きょうは昨日のエントリの続きです。慰安婦問題をめぐる大阪市の橋下徹市長の言葉の中で、もう少し説明を加えた方がいいと感じたキーワードを、手元にある現代史家、秦郁彦氏と西岡力氏の著書から引用して訪問者の皆さんの参考にしてもらいたいと思います。まあ、知っている人はもともと知っているという話ばかりですが、頭の整理にもなるので。(※傍線、太字は阿比留)
《国家補償派の理論的支柱となってきた吉見義明中央大教授の場合を見ると、最初期には「軍関与は明々白々」(92年1月11日付朝日)「関与のレベルを超え、(国の)責任は免れない」(92年2月7日付朝日)と控え目だった。
この段階では募集時の強制連行が焦点になっていたのだが、唯一の日本側証人である吉田清治の慰安婦狩りが虚構らしいとわかったので、「強制連行というと人狩りの場合しか想定しない日本人が多いが、これは狭義の強制連行であり、詐欺などを含む広義の強制連行の問題をも深刻に考えてしかるべき」(92年11月発行『従軍慰安婦資料集』序文)と言い出す。
ところが、朝鮮半島で「詐欺など」の手法で女性を連行したのは、元慰安婦の証言によっても、ほとんど朝鮮人のブローカーだったことが知れてきたので焦点を移し、「多くは官憲が直接手を下したものではないが……国家に責任がないということにはならない」とか、(中略)強弁するようになる。
それでも「強制連行」説をあきらめたわけではないらしく、96年5月20日のETV特集では「日本政府が資料を隠しているからだ」と発言したので、「具体的に思い当たる資料があるのか」と本人に聞いてみると、「そうではない」との答えだった。》(秦氏『現代史の争点』、文藝春秋、1998年5月発行)
→安倍内閣のころ、安倍首相が「狭義の強制連行はなかった」と語ったことについて朝日の記者が「狭義の強制連行の意味がわからない」とかみついたことがありました。私は、それは朝日がやたらめったらと重用し、朝日の主張の根拠としてきた吉見氏が言い出した言葉なのに、そんなことも知らずに質問しているのかとあきれたのを覚えています。安倍氏としては、わざわざ左派用語を使うことで皮肉を込めて反論したのに、無知で不勉強な相手には通用しなかったというわけです。
《では吉田清治が「昭和18・19年の2年間で千人以上」(『赤旗』1992・1・26)と語り、「吉田さんらが連行した女性は少なくみても950人」(朝日新聞『窓』92・1・23夕刊)と報じたような、文字どおりの強制連行は本当にあったのだろうか。
私は78歳で健在の吉田に連絡して「裏付けをとりたいので済州島の慰安婦狩に同行した部下の誰かを紹介して欲しい」と頼んだが、彼は「本を書くとき2、3人に会って記憶を整理した」ことは認めたものの「あちこちから聞かれるが、絶対に教えられない」と拒絶した。
そうなると現地へ行ってみるしかない。日付と場所が特定しているのは、済州島の例しかないからだ。
結果的に出かけただけの成果は色々とあったが、細部は省略して1989年に吉田著が韓国語訳されたとき、『済州新聞』の許栄善記者が署名入りで書いた紹介記事(1989・8・14付)を入手したので、その一部を次に転載する。
(中略、吉田著の概要を紹介)
しかしこの本に記述されている城山浦の貝ボタン工場で15--16人を強制徴発したり、法環里などあちこちの村で行われた慰安婦狩りの話を、裏づけ証言する人はほとんどいない。
島民たちは「でたらめだ」と一蹴し、この著述の信ぴょう性に対して強く疑問を投げかけている。城山里の住民のチョン・オク・タン(85歳の女性)は「250余の家しかないこの村で、15人も徴用したとすれば大事件であるが、当時はそんな事実はなかった」と語った。
郷土史家の金奉玉(キム・ポン・オク)氏は「1983年に日本語版が出てから、何年かの間追跡調査した結果、事実でないことを発見した。この本は日本人の悪徳ぶりを示す軽薄な商魂の産物と思われる」と憤慨している。》(秦氏『昭和史の謎を追う・下』、文藝春秋、1993年3月発行)
→私も以前、何度もこの吉田氏に取材を申し込もうと試みましたが、吉田氏は電話口に出てくることさえありませんでした。産経の取材は徹底的に避けていたようです。また、済州島出身の呉善花さんも以前、「済州島で慰安婦狩りなんて話は聞いたことがない」と語っていました。
《1992年7月31日、韓国政府は「日帝下の軍隊慰安婦実態調査中間報告書」(211ページ)を発表したが、内容の大部分は吉田清治証言など日本側の既公表情報で、独自調査による新事実はほとんどなかった。報告書は、募集が「詐術あるいは威圧的雰囲気による方法」で行われたことを強調しているが、韓国人用の慰安所が存在したこと、慰安婦を雇った業者に朝鮮人のいたことも認めている。》(同)
→結局、李明博大統領をはじめ日本に激高してみせている韓国人たちは、こうした自国の報告書の内容もろくに知らないか、意図的に無視しているのでしょうね。また、韓国は外国だからそういうことも当然あるだろうと思いますが、日本国内に外国勢力をそそのかし、あおり立てる人たちがけっこういるのが気が滅入ります。
《金学順氏は訴状では、貧しさのため40円で朝鮮人養父にキーセンとして売られ踊りなどを仕込まれた後養父とともに「北支」の日本軍駐屯地に連れていかれたとしているのに、同書(韓国挺身隊問題対策協議会・挺身隊研究会編『証言集Ⅰ強制で連れていかれた朝鮮人軍慰安婦たち』)では養父に連れられ北京に行き市内の食堂で昼食を取っている時に日本軍将校に襲われ連行されたと語っている。》(西岡氏『コリア・タブーを解く』、亜紀書房、1997年2月発行)
→まるで鳩山由紀夫元首相のように発言内容がブレています。こういう人に本当に証言能力があるのかと疑問がわきますね。この金氏を「この人が慰安婦です」とNHKに連れてきてニュースに仕立てたのが現在の社民党党首、福島瑞穂弁護士なわけで、吉田氏の事例もそうですが、結局は韓国側もバカだけど、一番悪いのは日本人だという結論になります。悲しい限りです。
きょうは疲れたのでここまでとしますが、この問題は引き続き、取り上げていきます。今の状況は、事実関係を広めるチャンスだと思います。