2009年11月

 

 今朝放映されたTBSの時事放談に、民主党の長老議員、渡部恒三・前最高顧問(77)が出演していました。この人はもともと竹下派7奉行の一人で、小沢一郎幹事長とともに自民党を飛び出す一方、小沢氏の言動についてそのときどきの視点で苦言を呈するため、メディアとしてはけっこう有難い存在でもあります。民主党国対委員長時代は、「黄門様」にも擬せられましたね。あれはちょっと、メディア側の持ちあげすぎだと感じましたが。

 

 この人は、本当は自分こそが首相になっていて当然だったのに、という本音があからさまに前面に出ている(事実、私が知る限りでも、そのようなことを故小渕恵三氏が首相になったころから繰り返しつぶやいています)人なので、ちょっと生臭くもあるのですが、確かに話は面白いのです。朴訥そうな会津なまりの下には、いつも打算がしっかり隠されているような印象もありますが。

 

 でも、5月の民主党代表選では、露骨に岡田外相に肩入れし、小沢氏批判を続けたので、オン、オフの発言とも記事を書く上で参考になりました。衆院選後は、やはりというか当然というか小沢氏から疎まれ、本命視されていた衆院議長の座を横路氏に奪われるだけでなく、党最高顧問のポストも外されました。そういう立場の人が、現在の政界と党についてどう考えているかが、本日の時事放談からはうかがえました。以下、収録を見た原川記者のメモを紹介します。

 

:深夜の採決強行。それこそ自民と民主の攻守逆転という気がするがどうか

 

渡部氏41年国会議員を私、務めさせていただきましたが、あの晩の国会ぐらい、国民の皆さんにはずかしい、申し訳ない、しかもまったく意味のない徹夜しての大騒ぎは、ありませんでした

まずね、絶対に審議拒否は国会議員として許せないと40年いってきた自民党の皆さんが審議拒否で退場しちゃうわけですからね、これも国民の皆さん変だと思ったろうし、また我が方の民主党もね、私民主党の国対委員長までやったんですが、あの当時は強行採決はしちゃいかん、やっぱり、国会の運営は与党と野党が話し合いで国民のために決めるべきだと言ってきたのがね、なんか意味の分からん、いつどうなったんだか、われわれ分からねえところで強行採決。

しかも、強行採決したならばね、私もかつて竹下内閣のとき国対委員長で、消費税法案、強行採決したことありますが、やっぱりこれをやらなければ明日の日本ないっていうような意味がなければならない。それほどの意味のある法律ではない。しかし、まあ、共産党が一番でしたね。自民党は審議拒否、民主党は強行採決。その中で共産党はちゃんと審議に参加し、しかも討論でもね、入ってね、この法案たいしたことはないけれども、内容じゃ●(聞き取れず)、賛成したんですよ。私も共産党は入りたくなったね。しかし、結局強行するなら、ばっと強行して提出法案みんな通すっていうなら意味分かるが、でも次の日はわれわれ確保した1日やんなくちゃならないのに、止めちゃったんですから。だからまあ、明日からの参議院、今のままでは法律全部通りませんよ。

 

:国会は小沢さんが総指揮ですよねえ

 

渡部氏:国対委員長(山岡賢次氏)おりますけどねえ、まあ何となく小沢くんが右といえばはい、左といえばはい、となっちゃいましたね。はい、と言わない私は首になっちゃった。

 

:どうしてこんなに中途半端な強行採決に

 

渡部氏:だから、私は40年つきあってね、やっぱり小沢を評価して、いざというとき頼りになるのは小沢だとつきあってきたんですがね、この木曜日から金曜日までの国会は、小沢がなんであんな指図したり、右っていったり左(っていったり)、意味分かりません、話してないから。

 

:でも、民主党議員はそう言われると右左とついていくわけですか。

 

渡部氏:もうそれは着いていきますねえ。そらたいしたもんだわ。昔の軍隊よりたいしたもんだ。

 

 :1年生議員は

 

渡部氏:今、1年生議員っていう話ありましたがね、40年前になりますが、佐藤内閣の田中幹事長のとき私が初めて当選。小沢一郎君とか羽田孜くんとかね。44人当選したんですが、私1年生っていう気分なかったな。佐藤栄作と対等だと思って、もう、佐藤栄作総理のところ行って「あんた辞めろ」なんていったりね、田中さんに食ってかかったりしたもんですけど。これはね、私は国会議員は1年生とか2年生とか差別するのは大変な間違いで、むしろ14回も当選した私などは明日いなくなっていいんで、むしろ今度初めて当選した人が国民が今何を望んでいるか、何を考えているかこれからどうして未来をつくっていくかに対して一番敏感な感覚持っているんです。

しかもね、名誉のために申しあげますと、今度当選した民主党の1期生はみんなそれぞれ個性をもった優秀な学者もいれば、役所の経験者もいれば、首長経験もいれば、特別の思いを持って、非常に素晴らしい1年生が多いんでもっと晴れ晴れと活躍させていただきたいと思っています。

 

:政権の正念場を迎えている鳩山さんに一言。

 

渡部氏:皆さんに知ってもらいたいのは、今までの総理大臣は、だいたい外務大臣、大蔵大臣みんな経験しているんですよ。(鳩山君は)官房副長官しか経験してないんだから、今まで多少あいまいなとこあったとしてもよくやっておりました。私が今鳩山くんに望みたいのは勇気と決断。》

 

渡部氏は4日には、福岡市内のホテルでの講演で「大臣、副大臣、政務官以外はみんな暇で、小沢君が右と言えば右、左と言えば左。(政府入りしなかった)民主党の国会議員は何をしたらいいのか」と述べています。小沢幹事長室による政府・与党の一元化政策の歪みを批判しているわけですが、そりゃこういうことをはっきり言われれば、小沢氏としても煙たいし、鬱陶しいでしょうね。

 

 また、10月の産経新聞のインタビューに対しては「ポスト鳩山」についてこう率直に語っていました。民主党の現状をずばり言い表しています。

 

 《今、仮に鳩山君が辞めるんだったら、そらもう小沢君が推した者がなるに決まっている。代表選なんかやったって、形だけのもんだよ。それは率直に認める。今の状態では、もう文句なし、小沢君に支持されない者が代表になる可能性はない

 

さて、一方の小沢氏は10月26日の記者会見で、この渡部氏を最高顧問から外した理由だか感想だかを聞かれて、こう語っています。渡部氏についてもそうだけれど、藤井裕久財務相との距離感もはっきりうかがえて興味深いところです。

 

《最高顧問はですね、みなさんもどういう理解をしているか、最高顧問というのはどういう職責だと理解しているかによるんですがね、ボクは最高顧問というのは、功なり名をとげて、一般の議員とは別な高いレベルでいろいろとアドバイスしてもらったりなんだりというのが最高顧問っちゅうのだいたいのイメージじゃないかと。一般的には。ところが、たまたま、藤井さんの例が出てきましたから。分かる? 言っていること。藤井さん! 最高顧問だったの! それで引退宣言もなさったの! その方が現役に連なって、しかも大事な、一番大事な国務大臣を担うっちゅうことになっちゃったもんですから、そうすると、じゃあ最高顧問っていうのはどういう性格の人かなと。日本語と日本人が受けるイメージっていうのは。ということをちょっと私も考えて、現役でもってやると、やれる能力のある人、あるいは意欲のある人、それは最高顧問というイメージと意味合いとはちょっと違うのではないかと。だからキミが今、具体的に言ったけれど、渡部恒三先生はまだまだそういう現役で、現役で、前線でやれる能力もあるし、ご本人も意欲もあるんじゃないかなとすれば、最高顧問ということでない方がかえっていいんじゃないかなと。分かった?》

 

 …さてと、本日はとりあえず休みなので、子供と映画「クリスマス・キャロル」でも観て世俗の垢を落とし、心を洗ってきたいと思います。

 

 

 非常に重要な内容であるのに、なぜかあまり話題になっていないようなので、本日は19日の参院内閣委員会での注目すべき平野博文官房長官の答弁について書きます。これについては、昨日の産経3面に「平野長官『イラクは非戦闘地域』 野党時代の猛反発一転…」という見出しで記事が掲載されていますが、不思議と他紙はあまり取り上げていませんでした。

 

 公明党の山本香苗氏の質問に答えたもので、以下、そのやりとりを記します。よくまあこうも臆面もなく…と感じざるをえません。政権の座に就き、現実的になるのはけっこうですが、ここまでくると正直、「○×じゃなかろうか」と言いたくもなります。今まで自分たちが述べてきたこと、やってきたことを少しは総括してはどうかと。

 

山本氏 鳩山内閣の憲法解釈を具体的に聞きたい。鳩山内閣は海自のインド洋への補給支援を来年1月で撤収ということだが、インド洋に海自を派遣し、補給支援活動をすること自体は違憲ではないというのが鳩山内閣の統一見解でいいか。またその際の憲法解釈は、戦闘地域と一線を画す地域での補給活動であるから、集団的自衛権の行使に当たらないゆえに憲法違反ではないという意味か

 

平野氏 結論から言えば、憲法違反ではないと認識している(小沢幹事長は代表時代、補給は「憲法違反だ」と断じ、その見解に基づいて民主党はこれに反対し続けていました…)

 

山本氏 それは統一見解か。その理屈は

 

平野氏 補給支援法の特措法に基づく他国の軍隊に対する給油等の支援活動は、それ自体武力の行使にあたるものではない。またその活動の地域、エリアが非戦闘地域に限定されているという法律上の枠組みによって設定されている。他国の武力行使との一体化の問題が生じないように規定されているものと解釈している

 

山本氏 イラク特措法における非戦闘地域における支援活動も合憲という考えか

 

平野氏 イラクにおける部分についても、現政権としては、イラク特措法自体が違憲であるという考えには至っていない民主党は野党時代、イラクを戦闘地域と位置づけ、自衛隊撤収を求め続けていました)。また、自衛隊が活動した地域がイラク特措法の定める通り非戦闘地域であったことが事実かどうか、ここのところが私ども野党のときには十分わかっていないということ(こんな言い訳がどこの世界で通用するのか!)であるので、それがわれわれの理解では非戦闘地域だという認識のもとにあるので、その活動が違憲だというふうには考えていない(※小泉元首相の「自衛隊が活動する地域が非戦闘地域」との答弁に対し、鳩山首相は幹事長だった平成17年9月、「現在のイラクにはイラク特措法に言う非戦闘地域はない」と明言し、岡田外相も代表だった同年1月に「現在のイラクに非戦闘地域はない」と言い切っていました)。

 

山本氏 じゃあ周辺事態安全確保法における後方地域での支援活動についての憲法上の解釈は鳩山内閣でどうなっているのか

 

平野氏 たくさんの質問ありがたい。周辺事態安全確保法の後方地域とは、我が国領域及び現に戦闘行為が行われておらず、かつそこで実施される活動の範囲を通じて、戦闘行為が行われることがないと認められる我々周辺の公海、その上空の範囲と認識している。したがって憲法9条との関係で問題が生じるとは考えていない

 

山本氏 内閣法制局の見解は

 

宮崎法制局長官 補足して説明する。確保法の後方地域は定義があり、答弁通り~だ。周辺事態法は海上活動なので後方地域だ。周辺事態に対しては同法に基づき我が国は後方地域に起きて日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する輸送、補給といった支援措置をすることになっている。後方地域支援はそれ自体武力の行使に該当しないし、後方地域で行われる行為なので、他国の軍の武力行使と一体化することもない。したがって憲法9条の関係で問題が生じるものではない。官房長官の趣旨はそういうことだと思う。

 

山本氏 戦闘地域は刻々と動くから、後方地域と戦闘地域を厳密にわけることは難しい。分けられたとしても戦線が後退したら交差することもあるのでは。鳩山内閣は交差する場合を想定しているか

 

平野氏 後方地域と戦闘が行われているエリアとが交差すると言うことだが、そもそもこの法律に基づく後方地域とは、我が国の領域及び現に戦闘行為が行われていない、かつそこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる公海、上空のエリアという概念だ。だから戦闘地域が交差するということはない。》

 

 …法制局の振り付け通りの見事な官僚答弁も見せています。さらに指摘すると、この日の参院外交防衛委員会で、岡田氏は自衛隊のイラク派遣について「当時の小泉首相は非戦闘地域の定義をきちんと答えなかった。今でもあのときの議論は明確な解決に至っていない」と、平野氏と「閣内不一致」の答弁をしていました。

 

 本来、首相や閣僚による政府答弁は重く、こういう矛盾が許されるものではありませんが、鳩山政権では何でもありです。閣内不一致など当たり前の常態になっているので、報道側も不感症になっているのかもしれません。もっと言えば、連立を組む社民党は自衛隊の海外派遣自体を違憲としていて、もう何がなんだか分かりません。

 

 平野氏は答弁の冒頭、「山本先生の質問はうれしい。いつも地元でポスターが貼られているが、実物を見るのは初めてで大変うれしい」などど意味不明の発言もしていました。この政権、だれかなんとかしてください…。

 

 

 

 本日朝、自民党は党本部で「政権構想会議」を開き、「保守主義」とは何かについて議論しました。で、事後に記者ブリーフを行った伊吹文明元幹事長によると、来週、もう一度この会を開き、12月3日に河野太郎氏を司会にして党所属議員、前議員の参加のもと、党の理念、綱領について議論しようということになったそうです。

 

 きょうはこの伊吹ブリーフの中で、私が興味をひかれた部分を紹介します。伊吹氏によると、出席していた加藤紘一氏は次のように述懐していたとのことでした。

 

 「私は宏池会にいたが、私は宏池会が保守本流の派閥と言われる意味合いがよく分からなかった

 

 ある意味、率直で正直な感想だと、加藤氏を少しだけ見直しました。これは全くその通りで、日本の政治用語で言う「保守本流」は本来的な意味での保守とはほとんど何の関係もないのだろうと思います。宏池会のプリンスだった加藤氏自身、薄々それに気づいていたと。

 

 伊吹氏はまた、この加藤発言のエピソードを紹介した文脈の中で、こう続けました。これも納得がいく率直な発言だと感じました。政権を失うことによって、今まで口にしにくかったことも言える環境となったということでしょうか。

 

 「つい最近までの自民党は保守政党ではなかったのではないか。自由と民主を前提とするが、一部の人の判断である政府の関与を大幅に認めて、それを認めることによって多くの支持団体からの支援を期待していた。そういう政党だった。どちらかというとリベラルというか、アメリカでいうとニュー・ディーラー的な政党だったのではないか

 

 こういう認識が党内で共有され、しかもそれを乗り越えて、改めて保守政党として生まれ変わることを期待します。簡単ではないでしょうが、それができなければ、いかに民主党がダメで危険な政党であろうと、再び政権の座に就くことは難しいのだろうと思います。

 

 昨日のことですが、午後の平野博文官房長官による記者会見を何げなく聞いていて、耳慣れない言葉に注意をひかれました。そんな言語表現があろうとは考えたこともなく、意表を突かれたというか新鮮だったというか。平野氏は、実はとても表現力の豊かな人なのだと改めて居住まいを正したほどです。もともと私は学生時代、友人に「お前は言葉尻をとらえて感動するやつだ」と呆れられていたこともこれあり。

 

 記者会見では、民主党政権の定義する「天下り」とは何かについて、いつものように繰り返し不得要領なやりとりが展開されていました。平野氏は、「官僚OBによるあっせんは天下りにならない」という趣旨のことを述べるなど、相変わらず野党時代と言うことが違うんじゃないか、全くご都合主義なんだからと感じながら聞いていたのですが…。

 

 そこで飛び出したのが、「それはニアリー天下りですよ」との一言で、思わず大ウケしてしまいました。修行が足りません。さらに、「狭義の天下り」ときましたから、随分と論議の的となった慰安婦問題における「狭義の強制連行」を思い出し、平野氏が操る言葉の魔力にすっかり囚われてしまいました。

 

 最近、私の周囲ではなにごとにつけ「恵まれた家庭に育ったものですから」と言い訳するのが流行っているのですが、ユーモアは生活や仕事にゆとりをもたらしますね。とりあえず、官房長官記者会見の関連部分を紹介します。

 

《【天下り】

記者 政府は天下りの定義で、府省庁のあっせんがある場合は天下りであるという見解を示している。野党時代に民主党はそれ以外も天下りと訴えてきたが、整合性は

 

平野氏 それ以外とはどんなケースですか

 

記者 玉突きになって官僚OBが次に入ってくれと呼んだ場合とか、府省のあっせんがないと主張しているが、実態として玉突きになっている…

 

平野氏 常態的にという意味ですか。それはニアリー(nearly)天下りですよ、それは。

 

記者 どういう風にそうか

 

平野氏 そこはしっかり、そこのところはグレーみたいな表現になっていますけれども、実態的に常態的にそれが繰り返されるということは、事実上、それは天下りとみなきゃいかんのではないでしょうか。それを止める方法を考えておかないといけないと思います。

  そうするとどういうことになるかというと、やっぱり、独法についても、組織自身をしっかりと改革をすると。廃止をするということを含めたトップ改革にもかかわってくるわけであります。そういう意味では、行政刷新の中に、そういう役割を担っていくところがあって、トータル全体としていわゆる天下りというものはなくなっていくということであります。狭義の意味での天下りは、この間の議運委員会の中で、お示ししたのが天下りあっせんということだが、隠れて、もしやっているとしたら、私はそれは廃止をする方向に検討したいと思います。鳩山政権になってからは、その部分はないと思っております。

 

記者(産経) 先週の議運理事会で、各府省庁のあっせんの天下りの定義について、府省庁の定義には政務三役と官僚OBは入らないと言ったが

 

平野氏 もちろん、そこの定義でいえば入らない。

 

記者 OBは定義には入らないと。

 

平野氏 入らない。今言っている天下りの概念で言うと、あっせんは府省庁の職員があっせんをする。こういうところについては、私は天下りあっせんという理屈を入れたが、政務三役とこういうことですよね。

 

記者 OBの方だが

 

平野氏 OBは当然その概念に入りません。入らない。ただ、常態的にやっているとしたら、「もどき」でるから、そんなものはなくす。当然そういうことはあっちゃならん。もう一つは、政務三役があっせんした場合は、政務三役はそういうなかに入らないのか、入るのかといった時に、私は入らない。しかしながら、当然政務三役は、天下りあっせん根絶ということで閣議で縛ってありますから。当然、そういうことの行為にならないよう禁止しているわけですから。改めて内閣としては、閣議で天下り根絶を言っているわけですから、当然閣僚政府としての意思決定ですから、当然、私はそういうところには定義には入っていませんが、別のところで縛りが効いているということですよ。言いたいことは。

 

記者 昨日、参院の西岡議運委員長(民主党)が記者会見で定義について不十分だと言っているが、この定義見直しを考えるところはあるか。官僚OBが含まれていないとか

 

平野氏 今のところはございません。実態的にそのことによって、天下りがされているということであれば、そのことについて対応する仕組みを考えないといかんと。実態的にも天下りは根絶されているんだという仕組みにしないといかんと思ってますが、定義自身は公務員法にもきちっと書いておりますから、そういうルールに従って、私は定義を議運の委員会の場でも申し上げたところでございます。》

 

 平野氏はきょう午前の記者会見でも、すでに1億2000万円分引き出したとされる官房機密費について「引き出しておりますが、使っているとは私はまだ、申し上げておりません。適切に対応しているという言い方でございます」と精緻かつ玄妙な言い回しでわれわれを煙に巻きました。なんだかなあ。

 

 

ここ数日、公私ともに多忙だったり、一生懸命構想を練って書いた記事を「ボツ」にされて意欲を減退させたりで、ブログ更新が滞っていました。対外的な軋轢もアレなものですが、社内でのなんだかんだもまた、気が滅入るものです。しょせん、下っ端のヒラ記者だし。

 

まあそれはそれとして、きょうの衆院本会議で、江利川毅・前厚生労働次官を人事院人事官に充てる国会同意人事案が、民主、社民、国民新の与党3党の賛成多数で可決されました。自民、公明、共産、みんなの党の野党各党は反対したわけですが、多勢に無勢ですね。人事案は明日の参院本会議でも与党の賛成多数で可決され、同意されることになります。

 

 そこで本日は、おさらいの意味を込めて民主党がいま「天下り、渡り」についてどう言っているのかを振り返りたいと思います。言うまでもなく、民主党は衆院選のマニフェスト(政権公約)で、「天下り、渡りのあっせんを全面的に禁止する」と約束し、それが国民の支持を集めた要因の一つとなったわけですね。

 

 ところが、政権の座につくと、日本郵政の社長にいきなり「最後の大物次官」と言われた斎藤次郎氏を充てるなど、疑問符をつけざるを得ないやり方を繰り返していますね。で、野党の自民党などから「あんたらの言う天下りとは何なの?」と聞かれて、出してきた定義が次のようなものでした。

 

 「(天下りとは)府省庁が退職後の職員を企業、団体等に再就職させること」。つまり斎藤氏や江利川氏のような事例は「府省庁のあっせんではない」ので天下りではない、という理屈をひねり出してきたわけです。「理屈と膏薬は貼り替えた方が効く」という小沢理論をきちんと実践しているようです。で、各省庁の政務3役(大臣、副大臣、政務官)はここで言う「府省庁」には当たらないということなので、これはまあ、なんとでも運用で誤魔化せそうな気がします。

 

この問題に関する平野博文官房長官の定例記者会見でのやりとりなんて、完全に開き直っている感もあります。結局、国民の関心と批判が高まれば反省もし、改めもするでしょうが、それがそうでもなければ、知らん顔を決め込もうというスタンスに見えます。なので今回は、4日の衆院予算委員会での菅義偉氏の質問に対し、各大臣がこの問題について何と言っているか記録の意味で記しておきます。

 

 長妻厚労相 「この(斎藤氏の)人事は政府の決定ですので、私はそれを了とします。この案件については、政治主導で本当に適材適所という観点で、悩みに悩んで決めた人事だと聞いておりますので、私は了解したわけです」

 

 …悩めばそれでいいってものじゃないような。

 

 前原国交相 「内閣で決まったことについては、私は内閣の一員としてしっかりサポートしていきたいと思っております。今回のことについては、私は天下りというのは、早期勧奨退職をし、そして、今まで決まったポストにどんどんどんどん入っていくと、変わっていくと、そしてまた、それが固定化していくと、そういうものを我々は天下り、渡りとして根絶すると言ってきたわけです。ずっと役職についていなかった方が、政治主導で、適材適所に決まるということは、私は、天下りの定義には入らないと思っております」

 

 …じゃあ、つい最近まで次官だった江利川さんは?

 

 仙谷行政刷新担当相 「今度の人事は天下りとか、天下りのあっせんとかという問題ではなくて、ああ、亀井大臣はこういう人事を適材適所としてやられたんだなあと、こういう風に評価をしております」

 

 …ならば、どういう問題だと思っているのか。

 

 福島消費者・少子化問題担当相 「いったん役人をやった人間が、その後ずっと民間会社にいたからといって、一切何の役職にもつくことができないということと、一般的な天下りとはちょっと違うという風に考えております」

 

 …ちょっと話をそらしてはいませんか

 

 それにしても情けないのは自民党です。大島理森幹事長はきょうの記者会見で、国が株式を保有する日本郵政の株式売却凍結法案について「小泉改革の原則は変えない」としながらも、「国民サービスがどうあるべきか議論は必要だ。半日や1日の国会審議で法案を処理するのは許せない」と述べました。慎重審議を通じて議論を深めたいという姿勢であり、党内に郵政官営化に賛成する勢力がいることに配慮して、きちんと反対する対応はとれずにいます。

また、大島氏は民主党小沢一郎幹事長が16日の記者会見で、永住外国人の地方参政権付与法案について「韓国政府サイドからも(成立への)要求が高まっている」と発言したことに対しては、「日本国の主権、統治の問題だ。どこかの国の要請を受けやるような簡単な問題でない」と批判しました。これはその通りで、それ自体は正しい発言だと思いますが、実は自民党はこの外国人参政権問題に対して党内の意見をまとめきれていません。だから、参政権法案自体に反対しているのではなく、小沢氏の韓国の意向に寄り添って国政をもてあそぶような姿勢だけを批判しているわけです。

 この二つの問題は、まさに民主党政権を攻めるにふさわしい材料であるはずです。それなのにそのチャンスを生かせず、巨大な与党と、それが押し通そうとしている間違った政策に対して、正面から対峙していくこともできずに揚げ足をとるだけでは、「自民党もやるじゃないか」と国民から見直してもらうことはなかなかできないでしょうね。まあ、自民党の今の執行部の顔ぶれを思うと、私が「ないものねだり」をしているだけかもしれませんが。

 

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