも示唆を受けました。この中では、日本地図を示して1都6府20県試案が提案されているのですが、これが面白い。これによると、私の出身地である福岡県は山口県と合併して「福岡府」になるそうです。確かに近いです。

 このほか、青森県と岩手県と秋田県は合併して「奥羽県」に、山梨県は長野県と合併して「信甲県」となります。具体的でいいですね。いがみ合いなどもちょっと心配ですが。

 話は飛んで、日本政策研究センターからは「対中韓『歴史認識』外交を問う」と「東京裁判とは何だったのか」という2冊のブックレットを送ってもらいました。勉強させていただきます。

 この「歴史認識」の方に、「朝日新聞『慰安婦論』は完全に破綻している」という章がありました。これが時系列をおって非常によくまとまっていて、頭の整理になります。ちょっと引用・要約すれば

 ①平成3年8月11日に、朝日がソウル発の記事で《日中戦争や第二次世界大戦の際、「女子挺身隊」の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり…》という記事を載せた。

 =この時点で、もうおかしな記事であることが分かりますね。慰安婦と、国家総動員法に基づき勤労奉仕をした挺身隊はまったく別の存在ですし、強制連行があったという証拠もありません。また、朝日も後にはあまり使わなくなった「従軍慰安婦」という言葉があっさりと使用されています。

 ②平成4年1月11日の1面トップの記事の解説記事でも、朝日は《太平洋戦争に入ると、主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万人とも20万人ともいわれる》と書いた。

 =慰安婦で最も多かったのは日本人ですし、繰り返しますが挺身隊と慰安婦には何の関係もありません。また、突然、何も根拠を示さずに8万人から20万人という数字を出してきました。これも、現代史家の秦郁彦さんが実証的に調査したところでは、慰安婦の総数は1万数千人だったと言います。よくこんな記事書くよなあ…。

 ③同年1月23日の朝日夕刊コラムは、やってもいない強制連行をやったと証言する詐話師として知られる吉田清治氏の話を何の検証も留保もなく掲載し、《記憶の中で、特に心が痛むのは従軍慰安婦の強制連行だ》と書いた。

 ④ところが、慰安婦の強制連行には証拠がなく、証言者の言い分は疑わしいことが分かってきた平成9年3月31日の社説では、朝日は《旧日本軍の従軍慰安婦をめぐって、日本の責任を否定しようとする動きが続いている。これらの主張に共通するのは、日本軍が直接に強制連行したか否か、という狭い視点で問題をとらえようとする傾向だ》とはぐらかした。

 =自分たちが根拠なく、慰安婦の強制連行を自明のことのように書き、その前提に立って日本を非難していたのに、強制連行説があやしくなると、強制連行があったかどうかは「狭い視点だ」と言い出したわけです。全く反省が見られません。

 この日の朝日は慰安婦問題に関する2ページぶち抜きの特集記事を掲載し、河野洋平元官房副長官のインタビューも載せています。河野氏は、同時期の産経新聞のインタビュー申込みは断っています。どの社の取材を受けるかは自由ですが、朝日なら都合のよい質問をしてくれると計算したのでしょうか。

 一方、安倍晋三首相は今国会での答弁で、慰安婦問題について「当時、『狭義の強制性』が果たしてあったかの確証については、いろんな疑問点があると申し上げた。その後、『広義の強制性』に議論が変わっていった」と指摘しています。

 さんざん煽っておいて、旗色が悪くなると論点をずらしてごまかそうとした朝日の動向について、安倍首相は正確に把握しているということでしょうね。

 このブックレットを読み、以上のような流れが再整理できました。ちなみに、国会論戦を見ていて、共産党の志位和夫委員長は「広義」と「狭義」の強制性の意味が分かっていましたが、民主党の菅直人代表代行は安倍首相の説明がよく分かっていなかったように感じました。

 きょうは紹介できませんでしたが、ほかにも献本いただいた方もいます。この場を借りてお礼申し上げます。


 《人格そのものに挑戦する無礼な作法、権利を無視し人格を侮蔑するようなしかたでの権利侵害に対して抵抗することは、義務である。それは、まず、権利者の自分自身に対する義務である。(中略)また、国家共同体に対する義務である、-それは法が実現されるために必要なのだから》(イェーリング「権利のための逃走」)

 今朝、テレビで、核保有議論をめぐる自民党の中川昭一政調会長や麻生太郎外相に対する変な人たちの言論の自由を無視した攻撃ぶりを見ていて、上の言葉を思い出しました。本日のエントリとは直接的な関係はありません、すいません。

 さて現在、全国で続発しているいじめ事件や必修科目の未履修問題で、学校だけでなく教育委員会が何をしていたのか、どういう役割を持っていたのかが問われています。なぜ、いじめをなかなか認めないのか、あるいは問題教員をかばうように見えるのか…。

 私は、全部が全部そうだとは言いませんが、一定割合で、日教組をはじめとする教職員組合が絡んでいることが、問題の不透明さを増しているのではないかと考えています。つまり、教組が組合教師をかばって事実認定を難しくし、教組の影響を受けた教委が同調しているのではないかと。

 北海道や福岡の事例については、私は現地で取材したわけでもないし、特に産経が発行していない場所なので、実際のところはよく分かりません。ただ、山梨県教職員組合が県教委から市町村教委まで支配し、組合幹部を教育委員に送り込んでいたことを知っているので、どうしてもその可能性を考えてしまうのです。

 それではなぜ、教組が本来は監督者であるはずの教委を影響下に置くことができるのか。一つには、現場からの突き上げもあるのでしょうが、教組が持つ政治力も大きく作用していると思います。

 本来は政治的に中立であるべき教職員の政治的行為は、法律違反ではあっても罰則はありませんから。強制力のない指導・助言しか法律上できない文部科学省(国)の無力もあるでしょう。

 そこで、自民党のプロジェクトチームが1年半も前にまとめた「地方公務員の政治的行為の制限に関する答申」を紹介します(全文は長いので抜粋で)。何度でも書きますが、自民党と公明党は一度、地方公務員や教育公務員の政治活動に、国家公務員と同様の罰則を設ける法案提出に合意していますが、支持者から抗議を受けた公明党が党利党略から現在は足を引っ張っています。

 ・山梨県の教職員組合などは、その30年史の中で、端的に「国会議員を送り出せる山教組という、自らの戦いによって勝ち取った大きな『政治力』は、つぎには、山教組と協働しうる県知事を当選させ、県議選に大きな力を発揮してきた。…こうして、一つ一つ積み上げて来た『政治力』が、山梨県の教育行政をして、『山教組を無視してはうまくことが運ばない』という状態にまで、大きく前進してきた」と自ら、選挙によって、政治力を培ってきたことを認めている。

 ・昭和29年、政府が提出した教育公務員特例法の改正案においては、政治的行為の制限違反に対して罰則を科すことが規定され、衆議院を通過したのであるが、参議院において、教育界の内部、教育行政の手によって矯正すべきだという趣旨から修正案が出され、結局、罰則が削除され、行政処分のみとなった経緯がある。

 ・しかし、昨年、山梨県教職員組合による組織的な政治活動・選挙運動の実態が明らかとなった事案において、山梨県教育委員会をはじめとする教育行政は、こうした違法行為を行った教育公務員に対して厳正な行政処分を行っていない

 ・都道府県の教育委員会を指導・助言する立場にある文部科学省は、山梨県教育委員会に対して、本件については、第一に、事実解明が不十分である。第二に、法令の解釈について誤りがある。第三に、口頭訓告処分という対応は処分手続上不適正である。との見解を伝え、再三にわたり、以上三点に対する回答を求めている。

 ・しかし、いまだに山梨県教育委員会から回答はない。それどころか、山梨県教育委員会は、昨年、本件に関して厳重注意処分にした教頭を、本年4月1日付けで校長に昇任させるという人事を行った。

 ・教職員組合と教育委員会が一体となれば、違法行為が行われていても、見て見ぬふりをすることができるだけでなく、違法行為に異議を唱える教職員に対して、人事等を通じて圧力をかけることができるとともに、違法行為者を人事で優遇することさえできるのである

 ・今後、ますます進むであろう地方分権を考えた場合、一自治体という限られた世界の中で、行政権を一手に握った者が強権的な支配を行ない、教育行政の歪みを回復し難いものとすることが懸念される。こうした事態に鑑み、違法行為を行った教育公務員に対しては、適正に処断することができるように罰則を科すことが必要である。

 …山梨県教委による関係者処分については、その後、山教組幹部らが罰金刑を受けたことで一部見直されましたが、当初は処分に抵抗し、最低限かつだれにも傷がつかない処分でお茶を濁そうという姿勢が見え見えでした。

 政治活動といじめや未履修は別の問題ではありますが、どうも同じ構図が背景にあるのではないかと疑ってしまいます。北海道人事委員会が、国歌斉唱を妨害した教師の「戒告」処分を重すぎると裁定した背景にも、北海道教組の有形・無形の圧力がなかったか。

 先日、いじめ問題の調査のため、福岡県筑前町教委を訪れた山谷えり子首相補佐官や小渕優子文部科学政務官に対する教委側の対応は、いじめだと明言しないなど、必ずしも誠実なものではなかったと聞いています。それが、単なる責任逃れなのか、それとも、もっと大きなしがらみに絡め取られているのか。

 個人的には、いじめには傷害罪を適用するぐらいの厳罰を持って対応してほしいと思っています。教職員は日教組によって聖職者ではなく労働者となりましたが、なぜだか学校現場は教職員の聖域になって守られているような気がします。ちょっと変ですね。


 下村博文官房副長官の河野談話に関するごく抑制的な問題提起に対し、野党4党は「閣内不一致」だとして追及するそうです。「もっと大事なことがほかにあるだろ」「本気で河野談話が正しいとでも思っているのか」といろいろと突っ込みたいところですね。

 それできょうは、まずは冷静に、発端となった下村氏の発言と、それに対する政府・与野党の反応ぶりを紹介します。残念ながら、あくまでオンレコしかお見せすることはできませんが、それでも雰囲気は伝わることと思います。

 問題となった10月25日夜の下村氏の講演から、河野談話部分を抜粋します。

 《安倍総理の今までの歴史認識に対する考え方、具体的にいえば村山談話について、従軍慰安婦を認めた河野談話について、否定的な、そのものを見直すべきだとの発言をしていたではないか。しかし、総理になってからは違うではないかという批判がある。

 しかし、私はそれは当然だと思う。一国会議員と内閣としての発言は違う。もし、村山談話、河野談話を変えるとすると、これは閣議決定しているので重いものだ。もし、修正するならもう一度閣議決定して、政府はこのように考えるということをし直さないと総理の国会発言はできない。

 その空間、時間が許されるかを考えると、いま各大臣の了解を得る、歴史認識を共有しあうような知識と時間と努力をしている時期かというとそうではないと思う。

 また総理という立場から、これは歴代の内閣の積み重ねの中で歴史もあるわけで、これは安倍総理が考えを曲げたとかではなく、そういう立場における認識の答弁であると思う。

 ただ、安倍首相は村山談話、河野談話についても100%そのままというわけでなく、総理の立場から答弁していて、改めて読んでもらえれば分かる。これは私は個人的には、特に河野談話はもう少し事実関係をよく研究して、その結果どうなのかということについては時間をかけて、客観的に科学的な知識をもっと収集して考えるべきではないかと思う。今後、そういうことも私自身は自分の検討課題としてあっていいと考えている
。》


 これに対して翌26日午前、民
主党の高木義明国対委員長が記者会見で、早速反応しています。

《高木氏:下村官房副長官がいわゆる河野談話について、安倍総理の発言について、一国会議員の発言と総理の発言と違った当然だとか、考え方を曲げたとか日和ったということではない、ということを述べたという報道もある。これらの事実経過も確認する必要があるが、いわゆる使い分けというか、そういったことなのかどうか、これは非常に訳の分からない発言で、何らかの場でその真意をただす必要がある。

 Q:下村発言について、使い分けではないかといっているが、どこを問題視しているのか

 高木氏:まず事実確認をしてみたい。どの場でどういう発言をされたのか。これは、ある意味では、本会議であるいは予算委員会等で総理が発言したこと、そして同じ官邸の官房副長官が違ったことを言っていれば、当然、どちらが本当なのかただしていかないと、国民に十分説明がつかないのではないか。具体的にどの部分かはこれから精査したい。

 Q:追及の場は

 高木氏:いろいろな場が考えられる。どの場が一番有効なのか、答弁が引き出せるのか早急に対応したい。

 Q:総理自らにただすのか

 高木氏:そうだ》

 民主党は、よく分からないけどとにかく追及できそうだから食いついてみた、という感じでしょうか。この午前の塩崎恭久官房長官の記者会見でも、この問題に関する質問が出ました。

 《Q:昨日、下村副長官が河野談話について、個人的な見解とした上で、客観的に科学的に考えるべきだという話をしたが、総理の考えと矛盾しないか

 塩崎氏:私が理解する限りでは昨日、下村副長官が講演で、個人的な考え方ということでこの問題に触れたと聞いております。そういうことですから、政府の方針はまったく安倍総理が国会などで答弁した基本ラインとはまったく変わりませんし、平成5年8月4日の河野官房長官談話を受け継いでいるというのが政府の基本的な立場です。

 Q:政府の人間が公の場で、個人的な見解であれば、政府の方針と違うことを述べてもいいと考えるのか

 塩崎氏:そこは政治家下村博文さんのご判断することだと思います。

 Q:下村副長官の講演の話で、別の話として、総理の村山談話、河野談話に関する発言が就任前後で変わっているとされることについて、「総理はひよってらっしゃるわけではない。総理としての立場で、答弁をされているのである」という話をされていて、要するに総理としての発言と安倍さん本人の意思とは別であるということをおっしゃっているが、こういうことを副長官が代弁するという形でおっしゃることに関してはどのように考えるか。

 塩崎氏:それも先ほど申し上げたように政治家下村博文さんがお考えになってご判断をされると思います。

 Q:総理自身は、この変化に関して批判は甘んじて受けるとおしゃってますが、そこを敢えて閣内の身近な方が代弁する必要はあるとお考えか。

 塩崎氏:それは何度も申し上げますけども、下村博文さんがご判断することだと思います。

 Q:副長官は塩崎さん直属の部下ですけども、その方が河野談話に見られるように、違うことをおっしゃったり、首相の意向はこうであるというふうに公の場で述べることは特に問題はないとお考えか

 塩崎氏:何度もいいますけども、子供ではありませんから、政治家として判断するということは、私がそう思っていることも彼がよく分かっているはずであります。》

 どうしてもこれは問題だと言わせたい社だか記者だかがいるということが分かりますね。私は、塩崎さんの答弁は、そんなに上手な方ではないと思うのですが、「子供ではありませんから」にはちょっとウケました。

 この日の昼、自民党の谷垣派総会の記者ブリーフをした中谷元・元防衛庁長官からも発言がありました。聞かれたから答えただけのようですが。

 《Q:下村博文官房副長官の慰安婦に関する発言については


 中谷氏:報道でしか知らないが、彼の個人的な考えを言われたのでは。総会では特に話題にならなかった。


 Q:中谷元さんの意見は

 中谷氏:総理が談話を継承するといっているので、今の段階で見直しとかは内閣としてはないと思う。役職に就いているので、内閣で混乱とか意見の違いがあってはならない。内閣できちんと統一すべきだ。》

 そして今度は午後の塩崎長官会見です。河野談話を見直されたら困るという人がいる一方、そんなことばかり言っていていいのかということを婉曲に表明している人もいますね。

 《Q:先ほどの委員会答弁の中で、長官は非核三原則については政府としても堅持しているし、これを変えることもないという話をしていた。また、午前中の会見でも河野官房長官談話については内閣として引き継いでいくと言ったが、麻生大臣にしても、下村副長官にしても、政府の立場と個人の立場を使い分けて違うことを言っているが、国民の信頼、理解が得られないのではないのかと思うが。

 塩崎氏:繰り返し麻生大臣も今日答弁しているが、内閣としてその方針を変えることは一切考えてなくて、それは堅持するということを明言している。麻生大臣が言っていたのは、国民の中で議論を封殺するつもりはないと言っているだけで、基本的な閣僚としての立場については繰り返し明言しているとおり、政府としてこの問題に変更を加えることはありえないということは明確に言っているわけであるから、閣僚としてそのラインを変えることはありえないというメッセージを出していると思う。

 Q:歴史認識や非核三原則といった政権にとって重要テーマに関して、個人的な発言ということでいろいろ閣内、政府内から発言が相次いでいるのはどうしてと考えているか。

 塩崎氏:今回の北朝鮮の問題については、北朝鮮がとった行動がいかに重大な影響を日本に与えるのかということを意味していると思う。それから下村発言については、今朝申し上げた通り、政治家の説明責任を伴う行動を下村さんはとっているわけなので、これは下村さんが説明責任を果たして頂くということだと思う。

 Q:重要なテーマに関して総理なり長官が個人的な発言と言っているのは、何らかの効果を意図して黙認しているのか。

 塩崎氏:それは今後の説明責任の応対ぶりを見てもらった上でご判断を頂きたい。

 Q:過去の内閣では、政府の重要なテーマに関して閣内なり政府内なりでいわば不規則発言のようなものが出た場合には、総理なり官房長から注意するケースがあったと思う。現段階では、歴史認識や非核三原則というテーマに関してのこれまでの発言でそういったことは必要ないと考えているか。

 塩崎氏:今日も麻生大臣のことについての質問に対して、先ほどの麻生大臣として、閣僚としての判断でこの三原則については変えることはまったくないという政府の基本線を繰り返したうえで私が申し上げたのは、その後のことは政治的な判断をしたうえで今の発言をしているのだろうということで、これは麻生大臣の説明責任の問題だろうと思う。

 Q:北朝鮮の核実験という目の前の重大な危機がある中、60年前のことに関する河野談話や村山談話の話をするというのは、政府の北朝鮮への脅威に対する国民への説明が不十分なのではないか。

 塩崎氏:河野談話と北朝鮮の問題がどうつながっていくのか。

 Q:民主党の菅代表代行の会見でも問題にしているのだが、北朝鮮の問題よりも野党がそういった河野談話の話などを持ち出すのは、政府の北朝鮮の脅威に対する説明が不十分だからではないかというふうな印象があるが。

 塩崎氏:なぜ説明をするかについては、野党の皆さんに聞いていただいたほうがいいと思う。》

 最後は塩崎氏が質問の意味がよく分からなかったようで、やりとりが成立していません。この日はまた、
野党幹事長会談があり、4人の幹事長がそろっての記者会見もありました。

 《民主党の鳩山由起夫氏:共産党、社民党、国民新党、民主党の野党4党の幹事長・書記局長会談を2時すぎから行い、2時35分まで行った。あらましの合意された事項を申し上げる。

(中略)
2点目は麻生外相の発言だ。北朝鮮の核実験に関し、核の保有すべきかいなかについて、議論をするべきだという発言は、とても許せる話ではない。日本としては、核廃絶にむけてリーダーシップをとっていかないといけないところ。衆参でも決議がなされている。こういった問題に対し真っ向から反対するような意見が出てきてはならない。徹底して追及していきたい。

 あわせて、下村博文官房副長官の従軍慰安婦の発言も看過できない。立法府に対して行政府が三権分立を無視するような強引なやり方で進めていくとすればこれはとても看過できない。この問題に関しても共闘していこうということになった。

 社民党の又市征治氏:本当にいまの安倍内閣はバラバラ内閣と言わざるを得ない。安倍総理が非核三原則を堅持するといっているのに、何度も国会で麻生外相がこのことを否定するような核平気保有論議発言をする。そしてそれは衆参両院の決議のなかに、改めて核兵器廃絶への不断の努力を誓うと両院が決めたものを、逆らっていくという中身だから、本来、罷免要求すべきもの。

 次々と下村さんもそうだが、安倍総理が発言したあとに、それをひっくり返す発言をしている。首相の任命責任が問われている。本来ならば罷免にあたいする。

 Q 下村発言はどうやってだれに対して、どの点でただしていくのか


 鳩山氏:それはそれぞれの立場から追及していく話だから、場はいろいろある。委員会、その他ある。そこで追及していくことになる。官邸のなかで、総理と官房副長官の意見が異なっていることが明らかになったわけだから、その問題は内容如何にかかわらず大きな問題だ。その追及をそれぞれの政党として行っていきたい。

 Q 本来なら罷免に値する、と又市さんはいったが、罷免要求は話し合われたか

 鳩山氏:罷免という話はわれわれのなかではない。下村さんの罷免の話はしてないと思う。》

 そうして夜には、安倍首相の
ぶらさがりインタビューでも、関連質問が出ました。

  《Q:下村副長官から河野談話の見直しの必要性を示唆する発言が出た。総理は河野談話を踏襲する考えだが、閣内で矛盾していると考えないのか。

 安倍首相:それは議員の資格としておそらく意見を言っているのだろうと思います。私も官房副長官時代にも議員としての資格でいろんな意見を言ったことがあります。それは議員として言うのは議員個人の責任で言っているんだろうと。全く問題ないと思います。

 Q:結果として発言を麻生大臣の発言も含めて、黙認している形になると思うが。

 安倍首相:全く問題ないですね。私が申し上げているのは閣内、内閣としての意見ですから

Q:議員としてであればどのような発言でも構わないと。

 安倍首相:今私が申し上げたとおりです。

 Q:非核三原則について政府として意思統一する考えはあるか。

 安倍首相:もう今申し上げたとおりです。

 Q:下村さんの発言の問題で、総理自身が総理になってモノを言いづらくなったなあと思われることはあるか。

 安倍首相:そんなことはありませんよ。》

で、一夜明けて頭の整理がついた民主党の高木国対委員長が再び記者会見し、次のように述べました


《高木氏:昨日も少し触れたが、下村官房副長官の河野談話の見直し発言については、昨日の幹事長・書記局長会談でも提起され、この問題について国対で追及していくことが確認された。菅代表代行は予算委員会で安倍総理の姿勢をただしたときにも、総理としては河野談話については、閣議決定事項でもあるし、これを尊重するという趣旨の答弁をしていたが、同じ政府のしかも官邸の官房副長官たる政治家が見直し発言をするということは一体どういうことか。

 総理大臣との意見の違い、あるいは官房副長官の上司である官房長官はどのようにこの問題を考えているのか。この問題は予算委員会を中心に改めて開催を要求し、閣内が統一しているのかどうかただしていきたい。

Q:下村発言について予算委員会で閣内不一致をただしていくということだが、麻生発言と同じ委員会で?

高木氏:閣僚がそろったところが一番いいのは予算委員会だから、予算委員会については麻生発言をめぐってはすでに要求しているので、それに付け加える。同時に予算委員会がいつ開催されるか、これも相手のあることだから、それまで待っているわけにはいかないので、関係委員会で議論の場があればそういう場を、あらゆる場を通じて、この問題を取り上げるという気持ちだ。》

 それにしても、政治は言葉をやりとりするのが仕事ではありますが、政治家は大変ですね。いつも思うことですが、私のような面倒くさがりにはとても務まらない仕事です。

 ただ、国民に語りかける言葉が大事なのは言うまでもありませんが、だからといって片言隻句をとらえてのあげ足取りばかりが国会の仕事ではないだろうと思うのです。

 予算委員会での質疑でも、今回の「閣内不一致」うんぬんにしても、じゃう政治家は間違えないように「紙だけ読んでいればいいのか」「何事も前例に従いますでいいのか」と言いたくなります。私が末席を汚しているメディアにも、大きな責任がありますが…。


 きょう、政府は「北朝鮮が核実験を行った蓋然性が極めて高い」という政府見解を発表しました。「えっ、今ごろ?」と思われるかもしれませんが、諸情報を総合してようやく核実験だったことはほぼ間違いないとの判断に達したようです。

 日本は日本で航空自衛隊がT4を飛ばして放射能検出などの努力をしていましたが、もともと放射能を検知するためのフィルターもろくに用意されていない状況だったと聞きました。わが国の安全保障は、まことに残念ながら、米国に頼らなければ何もできません。

 それにしても、国際社会の反対を押し切ってミサイルをぶっ放し、核実験を強行する国がすぐ近くにあるというのは、本当に恐ろしいですね。ここに至っても、核保有の議論すら許さないという政治家たちは、どういう発想をしているのかと思うと頭がくらくらします。

 それはさておき、きょう国会議員会館でもらった在日本大韓民国民団の機関紙、民団新聞(10月25日号)に興味深い記事が載っていました。

 それによると、本国の核実験に沈黙している在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)は、1995年までの綱領には、核兵器の製造・使用の禁止と完全な撤廃を要求するとはっきりと記していた、とのことです。

 「われわれは、侵略的軍事同盟と戦争に反対し、原子兵器、水素爆弾、細菌兵器など、いっさいの大量破壊兵器の製造および使用の禁止とその完全な撤廃を要求し、世界平和のために努力する」(綱領第7条)

 ところが、95年9月の第17回全体大会で綱領を全面的に改定し、7条の文言を「国の富強発展に特色ある貢献をする」に入れ替えたといいます。ちょうど、北朝鮮が本格的な核開発に向けて走り出していたころですね。軽水炉建設、重油提供などと引き替えに、核開発計画を凍結するふりをして…。

 まあ、ありていに言って、北朝鮮本国が核を持つことにしたので、総連はあわてて核廃絶の旗を降ろしたということでしょうね。なんて節操のない振る舞いでしょうか。結局、本国の顔色を見て、言うことを聞くだけということです。

 公安関係者の話では、総連も内部では「核開発なんかやめて、拉致被害者を返して早く国交正常化してほしい」と思っているそうですが、これでは本国への働きかけなどは全く望めそうにありません。

 まさか総連は、核武装の論議を封じるべきでないと話しただけで一部勢力からたたかれている、自民党の中川昭一政調会長や麻生太郎外相について、批判したりはしないでしょうね。その資格は、一万歩譲っても120%ありませんよ。

 この日の民団新聞には、もう一つ面白い記事が載っていました。何でも、「日本社会で最近とみに高まりつつある偏狭ななしナショナリズムに在日の立場から一石を投じてきた市民公開講座『在日から見える社会』」に、元官房長官2人が参加し、講演するとのことです。

 元官房長官ってだれだろうと読むと、野中広務氏と加藤紘一氏でした。わかりやすいですねぇ。私はときどき、世の中ってなんとわかりやすいんだと感動してしまうことがあります。ときどき、ですが。

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