2009年06月

 

 さて、一連の鳩山邦夫前総務相の言動を見ていて、結局、この人は何がしたかったのだろうとずっと考えてきました。特に、自らの「正義」を訴えながら麻生首相に対し、日本郵政の西川社長と自分の首との二者択一を迫る姿は異様でしたから、この実は計算高い人物が何か自分にとって得することを狙っていないはずがないとは思っていたのですが、なかなかこれだというものがなく…。まあ、兄の由起夫・民主党代表とのパイプはしっかりと維持しておいて、自民党内でどうしようもなくなったらまた連携を模索するのだろうとは見ていましたが、いまひとつ腑に落ちるものがありませんでした。

 

 それが昨日、鳩山氏が地元、福岡県久留米市のホテルで行った講演の取材メモを読んでいて、ああ、やはりそうだったのかと疑問が氷解した気がします。この人は表向き、言葉では否定していますが、要は自民党総裁選を前倒しで開き、自分が担がれて総裁になることを夢見ているのだろうと。やはり、今回の騒動は一種のクーデターのようなものだったのだろうなと改めて感じた次第です。

 

   

 

 

 以下がその講演録ですが、相変わらず「正義」の大安売りです。「よく言うよ」という感じの鼻につく表現もありますが、まずはご一読ください。「大手マスコミ社長」なる人物が出てきて笑えます(いや泣けます)。

 

政治にとって一番大事なのは政策ではない。正義だ。正義がなければ、どんなに政策が立派でも正義に反している限り、その国をほろびの道に導いていくに違いない。正義と信念を曲げて自らの立場を守ろうとするならば、政治家は辞めたほうがいい。人間として、太宰ではないが、人間失格だ。正しいことをいって通用しないならば潔く内閣を去ろうということで内閣を去った

残念だという人が大勢いる。しかし最終的な場面で、日本郵政の西川社長は続投である。これを認めていただかなければ辞めていただくということになった。いろんなことを言われた。西川さんを会長に祭り上げるから、それでいいか。ダメです。西川さんを取締役から外すから、代表執行役社長で良いか。それもダメです。国民共有の財産をかすめ取ろうとした責任を認めた責任はとってほしい。取締役は外れていただきたい。29日の株主総会で財務相がいいといっても総務相が認めなければ効力は発生しない。だから29日まで総務大臣をやらせていただきたいと。そして西川さんたち、何人か取締役として認めない。許認可権を行使して内閣を去ると言ったが、それまでは待てませんという総理のお答えだった。ならば、辞表を書きますということで私は潔く辞表を書いた。

間違ったことを認めてはいけない。業務改善命令は責任をとって辞めてくださいというのと同じ事だ。かんぽの宿問題は氷山の一角ではないか。

私は郵政民営化賛成だが、国民共有の財産を勝手に処分する。こんな国民をバカにした話はない。正しい民営化のために、正義にもとる不正義の部分は一掃しなければならない。だから新しい経営陣が必要だ。当たり前のことだ。

 

  

 

なぜ当たり前のことが通らないのか。この間広島県にある応援に、細田博之自民党幹事長と行った。2人で演説した。幹事長への拍手なんて、ほとんどなかった。私には熱狂的な拍手だった。これは自民党にとってこんなピンチはない。私のような正しいことを正しいといった人間が、街を歩けばがんばれといわれる。中学生にも。正義のためにがんばってと。いまの政治が正義を踏みにじっていると国民が思っていることは、自民党や政府に対する国民の風当たりがいかに強いかの表れだ

私のように当たり前のことを言った人間がヒーロー視されるような世の中は間違っている。当たり前のことをやった人間が、鳩山が当たり前のことをやっているのねと軽く評価されるのが●(聞き取れず)ではないか。政治、政党が正邪の判断ができなくなったとするならば、政治の大ピンチだ。

私は麻生総理、総裁をつくるために全力を尽くしてきた人間だ。3回も選対本部長を務めたんだから。あの方はいい人だと思う。人が良すぎる。人の話を聞き過ぎる。だから揺れてしまう。この4月はじめまで私と麻生総理は完全に歩調があっていた。総理も経営陣は取り調べ後は一新しようと。私を心配していろいろと話をしてもいいよというようなお手紙をちょうだいしておった。それがどうしてこうなるか。よってたかって、あの善人を、人のいい内閣総理大臣を妙な振り付けをした人たちがいる。どういう経緯かまだわからない。しかし、総理の判断を完全に誤らせた。

 

  

 

私は総理に言った。西川さんを続投させるとなると、世論が牙をむくと。私は何度も忠告した。しかしおそらく総理にむらがって間違った情報を伝える振り付け師たちは、鳩山を切ったって支持率は下がりゃしませんよと言ったのではないかと想像する。私は総理が本当にお気の毒だ。こんな間違った判断をするような麻生太郎ではない。だれがどうやって総理を誤った判断に導いたのか、本当に腹が立つ。だから総理も、そういう誤った判断を無理強いする人たちに乗ってはいけないということは、一国のリーダーなんだから、言えるのかなあ。非常に残念だ

最終的には西川さんが詫び状を書いて総務大臣室に来て私に謝ることで西川続投を認めてくれと言うことが総理周辺からたびたびいわれた。私は受け入れられないと言った。彼らが不透明でさかんにやってきたことは国民に謝るべきだ。

誠に残念だった。それならば辞表をお書きくださいということで、用意された辞表に署名した。何の悔いも残っていない。ただ残念なのは、なぜ総理が誤った判断をしたか。兄との党首討論でも、振り付け師たちが総理によけいなことを言わせた。私が混乱させたという。混乱させていない。正義を貫いただけだ。民営化企業に政治が介入すべきではないと。まったく間違った理屈だ。公的な会社だから総務相に監督権限が与えられているのに、民間会社だから口をだしてはいけないという論理は全く通用しない。公的な存在だから口をださなければ行けない

 

  

 

振り付け師たちは総理にこんなことも言った、総務相は客観的な事実と法律に基づいて行動してもらわないと困ると。私は客観的な事実を一杯指摘してきた。全部法律に基づいて行動してきた

総理は欺されているのではないか。だれかに嵌められたのではないか。私を切れば支持率は下がる。私の常識は国民の常識とだいたい同じだ。国民の常識を切ったら支持率が下がるのは当たり前だ。総理はだれかにやられちゃった。はめられたのかもしれない。麻生内閣を作った男としては悔しい思いでいっぱいだ。

マスコミは、私は浅野内匠頭で、西川さんが吉良上野介のようだ。吉良は大石内蔵助が出てくる前に逃げ出さないで大丈夫なんて書いている人が結構ある。中には、自分が大石内蔵助になると宣言しているある大手マスコミの社長さんもおられる

 

  

 

今の政界、いま選挙やったら自民党はぼろ負けする。間違いない。しかし民主党に政権を渡すわけにはいかない。民主党には問題がありすぎる。創立者の1人だからよく分かる。政治とカネの問題、民主党にも間違いなくいっぱいある。政治とカネの問題は小沢さんと西松だけの問題ではない。少なくとも私が見てきた民主党は、お金のことをきちんと清潔に処理できる政党ではなかった。労組との関係も微妙だ。私はこの目で見てきた。

そういう民主党にいま政権を渡さないようにするためには、自民党を根本から改革しなければならない。三木元首相が言った出直し的な改革が自民党にできるかどうか。私もやってみるが若手議員にも決起してもらいたいと思うし、本当に出直し的改革が出来るかどうかが総選挙までの最大のテーマではないか。

これから何が起きるか分からない。政局の予想はだれがしゃべっても当たることがない。常にえっという意外なレース展開を示す。私がこれからこの夏、どういう行動をするのか。行動が成功するか失敗するか、選択肢は一杯持っていたいと思う。おやっと思うような行動をするときがあっても、私の基準は常に国民目線だから。一定の業界に目を向けたような行動をとらない。国民にとってプラスかマイナスか、それ以外の判断基準はない。その判断基準を正義という。友愛といってもいい。兄は友愛といっているが、私のほうが10年前から友愛といっている。同じじいさんをもっているから仕方ないが。

この正義の目盛りですべてを判断する。どんな政治行動をとっても心優しいひまわり会のみなさまには、鳩山邦夫は正義のためにやっていると理解して支援してほしい。》

 

  

 

 

大石内蔵助を気取った大手マスコミ社長をバックに、若手政治家らの決起を煽って勝負をかけようということでしょうね。何やらいろいろとエクスキューズをはさみつつ、「おやっ」と思う行動をとることも示唆しています。本当に、この大手マスコミ社長「○○○○」にはいい加減にしてほしいと思います。そして鳩山氏は講演後、記者団にこう語っています。

 

記者 夏になんらかの形で動くと

鳩山氏 それは政局と言うよりも、政治の流れ次第で自分がとるべき行動は決めるわけだから。自民党の出直し的な改革というのが目標だが、それに向かっていくが

記者 おっというような行動は何か

鳩山氏 それは分からない。だって何が起きるか分からないから、政治は。だからどんなことが起きてもご支援くださいという意味だ

 記者 総選挙前に自民党を抜本的に改革する必要があるというが

鳩山氏 選挙後では話にならないでしょ

記者 総裁選を前倒しにして次期総裁にと言う期待もあるが

鳩山氏 あまり現実的なものとして考えてはいない

記者 鳩山氏への支持が国民から高いが

鳩山氏 悲しいことだと思う。この間も、餃子の王将に並んでいたら若者がエールを送るというのは、表面的にはすごくうれしいが、当たり前のことを言ったら評価されるということは、当たり前のことが通用していない今の内閣、自民党ということにもなるから。

記者 若手を中心に脱麻生の動きが加速していることについて、鳩山氏の行動がきっかけになっているとの見方もあるが

鳩山氏 私としては忸怩たる思いというか、麻生太郎を今でも信じたいと思っているが、やはり大きな判断の誤りをしたことが、こういう動きになるということは私にとっては悲しいことだ

 記者 内閣支持率も下落しているが

鳩山氏 私は、総理が世論が牙をむくと2回ぐらい申し上げたが。

 

  

 

 

 …私は政治部記者ではありますが、もともと政局が得意でも好きでもないので、こういう人たちが騒ぎ暴れる政局など見たくないのですが…。まあ、しかし、世論調査ではまだ鳩山氏に対する支持が高いようなので、そういう場合も十分ありますね。兄弟トップで衆院選を争うなんて、いま流行の世襲問題どころじゃない気も少ししますね。自民党内、特に麻生氏に近いところで最近、早期解散論が強まっているのも、こういう人たちの跳梁跋扈を防ぎたいという思惑があるのかもしれません。それにしても振り付け師って…菅義偉氏あたりを指しているのでしょうか。

 

 鳩山氏の言い分ばかり紹介するのはナンなので、それと対照的な見方を掲載しておきます。今朝の新報道2001に安倍元首相が出ていたので、そのやりとりがちょうどぴったりでした。ちなみに安倍氏は、鳩山氏の理屈を「めちゃくちゃだ」と周囲に評しています。

 

   

 

 

 新報道2001の世論調査で支持率20・6%。支持率を下げた要因は

安倍氏 支持率は高いときもあれば、下がるときもあります。私の時もそうですし。小泉さんの時だってそうですね。ですから一喜一憂せずに、しかし謙虚に支持率を受け止めながら、信頼を回復するために全力を尽くしていくべきだと思います。この現在の支持率低下はおそらく鳩山総務大臣の更迭の結果だと思います。

 鳩山の更迭判断をどう思うか

安倍氏 この判断は私は間違ってないと思いますよ。どういう判断をされたか、ということなんですが、メッセージが少ないと思うんですが、郵政の民営化をこれからも積極的に進めていくんだという判断をしたんだと、こういうことなんです。そしてもう一点。日本は市場主義経済ですね。民営化が進んでいくなかで、株式会社の人事に関しては、めったなことでは政府は口を出さない。当たり前の判断をされたんだと思いますよ。

指名委員会と取締役会で経営者としての経営能力、経営判断についての評価をして、全会一致で西川さんという方が決まりました。それに対しては基本的に尊重するというのが政府の姿勢ですね。そうでなければ、日本は今でもNTTに対して株を持っている。JRに対してもそうです。NTTの商行為について政府が口を出すんですか。口を出すということは今後も当然政府は、結果に対して責任を持っていなければ、株式会社にしていく、そして民営化をしていくということは、経営判断は経営者に任せれば、そして株主とさらには取締役にちゃんと責任持ってもらう。これが正しい姿だと。

 西川さんの首を守ることがまさに小泉構造改革路線を守る

安倍氏 首を守るという言い方はおかしいですね。首を守ると言うことではなくて、指名委員会と取締役会を尊重する。

 

  

 

 そう麻生に進言したのか

安倍氏 こういうことについては、それは基本的にそれは総理がお決めになることでありますから、私はそういうことは一切申しあげていません。

 伝えられるところでは、安倍がそういう気持ちを菅義偉さんが麻生に伝えたと

安倍氏 菅さんがどういうアドバイスをされたか、私は存じ上げませんが。私は元総理として、麻生総理にいちいちのこういう判断についてはあまり差し出がましいことをいってはならないだろうなと、こう思います。

 鳩山総務相が言っているのは、前は麻生も西川の更迭を考えていたと。西川の後任リストももらったと。

安倍氏 そういう問題ではなくて、なぜ、総務大臣という地方自治、放送もそうです、たくさんありますよ、責任は。国務大臣ですから。その国務大臣が自分の首と、大きな仕事をしているとはいえ一、いわば株式会社の社長の首とを天秤にかけて、総理に決断を迫るんですか。そうではなくて、問題点を具体的に、こういう問題点がありますねと、具体的に挙げて法令違反なのかどうかということの判断をしながら、それを郵政側に投げかけて、それを指導していくというのが総務大臣の立場ではないでしょうか。西川さんを辞めさせなければ、私が辞めますというのは、これはおかしいと思います。閣僚として、そもそも。

 

  

 

 西川を切ろうとしたことで、国民の多くはまたぶれたという印象を深くした

安倍氏 またぶれたという意味がよく分からないんですが。かつて給付金の時もまたぶれたという話がありました。あれは給付金をやるのか、やらないのか、行ったり来たりしたのではないですね。ないですよ。給付金をやるということは決めていました。所得制限ということについて、これは景気対策か生活支援かという違いはあります。

しかしこれはやや技術的な問題です。ぶれたと言われているのは、本人が受け取るかどうかということについてぶれたといわれていますけども、いわば政策としてやるかやらないかについてはぶれていないんですから、そんなに騒ぐことかな。ですから、一段落した後は支持率が上がってきたんですね。今回についてはやはりどうして判断をしたのかということをはっきり、本来であれば、私がここにいるのではなくて、官房長官、あるいは幹事長がもっと遠慮なく、惻隠の上は切って、その情は捨てて説明をするべきだろうなと思いますね。

 麻生にそういう厳しいことを言う人はいないのか

安倍氏 それはたくさんいると思いますけど。今まで政府はたとえ許認可権限を持っていたとしても、株式会社の人事に介入したことはないですよ。一回も。一回もないことをやっていいのかどうかという、いわば当たり前の判断をしたんだろうなと私は…

 官房長官も幹事長も怠慢だと

安倍氏 そういうことじゃなくて。もっと積極的にやっていくべきだ。この数字は、先ほどの数字はおそらく西松建設の初公判の前なんだろうと思いますね。ですからその要素が入っていない。西松建設の初公判の結果、2億円以上のお金が小沢さんの所に行っていた。そしてはしもと秘書も、それを認識していた。小沢事務所の天の声があった。いわば天の声を出して、お金をもらっちゃいけないでしょう。このことがはっきりしましたね。

それに対して鳩山さんも岡田さんも、これは個人のことなのでコメントを差し控える。個人なんですか?党の代表代行ですよ。ナンバー2ですよ。当然コメントする必要があります。また鳩山さんは、この問題に関して制度が悪い、制度が悪いって、根本的に法律を破る人がいたら、制度を変えたって同じですよ。また、法人から個人に制度を変えていくべきだと。いわば法人からひとりひとり個人の寄付に変えていくべきだと…

 これはまだ裁判の途中なので、秘書のルートはまだこれからだ

安倍氏 鳩山さんは、法人から個人へとおっしゃっていた。鳩山さん本人が亡くなった方名義の個人献金を150万円以上を受けていたことが分かりました。私はそのとき、鳩山さんが言っている法人から個人という「こじん」は、亡くなった故人なんだということが分かりました。そういうことを全然報道しないじゃないですか。みなさんね。国民の皆さんが分からない。

 

  

 

 7月5日に静岡県知事選、12日に東京都知事選。負けると麻生降ろしの流れが加速すると思わざるを得ない

安倍氏 基本的な位置づけとしては、静岡の知事選も、東京の都議選も、静岡、東京の未来を誰に託すか決める選挙であって、総理の責任とは私は関係ないと思います。しかし、政局ですから。この理屈とは別に実態としては、それは議員心理、選挙を前にして影響はあるんだろうと思いますね。

 麻生はきのうも8カ所回っている。そうすると、麻生自身が一体化させようとしている。都議選に負けたらやはり麻生のせいだとなって、麻生降ろしが加速する

安倍氏 一体化させようということではなくて、やはり候補者から応援要請が来れば、それに対して対応しようか、時間があれば対応しようか、そういうことだと思いますね。。

 都議選の前に解散するかという話が出ているが

安倍氏 解散については総理大臣が判断することですから。私には分かりませんね。

 きのう安倍さんが7月中にも選挙が行われる可能性があると

安倍氏 それはわが党の議員のいわば大会ですから、みなさんの気を引き締めるために言いますよ。

 現実問題ではないと

安倍氏 現実問題かどうかは分からない。これは麻生総理が判断することですから、7月かもしれないし、8月かもしれないし。

Q 7月中となると、早々に解散…

安倍氏 分かりませんよ。麻生総理がお決めになることですから。

  今、窮地であることは間違いない。流れを変えるために内閣改造をやる。安倍さんの時も参院選の後に改造したら支持率が10ポイント上がった。こういうことを麻生はやるべきだと考えるか

安倍氏 これは改造については、私はとやかくいうのは僭越だと思います。総理が判断されればいいんだろうと思いますね。

 内閣改造でもやって、トップリーダーを変えて、例えば舛添という話が出ている。流れを変えてという可能性をどう見るか

安倍氏 トップリーダーを変えるということは、今考えるべきではない。現実的ではないだろうと思います。麻生総理自身がお辞めになるという気持ちは全くないわけでありますから。強い意志を持って、景気を回復させていくと。

 次の選挙は麻生自民党総裁で戦うと、麻生総裁とみんな自民党が命運をともにすると考えていいのか

安倍氏 基本的に総裁選挙を前倒しにするというのは、国民の皆さんからとって、姑息な手段だと私は見られるんだと思うんですね。ここは麻生総理の下、結束して、いかに魅力的な政策を私たちが打ち出すことができるかどうか、これに勝負がかかっていると私は思います。(この後、民主党の安保・外交政策を批判、略)

 

  

 

 

 …本筋の話ではありませんが、鳩山氏は麻生氏との会話内容をべらべらしゃべり、一方で安倍氏は実際は上の発言以上にいろいろにことを意見したり、進言したりしているでしょうが、それについては明らかにしようとしていません。その当たりに、両者の麻生氏に対するスタンスが表れているようにも思います。まあ、私は麻生氏自体には何の思い入れも縁もありません(いちいちこういうことは書きたくなかったのですが、どうも誤解もあるようなのでついでに記しておきます)が、鳩山氏を事実上、罷免したことは正しかったと思っています。あと、安倍氏の民主党の安保政策批判も面白かったのですが、長くなりすぎるので残念ながらここまでとします。あしからずご了承ください。

 

 

 今朝の毎日新聞は1面で「西川社長に辞任要請 佐藤総務相 会長就任引き換えに 後任で再協議」という記事を掲載しています。それによると、佐藤勉総務相が16日に日本郵政の西川善文社長と会談した際に、会長への就任を打診していたという内容ですが、これについては佐藤氏も河村建夫官房長官も全面否定しており、真相は薮の中です。

 

 毎日の記事は「西川氏に会長ポストを用意することによって、社長続投を求めてきた小泉純一郎元首相ら自民党内の西川擁護派にも配慮した格好だ」と書いていますが、実際どうなんでしょうね。いずれにしろ、こういう記事が出たことで、仮にこの話が本当に水面下で進んでいたとしても、話はつぶれるでしょうね。

 

 

   

 

 さて、それはともかく、本日はたまたま政治評論家で政治記者としても大先輩(時事通信出身)の屋山太郎氏と話をする機会があったので、「ついでですみませんが」とミニ・インタビューを申し込み、快諾してもらいました。テーマは、今回の鳩山邦夫前総務相の辞任問題をどう考えるかについてです。

 

  屋山さんは今回の件をどう見ますか

 

 屋山氏 まず、麻生さんの政権基盤は小泉元首相が郵政を問うて得た300議席の上にあるということだ。これは、安倍さんや菅(義偉)さんが麻生さんに言ってようやく納得したと聞くが、麻生さんの使命はそれを完成することにある。

 仮に、麻生さん自身はそういう考えではなくても、選挙結果が出た以上は、これをいかに完成させるに頭をめぐらせるべきだ。しかし、その切り替えをしていなかったから、麻生さんは「私も郵政民営化には反対だった」などと言った。そして、鳩山さんはその点を勘違いして、麻生さんと一緒に郵政民営化をぶっつぷそうとした。

 鳩山さんの行為は郵政担当相として全く不適当だ。鳩山さんの仕事は本来、民営化がうまくいっているかをチェックすることだ。かんぽの宿という日本郵政の本業じゃないもの--郵政民営化法では、コアでない事業は5年以内に売り払うことになっている--を早く売ろうとした判断は間違いじゃない。売り方がどうかという問題はあるが、第三者委員会は手続き的に問題はあるかもしれないが、経営判断としてやむを得ないという結論を出している。

 一方、鳩山さんの指示で総務省はかんぽの宿の件で何十箱もの資料を持ち出して精査したが、何も出てこなかった。1万円が6000万円にというのは、あれは郵政公社時代の話で西川さんの責任でも何でもない。鳩山氏はそれを西川氏の責任だとわめいたり、中央郵便局に行って取り壊しはけしからんと言ったり、日本郵政の経営判断に口を突っ込み、自分を売り込みすぎだ。

 

   

 

 

  鳩山氏は自身を「正義」というが

 

 屋山氏 正義などという言葉は、政治家として、また閣僚に登用された者として言うべきではない。その正義は、つまり鳩山さんの正義に過ぎず、そんな客観性のない言葉を使うべきではなかった。私は売名行為だと思う。

 もう一つ、麻生さんは鳩山さんがそういう人間だと知りつつ登用したのか。麻生さんの人を見る目に不信感を持った。また、マスコミのかんぽの宿に対する報道のあり方も間違いで煽りすぎだ。実際にどういう問題があったと検証していない。

 例えば、日本郵政の株主は国だ。つまり、与謝野さんが株主だとなる。与謝野さんは指名委員会に諮問したんだから、指名委が西川氏でいいとなれば、それを承認するしかない。そうしないなら、どこがどう悪いか立証しなければならない。果たして、それなのに(鳩山氏が言っていたように)認可しないということはあり得るのか。だから、麻生さんとしてもクビにできるわけがない。

 

  それでも鳩山氏は発言を続けた

 

 屋山氏 わざと麻生さんに自分のクビを切らせた感じだ。鳩山さんは所属する内閣に大恥をかかせ、所属する政党の人気をさらになくさせた。まるで沈まなくてもいい泥舟に、10メートル上から飛び込んで壊したようなものだ。

 

  鳩山氏の辞任後の言動には閣内からも批判が出た

 

 屋山氏 鳩山さんも閣僚だったから、閣内にいるときは他の閣僚も「そうじゃない」とはなかなか言えない。発言するチャンスは鳩山さん一人が持っていた。発信元を独占すると相当世論をねじ曲げられるという見本のような話だ。

 

  ただ、オリックス不動産への一括売却の件では、弊紙内でも見方が分かれ、悪い印象を持つ人が多い。

 

 屋山氏 だが、オリックスが郵政にかかわったことはない。規制緩和委員会にかかわっただけ。郵政の中身について何の発信もしていない。鳩山さんは「李下に冠を正さず」とか言っていたが、濡れ衣ではないか。とにかく竹中憎しで○○○○がやっている。西川氏が辞めてもI田某がいるとかN室某がいるとか。そうは言うが、年俸3000万円で彼らがやるわけがない。国会でも追及されるし。

 

  ○○○○の名前は書いていいのか

 

 屋山氏 …それはまずいな。とにかく、結局、次期社長だとウォーミングアップしているのは郵政官僚OBばかりだ。それに踊らされているのだ。そこに目を向ける必要がある。

 

 …屋山氏とは、その他おそらく実現するであろう民主党内閣で日本がどうなるかなどについて意見を交換しました。その点については、私は若干、屋山氏の楽観的・肯定的な見方とは意見が異なる点もありましたが、鳩山氏に対する認識はおおむね一致しました。まあ、こんなグズグズの話が表に出てきて収拾がつかないというのも、政権末期だからだろうなという点でも。やれやれ。

 

 

 昨日は衆院本会議で、脳死後の臓器提供の年齢制限を撤廃し、本人が生前に拒否しなければ家族の同意で提供を可能にする臓器移植法改正案のA案が賛成多数で可決されました。これは、各人の死生観、宗教観、倫理観にもかかわる重大なテーマであり、かつ現実に臓器提供を待ちわびる患者や家族にとっても医療の現場にとっても重大な国会(衆院)の判断でした。ただ、この問題は主に社会部が取り扱うテーマであることと、本日の紙面でも大展開されているので、ここで取り上げる必要はないかとも思いましたが、ひとつ気になることがあったので簡単に紹介しておきます。

 

 改正案は今後、議論の舞台を参院に移すわけですが、今朝の産経の1面に民主党が第一党である参院の「ドン」、輿石東民主党参院議員会長の見解を伝えるごく短い記事(14行)が掲載されていました。それは、次のようなものでした。

 

 《民主党の輿石東参院議員会長は18日、国会内で記者会見し「臓器移植法案を最優先でやらなければいけないとは思っていない。急がなければ死んでしまうという話でもない。一日も早く救いたい気持ちは分かるが」と述べた。輿石氏は、民主党が国会に提出している母子加算手当を復活させる生活保護法改正案を挙げ「母子加算(法案)との兼ね合いもある」と指摘した》

 

 一読、これはことの重大性に気付いていない、はっきり言ってまるっきり認識不足の発言ではないかと感じました。私の同僚もつい先日、臓器の提供者・適合者が現れない(間に合わない)ため異国の地で親族を亡くしましたし。ただ、こういう短い記事では発言の前後を省いて(丸めて)一番インパクトの強い部分だけを抜き出さざるを得ないことがあるので、記者会見に出た記者にその前後のメモも送ってもらいました。以下がそれです。

 

記者:衆院でA案が送付される。感想と参院審議のあり方について。

 

輿石氏結論から言うと考えていない脳死は人の死ということでしょ。それぐらいは分かる。BCDと4つある。B案は厳しく条件つける。どれがいいとか、党議拘束をかけないということはひとつの方向にまとめないということ。議員個々に任せる。会派がどうするという話ではない。審議の仕方は議員立法のひとつ。

参院には母子加算とか、父子家庭のお母さんしかいない、お父さんしかいないという家庭にどういう愛の手を差し伸べるかと。こういう法案も残っているわけだから。それとを比べて優先順位を決めることも考えられる措置でしょう。来たからすぐにやると(はならない)。急がなければ死んでしまうという話でもない。まあ、脳死は人の死ということで、そういう病で倒れている人を一日も早く救いたい気持ちは分かるけれども。審議の仕方からすれば、A案が送られてくるということなので、各議院にいろいろな思いがあるので厚労委員会でどういう審議の仕方をするかはこれから考えればいい。厚労委員会を中心に。

 

記者:臓器は今国会中に結論出せるか。

 

輿石氏:党議拘束をかけていない法案だから。ひとつの案があって、時間をかけてここまでにやろうという話じゃない。分からんねえ最優先でやらなければいけないとは思っていないってこと。》

 

 …基本的に記事の通りでした。私は輿石氏に関しては今まで日教組や山梨県教職員組合との関連でいろいろと書いてきましたが、やはり他の点でも問題だなあ。この発言からは、例えばA案よりD案(15歳以上は現行法を維持し、15歳未満は家族の承認などを条件に提供を認める)の方が望ましいと考えているとかそういうレベルではなくて、単に輿石氏が今まで何の関心も知識も持たずにいただけだということがよく分かります。ご本人も「何も考えていない」と正直に述べているし。

 

 で、今朝の民主党参院議員総会のあいさつでの輿石氏の発言は、かなり軌道修正が入っていました。以下のものがそれですが、新聞、テレビの報じぶりを見て「そんなに大きな話だったのか」と気付いたのか、あるいは参院でこの法案の審議が進まないと、麻生首相の解散のタイミングも遅れることになると政局的に考えたのか。

 

輿石氏:処理の仕方によっては大きな責任を負うという宿命を持っている。この問題については脳死は人の死という定義にもつながるA案が参院に来た現実を踏まえ、どのように扱っていくか。われわれも大変重い法案なので、きちんと議論し、ひとつの方向性を出さなければいけないだろうと。いたずらに引き延ばしたり、拒否をしたりすることは毛頭、考えていない。しかしきちっと議論は尽くす。》

 

 いずれにしても、参院は衆院に比べA案に慎重な議員が多いとされますし、まさかA案が衆院で可決されるとは思っていなかったメディアも、これまで以上に注目するかもしれないので、参院での審議の行方は要注意ですね。さあて、この何も考えていない輿石氏は「参院のドン」として議論の方向性に道筋をつけようとするのか、それとも放っておくのか。…なにはともあれ、なんだかなあ。

 

 

 自民党の日教組問題究明議連は16日午後、党本部で第8回会合を開き、教職員の政治活動と日教組のカンパ活動をテーマに議論をしています。私は他の取材・執筆が忙しくて現場に行けなかったのですが、昨夜、後輩の小田記者がそのもようをメモにして送ってくれたので、本日はそれに私の補足説明(※で記した部分)を加えて紹介しようと思います。けっこう分量がありますが、法令違反である教職員の政治活動への取り締まりに及び腰で無力な文部科学省の姿勢が浮かび上がってきます。

 

※ひな壇は森山真弓、中山成彬、義家、山谷えり子/他に森喜朗、戸井田とおる、萩生田光一、土屋正忠、稲田朋美、岩城光英、下村博文、馳浩、赤池誠章、西川京子、渡辺具能ら(敬称略)

 

   

 

 

中山)一番の問題は日教組が日本の教育を握ったら本当にどうしようもなくなるよという危機感で我々は動いています。必ずまだ、局面の展開はあると思いますので、我々は頑張りたい。我々3、4人でキャラバン隊を作って全国を回っている。これからも、仙台、盛岡、札幌、旭川、京都と回るつもりだ。日教組も悪辣なことばかり考えているから、そういったことを国民の目にさらすことが大事だ。

 

義家)前回も報告したが、教育公務員特例法の一部を改正する法律案をWTであげ、文教科学部会を通り、党の手続きを経ようという段階だ。これは簡単に言うと、教育公務員はその影響力が強いことから、特別の政治制限が法律によって加えられているわけだ。国家公務員と同様の政治的制限が加えられているが、実は罰則規定がない。数年前に、先輩達が、地方公務員法の改正を含めた議論をしたが、公明党の調整がつかず、自治労関係にも網をはるような改定だったが、暗礁に乗り上げた。今回改めて、一般公務員に網をかけずに、違法な活動について、組合が堂々と民主党を応援するなか、罰則規定を盛り込む。3年以下の懲役、または100万円以下の罰金。国家公務員が違反したときの罰則規定を盛り込んだ法案、衆院に向けておりていく運びとなった。

 

 《教育公務員特例法の一部を改正する法律案要綱

一、「当分の間」の削除

公立学校の教育公務員の政治的行為の制限については、当分の間、国家公務員の例によることとする規定のうち、「当分の間」を削ること(第18条第1項関係)

二、公立学校の教育公務員が政治的行為の制限に違反した場合についての罰則規定の新設

第18条第1項の規定によりその例によることとされる国家公務員法第102条第1項に規定する政治的行為の制限に違反した公立学校の教育公務員は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処するものとすること(第18条第2項関係)

三、施行期日

 この法律は、公布の日から起算して20日を経過した日から施行すること(附則関係)》

 

  

 

 

義家)いくつか整理したい。まず、カンパだが、山梨のカンパの問題。これは、輿石東参院会長もかけつけて、「我々は民主党を応援する」と高らかに宣言した。経済的に苦しい家に救済カンパを行うと全会一致で決めた。カンパで前回、輿石氏の刑事告発もあったが、今度は非常に巧妙にカンパを集めようとしている。山教組だけでなく、日教組本体も、HPからだが、経済的に貧困な人にカンパをしていこうと。実際に街頭でして、1日10万ぐらい集まったと。問題は巧妙さだ。

前回はあしなが育英会だったが、連合を通じて就学できない子供やNPOなどに寄付する。明らかに選挙のための金集めだろうと。特に、街頭で日教組のカンパを行ったときに、一般の人から救済カンパをもらって、組合員がカンパを出さないわけがない。つまり、強制的に1人いくらとカンパする。20数万人の組合員がいるから、1人1000円でも膨大な金になる。こういうお金が連合を通じて選挙運動に回る可能性が高い。自民党の法曹団とも(協議を)しているが、非常に巧妙で、無理矢理先生から徴収したり拒否できないという状況。救済カンパをあげるときに、民主のパンフを渡していたところを捕まえない限り、なかなかグレーで難しいと。前回、学びながら、日教組全体でカンパを行い連合に流れると。来る総選挙で一定の役割を果たすのではないかという強い危惧を持っている。

 

 《日教組のホームページによると、「カンパ」はあしなが育英会奨学金に寄付するとある。また、連合を通じてNPO団体等にも寄付するとあり、カンパの口座はゆうちょ銀行などが示されている。これについて山梨県のある教員は「カンパがいくら集まり、そのうちいくらが実際に救援カンパに回るのか分からない。実態は不透明で、選挙運動資金カンパに使われる可能性が高い」と私に語りました》

 

   

 

 

義家)いよいよ選挙が近づいてきたが、文科省は毎回、選挙の度に、初等中等局長の名で、こういうのはいけませんという通達を出している。これだけ読むと確かにそうかなぁと思うが、国家公務員の例に準ずるので、人事院規則を例に文部科学省が解釈して作り上げている資料だ。共通確認したい。政治行為は昭和24年9月19日の人事院規則のところをご覧になってほしい。文科省の見解では、組合は仕方ない。プロ専従もいるから、組合全体は規制できないということだ。ここに何が書いてあるか。2つ目の2番を見てほしい。制限されている禁止行為は、公然または内密に職員以外の者と共同して行う場合においても、禁止または制限されると書いてある。どう解釈するかによるが、プロ専従いる組合が各政党を応援していいというわけだ。もちろん日教組の組合員は9割9分先生だ。

 つまり、教育公務員以外のものと共同して政治行為を行っているのが日教組、民主党の応援にあたらないのか。

 3番だが、他の者を通じて間接に行う場合においても、禁止、または制限される。つまり、職員がプロ専従を使ってどこどこの政党を応援するのはいいのか。文科省の通達は、「学校において」とある。国家公務員の人事院規則に照らすと勤務時間外も全て禁止されている。学校以外も禁止されている。さらに5の3。特定の政党や政治団体を支持し反対することも禁止。教育公務員が特定の政党を応援していることは、これは、どう解釈するのか。

 

 《文科省が各都道府県と政令市の教育長にあてた平成19年6月1日付の「通知」には、「教育公務員については、教育の政治的中立性の原則に基づき、学校において特定の政党の支持又は反対のために政治的活動をすることは禁止され」とある。》

 

義家)あるいは、政治の方向に影響を与える意図で反対する。教員免許更新制をつぶすと運動しているが、年休を取って座り込みは労働者の権利だからいいというが、人事院規則だけに照らすと、休職中でも停職中でも休暇中でも政治的行為は制限される。年休をとって座り込む政治的行為は本来はできないはずだが、今までの文部科学省の解釈ではそうなってこなかった。ぜひ、文科省の方に、選挙運動の休止について、基準の見直しを、もう一度人事院規則に則った上でもう一回判断すべきだと思う。

 先生が組織する教職員組合が特定の政党を支援するのは人事院規則に反するか。今までの解釈通り反さないのか。

 

文科省)義家先生の話の通り、公立学校の教職員の政治的行為に関する規制は国家公務員並みにするとなっている。今示した人事院規則が適用されることになる。人事院規則の解釈なので、有権的な解釈は人事院だが、私どもの共通理解は、5項目の政治的目的をもってなされる行為であっても、6に定める政治的行為に含まれない限り、という規定がある。組み合わせとしては、政治的な目的を持って、かつ、6にある政治的な行為に該当するもの。5と6の組み合わせのなかで、該当するかどうかの判断になるという理解だ。5-1だけでは足りない。合わせて6に該当するのが、違反となると必要になる。認定できるかどうか。蛇足だが、政治行為については人事院で具体の規則、運用方針も示されている。それに即して、私どもも、まだまだ表現ぶり等を精査しなければいけないところもあろうかと思うが、基本的にはその考え方に基づいて作成している。

 

 《人事院規則の「第6項目に定める政治的行為」とは、国の機関又は公の機関において決定した政策(法令、規則又は条例に包含されたものを含む)の実施を妨害すること》

 

   

 

 

義家)職員が政治的な意図を持って有給をとって国会前に座り込む運動は政治的行為にあたるか

 

文科省)政治的行為で言うと、6-10に該当する。これも人事院の解釈だが、デモ行進等の運動に参加すること自体は、必ずしもこの規定が定めた範囲に入ってこないという理解で運用されている。

 

 《人事院規則「6-10」には「政治的目的をもって、多数の人の行進その他の示威運動を企画し、組織し若しくは指導し又はこれらの行為を援助すること」とある》

 

<議員から不満の声>

 

義家)間接的な参加も人事院規則からはOKとならないと思うが

 

文科省)職員自体も共同ですから、合わせて…。

 

義家)座り込みは行為だ

 

文科省)企画し…。合わせて、他の項目に該当するような行為があれば、当然違反になると理解。

 

某議員)頭が悪いからぜんぜん分からない。

 

文科省)申し訳ありません。わかりにくい説明はしたくないが、条文に則して正確に説明しないと誤解を与えてもいけない。正確性で申している。

 

義家)条文を矮小化している。解釈によってできる。私から言わせると、文科省から毎回出る違反行為の具体例は非常に矮小化したものだPTA等の会合と言ってぼかしている。何が含まれるかわざわざぼかしている。組合主催の後援会云々とは分からないようにしている。教員の地位を利用してとあるが、利用しようがしまいが教員だ。教師としてやらなければ大丈夫と書かれている。

 

 《文科省通知が示した違反行為の具体例には、①特定の候補者の当選を図るため、PTA等の会合の席で、その候補者の推薦を決定させること②PTA等の会合の席上で特定の候補者へ投票するよう依頼すること――などとある》

 

先生方は、たとえば、◯◯候補者の当選を期すというポスターを職員室に貼るのは禁止だが、組合の部屋に貼るのはいいと。学校に貼ってあります。今、空き教室が組合部屋になっているところもある。政治行為を禁止といいながら、授業は行われている。我々はなかなか介入できない。(いわゆる通信簿が)絶対評価の中で、保護者も問題視できない。

 教員自体の政治行為。授業も含めてダメだと。日教組および、民主党にシッカリと宣言しないとならない。カンパもそうだが、グレーゾーンで蠢いている。教育がおかしくなるのは自明だ。文科省はもう一回、定義に当てはめた解釈を、平成19年の参院選が最後に出されているが、もう一度精査して作り直して頂きたい。あいまいな表現しかできないかもしれないが、曖昧な教育はできない。人事院規則に則って、これはいい、これは許されないと精査してほしい。選挙の前に今までと同じものが出されても、今までみたいにザルで、何でもありとなってしまうので、もう一度精査してほしい。提案です。

 

   

 

 

稲田)行政権の裁量が問題だ。踏み込んだ省令を出している。この問題は、法律で国家公務員の政治的行為の禁止を教育公務員にも適用する。たとえば、(平成18年の)教育基本法改正の時に、国会の会館前に座り込んで「軍国主義だ」と拡声器で意見表明していた。これが人事院規則の政治的行為に当たらないと解釈するのがおかしい。文科省の職員があそこに座って「再び戦場に送る」と言っても人事院規則に当たらないのか。きちっと文科省は、教育公務員を指導する立場として、行政権の裁量内で、立法で決めたことをきちんといかさないと、不作為による行政権の裁量の逸脱だと思う。それが今言われる官僚のやり放題になる。きちんとやってください。なぜ政治的行為にあたらないのか全く分からない。きちんと説明を。

 

義家)つまり、文科省の職員が、年休をとって国会の前で座り込みしたらどうなるか

 

文科省)特定の候補者支持とか、政治的目的がクリアされていれば、具体的行為は、集会で拡声器で、公にというのには該当する。今の政治的目的の部分がクリアできるかどうかだが…。

 

稲田)抽象論は聞いていない。政治的行為にあたらないと思っているから黙っているんでしょ。あたるなら、行政指導すべきじゃないか。

 

文科省)座っている人達について先ほど申したが、人事院規則は随分前に定められた。座り込みを企画、組織化した人が罰則の対象となるという整理になっている。いいことか悪いことかは別として、今の人事院の定めた制度では、単純に座っているということは人事院規則に該当しないという整理になっている。いいか悪いかは別の話。

 

 

義家)当たるんですよ。そもそも政治的目的を有するとの文科省の定義はどうか

 

文科省)人事院が定めた人事院規則に基づいてなので、国家公務員の規制と同じようにするようにと。我々自体が解釈を示せるわけではない。通知の例はあくまで典型例を示している。正確性を重視するなら人事院規則と同じ通りにするしかない。

 

義家)非常に苦しい。教員が拡声器で公に政治的意見を有するのは禁止だと。5条の6項をみると、政策の実施の妨害も禁止だ。教育基本法反対で座り込みで拡声器で喋るのは禁止ですよね。

 

文科省)細かいことを言うのは個人的にはイヤだが、政治的目的について、法律案について、賛成、反対という意見表明は、私の理解では、政治の方向に影響を与える意図というのは実はかなり限定的に、人事院の解釈では定められている。それは日本国憲法で定められた根本原則を変更しようという意図だと人事院には示されている。特定法案の是非がそれにあたるかどうかは、少し…。過去の解釈があり、それに即して。

 

   

 

 

山谷)総務省の解釈では

 

総務省自治行政局)考え方は同じようなところを取る。その意味では、人事院規則で示されて国家公務員に示されているのが、地方公務員にも該当する。教育公務員も同じように適用される。

 

義家)文科省の職員が有給で教育基本法改正反対と国会周辺でデモを行ったらどうなるか。集会に参加して拡声器を使うのはどうか。

 

総務省)申し訳ないが、選挙法は縦割りで、分野が違う。正確性をもって説明しないといけない。今の部分だが、どの部分に該当するかが議論になる。政治の方向に影響を与える意図で、特定の政策を主張し、または反対することが、どこまでの対象になるか。そこが一番大きい。公務員全体だが、目的と行為のセットだ。目的に当たるか当たらないかの認定と、実際にあたるかの認定をしないといけない。ダブルの当てはめで。

 

西川)私達は目的と行為(で違反)と解釈するが、総務省の解釈ではどうなるかと聞いている

 

総務省)具体の案件で。問題は実際にどういう態様で主張しているかをみないと…

 

西川)だから、言ってるじゃない。座って有給休暇をとって教育基本法反対と主張すると

 

総務省にわかに該当はしないのではないかと思われる。ただし、具体的な態様をみて、そこはそうは言ってられないとなれば。

 

 

中山)教育基本法反対というのは、当たらないのか

 

文科省)行為は該当すると思うが、教育基本法という法律の賛成反対が、ストレートに…。先生が言うのは理解できるし、反対するのはいかがなものかと思うが、人事院規則がどうできているかというと…。

 

某議員)どう限定しているのか?

 

中山)基本法反対は政治目的以外の何者でもない。

 

文科省)この経過についていうと、政治的行為の制限は憲法上の関係があって昭和40年代まで下級審では行政側が敗訴してきた。いわゆる●事件という最高裁判例が出て、初めて、この人事院規則の合憲性が。人事院規則にゆだねることが承認された。そういう経過がある。憲法との整合性ということを考えながら、規則を考えながら、一方で公務員としての制約との関係をバランスをさせながら。そういう歴史がある。

 

義家)憲法との整合性では、公務員は一部の奉仕者ではない。それが前提。だから身分保障もされている。憲法論にすり替えるのではなく、有給も出してないで座り込んでいる人もいる。北海道は大変だ。常識的に、彼らが座り込んでいるときに生徒は自習になっている。日本中で。一般公務員より重いからこそ、教育公務員特例法がある。文科省がここがグレーと言うなら、生徒が自習している状況は文科省はどう思うか。

 

文科省)教師たるもの、子供の学習を優先するのが望ましいを私は思う。

 

   

 

 

稲田)最高裁の判決だが、合憲なら、下級審で違憲が出ても、最高裁で合憲となった以上、それで指導するのが当然だ。訴訟を起こされることをおそれて、謙抑的にするのは、まったく憲法を守っていない。最高裁が合憲じゃないか。決着がついているなら、きちんと指導すべきでは。

 

文科省)合憲はおっしゃるとおり。憲法上のもとで適切に対応すべき。

 

)公立小中学校のなかに、民主党の候補のポスター、ビラ、チラシを持ち込むのはいいか、いけないか

 

文科省投票勧誘の趣旨が含まれるポスターであれば、(違反に)当たる可能性はある。

 

 文科省通知の「違反行為の具体例」の中には、①選挙用ポスターをはってまわること②受持ちの児童に上記のポスターをはらせること③「○○候補者の当選を期す」というようなポスターなどを職員室の壁にはること――などとある。ちなみに、輿石氏の過去の選挙時には、職員室に堂々とポスターが張られていた》

 

)民主党を自民党と言い換えてもいい。政党、そしてビラは政策を広めるためのツールだ。学校の敷地内に置いておいていいのか。イエスかノーか。自民党も共産党も公明党もみんな置いたらイエスか。誰がどう考えても置いておくこと自体がダメではないか。なぜ通知で出せないのか。

 

文科省特定の候補者を支持するということで、ビラを掲示したり配布するのは禁止されている。持ち込むことについてどう評価すべきか。本当に好きで言っているわけではないが、正確性で申し上げないと。安易に返事するとかえって誤解を与えてはいけない。掲示や配布はいけない。

 

)今のが聞きたかった。持ち込むために持ち込むバカはいない。支持者カードに名前書いてねと。そのために持ち込んでいる。持ち込む理由はみな分かっている。それをなぜダメといえないのか。署名を集めちゃだめ。政治家の応援もだめ。それ自体が違反。懲戒処分の対象。ダメだとなぜハッキリ通達で出せないのか。

 

文科省)しつこいかもしれないが、人事院規則に違反すればアウトだ。正確性を追求すれば、人事院規則を書けば終わりだが、何がダメか分からないので、典型的なアウトをここ(通知)に示している。書いていないから違反じゃない訳ではない。

 

某議員)どこの学校に行っても、教職員組合の掲示板がある。掲示板に今言ったようなものが掲示されているのはどうか

 

文科省ポスターが貼ってあれば、ダメという可能性が高い。

 

中川)禁止の通達を出さないと、堂々と学校の施設内に掲示されている。これは皆知っている。それを禁止しないと。堂々と文科省は(禁止を)やるべきでは。

 

文科省ご主旨はわかりますので、人事院とも調整したうえで、検討したいと。

 

渡辺)配らずに置くだけでも違反だ。公の建物に個人の選挙のビラを置いていること自体、人事院規則の問題じゃない。学校の施設管理規則があるはずでしょう。持ち込んで言い訳ない。

 

    

 

 

)(元)市長の意見を聞こう。

 

土屋)渡辺先生と同じだが、現場で問題になるのは庁舎管理権が誰にあるのか。学校の責任者は校長だ。校長に対し、一般来校者の見えるところに貼るのは禁止しろとすればいい。

 

渡辺)隠れてやるようなことを、市庁舎でやっていいのか。いけない

 

土屋)市役所の場合は、組合に一定の便宜供与を与えている。そもそも、団結権は認められているから、団結権の保障のために与えている。そこまではいい。ただし、公務の中立性を疑われるようなのを、不特定多数にやっちゃいけないとできる。市役所で一定に区切ってやっている。学校の校舎の適正な管理。そもそも教育財産なんだから、不特定多数が入るところにしてはならないと文科省が人事院規則以外でやればいいのではないか。

 

中山)鹿児島の市長は組合をノックアウトしたよね。

 

渡辺)市長と自治労、職員組合の約束で許していいというなら、言い過ぎではないか。それでは何でもいいとなる。してはいけないことはある。公選法上縛られていると思う。税金で作った市庁舎や学校に、個人の選挙用ツールを置いていいわけない。

 

)市長は自治労から推薦されてる。だから出来ないの。現実はそうだ。いくらいじめても可哀想だ。

 

萩生田)市役所は分からなくもないが、学校の校舎内に組合の掲示板や部屋にあるのは、僕には全く理解できない。最初から組合の部屋を用意するのか。

 

文科省)そういうのはあり得ない。私は広島にいたが、そういう事態はなかった。考えにくい。学校の中に事務所を貸すのは、私は聞いたことがない。

 

義家)組合部屋はある。是非、文科省で練って、どういう形か。これはお願いしたい。選挙に向けて出してほしい。カンパは票の買収につながりかねない行為だが、情報を耳を傾けて、先生がノルマとして課されているかどうか。地方議員に聞いたら聞こえてくるかもしれない。どうぞよろしく。

 

土屋)文科省に申し上げたいが、人事院規則に任せるのでなく、教育財産としての庁舎管理の適正化は文科省独自に通知を出せるでしょう。そこのところはきちんと検討してほしい。

もう一つ。それぞれの議員はブログとかを持っている。そういう事実があったら書きましょう。どこどこにあったとドンドン批判したほうがよい。毎週のように公開授業に行くが、組織率はどうかとか平和教育はとか聞くが、幸い、府中はない。もし、あったら、ブログに書く。

 

山谷)文科省の答えは解釈の幅がありすぎて私達が納得できるものではなかった。事務局から通知の見直しの方向性の具体的な文言を検討させていただいて、文科省と人事院にも来て頂いて、それがまとまった時点で、次にこれをテーマにやっていきたい。日教組のHPは不透明なので、もう一度開きたい。

 

)何十年前と同じだな(場内笑)。当時は社会党だったが。皆さん、知っているように小中は市町村、高校は県でしょ。きちんとやれば正常になるが、校長が弱いとダメ。教育長、市長がしっかりやれば、石原慎太郎さんみたいにクビだと。国歌斉唱で立たなかったらクビだと。教育委員会が「ちょっとそれは」と言っても、「やらなきゃお前がクビだ」と言ったら、すぐやったでしょう。そんなもんだ。やればいい。結局は市町村の方が強い。(文科省は)指導と助言だけ。命令権はないんですよ。ありますか。ないんですよ。そこを根本にどうするか。市町村長もしっかり教育しないとダメ。後ろから支えてあげなければならない。我々がいくら言っても、自民党で出した知事でも、2選目は組合と話をつけて、自治労や日教組が推すと言った途端に交渉が始まるんですよ。それでズルズルとなる。…以下、雑談略…(了)

 

 …なかなか突っ込んだ議論がなされているように思います。義家氏は自身も北海道で教員をしていただけに、本当に危機感が伝わってきます。私もここで語られている教員の政治活動や国会前での平日昼間からの座り込みについては言いたいこともたくさんありますが、これまで何度も書いてきたのできょうは繰り返さないことにします。

 

しかしまあ、なんというか、最後には森氏が混ぜっ返しみたいなことも述べていますが、この問題は遅々として改善に向かわないものですね。文部省の役人も他省の役人も、民主党政権誕生後の身の振り方も脳裏にちらつくことでしょうし。私は地方分権は当然の流れだと思っていますが、教育面だけは地方に委ねていいのか、日教組が勢力を増すのではないかとどうしても不安をぬぐえないでいます。

 

 

 ちょっとしつこいようですが、本日も鳩山邦夫前総務相をめぐり感じたこと、連想したことを書こうと思います。もうやめようと思っていたのですが、鳩山氏が昨日、福岡空港で記者団と交わした以下のやりとりのメモを読んで、やはり触れておこうと思いました。一言いいたいと。

 

記者 正義の人と、友愛の人とが組んで一緒にという可能性はあるか

 

鳩山氏 私、正義の人で友愛の人ですよ。同一人物です

 

 …鳩山氏は再び自分のことを「正義の人」と明言しています。何かこう、人としての含羞に欠けるというか、たかをくくって世の中を甘く見ているというか、そういう印象を禁じ得ません。私は前のエントリで、自分の「正義」を強調する人は胡散臭いということを書きましたが、本日は前々エントリで取り上げた岸田秀氏と山本七平氏の対談本「日本人と『日本病』について」から、関連する部分を抜き出して紹介します。この本は昭和55年に刊行されたものですが、私の手元にあるのは平成4年に出たその文庫版です。

 

   

 

 この本は、鳩山氏の発言について考えていて、そう言えば確かぴったりの解説が…と思い出し、本棚から引っ張り出してました。以下、ちょっと引用が長くなりますが、いま読み返しても非常に面白いと思います。まあ、人間の本質なんて旧約聖書の時代から何も変わっていないでしょうからね…。

 

 岸田 やはりまだ、日本人は純粋な政党を必要としているんですかね。

 

 山本 アメリカでは、たとえばニクソンでも教会に行けば純粋になりますよ。日本人から見たら奇妙に見えるかもしれませんがね。人間の社会というものは、現実から離れた非政治的な一個の場所を必要とするんです。そこに幻想を閉じこめておく。彼らにはそういう処理方法がある。共同幻想はもちろんあるにしても、それを政治の場へは持ち込まないのが原則なんですね。ところが日本の場合、ほかに閉じこめておく場所がないものだから、たとえば戦後は会社にまで持ち込んだり、あるいは新聞に持ち込んだりする。新聞の投書の選び方など、じつに純粋なものです。

 

 岸田 近頃は、共産党が、純粋さを求める層の支持を引き寄せようとしているんじゃないですか。正義の味方共産党と自称したりしていますから。

 

 山本 その純粋な正義が政治の場で機能しはじめると困るんですがねえ。

 

 岸田 そうですね。国民が政治に純粋さを求めはじめると、恐ろしいです。戦前、政治の権力が、不純な政治家から純粋な軍部に移行したのも国民の期待に沿っていたわけで。

 

 山本 東条さんなど、まじめで純粋でしたもの。

 

 岸田 われわれ日本人は軍人が純粋であったことを忘れてはいけないんですよ。純粋な正義漢たちに国を任せた結果、どういうことになったかということをね。それ故に誤ったのだということを。

 

   

 

 山本 そういえば、「正義」という観念も尊皇イデオロギーが持ち込んだ幻想ですね。官軍、賊軍、そこから天誅がでてくる。

 

 岸田 天に代りて不義を討つ

 

 山本 自分が天になっちゃう。これがもっとも残酷なことをすると、昔から相場がきまっているんだ。

 

 岸田 その通りですね。「正義の味方」こそ、もっとも残酷に人を苦しめ、殺して恥じない連中ですからね。日本型の諸悪の根源の代表者が、国会に証人として呼ばれたときに、国会議員のくせにとは申しませんが、「本法廷では…」とやった人がいるでしょう。議長が「ここは法廷ではありません」と注意しましたけど、言い間違いというのは、もちろん意味があるわけです。彼は、まちがいなく正義の味方のつもりだったんですよ。ぼくなんか、「正義の味方」が「諸悪の根源」をいじめているのを見ると、すぐ「諸悪の根源」の方に同情してしまうんですがね。「諸悪の根源擁護協会」というのをつくりたいぐらいですよ。

 

 山本 論争しているんじゃなくて裁いている。それで一たびその関係が百八十度転換すると、今度は全員が裁かれる立場になる。「裁判官と被告」という関係では、いつまでたっても論争や対話は期待できないということだな。しかも裁判官になる意識の背後に、何か法的なものがあるかといったらまるでない。

 

 岸田 正義しかないんです。中国との関係では、以前はこちらに正義があった。その正義がピンポン玉のように、向こうに行ってしまったんですね。

 

 山本 おもしろいことに、旧約聖書には、正義の味方ほどハタ迷惑なものはないという発想がすでにありまして、サタンというのは元来、正義の味方なんですよ。

 

 岸田 そうですか。

 

 山本氏 神のかたわらで人間の悪を告発するのが役目ですから。そして、この旧約のサタンの概念を引いているのがメフィストですね。いうなれば、神のそばにいる検察官。対するに、キリストは弁護士にあたるわけ。つまり、人間が正義を口にするときの動機は憎悪であるという洞察がそこにある。(後略)

 

   

 

 

 …対談はまだまだ続くわけですが、あまり長々とそのまま書いても、どこからか叱られそうなのでこの程度にしておきます。二人の対談を改めて読み、鳩山氏の言葉に覚える違和感の正体がよく分かった気がしました。

 

ちなみに岸田氏が、「正義の味方」にいじめられている「諸悪の根源」に同情してしまうという話は面白いですね。関係ないかもしれませんが、私は幼児のころから、ウルトラマンや仮面ライダーのような正義の味方を応援したことはなく、常に悪役・怪獣側を応援する子供でした。「宇宙猿人ゴリ」の歌など、よほど繰り返し繰り返し聞いたらしく、40年近くたつ今でもある程度2番までは歌えます。さらに言えば、読売ジャイアンツを応援したこともありません。

 

 話は飛びますが、今朝の産経「主張」は、「民主は『改憲』忘れたのか」と書いています。絶対護憲の社民党と連立を組む予定の民主党に対し、しっかりしろよと戒める内容ですが、そうは言っても…というところですね。実は、憲法改正問題に関しても、この岸田氏と山本氏の対談で興味深いやりとりがあったので、これまた紹介しておきます。

 

   

 

 岸田 日本人にとって、なぜ憲法改正はタブーなんでしょうかね。

 

 山本 これはもう精神分析の問題ですな。

 

 岸田 精神分析から言えば、それを変えることがタブーであるという、そのことが、ニセ物である証拠なんですよ。神経症の患者の場合、意識的には偽りの理由を持っているので、その理由に断固として固執するんですね。つまり、ニセ物であるがゆえに、変えられないんです。また、現実にそれを守り、それにもとづいて行動しなくてもいいんですから、変える必要もないわけです。

 

 山本 なるほど、なるほど。そうすると、日本国憲法はニセ物。

 

 岸田 ニセ物という意味は、憲法が理念や原理として間違っているとかいないとかいうことではなくて、日本人の行動を決定している本当の法じゃないということです。

 

 …明快ですねえ。社民党は連立参加の条件として民主党に、「例えば憲法審査会を動かさない、自衛隊を海外に派兵しない」(福島瑞穂党首)などの条件を突きつけていますね。そういえば、社民党の人たちも簡単に「正義」を口にしそうな感じだなあ。さてさて。

 

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